The sound and the furyの構成と技巧
著者 山下 昇
雑誌名 Core
号 4
ページ 16‑30
発行年 1975‑04‑10
権利 同志社大学英文学会Core編集部
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000016370
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The Sound and t h e F u r y の構成と技巧
山 下 昇
Faulknerの小説は, ある一人の narratorが ominiscientな視点から 事件の一部始終を語る物語というようなものではない.被の小説は,さま ざまな角度から観察し,多角的な技巧を駆使することによってテーマを追 いつづける種類のものである. この TheS.凶 ndand the Fury において は,複雑な文章構成,視点のとり方のくふう, <意識の流れ〉の使用,
symbolとimagery等がその中心的な技巧となっている.一見,技巧を弄 していると思えるような彼の態度は何を真に意味し,そうすることによっ て彼は何を表現しようとしたのであろうか. 又, これらの技巧は section が変わるごとに力点が移ってゆき, とりわけ第一部,第二部に対して第三 部,第四部ではその技巧の用い方が大幅にかわっているのだが,何故に技 巧がそのように移りかわっているのであろうか.以上の点に留意して,こ の作品における技巧と構成の連関とその成果を明らかにしてゆきたい.
1
第一部,第二部は imageとsymbolをその中心的技巧としているのだ が,第一部においてその中核をなしている imageは次の如くである.
1) The shapes flowed on. The ones on the other side began again, br幼 tand fast and ,smoot
与
likewhen Caddy says we are going to sleep. [Italics mineJ2) 1 coμld hear the clock, and 1 could hear Caddy standing behind me, and 1 could hear the roo
f .
lt'5 still raini・ng; Caddy said. 1 hate rain. 1 hate everything. And then herThe Sound and the Furyの構成と技巧
head camεinto my lap and she was cryingラholdingme, and 1 began to cry. Then 1 looked at the fire again and the bright, smoO品 shapω wentagain. 1 could hear the clock and the roofωul Caddy. [Under1ine mineJ (p. 57)
3) She led m日 tothe五reand 1 looked at the bright
,
幻nooth,
shapes. 1 could hear the fire and the roof.
Father took me up. He smelled like rain. [Italics mineJ (p. 63)
4) Caddy held me and 1 could hear us all, and the darkness, and something 1 could smell. And then 1 could see the windows, where the trees were buzzing. Then the dark began to go in smootんbright shapes, like it always does, even when Caddy says that 1 have been asleep. [Italics mineJ (p. 72)
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この bright,smooth shapesの imageは次から次へとあらわされてく るのだが, これは白痴の末子である Benjyの安心と満足を表わす象徴的 な働きをするところの imageである. これが,一体何であるのかを現実 的な観点から考えてみれば,これは彼の愛したまた唯一人彼を愛してくれ た姉 Caddyの bodyである乙とに気付く.いつも添寝をして〈れ,寂し い時,悲しい時,泣きわめく時に披を抱きしめてくれた姉 Caddyの白い 温かい bodyである.出奔して今は彼の許にいない姉 Caddyの想い出を 白痴の Benjyは白痴特有の一途さで, 未だ忘れずに保有しているのであ る.
この bright,smooth shap自 の imageが fire,mirror, cushion, tree, raln等の symbolと協働して,この sectionにおける Benjyの心の動き
を表現しているのである.五reは,赤くゆらめく美しさと楽しさを白痴の B叩 JVの視覚に与え,暖かみ,ぬくもりを感覚にうけとらぜることによっ て彼に安心と満足を与えている murorは, 赤ん坊がそれに対して示す あの好奇の理由となると乙ろの,さまざまの世界をその中に反映する力の
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役割を担っている. 例えば mirrorが取り去られた時の Benjyの反応を 見てみよう.
After a while Ben and Luster came in. Ben went to the dark place on the wall where the mirror used to be, rubbing his hands on it and slobbering and moaning. Luster began punching at the fire. (p. 227)
Benjyにとって, mirrorは積極的な価値を映しだすものである, 故に これが取り除かれることは,彼にとっては, く喪失感を経験すること〉を 意味するのである. そして LawrenceThompsonによれば, Caddyは cushion, slipper等を含めて彼にとって積極的な意味をもっている諸価値 を彼に与え I鏡に映ったその映像によって倍加する愉びを,ベンに教え てきたのである.Jそしてその逆作用として Benjyは彼女の道徳的な鏡 の役割を果していた.即ちそれは次の treesの symbolismによって明ら かにされるものである.
Treesは随所 shesmel1ed like tr巴es"としてあらわれてくるのだが,
これは Caddyの virginityの symbolである.それは逆に彼女が木の匂 いがしないときを見れば明らかである.
. . . and Caddy put her arms around me, and her shining
V巴il,and 1 couldn't smell trees any more and 1 began to cry. (p. 43)
wedding veilを 冠 札 結 婚 す る 彼 女 は も は や virginityを失くしてお り,その故に treesの匂いはなくなってしまっているのである.これに対 して Benjyのあげるうめき声は抗議のそれである. この virginityはも ちろん,物理的な意味合いのみではなく,精神的なものをも包含している.
この場合第一義的には lnnocenceである. 次の引用でそれを見てみよう.
1 listened to the water.
1 couldn't hear the water, and Caddy opened the door. Caddy smel1ed like trees. (p. 44)
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ζれは例の香水事件の場面であるが,香水をつけて大人を気どったCaddy は spiritualinnocenceをなくしており, そのために Benjyに泣きわめ かれる.顔、を洗って香水をおとしてきたので再び、彼女は treesの匂いがし た. 即ち白らの非を悟って innocenceを回復したというところである.
ζこでの waterは puri五cationの役割を果している Benjyはこのよう に Caddyの innocenceに敏感に反応し,彼女がそれを無くしていると き,あるいは忘れているとき,激し〈抗議をする.即ち Benjyは Caddy にとって道徳的な鏡の役割を果していたのであった.
Caddyの virginityはlnnocenceの意味に加えて, moral powerの意 味をも有している.いわゆる乙の作品の発想のもととなったといわれる,
Caddyが Damuddyの funeralにお尻をよごしたズロースをはいて木に 登った sceneは象徴的,予言的である.即わ Caddyのvirginityの象設 たる treeが, ここでは Freud流に考えるならば, 男根の symbolとな っている.それは,彼女の virginityが男性によって失なわれるという予 兆であり,又,女性が木に登るという行為自体,男根願望の symbolと考
えるζとができる.ちなみに彼女は,
. she [CaddyJ never was a queen or a fairy she was always a king or a giant or a genera . .l. . (pp. 156‑7) というような男性的な資質を備えた女性であった. と同時にこれは象徴的 には,彼女が Compson家の名誉という重荷を背負っていたということが できる.それはー少女には支えるに重すぎるものであった.
Caddyの背負っていたこの役割に関連してくるのが ralnである raIn は五reとは対称的に, Compson家の人口にとって喜ばしきものではない.
2)で Caddyは 1hate rain."と言っており Quentinも 1wish it wouldn't rain.円 (p.65)と言っているように,むしろ忌み嫌われているも のである raInは deathの symbolとして扱われることが多いが, ζこ でもその例にもれていない.のにおける
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や Quentinsmelled like rain too." (p. 65)の如く,後に死すべき者は この時 ralnの匂いが感じられるのである ralnはこのように deathの 全き symbolであり,それは没落,崩壊を導くものである. このことを考 えるならば,先にヲ│いた shesmelled like trees円同様9 随所に見うけ られるところの 1could hear the fire and the roof.円は象徴的である.
五reに象設されるところの安心と満足を得ている BenjyとCompson家 の人々を取り巻く状況は raInに象徴されるところの deathと没落, 崩 壊である.4)は第一部の lastsceneであるが,安心の内に眠りにつく Benjyをとり囲むのは darlmessの世界である点でも Compson家の状 況は決して明るい方を向いていない.
このように第一部は BenjyとCaddyのく愛〉の過程を Benjyのく意 認の流れ〉の中に imageヲ symbolを中心とする技巧を使って表現したも
のだが,その中にすでに Caddyの位置とその必然的な没落, Compson家 の崩壊の予兆を見出すことができる.
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第一部が Benjyの抱くところの bright,smooth shapesを中心的な imageとして地の symbol との協働によってそのテーマを表現して行っ たのと同様,第二部も,乙の sectionの主人公となる Quentinの意識に うつってくる imageと,他の symbolによってその主題を表わしている.
この sectionにおける imageryは第一部のそれのように単一のもので はないが,それらはー貫して一つの imageを形成しようとしている. そ れは即ち deathimageである. この deathimageの変化のうちに,我々 は Quentinのdeathの意識の変化を読みとることができる.又, symbol に関して言うならば, watch, chime, water, shadow, trout, ship, schooner, boat, gull, streetcar, honey古uckle等のさまざまなものが, symbolとして 働いている.裏返して言うならば,このsectionを司っているのが Quentin
The Sound and the Furyの構成と技巧 21 の意識であることを考えれば,如何に Quentinの意識が, 多様化された.
あるいは散漫な,あるいは過剰なものであったかということである.
Quentinの抱く deathimageを時間を追ってとりあげてみよう.
5) Father said a man is the sum of his misfortures. One day you'd think misfortune would get tired, but then time is your misfortune Father said. A gull on an invisible wire attached through space dragged. You carry the symbol of your frustration into eternity. Then the wings are bigger. Father said only who can play a harp・[ItaIicsmineJ
(p. 97)
6) . 町 .thεwholεthingcame to symbo1ize night and unrest 1 seemed to be lying neither asleep nor awake looking down αlong corrider of grey hal
f ‑
light where all stable things had become shadowy paradoxical all 1 had done felt suffered tak‑ ing visible form antic and perverse mocking without relevance inherent themselves with denial of the significance they should have affirmed thinking 1 ¥vas 1 was not who was not was not who. [Italics mineJ (p. 154)7) ... and then 1 was hearing my watch and 1 began to listen for the chimes and 1 touched Shreve's letter through my coat, the bitten shadows into the quad the chimes did begin and 1 went on while the notes came up 1ike ripples on a pool and passed me and went on, saying Quarter to what? All right. Quarter to what.
Our windows were dark. The entrance was empty. 1 walked close to the left wal1 when 1 entered, but it was empty: just the stairs curving
t ψ
into shadows echoes of feet in the sad generations like light dustz ψ
on the shadows, my feet walking them like dust, lightly to settle again. [Italics mineJ (p. 155)これらの passageが各々, death imageを形成しているのだが, それ
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らのもっている内容は必らずしも一様ではない. これらは各々人生や時間 に対する疑問や問いかけの文章と近置されており, ζれらと imageとの 意味のつながりを緊密にしている.
例えば 5)の場合, これは第二部, Quentin sectionの割合初めの方に 位置していて,この sectionの conflictをもたらすもの,即ち plotの源 となる父の言葉である. この父の言葉を Quentinは自分の意識の中で反 謁しているのである.父の言葉がこの sectionで果している役割を考える ならば,父はこの sectionの影の主役である.この意味からすれば,第二 部は「子 父」の菖藤を描いた「父物語」の一部として考えるζともでき
る. ともかくも息子 Quentinに時間と人生に実村』るやっかいな懐疑を抱 かせ,この sectionに難解の影をおとさせたのはこの父である.そして皮 肉にも息子 Quentinも, この父と同様な資質を備えているらしいのであ る.他の兄弟たちと比較してみれば,それが一層はっきりするだろう.
少しわき道にそれるが,こ乙で Compson家における資質の継承関係に ついて少々明らかにしておくならば,父 Quentin, 母 ‑Jason, Caddy‑
Quentin (娘),さらに末子 Benjyの中に最終的に受け継がれているもの は次のごとくである.第一グ、ループが,ノイローゼ、的観念と,その結果と しての現実不適応文は無力感,第二グ、ループが,現世的利益と名誉欲,強 欲,それに第三グループが,性的放縦である.これらの悪徳と堕落,腐敗 が, 末子 Benjyの白痴という状況に象徴的に集中しているということが できる. ζれらによって, Compson家に流れているものと,深まってゆ く崩壊感というこの作品のテーマに辿りつくことができる.これについて は後述する.
ζのような父の言葉と絡み合って, 5)は一つの deathimageを形成し ているが,それは timeの流れと parallelに流れている.そして timeと death imageが parallelであるということが, この sectionにおける最
も中心的なテーマである固この sectionは先に述べたところの父の言葉に
The Sound and the Furyの構成と技巧 23 よって始められ Quentinの timeobsessionの深まりと conflict,それ を通じての彼の死の決意と自殺の決行という timeの流れをもっており,
その過程において Compson家の崩壊の流れの内でその中心的な部分をう けもっている父と息子の葛藤とその敗北を語っている.
6)の passageは自殺の決行を真近かにしたものであって, Quentinに はもうすでにその覚悟ができている.とは言うものの彼の潜在的な不安や 本能的な不安が頭をもたげてくる. この箇所ではそのこととその結果とし ての錯乱を示している. 同時に,人が自己の死を眼前にして考えがちな
「私は生きたのだろうか?私の生の意味は何だったのだろうか?」といっ たふうな観念的な思考にとらわれており,そうすることによつ
な死の恐怖から逃れていると考えられる. このように,彼の頭の中で考え られている時間や死や人生についての考えにも, death image同様の変化 が見受けられる.
7)の場合はこれより更に少し時が経過しており, 夜の九時二十数分と 推定される彼の定めた自殺の決行時聞を前にして,時間を確認している笛 所である. Quarterto what?月の whatは九時である. 彼は timeに 対して自問自答しているのだが, ζの時点ですでに完全に死ぬ決心をして
しまっていて,周倒に死の準備作業を確認している.Time に対して「何 時だろうか?Jと疑問を投げかけ, All right.'の言葉によってその答を だし, Quarterto what.円としてそれを確認している.最後の whatは
「そうだあの時間だ.Jの意味であり, これはピリオドで終っていること からも明らかにされるように肯定文である.九時という時を,敢えて自己 確認のみで終っていることの中に,彼の生の意識の放棄を見て取ることが できる.
このように 5),6), 7)とも生,死,時間に対する自問自答のうちに,
彼の deathの意識の変化を読みとることができるのだが, それに密接に つながりをもっているところの各々の imageはそれをどのように反映し
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ているだろうか.5)は主に Angelのimageであるが,これは Quentin が妹 Caddyと心中して,二人だけで往って焼かれたいと願った地獄の
clean ftame円と通じる deathimageである. ここにはまだ deathに 対する空想的,観念的なあこがれが感じられる. だが, 6), 7)の image
に移るころにはこれは双方とも暗黒に通ずる虚無感の強い deathimage に変化している. ちなみに 6),7)の imageは死の国へ通じる廊下,階 段,のそれである.同じ deathimageでありながら, これらの聞に差異 が生じているのは,昼から夜へという外的な物理的な時間の推移もあるが,
同時に Quentinの心理状態又は意識の状態の変化があることを示すもの である.加えて事実経過の問題としては, 5)と6),7)の間に,彼の意識 の中における Caddyとの心中ごっこというものがあり,彼はその中にお いてことごとく敗れ,無力でしかありえないという経験を通過しているの である.故に 6),7)の imageを抱く彼には, 死はもはや単なる願望や 空想ではなく,目前の即物的な事実となっており,そのために虚無の色ど りにすっぽり包まれているのだということをこれらの image の変化は語 っている.
これらの deathimageの他に,第二部においては symbolの使用によ って time= death= Quentinの意識. を表現している. この sectionは Quentinの時間との葛藤あるいは時間による obsesionによって始まるが,
watchはそれを示唆する第一の小道具である.これには祖父から父,父か らQuentinへと渡される時計という即物的な意、味と同時に,
r
観念性」と か「無力感」というような種類の呪いもまとわりついている.そして話の 進行の上で, このwatchの時を刻る音が,直接的に彼を obsessするので ある.chimeはいわば大道具だ.彼の意志、や内的状態と無関係に外的,現 実の時間の変化を告げるものである. 次に登場する waterは死の image をも蔵している.彼は水死をするという意味会いでも, waterは彼の死場 所であり, waterに投影されるさまざまなものが, 彼の deathとの関係The Sozmd and the Furyの構成と技巧 や拾抗を示している.
1) 1 began to feel the water before 1 came to the bridge. The bridge was of gr巴y stone, linched, dappled with slow moisture where the fungus crept. Beneath it the water was clear and still in the shadows, whimpering and clucking about the ston巴 in fading swirls of spinning sky. [Italics mineJ (p. 197)
2) The corridor was still empty of all the feet in sad gene圃 rations seeking water. [Italics mineJ ( p. 157)
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このような表現は幾らかの箇所で見受けられるのだがラ彼はwaterに近 づくにつれて deathを意識しており,それは次の symbolである shadow と栢侯って披の中での deathの意識を反映している. これを今少し詳し
く見てみよう.
3) 1 could not see the bottomフ but 1 could see a long way into the motIon of thε water before the eyes gave out, and then I saw a shadow hanging like a fat arrow stemming into the current. Mayflies skimmed in and out of the shadows of the bridge just above the surface. . . . The arrow increased without motion, then in a quick swirl the trout lipped a fly beneath the surfacεwith the sort of gigantic delicacy of an elephant picking up a peanut. .
The trout hungタdelicateand motionless among the waver‑
ing shadows. . . .
They've been trying to catch that trout for twenty‑五ve years. . . ・ 円 [Italics mineJ (p. 108)
ここでは, 生の力の symbolとして troutが登場しており, deathの symbolとしての shadowとの抗争が描かれている. このように生と死の 間にあって迷いながらも, 結高は彼は死の決心を固めてゆく圃 彼の中で deathがどういう位置を占めてゆくかについては,彼と shadowとの位置 関係に symbolicalに表現されている.
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1 turned my back to it, tramping my shadO'UJ into the dust. [Italics mineJ (p. 104)
The shadows on the road were as still as if they had been put there with a stencil, with slanting pencils of sunlight.
口
talicsmineJ (p. 111)1 slowed still more my shadow pacing 1IW, dragging its head through weeds that hid the fence. [Italics mineJ (p. 122) 1 climbed the gate into a wood‑lot and crossed it and came to another wall and followed that one, my shadoω behind me noω. [Italics mineJ (p. 122)
The wall well into the shadowフandthen my shadoω, 1 had tricked it ag.ω:n. [Italics mineJ (pp. 122‑3)
影を踏みつけてみたり,冷静に観察していたり,だましてやろうとした り,さまざまに彼は shadowへの働きかけをするのだが,所詮9 彼は影そ のものからのがれることはできない.影は悠然と,ぴったりと彼について 歩いている. この shadowの占めている位置は,彼の timeconsciousness
とほとんど一致していて,更にそれは deathconsciousnessとも通じてい る.その他, ship, schooner, boat, gull, streetcar等の動きと, それを見 る彼の反応に,時の経過と,それにともなって変わる彼の死の意識を見る ことができる.又, honeysuckleは彼の過剰な性意、識となって,時間意識 とからみあい,彼を obsessするものである.
以上 1m旦geとsymbolを中心lこして, Quentinの意識=time=death を追ってきたのだが,ここで,その timeそのものについて若干その推移 を追ってゆきたい. この sectionは, Quentinのはげしい timeobsession に始まり,父の言葉をいぶかり始め, watchを壊してから後は,彼の time obsessionは徐々に弱まり, 自殺決行の時を夜の九時二十数分と定めてか
らは,彼の timeobsessionは正午近くまでほとんどなくなっている. そ の間にあって彼の timeconsciousnessが異常に観念的なものであること を示す passageをとり出してみよう.
The Sound and the Furyの構成と技巧
But th己n1 suppose it takes at least one hour to lose time in, who has been longer than history getting into the me‑
chanical progression of it. (p. 97)
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このようにいわば彼は時の観念にとりつかれているノイローゼ患者のよう であるが,この過剰な時間意識は,極度に時間を意識するあまり時間その ものを生きる行為をお留守にしてしまっているのである.正午ごろにいた ってーたん披は timeを意識するのであるが,結果的に昼を告げるサイレ ンを聞かなかったように,このあたりでは彼は,時聞から,そして時間に 対する過剰な自己の意識から解放されている. この状態は一時の安らぎの ように与えられ,三人の少年達との出会い,イタリア少女との放浪の間ま で続いているB ζの間,彼には timeobsessionはないし,それが文章の 変化にも見受けられる.午前中の文章は,父の言葉や,その他さまざまな imageryが入り混じっていて, 散漫な不統ーなものだが, この聞のそれ は,統一的でゆったり流れている.しかしこれらの楽しい現実と回想のう ちにも,徐々に彼の無力感が敗北を示す事柄が混入してきて,彼を死の時 へと導いてゆく.
三人の少年達と, イタリア少女の挿話は Quentin自身の子供の頃の 楽しかった思い出 (cf.Damuddy scene), 妹 Caddyと二人での{幸せだ った想い出と overlapしてきて,それは更に Caddyとの心中ごっこ,
Dalton Ames, Herbertとのけんかへと導かれる. しかし注目すべきは,
これら全ての結末が,失敗や敗北であるということである.三人の少年達 は,突然大人っぽい功利的な言い争いを始めて彼をわれに返らせるし,イ タリア少女の事件ではその兄になぐられ,逮捕されて金までとられるとい う自に会うし,その後の Geraldとのけんかでもなぐられて血を流すとい う有様である.又, く意識の流れ〉の形で, これら現実的な事件の合い間 にあらわれてくる過去の想い出においても, 心中には失敗する Dalton Amesを弾ち殺そうとするができない, Herbertとの結婚は阻止できない
28 The Soltnd and the Furyの権成と技巧
等々自らの無力感を暴露することに終止する.この辺の筋立ては非常に ironicalなものがある.例えば,木に登った Caddyiこparallelに対置さ れているところの木に登った人物は,少女ではなくて少年であったし,イ タリア少女の場合は,妹思いのその兄になぐられる,即ち自分に自分がな じられるような設定がなされており, 次には Herbert,Dalton Amesと いった過去の人物と, Geraldという現実の人物とが同一視されてけんか に及び,その現実の男になぐられる といったふうにことごとく敗北の 憂き目に会う. とすると彼が死の直前に行き着4いたところの虚無的な状況 にも納得がゆくであろう.死の覚悟を決めた波も,さすがに死を目前にし ては多少の動揺を示すわけだが, この状態の夜lこは timeは も は や 授 を obsessずるものというよりは, 厳然としてそこにあり, 彼を包みこんで いるものであった. 結局彼は time=deathの中へ吸い込まれるように消 えていった.そしてζの deathの瞬間を決定的な stillpointとした,い わば彼の生がこの時点でとまったのである. これが,この第二部が死者の 視点で,彼の死に至る終路とその際までが描かれている理由だと思える.
3
第一部,第二部は以上のように imag巴と symbolがその中心的な技巧 となっているのだが,第三部,第四部はζれとはいささか趣きを異にして いる.第一部,第二部は上に述べた symbol,metaphorを中心l,こ く意、識 の流れ〉を併用し,複雑な文章構成がなされているのに対し,第三部,第 四部では比較的オーソドックスな手法になっている.これは
‑ i * i
可故であ ろうか,又,そうすることによって作者は何を達成しているのであろうか.それを視点の問題を中心としてテーマにからめて追ってゆきたい.
第四部は omniscientpoint of viewで描かれている. なぜ何者、は第四 部でこの視点をとり,その他の三部を通じて読者がっくりあげた各人物像 を壊そうとしたのだろうか.第一部,第二部は,それぞれし白痴と,観念の
The Sound and the Furyの構成と技巧 29 世界に溺れた青年の視点であるから当然, 一人称の narrator's point of vlewに, <意識の流れ〉の手法を組み合わぜたものである. これによっ て二つの sectionを通じて読者は,内側から Compson家の像を形づくる ことができる.一方,第三部は Jasonsectionと呼ばれ, これも一人称の narrator's point of viewをとっているが, 前者二人のように現実感を喪 失しているものたちとは異なっており,その故にく意識の流れ〉の手法を 必要としていない. <意識の流れ〉の手法は無意識又は溝在意識を,意識 の状態にまでひきあげて描くもの故,これを多用することは即ち,彼が無 意識や潜在意識に縛られている.その結果過去にひきょせられるという形 での現在感の喪失がある, ということを意味していると言えよう Jason sectionはむしろ,ぺ" . 円 1 says! の形式を幾度も使うことによって dramaticな様相をさえ呈している.通例第四部は Dilseysectionといわ れる.しかし VleW白pointは彼女にはない. これには作家がことさら与え た被女の位置との連関がある.彼女には「克己」とか「白己犠牲」の形容 がしばしば与えられているが, これこそ作家が到達した人生の確信であっ た. 第四部を omniscientに描くことによって Compson家の内部外部 の全体像を直銭に描き,その崩壊のさまと,彼女がそれを如何に支え,耐 え忍んだかを描き出そうとしたのだ. これが特に第四部が他の第三部とは 異なる技法,即ち視点をその主要な手段としている理由であり,必然的に 外面描写が多くなされている理由である.
Caddyは Benjyにとっても, Quentinにとっても, Jasonにとっても それぞれ抜きがたい関係を持っていながら,彼女には独自の sectionが与 えられていない.彼女は,この没落するCompson家にあって,唯一人く愛〉
をもっている人間であるが,そのく愛〉は Compson家の中においてはと うとう実を結んでいない.ぐ愛〉をもった人物で、ありながらも Compson家 の一人として彼女もかなり性的放縦という没落すべき資質を分けもってい る.これが彼女が出奔しなければならない理由である.没落するCompson
30 The Sound and the Furyの構成と技巧
家の一員であると同時にく愛〉をもっている人間のいわば運命であった.
又,一見でたらめにみえる四つの sectinの配列のうちにも, Caddyは着 実に年齢を加えているように,この作品において Caddyの演じている役 割は大きい.彼女は必要欠くべからざる confidanteである.
このような構成と技巧のうちに 1ちeSound and of the Furyという作 品は成り立っているのだが,この作品の lastsceneはテーマをしめくくっ ていて象徴的である.Compson家のさまざまな名誉を背負っていたCaddy も, Compsonの資質の故に出奔を余儀なくされ, Quentinはその資質と 敗北のために自殺をし,父も亡くなり, もはや Compson家は亡霊の住み 家となってしまった.そしてこれはそこにとりのζされた BenjyとJason の嘆きと怒りの物語である.即ちそれはく愛〉の不在を嘆き,叫び,秩序 の崩壊にうめく Benjyの soundと, 崩壊する秩序の重圧と, それを強 いている運命と, 更にはその運命に突進してゆこうとする内的な passion を持っている自分, (それは破滅に至る道なのだが,)に対する Jasonの furyに満ちたところの南部の一家族の崩壊の物語である.
注
1) Wi1liam Faulkner, The Sound and the Fury (Harmandsworth: Penguin Books, 1970), p. 19.以下の引用はすべて同版からとし,引用文の後に括孤で
もって頁数を示す. なお, Kenzaburo Ohashi, Introduction," The Sound
d河
,
dthe Fuヴ( EichoshaCommentary Booklet "; Tokyo: Eichosha,
1970) を参考に,場面の転換等を分析したことを一言しておく.2) Lawrance Thompson, Mirror Analogues in The Sound and the Fury,"
Faulkner; A Collection of Critical Essays, ed. Robert Penn Warren (Twentieth Century Views"; Englewood Cliffs: Prentice.Hall, Inc., 1966).第一部における mirror,第二部における shadowの分析に関してはこ の論文に詳しい言及がなされている.
3) rainがdeathsymbolとして扱われている他の代表的作品には, Hemingway のA Farewell to A門ns tJ:.どがある.
4) 子と父の葛藤を主題としたものをここでは指している.代表的なものには,
Arthur MillerのDeathof a Salesmanなどが掲げられるだろう.