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生命科学科におけるモノづくり事業の展開

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Academic year: 2022

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(1)

生命科学科におけるモノづくり事業の展開

生命科学科 南 武 志 ・ 田 村 和 朗

1 はじめに

あり,どのような方向性を目指すべきであろうか.そこで 生命科学科1年

,

2年

,

3年生を対象に入学前と入学後の生 命科学科の印象や興味分野などをアンケート調査し,生命 科学科での「モノづくり」を遂行するための基本情報を得 ることから始めた.Fig. 1に入学前と現在における興味分 野を示す.各学年とも“遺伝および遺伝子”,“細胞”,“生 命全般”に入学前も現在も興味を示しているが,在学中に

“細胞”と“環境”に興味を示す学生が増えている.

「モノづくり」という言葉を聞くと技術者を養成すると いうイメージがあるが,生命科学科の学生にとって在学中 の4年間で一般的な技術者に育ちたいという希望は中々 見えてこず,ピンとこない分野である.また,教員にとっ ても一般的な技術者養成学科ではないとの意識がある.で は,生命科学科の学生にとっての「モノづくり」とは何で

遺伝および遺 伝子 33%

細胞 5%

生命全般 42%

環境 6%

化学 5%

その 9%

入学前に学びたいと考えていたこと (1年生)

遺伝および 遺伝子

28%

細胞 17%

生命全般 38%

環境

5% 化学

8%

その他 4%

現在の興味(1年生)

遺伝および 遺伝子

29%

細胞 10%

生命全般 45%

環境 5%

化学 4%

その他 7%

入学前に学びたいと考えていたこと (2年生)

遺伝およ び遺伝子 18%

細胞 18%

生命全般 42%

環境 12%

化学 5%

その他 5%

現在の興味(2年生)

遺伝およ び遺伝子 29%

細胞 12%

生命全 般 40%

環境 7%

化学 6%

その 他 6%

入 学 前に何を学びたいと考えていたか

(3年 生)

遺伝およ び遺伝子 21%

細胞 18%

生命全般 34%

環境 15%

化学 5%

その他 7%

現在の興味(3年生)

Fig. 1 入学前と現在における生命科学科学生の興味分野

(2)

つぎに就職希望先について,入学前と現在で比較してみ たところ,Fig. 2に示すように“製薬関係”,“食品関係”,

“化粧品関係”の3分野が学年に関わらず人気であった.

あえていうなら,食品関係に就職を希望する学生が学年が 上がるに従い増加傾向にあるといえる.これらの分野の企 業に就職することを考えて入学し,その思いをずっと持ち 続けていると考えられる.

そこで,どのような職種を希望するのかをアンケートし たところ,

Fig. 3

に示すように入学前は研究者を希望する 学生が多かった.これに対し,学年があがるにつれ研究職 を希望する学生の割合が低下した.また,営業職を希望す る学生が増加した.これは先輩たちの意見を聞き,また大 学院まで進学しなければ研究職に就きにくいという現実 がわかってきたためと思われる.しかしながら,技術職を 希望する学生は学年を問わずほぼ3割を占めていた.

以上のアンケート調査で,生命科学科の学生は製薬関係,

食品関係,化粧品関係の企業で技術系の職種に就職を希望 する学生が多いことがわかった.この結果は生命科学科の 学生にとっても「モノづくり」は重要なテーマであること を示している.しかしながら,遺伝,細胞,環境をテーマ にしてモノづくりを推進することは生命科学科の学生や 教員にとってピンとこないテーマである.では生命科学科 におけるモノづくりとは何であり,何を提示しなければな らないだろうか.それを考えると,1つはベンチャー企業 であり,もう一つは「ヒトづくり」があるのではないかと の考えに至った.バイオベンチャーはバイオテクノロジー の技術を生かして新薬の開発や遺伝子治療,新規診断手法 の開発などに関わっているベンチャー企業であり,大学や 企業で研究に携わっている人が先端技術を実用化するた めに設立する場合が多い((財)バイオインダストリ協会). しかしながら,高い開発コストと製品化にかかる時間と成 功の確率が低いことなど,ハードルが高いことも事実であ

製薬関係 35%

食品関係 28%

化粧品関係 15%

大学等の 教育関係

13% その他

9%

就職について(入学前)(1年生)

製薬関係 26%

食品関係 26%

化粧品関係 20%

大学等の 教育関係 15%

その他 13%

現在の就職希望先(1 年生)

製薬関係 42%

食品関係 24%

化粧品関係 16%

大学等の 教育関係

8% その他

10%

就職について(入学前) (2 年生)

製薬関係 30%

食品関係 32%

化粧品関係 17%

大学等の 教育関係 6%

その他 15%

現在の就職希望先 (2 年生)

製薬関係 33%

食品関係 28%

化粧品関係 16%

大学等の教育 関係 11%

その他 12%

就職について(入学前)(3年生)

製薬関係 19%

食品関係 38%

化粧品関係 16%

大学等の教育 関係

9%

その他 18%

現在の就職希望先(3 年生)

Fig. 2 入学前と現在における就職希望先の比較

(3)

技術職 17%

研究職 57%

営業職 12%

教育職 12%

その他 2%

希望職種(入学前)(1年生)

技術職 26%

研究職 40%

営業職 15%

教育職 14%

その他 5%

現在の希望職種 (1年生)

技術職 38%

研究職 39%

営業職 10%

教育職 7%

その他 6%

希望職種(入学前) (2 年生)

技術職 39%

研究職 32%

営業職 15%

教育職 5%

その他 9%

現在の希望職種 (2年生)

技術職 25%

研究職 50%

営業職 10%

教育職 8%

その他 7%

希望職種(入学前)(3年生)

技術職 31%

研究職 28%

営業職 20%

教育職

9% その他

12%

現在の希望職種 (3年生)

Fig. 3 入学前と現在における希望職種の比較

る.このままでは,ベンチャー設立を考える学生は少なく なる一方である.そこで,成功しているバイオベンチャー 企業関係者を招き,いかにして成功に導いてきたかを講演 してもらうこととした.また,製薬企業の技術者を招き企 業における技術者のスタンスを講演してもらい,技術者を 希望する学生の意欲を高めたいと考えた.最後にヒトを扱 う分野では個人情報を保護することが最重要であること から,この分野の最近の考え方を講演してもらった.以上 のことを通じて,学生たちが生命科学分野における「モノ づくり」を考えてくれたら幸いである.

2 バイオベンチャー企業の講演から

2.1 ジェンザイム・ジャパン株式会社

稀少疾患に苦しんでいる人たちがいるが,製薬会社はマ ーケットのパイが小さいことを理由に治療薬の開発を見 送る場合が多い.しかし,ジェンザイム社は先天的にグル

コセレブロシダーゼ遺伝子が欠損しているゴーシェ病治 療薬の開発に成功し,世界的に急速な成長を成し遂げてい る企業である.企業発展のコンセプトは,疾病の重症度と 有効な治療法の有無を重視し,患者一人当たりの価格を高 く設定したことにあり,他の治療法がなく必要性が高いこ とがあげられる.このジェンザイム社の考え方およびベン チャー企業で働く人たちの考え方について,ジェンザイ ム・ジャパン社の鈴木七重氏に講演していただいた.講演 後に行った5段階のアンケート調査によるとバイオベン チャー企業に興味を持った,あるいは企業業務が理解でき たとの評価が高く,一応の目的を達することができたと考 える.

2.2 株式会社バイオマーカーサイエンス

バイオマーカーサイエンス社は,予防医学分野のベンチ ャー企業であり,大学医学部教授のアイデアを基にして生 活習慣病の予防・診断・治療を目的に設立された産学連携

(4)

事業を行っている会社である.予防医学分野でアンチエー ジングドック,酸化ストレスドックの導入で疾病予防に努 めている事業と,糖尿病,動脈硬化症,皮膚老化症,糖尿 病性腎症などの疾病発症マーカーを開発し,さらにC型肝 炎治療効果予測マーカーや潰瘍性大腸炎診断マーカーな どの診断マーカーを開発応用している事業の2つの事業 を展開している.内田景博社長に来ていただきベンチャー ビジネスが成功するための秘訣について,実例をあげなが ら講演してもらった.

5段階評価では,少々難しい内容の部分が理解しにくい ところがあったのではないかという印象を受けた.しかし,

自由記入のコメント欄では「これから先実力をつければな らないと思ったが、もっと貪欲にいどまなければならない と思った」というような意欲的に取り組んでいこうとする 姿勢が多く見られたことはよかったと考えている.さらに,

今後も企業人の話を聞きたいと評価した学生がほとんど であることも本取組みが学生に正しく評価されていると 受け取っている.

2.3 株式会社ファルコバイオシステムズ

臨床検査会社であるファルコバイオシステムズは乳が んのマーカー遺伝子を取り扱っている.この遺伝子に変異 があれば発症リスクが高く,乳がんの早期発見に用いられ ている.乳がん,家族性大腸がんに関係する遺伝子異常の 話から同じ薬剤を投与されても代謝酵素の働きによって 強い作用が出る人と弱い作用が出る人がおり,代謝酵素の 遺伝子検査が重要となってくるとの横山士郎氏の話に学 生たちは興味を示した.さらに,このような遺伝子検査が 企業の特色として存在することに関心をもってくれた.

2.4 株式会社エスアールエル

いままで述べてきた企業は人のサンプルを用いること が多く,個人情報の取り扱いを慎重に行わなければならな い.そこで,遺伝情報などの個人情報に詳しいエスアール エルの堤 正好氏に講演をお願いした.遺伝子解析を行っ ている企業がいかに遺伝情報などの個人情報の保護に神 経質なまでに取り扱わなければならないかを丁寧に解説 していただき,学生たちも遺伝情報というのは個人の情報 だけでなく,家族の情報でもあり,また先祖の情報である ことから,慎重に大切に扱わなければならないことが理解 できたようである.

3 卒業研究ゼミナールと卒業研究を通した モノづくり

学生の約2割が興味を持っていた遺伝子分野について,

分析および解析テクニックを学ばせることから遺伝子分 野への興味をさらに高めることを目的とした.プライマー 情報,RNA・DNAの抽出・精製,cDN

A

の作成,リ アルタイムPCR,アガロース電気泳動,DNAシークエ ンサーを用いた塩基配列の解析,SNPsなどを順次学び,

技術の習得をおこなった.遺伝子関係の分析はキットを用 いることが多く,高価な試薬がほとんどである.しかも,

用いるほぼ全ての試薬量は数

μ

Lであり,完成度の高い技 術が要求される.試行錯誤した最初の年から本プロジェク トのお陰で毎年多数の希望者が集まり,卒業研究発表を行 い,卒業論文を書いて巣立っていく学生を育てることがで きた.また,就職先も希望した食品企業や製薬企業などに 決まり,今後の活躍が楽しみである.

4 まとめ

生命科学科で「モノづくり」技術者を養成するというこ とに最初はピンとこなかったことは事実である.しかし, ここにあげたように「モノづくり」は単なる技術者養成で はなく,「ヒトづくり」を行い将来の糧にしてもらうこと が生命科学科に取って重要ではないかと考え,企業関係者 の講演を柱に計画を実行していった.学生アンケートにあ るように生命科学科に期待する内容は多岐にわたり,学生 をまとめる先生方の苦労は大変である.しかし,生命科学 科の学生に満足度を調査したところ,

Fig. 4

に示す結果が 得られた.学年が上がるにつれ満足度が高くなっており,

これは教員一同の努力のたまものと考えている.その上で 本プロジェクトが成り立っており,全教員に感謝するとと もに本プロジェクトが根付くことを祈っている.

期待通り 6%

まあまあ 期待通り 22%

普通 55%

少し 期待はずれ

15%

期待はずれ 2%

生命科学科の印象

(1

年生)

期待通り 1%

まあまあ 期待通り 25%

普通 50%

少し 期待はずれ

19%

期待はずれ 5%

生命科学科の印象

(2年生)

期待通り 8%

まあまあ期待 通り 45%

普通 30%

少し期待外れ 12%

期待外れ 5%

生命科学科の印象

(3年生)

Fig. 4 各学年における生命科学科の満足度

参照

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