72 Ⅲ 琉球人往来筋賑之図
1 全体図(1) ([上]鹿児島大学附属図書館蔵原本、 [下]鹿児島県立図書館蔵写本)
恵美須や
土橋 二葉町 新橋
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1
(1)
松坂屋
芝口一丁目
①
②
74 Ⅲ 琉球人往来筋賑之図
1 全体図(2) ([上]鹿児島大学附属図書館蔵原本、 [下]鹿児島県立図書館蔵写本)
琉球人參府年歷
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1
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幸橋見附
御大名御登城御下り(下城)
③
④
76 Ⅲ 琉球人往来筋賑之図
1 全体図(3) ([上]鹿児島大学附属図書館蔵原本、 [下]鹿児島県立図書館蔵写本)
下の御門
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1
(3)
表御門 上ノ御門 (宇和島藩上屋敷)
跋
⑤
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78 Ⅲ 琉球人往来筋賑之図
2 琉球人往来筋の賑わい(1)―1
巻 2 の末尾に、巻 3 には「 行きやう粧さう跡あとにぎハ振ひ」を描く とあり、使節行列通過中は道に立ち入れない見物客 が行列通過後に道に入ってきた様子に重ねて、江戸 の「店の有様」・「立商ひ抔の躰」を描いたものと思 われる。普段から賑わっている大通りと思われる が、この時はさらに人出が多いのだろう。また、そ れを当て込んで立売や振売、大道芸などが出て、普 段より賑わう様子が描かれていると思われる。この ような行列後の賑わいについて明示した史料は少な く、この絵巻の見所ともなっている。
場所は芝口一丁目、現在の新橋郵便局のあたりか ら始まる通りである。供を連れた武士や騎乗した武 士のほか多くの町人が見えている。大道芸も越後獅 子など獅子舞が 3 組あり、移動している様子や逆 立ちをして演じているところなど描き分けている。
女太夫と書かれた鳥追の二人組の姿もある。
常設の店と思われる袋物店、さかな店の他、屋台 の切り寿司、飴細工屋、菓子屋などが立売の屋台で 店を出している。焼芋を売っているのは木戸番小屋
であろう。木戸番は荒物屋を兼業し、冬は焼芋も 売った[林 1977、山本 2019]。道の中には子供向 けの玩具の蝶々と風車を振売りしている「こどもお もちゃうり」もいる。風車や蝶々のおもちゃは軽い ので両振りの天秤にしなくてもよさそうなものだ が、置いてすぐ商売が出来るところがよいのか屋台 式の天秤になっている。飴細工を筆頭に寿司や菓 子、魚、煙草入など色彩豊かに描き分けられ、街の 賑わいをいっそうひきたてる。
馬も騎乗と荷馬を描いているところに、事実を描 くというよりもバリエーションを豊かにすることに 意識が注がれていることを感じる。左手の騎乗用の 馬は頸が上がっているが、右手の駄載馬は頸は上 がっていない。俵を 3 俵積んでいる。引き馬には 無口頭絡を用い一本手綱が一般的である。
馬の毛色は、駄載馬は「黒鹿か 毛げ」、騎馬は「栗くり 毛げ」。「鹿毛」と「栗毛」はどちらも地の色は茶色だ が、「鹿毛」は長毛(たてがみと尾)と四肢の先が 濃くなり、最も濃いと黒くなっていて「黒鹿毛」と
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2
(1)― 1
よばれる(体の色も鹿毛よりは黒っぽい茶色)。た てがみは駄馬がたれているのに対して騎馬は立てて
ある。 (小島摩文)
a 琉球人往わう來らい町まち筋すじ見物坐ざ敷しきの趣おもむきハ初しよく巻わんニに/画ゑがきたれハ略これをりやくす之
此巻ニハ江戸市し中ちう店みせの有ありさま様/又ハ立たちあ□□商ひ抔などの躰を見セんため芝しバくち口壱丁目/新しん橋はしと松□つ坂□□屋横よこ町てうと幸さ□□い橋ばし迄を記す b 琉りう球きう人じん往わう來らい筋す□□□わひ賑の圖
a b
80 Ⅲ 琉球人往来筋賑之図
2 琉球人往来筋の賑わい(1)―2
1 木戸 2 武士
3 犬(白・赤・斑)
4 焼芋屋 5 薩摩芋
6 箱看板「○まる焼やき」 7 竈・薪
8 供
9 太鼓( 楔くさび太鼓)
10 越後獅子 11 獅子頭 12 猿股 13 二に八はち蕎麦屋 14 女太夫(鳥追)
15 笠 16 三味線 17 下駄 18 頰被り 19 馬ま子ご 20 手綱
21 炭出し馬(鹿か毛げ) 22 炭俵
23 きりすし(切寿司)
24 屋台 25 寿司 26 客 27 風呂敷包 28 杖 29 袋物店 30 煙草入 31 箱はこ迫せこ
32 子供持遊び売り 33 蝶(玩具)
34 風車 35 天秤屋台 36 飴細工屋 37 飴細工
38 騎乗武士(馬は栗毛)
39 尻しり繫がい 40 轡くつわ
41 えちご獅子 42 観客 43 足袋 44 逆立ちする 45 菓子屋
46 天幕(市松模様)
47 菓子 48 前髪奴 49 草履取り 50 さかな店 51 干し魚 52 獅子舞 53 獅子頭
54 太鼓(締しめ太鼓)
55 見物人 56 子をおぶう 57 面おも懸がい 58 胸むな懸がい 59 鐙あぶみ 60 障あ お り泥
c 此この木き戸どゟより芝しハ口ぐち壱丁目也 d 芝口弐丁目
e ○焼 f 越え□後□獅じ子ゝ g 二八 蕎麦 h 女太夫 i 炭出し馬 j きりすし k 袋ふくろ/物店□セ
l 子供持遊ひ/うり m 懐中煙艸入御望次第 n 飴あめ細さい工く
o ゑちご獅子 p 御菓子所
q 臺神樂/最初/獅子を 舞ふ
r さ/か/な/店ミセ 2
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82 Ⅲ 琉球人往来筋賑之図
3 琉球人往来筋の賑わい(2)
人々が路上の屋台店や大道芸を楽しんでいる。
「酒屋」には様々な銘柄の樽酒が見え、お客は角樽 に酒が注がれるのを待っている。店の前の大きなカ ゴには小売り用の貧乏徳利が積まれている。酒を振 売りする男は、天秤棒の後ろに大きな魚を引っ掛け てバランスをとっているが、魚に野良犬が興味を示 している。「弓師」の店は左から三店舗が連なって おり、一店目には完成・未完成の多数の弓が見え、
左端には弓に反りをつけるために百以上のクサビを
打ち込み接着する弓打ち作業が行われている。二店 目には弦が描かれる。三店目は戸を閉め、内部はわ からない。その隣の「水菓子屋」は棚の品がほとん ど売れてしまっているが、左端の樽には山盛りの果 物がある。
弓師の店の前では、赤い格子模様の天幕を張った 菓子屋が、天幕の色に合わせた赤色の菓子を売る。
菓子を細工する様子を眺める人だかりができてい る。道の中央でも、大道芸が多くの人を集めてい
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(2)
る。男二人の囃子方がおり、笛や太鼓で賑やかに音 楽を奏でている。右側の芸人(男装の女性か)は拍 子に合わせて、片方に玉の付いた棒・大小の赤い鞠 四つ、そして鎌を巧みに操るお手玉を行っている。
鎌や棒、鞠を使ったこの技は、元禄 3 年(1690)
の『人倫訓蒙図彙』にも「文あや織おり」として載り、「二 ツ三ツ四ツの竹をもつて、上下にあげおろす手品を いふ也」と記されている[朝倉 1990:284]。同書 は、機はた織おり機の脚使いと動作が似ているので、この
名が付いたとしている。隣で水芸をする男は、上部 に水を入れた碗が付いた棒を、紐で左右に繰り返し 回す。碗には穴が空いており、回転の勢いで水が放 射状に噴射している。この芸も囃子方の音曲と上手 く合っているのだろう。
この界隈には子供や女性は描かれず、露店や大道 芸を見物しているのは男性の町人が多い。町人たち と対照的に、武士たちは露店や大道芸には目もくれ ずに道の端を歩んでいる。 (富澤達三)
1 瓦庇 2 酒樽 3 「戎」標記 4 「男山」標記 5 「金◆ひし」標記 6 「剣菱」標章 7 角つの樽だる 8 貧乏徳利 9 武士 10 挨拶する 11 二本差 12 犬(赤)
13 酒売り 14 天秤棒 15 干物の魚 16 犬(黒)
17 弓師(弓工)
18 弓 19 弓打ち 20 細工菓子屋 21 天幕(市松模様)
22 見物する 23 轅 24 息継
25 駕籠舁(六尺)
26 駕籠
27 山岡頭巾 28 弓の弦 29 球付きの棒 30 鞠
31 あやとり(お手玉)
32 鎌 33 水芸 34 大道芸人 35 囃子方 36 撥
37 太鼓(締しめ太鼓)
38 縦笛
39 水菓子屋(果物屋)
40 果物 41 樽 42 股引
a 酒さか屋や b 酒買 c 弓師 d 菓子/うり e 早はや駕かご
f 䑓神樂/あやとり g 同取茶碗水藝 h はやし方 i 水菓子や 1
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84 Ⅲ 琉球人往来筋賑之図
4 琉球人往来筋の賑わい(3)
「にしき絵店」の店内は、掛軸 2 本と一枚ものの 絵が掛けられ、巻物が並び、店先に腰掛けた人物と 紋もん
付つき
姿の町人が語らうように描かれている。道路に 入る「豕」(ぶた)は、おそらく食用であろう。江 戸では、「元禄 - 享保期(1688-1736 年)には、肉 食についての記事がほとんど見受けられず、宝暦 - 天明期(1751-89 年)から化政期(1804-30 年)に 目立ちはじめ、さらに天保期(1830-44 年)頃か ら、獣肉店に関する記述が多くなる」という[原田 2003]。中国福建の食文化の影響を受けた琉球では 豚肉食が普及しており、薩さつ摩ま藩でもその影響を受け て豚肉食が行われていた。薩摩藩邸の発掘調査では
大量の豚、イノシシの骨が発見されている[港区立 港郷土資料館 2002]。道路の中ほどには、日本髪を 結った女性 2 人、一方は下げ駄た、一方は草ぞ う り履を履い ており、前まえ髪がみやっこ奴の髪型の子供がいる。また、白い 後ろ鉢はち巻まきで裸は だ し足の荷を背に負った町人もいる。
「飼鳥屋」の店先には多くの鳥籠が並び、鳥籠の 中には鳥が描かれたものもある。鳥の飼育は当時の 大名や町民に広く行われていた趣味で、江戸時代に は養よう禽きん書しょという鳥の飼い方指南の書物が数多く出版 された。『諸問屋名前帳』によれば、飼鳥屋は幕末 には江戸に 40 余軒もあったという。店先には、紋 付姿の武士が鳥籠を見ており、足元には雄おん鶏どりと
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(3)
「 鶩あひる」が描かれている。通りの向こうに当たる側
(絵図手前)には、茶色の紋付を着た武士が描か れ、また、紺地に「壽し」と白く染め抜いた寿司屋 の旗「切ずしかんばん」が描かれている。「切ずし」
は押し寿司を指すのであろう。 「青物店」の店先に は土間に「冬とう瓜がん」「蕪かぶ」「牛ご ぼ う蒡」「大根」「芹せり」「長か ぶ」が並び、赤いのは京人参(金時ニンジン)であ ろう。「金物屋」の店先には、鋸のこぎり、和わばさみ鋏、鉋かんな、やっ とこ、唐からばさみ鋏、鑿のみがならんでおり、店先には、前髪 奴という髪型の子供、紋付姿の町人が描かれてい る。通りの向こう側(絵図手前)には、風の方向を 示す「風印」が描かれている。 (高津孝)
1 錦絵屋 2 掛軸 3 巻物
4 町人(腰掛ける)
5 町人(紋付姿)
6 豚 7 後ろ鉢巻 8 荷を背負う 9 婦人 10 草履 11 下駄
12 子供(前髪奴)
13 飼と り鳥屋 14 鳥籠
15 武士(黒紋付姿)
16 雄鶏 17 鶩
18 武士(紋付姿)
19 二本差
20 看板「切寿司」
21 青物店 22 金物屋 23 振り返る 24 風印 25 軒瓦 26 午房 27 蕪 28 冬瓜 29 京人参
30 大根 31 芹 32 長かぶ 33 不明 34 唐鋏 35 鑿 36 鉋 37 やっとこ 38 鋸 39 和鋏 40 大鋸?
a □(に?)/□(し?)
/き/繪/店□セ b 豕ぶた
c 飼と り鳥/屋 d 鶩あひる
e 切ずしかんばん f 青あを物もの/店だな g 金物/屋 h 風かざしるし印 i 午房 j 蕪 k 冬瓜 l 芹 m 長かふ n 大根
o □□(蓮根?)
部分 2
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86 Ⅲ 琉球人往来筋賑之図
5 琉球人往来筋の賑わい(4)
ゑびす屋は、江戸尾張町に存在した呉服店。大坂 で開業し、幼なじみだった吉宗が将軍になると江戸 に進出したという。「江戸名所図会」(本書Ⅳ-5)
にも描かれる。商標のような画像は、鯛をかかえた 恵比須像。のち松坂屋に買収される。図中にも書か れるが、尾張町の店を芝口に書いているのだが、そ
の理由は未詳。人通りの多いところを牛がひく大八 車が行く。牛も大きいが、車輪も人の身の丈ほどあ る。米俵を積むか。大八車は、江戸の明暦大火のの ちに発明され、元禄年間には事故を懸念して過積載 を禁じられているが、ここでは過積載のようにみえ る。「人足」は草鞋をなおしているようだが、腰を 1 恵比須像
2 反物 3 牛ぎっ車しゃ 4 牛飼い 5 大八車 6 軛くびき 7 轅
8 輪(車輪)
9 輻や 10 轂こしき 11 轄かつ 12 軸 13 鴟とびの尾お 14 米俵?
15 町人 16 屋台
17 天幕(市松模様)
18 南なん京きん玉たますだれ簾 19 大道芸人 20 見物人 21 看板「紅屋」
a 恵美須や/尾張なれ/とも/店の様子/此所へ画
/く b 牛うし/ 車くるま c 人足
d 紅へに屋やかんばん
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曲げるが、しゃがまない。赤い布を看板とする「紅 屋」は、紅・白粉などを売る化粧品屋。屋台は、販 売品目や商標などが記されていない。蕎麦売りの代 表的なタイプには、前後の荷箱の上まで覆った屋根 に市松模様がつけられていることが多いといわれ る。ただ、別のところにも市松模様の屋根の屋台も
あるが、すべて蕎麦売りか未詳。大道芸の南なん京きん玉たま
すだれ簾
は、長く伸ばしていて、これを「浦島太郎の魚
釣竿」という。 (得能壽美)
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