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多細胞時代の光技術

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Academic year: 2021

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光で細胞のはたらきを見る・操る 

巻頭言

多細胞時代の光技術

松 田 道 行

(京都大学)

 シングルセル解析が盛んである.なぜシングルセル解析かというと,組織における細胞間の 多様性や細胞間コミュニケーションの研究のためには,単一細胞レベルの解析が必要だからで ある.逆説的な言い方になるが,シングルセル解析とは多細胞研究のための手段である.そし て,いまさらシングルセル解析と恰好をつける必要もない,元祖シングルセル解析が光学顕微 鏡イメージングである.このイメージングの分野では次々に画期的な発明が相次ぎ,緑色蛍光 タンパク質,超解像顕微鏡,そしてクライオ顕微鏡など,ノーベル賞へと繋がった.そして,

遠くない未来には光遺伝学に対しノーベル賞が授与されるだろう.このタイミングで本特集を 組むことはまさしく時宜にかなったものである(井上の解説を参照).

 本特集では,個々の細胞を光で観察し,光で操作するさまざまな技術を紹介する.佐藤が紹 介するゲノム編集技術は,近年進歩の著しいゲノム編集技術と光遺伝学のツールを組み合わせ て,光でゲノムを編集するものである.発生過程における細胞系譜の研究や,組織幹細胞研究 への発展が期待される.一方,光技術のひとつの弱点として,組織透過性が低いことがあげら れる.これを克服する手段として,長波長化が進められている.青木らはフィトクロム

B

を用 いた近赤外反応性タンパク質を用いることにより,これを達成した.これにより,三次元培養 組織やマウスなどにおいて,より深い場所で,狙った細胞を光で操作することが可能となり,

個々の細胞が周囲の細胞に与える影響をより詳細に解析できるようになると期待される.ま た,近赤外光を使うイメージング法としては多光子励起顕微鏡法があるが,村越らが紹介する 多光子励起法顕微鏡を使った蛍光寿命測定による分子活性測定法の開発も期待される.最後 に,近年の生物分野における光技術のブレークスルーのひとつとしては,発光基質の異種細胞 における生合成や,蛍光タンパク質との融合による量子効率の高い発光タンパク質の発明があ げられるであろう(永井らの解説を参照).これらの技術も,組織や個体における個々の細胞の 役割を明らかにするのに大きな威力を発揮すると期待される.

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