363
フレー・パーティーの嗜好検査とその解析
二一
召・甲目ド イ部口 岡谷
は じ め に
本来,食品の具備すべき条件として,①安全性,②栄養性,③嗜好性,④貯 蔵性,⑤便宜性,⑥経済性及び⑦健康駐が考えられるであろう。飽食の時代と いわれる現在においては,嗜好性,便宜性,健康性が特に重要視されているよ うに思われる。更には 遊び心 がもてはやされ,ファッション性の欲求が強 くなっているQ
最近の食品業界のヒット商品として烏龍茶をあげることができよう。その販 売実績は57年の1,500万本が,58年には4倍の6, OOO万本,59年には更に3倍の
1億8,00Q万本となり,本年は3億本の売上げが見込まれている。
缶入り鳥龍茶をはじめて市場に出したのは,伊藤園で56年2月のことであっ たが,その後,酒類,飲料,製茶,乳業,総合食品,農協連合会など多種のメ ーカーが参入し,その数は60社に及ぶとみられている。
烏龍茶のヒットの最大要因は,最近のヘルシー志向の消費者ニーズによく適 合したからであるといえよう。鳥龍茶を飲めばやせることができる,したがっ て成人病の予防になる,あるいは美容によい,コレステロール値を低下させる,
高血圧,便秘,二日酔いにもよいとの理由で消費されている状況にあるが,昨 今流行の 健康食品 同様ほとんど科学的論拠を有していないともいわれてい
る。
しかし,最近,茶葉カテキソ中の主要成分であるエピガロヵテキンガレート うの抗変異原作用が認識され,更に,茶葉カテキソの血中コレステロール濃度低
364 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号)
2)
下作用がラットを用いての動物実験で証明され,学界報告がなされるなど若干 の実効性が期待でぎるようになった。
前述のように,ひとり半発酵茶である烏龍茶は,健康志向の消費者ニーズに より需要は急伸したが,非発酵茶である緑茶及び発酵茶の紅茶の消費は,烏龍 茶同様の効果があるものの数年来横ばいの状況にある。そこで紅茶業界では,
総需要を引き上げるため,ファッション性に注目し,紅茶に着香するタイプの フレー一く 一一ティーを開発した。さきに岡部は,フレーバーティーの別のタイプ,
すなわち,セイロン,ダージリン,アッサムなど一般に良く知られた紅茶品種 の中から特に芳香に富んだものをパックした商品について,本学学生を対象に 3)
嗜好検査を実施したが,今回は,紅茶に着香したファッション性志向のフレー バーティーについての嗜好検査を実施し,その結果のコンピュータによる統計 処理は谷口が行い,その解析については筆者らが討論して行った。
1.フレーバーティー8銘柄による嗜好検査 (1)検査方法
茶審査用茶碗を窓際に準備し,各種フレーバーティー(商品名は,日東フレ
_パリーティー:①MELON②APRICOT ③STRAWBERRY④PEACH ⑤LEMON ⑥BLUEBERRY ⑦APPLE ⑧EARL GREYの8種のティ
ーバッグを,精製水を沸騰させ,各1ぎ0磁を茶審査用茶碗に入れ,正確に1分 放置後に,その中に入れ軽く振った後,直ちに引き上げた。
②評価方法
嗜好検査の対象は,その芳香で,最初に,.好ましいを5,やや好ましを4,
普通を3,やや好ましくないを2,好ましくないを1とする5段階評価(以後 絶対評価という)を行い,その後に先の絶対評価を基礎に同段階のものをくら べ,より好ましいものを判定し,その結果,最も好ましいものを1とし,以下 順位を付し,最も好ましくないものを8とする相対順位評価を行った。なお,
この場合,同段階のものを比較しても好みの差を判定し得なかったものについ ては同順位とした。最後に,紅茶に賦与された香りの種類を推定させた。バネ
フレーバーティーの嗜好検査とその解析 365 ラーは,滋賀大学経済学部学生158人(男子145人,女子13人),滋賀大学経済 短期大学部学生42人(男子36人,女子6人)の計200人である。嗜好検査は,
1983年10月に実施した。
2. フレーバーティーの統計分栃 (1)フレーバーティーの分類
パネラー 200人の統計分析をするに当たり筆者らの見解を述べるならば,フ レー一・9一ティーを次の3つの観点から分類できる。
1.フレーバーティーの香りが強いか弱いか。
2. フレーバーティーから果実の匂いを感じ得るか。
3. フレーバーティーの香りから飲みたいと感じるか。
1の観点では,LEMONは,ほとんど匂いを感じず,むしろ紅茶そのもの の香りがする。(本調査では紅茶の香りと答えた者は,31.5%uc達する。)しか し,その他のフレーバーティーでは紅茶の香りそのものよりも,賦与されたフ レーバーの方が強く感じられた。
2の観点では,STRAWBERRY, APPLE, APRICOT, MELON, PEACH
は,果実それぞれの香りと甘みが感じられたが,EARL GREY, BLUEBERRY は刺激的な個性ある香りであった。3の観点では,香りが強く,また果実の香りを感じる2の分類に属するもの を飲んでみたいと感じた。分類としては2と共通性があり,これに癖のない
LEMONが加わる。
(2)フレ・一・ ■〈・一ティーの絶対評価の分布と平均値
注)
各フレーバーティーに対する絶対評価の分布及び平均を比較すると,各フレ ーバーティーの分布は,tab.2.1, fig・2−1〜2−8のようになり,APRICOT,
STRAWBERRY, APPLEは,評価点の高い側へ偏った分布を示し,逆に,
PEACH, EARL GREY, BLUEBERRYは,評価点の低い側へ偏っている。
注) 度数分布の作成及び次節の因子分析,クラスター分析プログラムは,参考4のシス テムに谷口が開発したパーソナルデータベース管理システムを組み入れて使用した。
366 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号)
tab.2.1 8種のフレーバーティーの絶対評価
呵…v・・の纐1・
4 3 2 i 1 eMEANI s. D.12345678 MELON
APRICOT STRAWBERRY PEACH LEMON BLUEBERRY APPLE
EARL GREY5. 00
8.00 12.00
6. 50 ユ1.50 1. 50 14. 00 9. 00
28. 50 39. 00 37. 00 19. 50 21.50 6.00 31. 00 19.00
34. 00 30. 50 27. 00 30. 50 42. 50 ユ8.00 33.00 38. 50
26. 00 19. 00 15. 50 29. 00 20. 50 34. 50 20. 00 26. 00
6. 50
3,50
8. 50 14. 50 4. 00
40.00 2.00
7. 50
2. 995 3. 290 3. 285 2. 745 3.160 1. 945 3. 350 2.960
1. 00248 0. 97701
1.12418 1.12249 1.00717
0. 97569
1.01366 1.05281
注二段階評価の数値はそれぞれ%を示す。
一方,LEMON及びMELONは,正規分布に近い形状を示しているが, LEM・
ONの方が尖度が大で, MELONは尖度が小である分布であった。
また,各フレーバーの絶対評価の平均値は,tab. 2.1の右欄のようであり,
APPLEの3.350が最高で,以下APRICOT, STRAWBERRY, LEMON,
MELONの順であった。これらの結果は,筆者らが先に観点2で果実的な甘み として取り上げたものと一致し,好みの度合と果実的な芳香とは強い関連があ るようである。一方,BLUEBERRYは,1.945と最低値を示した。 EARL
GREYやPEACHは,標準偏差からもわかるように好みのばらつきが大き
く,2.960,2,745という平均値以下の評価結果であった。
(3) フレーバーティーの相対順位評価の分布と平均値
次に,フレー・9 一ティーの相対順位評価の分布及び平均値をtab.2.2, fig.
2−9〜2−16に示し比較すると,絶対評価と同様にSTRAWBERRY, APPLE,
APRICOTは順位の高い側へ偏っている。逆に, PEACH, EARL GREYは,
低い側寄りの分布である。好き嫌いのはっきりしている分布としてLEMON とBLUEBERRYがあげられる。 LEMONは, fig.2−13の如く1位に他の どのフレーバーティーよりも多く分布し,2位から8位が正規分布し,一方 BLUEBERRYは, fig.2−14の如く絶対評価の分布よりも更に顕著に最下位 に集中する分布となり不評は免れない結果となった。
フレー・ミーティーの嗜好検査とその解析 367
fig.2−1 MELON fig.2−2 APRICOT
fig.2−3 STRAWBERRY fig.2−4 PEACH
fig,2−s LEiMON fig.2−6 BLUEBERRY
fig.2−7 APPLE fig.2−s EARL GREY
注)グラフは,左側が好ましくない1,右側が好ましい5となっている。
368 松尾博教授退官記念論文集(第234935号)
一 τ
fig.2−9 MELON fig. 2−10 APRICOT
\
fig. 2−11 STRAWBERRY fig, 2−12 PEACH
fig. 2−13 LEMON fig. 2 一14 BLUEBERRY
⊥
fig 2一一15 APPLE fig 2一 IG EARL GRE¥
注)グラフは,左側が最も好しい1,右側が好ましくない8となっている。
フレーバーティーの嗜好検査とその解析 369 tab.2.2 8種のフレーバーティーの相対順位
Ne.
12345678
flavorの種類 1MELON
APRICOT
2 i 3
STRAWBERRY PEACH LEMON BLUEBERRY APPLE
EARL GREY7. 501 14. 50 17. 501 17. 50 18.00t 24.00 8.00112.00 19.001 5.50 3.001 2.50 18.00]12.00
10. 001 12. 50 E
14. 50 17. 50 12.50
10. 00 12. 00 2. 00 20. 00 10. 00
4
19. 00 14. 00 8. 00 13. 00 14. oe 6. 50 16. 00
!3. 00
5 1 6
11. 001 12. 50 11. 001 11. 50 14. 001 11. 00 11. 501 16. 50 18.eOI 11.50 10. 501 11. 00
!3.501 9.00 8. 501 18. 50 F
7
12.50
8, 50 7. 50
16.00 13.Oe 15. 00 6. 50
19.50 8
8.50
2, 50
5.00
13, OO
7,00 49. 50 5. 00
8.00
MEAN 43344634 46682576 14468939 55050505
S. D.
2. 07913 2.01469 2. 15184 2. 20154 2.21396 1.86306 2.02660 2. 21855
注:各順位における数値は%で示したものである。
平均順位からみると,STRAWBERRY, APRICOT, APPLE, LEMON,
MELONが平均値以上となり, EARL GREY, PEACH, BLUEBERRYと
順位が下がる。
(4)各フレーバーティー間の相関
分布に基づく分析は前述のとおりであるが,各フV一パーティー問の関係を 絶対評価及び相対順位評価データの相関係数(ピアソン積率法)から求めると tab.2.3, tab.2.4のとおりである。両表とも相関係数が小さいが, tab.2.3か
らLEMON, BLUEBERRY, EARL GREYに負の相関係数が多く,他はそ
れぞれ弱い正の相関を示していることがわかる。また,tab.2.4では,やはり LEMON, BLUEBERRY, EARL GREYは係数が大きく,他と異なっている ことを示している。この他,MELON, APPLEは, PEACHとやや負の相関.tab.2.3絶対評価によるフレーバーティー間の相関行列
(Z)MELON
@APRICOT
@STRAWBERRY
@PEACH
@LEMON
@BLUEBERRY
@APPLE
(il)APRI@STRAW@PEA (S)LEM @BLUE @APP@EARL
COT BERRY CH ON BERRY LE GREY
O.06270 O.11662 O.01664 一〇.07349 一〇.OOO28 O.15426 一〇.07125 0.13861 O.13!17 一〇.12328 O.09534 O,!8011 一〇.08102 0.20024 一〇.16392 一〇.01762 O.11869 O.08568 −O.13640 O.!0!33 一〇.OOO66 O.06330 −O.!0807 一〇.09403 一〇.08827 0.05991 O.07574 −O. 07590
370 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号)
tab.2.4相対1頂位評価たよるフレーバーティーの相関行列
@APRI@STRAW@PEA @LEM @BLUE @APP (g)EARL
COT BERRY CH ON BERRY LE GREY
@MELON
@APRICOT
@STRAWBERRY
@PEACH
@LEMON
@BLUEBERRY
@APPLE
一〇.09255 一〇.04260 一〇.27833 一〇.19795 一〇.13603 一〇,03749 一〇.16009 −0.ユ2751−0.08295 −O.17949 −0.11690 −O.04062 −0,28822 −O.00709 一〇.26746 一〇.22095 一〇.16446 一〇.21257 −O.19433 −0.12792 −0.20541 −0ユ4561 −O.09858 −0.ユ1576 0.02553 −O,10842 一〇.05287 −O.23295 を示していることがわかる。
しかし,相関係数が小さいこと,更に,C,= 28とおりもの相関係数から各フ レーバーティー間の関連を見出すことの困難さから,これ以上の分析は手作業 では難しい。そこで多変量解析法の中の因子分析法により,フレーバーティー 間の関係を少数個の潜在因子で説明し,200人のパネラーが評価の際に感じた 嗜好の評価因子を求め,筆者らの見解を統計的に検証してみたい。
㈲ 因子分析による評価因子の抽出
因子分析ではブ種のフレーバーティー(変量)に対するパネラーiの絶対評 価の標準化データZ方を仮説的な共通因子スコア,特殊因子スコア及び誤差因 子スコアの線形結合として次式で表わす。
Zji== aj i Fii十aj2 . F2i十 ・… 十aj. . F.i十aj, . Sj,十aj, . Eji
ここでajm:変量」の第窺共通因子への負荷 a」S:変量ゴの特殊因子への負荷 aie:変量」の誤差因子への負荷
F,ni :パネラーiの第m共通因子の標準スコア 3方:パネラーiの特殊因子」の標準スコア Eパパネラーiの誤差因子ブの標準スコア
である。
これを因子モデルと称するが,これから共通因子αブ。,の負荷行列Aとその 転置行列A からtab.2.3で示された相関行列Rが次式で近似される。
フレーバーティーの嗜好検査とその解析 371 R==AA
すなわち少数個の因子負荷行列Aによって,複:雑な相関行列Rが再現さ れることに意義がある。しかし,行列Aは1種に定まらないため,相関の小 さな変量を排除するよう因子軸を回転させ,Aを求める必要がある。
なお,本稿で利用した因子分析プログラムは,主因子法によりAを推定し,
VARIMAX法により因子軸を回転させている。
絶対評価を因子分析するにあたり,因子数を決めなけ一ればならないが,.Aの 推定過程で用いられる固有値λが正であるものを採択する。そのλは次のとお
りであった。
R,= O. 6919 R., =:O. 2862 a3 := O, 0927 Z,=O. O188 R, =一〇. 0771
したがって,ろまでが採択の対象となるが,λ3以下の値が小さいため因子 数は2とした。
主因子法の結果,因子負荷行列Aは,tab.2.5のように推定された。これ から各々の因子について解釈
を試みる。まず第1因子の負 荷量を大きい順に並べ替える
とtab2.6のとおりとなる。
第1因子ではLEMON以外
のフレーバーティーが正の値 をとっており,香りの強弱因
tab.2.5 回転前の因子負荷行列
1舜〉一野陶因子第・因「共麗
¢MELON
1 @ApRlcoT
@STRAWBERRY
@PEACH i @LEMON
@BLUEBERRY
@APPLE 子である。とカ・わかる.卿。,「⑧EARL GREY
0,2249 0.3851 0,4201 0.3425
−0.3743 0.1723 1 0.3482
ヨ
IO・0464
一〇.!966
−O. 1324 0. 1000
0.2379
−O. !335
0.0943
−O. 3203 0. 3665
O. 0892 0.1658 i O. 1865 0.1739 j O.1579 1
0.0386
0. 2238
0.1365
EARL GREYやB:LUEBERRYの負荷量が小さいように,果実的芳香の強さ
も表わされている。いわゆる筆者らの観点1及び2に相当するものと言えよ う。筆者らは香りの強さと果実の香りを別の因子でとらえていたが,パネラー が多くなるにつれて,両者は区別されなくなるのではないだろうか。第2因子はtab.2.7のとおりになり, EARL GREYやPEACHが同因子
に相関し,APPLEやMELONが逆相関を示している。この順位からフレー
372 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号)
パーティー tab・2.6 第1因子負荷量 tab.2.7第2因子負荷量 間の物性的
な関連を見 出すことは できないが,
パネラーの 嗜好に依存
STRAWBERRY APRICOT APPLE PEACH MELON
BLUUEBERRY EARL GREY
LEMON
O. 4201 0. 3851 0. 3482
0.3425
0. 2249
0.1723
0. 0464
−O. 3743
EARL GREY
PEACH STRAWBERRY BLUEBERRY APRICOT
LEMON MELON APPLE
O. 3665
0.2379
0. 1000
0.0943
−O. 1324
−O. 1335
−O. 1966
−O. 3203
した因子と思われる。分析の結果出力されるパネラーの因子得点から第2因子
得点が正の者について,EARL GREY, PEACH, STRAWBERRYの評価平
均を求めると,3.5,3.2,3.5となる。このようにtab.2.1に示す全体の平均 よりも高くなっていることがわかる。
2つの因子についておおよその解釈を試みたが,更に因子構造を単純化する ため,VARIMAX回転を行 tab・2.8回転後の因子負荷行列
うとtab.2.8のようになり,
第1因子としてtab.2.9が得 られる。回転前と順位は同じ
であるが,PEACHやEARL GREY, BLUEBERRYの負
荷が下がり,果実の芳香のす るものとそうでないものが,
@MELON
@APRICOT
@STRAWBERRY
@PEACH
@LEMON
@BLUEBERRY
@APPLE
@EARL GREY
第!因子 O.2482
0. 3989
0.4039
0. 3094
−O.3542 0.1589 0.3861
−O.OOO7
第2因子
一〇. 1663
−O. 0822 0. 1527 0. 2797
−O. 1801 0.1!55
一一Z. 2733 0. 3694
共通性
O. 0892
0.1658
0. 1865
0.1739
0. 1579 0. 0386 0. 2238
0.1365
より強調された因子軸となった。香りの種類
の判定試験においてEARL GREYをLEM−
ON と答えた者が29%と多かったが,評価
においてもしLEMONに近い反応を示して
いることがわかる。
第2因子においては,tab.2.10のとおり
MELONとLEMONの順位が入れ替わり,
PEACH, STRAWBERRYの負荷量:が嫁き
tab.2.9 第1因子負荷量
STRAWBERRY APRICOT APPLE PEACH MELON BLUEBERRY
EARL GREYLEMON
O. 4039 0. 3989 0.3861 0. 3094 0. 2482
0.1589
−O. OOO7
−O. 3542
フレー・〈 ・一ティーの嗜好検査とその解析 373 くなっている。次章で述べる香りの判定結果 tab・2・10第2因子負荷量
を引用するならば,EARL GREYはLEM−
ONと答えた者が多いものの,かなり生薬的
な匂いであるし,BLUEBERRYもくさいと
か渋いといった答えが多くあまり紅茶とは相 性がよくないようである。PEACHはミルク という答えが多く,ほとんど正解のない状態EARL GREY
PEACH STRAWBERRY BLUEBERRY APRICOT MELON LEMON APPLE
O. 3694 0. 2797 0. 1527 0. 1155
−O.0822
−O. 1663
−O. 1801
−O. 2733
であり,果実的芳香とはとられていないようである。STRAWBERRYは正答 率が高く評価平均もよいが,紅茶としてとらえたときその香りに癖のあるフレ ーバーティーと評価されているようである。それに対してAPPLE, MELON は正答率も高く,その解答内容からも果実的芳香として好感がもたれているよ
うである。それとLEMONのように癖のないものが負に相関する結果となっ ている。つまり筆者からみればこれをフレーバーティーの個性とみることがで き,フレーバーティーからみればパネラーの嗜好とみることができよう。
このように評価因子として,香りの強弱因子と,香りの個性因子が抽出でき た。つまり,評価の際には,果実的芳香の強弱と紅茶としての個性が対象にさ れていると言える。
一般的には香りの強いものに反応し,そして「たで食う虫も好き好き」とい われているようにフレーバーティーの個性あるものを好む者,ないものを好む 者に分かれることがわかる。
㈲ クラスター分析によるフレーバーティーの分類
因子分析により評価因子を抽出したが,次にクラスター分析により,これら フレーバーティー間の類似度を求め分類することを試みる。
本稿では変量間の類似度を表わす連関測度としてKendallのτを用いるが,
τは次式で定義される測度である。
2(S−D)
セコ
ゾ(S÷D十丁α)(S十D十Tb)
ここで S:変量AとBで観測値の順位が一致した対の数
374 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号)
D:変量AとBで観測値の順位が不一致の対の数 T。:変量Aで同順位であるような対の数
Tb:変量Bで同順位であるような対の数 である。
絶対評価におけるτの行列をtab. 2.11に,相対順位評価のそれをtab・ 2.12 に示す。これを樹状図にするとfig.2一一17及びfig.2−18になる。
これによりMELONとAPPLE, STRAWBERRYとPEACHはどちら
のデータにおいてもクラスターを形成している。しかし,LEMON, EARL GREY, BLUEBERRY問では,絶対評価と相対1頂位においてクラスターが異
なり,絶対評価では香りが強いことによりEARL GREYとBLUEBERRY が類似し,相対評価では紅茶との相性によりLEMONとEARL GREYが類
似することになったようである。
このようにクラスター分析によリフレーバーティ一間の関連を数量化でき
tab・2.11絶対評価によるフレーバーティー類似.度(Kendalrsτ)
@MELOr,sl
@APRICOT
@STRAWBERRY
@PEACH
(S)LEMON
@BLUEBERRY
@EARL GREY
@APRI@STRAW@PEA (11)LEM @BLUE @APP @EARL
COT BERRY CH ON BERRY LE GREY
O,1010 O.!846 O.0257 0.2170 O.1946 0.3249
一〇.1607 O.0023 O,2795 一一〇.1273
−O.2092 O.1665 O,2689 一〇.1100
−O.2713 一〇.0050 O.2114 O.!319
−O.2061 O.2212 一〇.0226 O.1!65 −O.!566 一〇.1495 一〇.1468 0.1111 O.1124 −O.1413
tab・2.12相対順位評価によるフレーバーティー類似度(Kendall sτ)
1②醗1③§玉畏鐸④器A⑤と梼M⑥器黙。⑦合書P⑧器爵
@MELON
@APRICOT
@STRAWBERRY
@PEACH
@LEMON
@BLUEBERRY
@APPLE
一〇.1521 一〇.0351 一〇.3799 一〇.2999 −O.2073 一〇.1276 一〇.2638 0.0181 一〇.3988 −O. 2870
一〇.180! 一〇.0352 一〇.2365
−O.1502 一〇.0935 一〇.3652
−O.2477 一〇,2644 一〇.3274
−O.1961 一〇.2793 一〇.2152
−O.1219 一一〇.1673 O.0332 −O.0702 一〇.1437 −O. 3256
フレーバーティーの嗜好検査とその解析 375 fig.2.17絶対評価による樹状図
⑤ぴ国冨O之
⑧国﹀肉い○一国磯
⑥しuぴ⊂国しu国菊菊曜
④℃国︾0缶
③ω円閑﹀芝じd国刃幻槻
②﹀勺国OO↓
⑦︾℃勺ぴ国
←ζ国冒OZ
376 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号)
fig.2.18 相対順位評価による樹状図
﹁
⑥しuいC国じu印肉関︽⑧国︾困ピO肉国宅⑤い国ζ○以④℃国諺O寓③QD↓幻︾零じ⇔国菊国嶋②︾℃国OO↓⑦b㌧℃い国①家国ピ02フレーバーティーの嗜好検査とその解析 377
たが,香りの種類の判定においてMELONにAPPLE,またPEACHに
STRAWBERRYと答えた者がいたことからもうなずける結果である。
3.香りの種類の判定について
tab,3に示すように正答率の高いものから低いものの順は, STRAWBER−
RY, APPLE, MELONT, LEMON, PEACH, BLUEBERRY, EARL GREY
APRICOTであった。このうち正答率が3分の1を超えているSTRAWBER−
RY, APPLE及びMELONは,特徴的な香りを有し,キャンディーや清涼飲 料に使用されたり,MELONは,それ自体香気が高いこともあって正答率が 高くなったと思考される。
tab.3香りの種類についての正解状況
奮窺iM…Nl合川RIC懸食累〔PEA・Hi・EM・Nl蹴費。 IAPP・E懸器1言卜
正解者数
佳翻
75 38 5
22. 8
000
12060
36. 5
11 5.5 3.3
23 11.5
7.0
8
ρOQり一 91 45.527. 7
3 1.5
0. 9
329
OO
1
誤答例については,MELONはバナナが多く6.5%, APRICOTはミルクが 15%,STRAWBERRYはジャムが3.5%(ジャムには多種類あるが,イチゴジ ャムが最もポピュラーであるため,むしろ不適切な解答と理解したほうが良 い。)PEACHは, APRICOT同様ミルクが多く24%にも及んだ。 LEMONは 紅茶が31.5%と多かった。これは,レモンフレーバーが弱いため,紅茶自体の 香りをより強く感じたものであろう。次はみかんの4.5%oであった。BLUEBER−
RYは線香が4%であった。 これは生薬のような匂いがするため,しぶい,
苦い,松やセこ,漢方薬と表現する例がみられた。APPLEはピーチが3%,
EARL GREYはレモンが28.5%に及んだ。
なお,特徴的なことは,EARL GREYを正しく判定した3人は,何れも女 性であったことで,理由としては,通常フレーバーティーを愛飲していること が考えられる。大多数の学生は,EARL GREYそのものがどのようなもので あるか分かっていないと思われる。また,APRICOTの正解者は皆無であった
378 松尾博教授退官記念論文集(第234・235号)
が馴染みの薄い理由が考えられる。
む す び
各種フレーバーティーのなかで,紅茶そのものの香りがし,着香がほとんど 感じられないLEMONが相対順位評価において,1位が他のどのフレーバー
ティーよりも多かったことは,紅茶に着香することを嫌う者が多いと一応考え られる。しかし,絶対評価の平均値は3.1で第4位であることから200人全体の 観点に立てば,フレーバーティーもその種類によっては歓迎されているとみな すことができる。なお,名糖産業がレモンティーを発売後,製品差別化をはか
った日東紅茶がLEMONにAPPLEのフレーバーティーの詰合わせを市場
に出したことは,今回の調査でAPPLEが絶対評価の第1位を示したことから ニーズをとらえていたといえよう。最近,人気のあるBLUEBERRYの評価が特異的に悪く,特に相対順位評価 の最下位が半数に近い結果が得られたのは意外であった。しかし,北欧の良い イメージとは異なり香り自体は生薬のようで評価の悪さも首肯できる。
各フレーバーティー間の相対係数が小さいことは,それぞれが個性的な香り を有していると考えることもできよう。
因子分析の結果からは,評価因子として香りの強さに反応する因子とその個 性に反応する因子が抽出された。その結果,香りの強いものに一応の反応を示 すが,紅茶との相性において個性的な香りを好む者と,そうでない者とに反応
が分かれた。評価平均から一般的には癖の少ないAPPLEやLEMONを好む
ことがわかった。
また,フレーバーティーはそれぞれ個性的ではあるが,嗜好の度合からクラ スター分析により,フレーバーティーを分類すると,APPLEとMELON,
STRAWBERRYとPEACHの類似性が検出された。LEMON, EARL GREY,
BLUEBERRY.の3者には香りの強さでEARL GREYとBLUEBERRY
が,香りの個性でLEMONとEARL GREYが類似しているようであった。
これは香りの判定結果からもうなずける分類であるが,嗜好と香りの関係に
フレーバーティーの嗜好検査とその解析 379 ついては,パネラーを男と女,あるいは成人と子供について実験することによ
り,更に明らかになると推察された。
終わりに臨みサンプルを提供された三井農林の注連沢正彦課長,抗変異原性 とコレステロール低下作用の文献を提供された三井農林食品総合研究所 原征 彦所長,統計解析において適切な御助言を頂いた経済学部吉井典章教授に感謝
します。
文 献
1) Tsuneo Kada, Kenji Kaneko, Satoshi Matsuzaki, Taeko Matsuzaki, Yukihiko Hara: Mutation Research, 150, 127一一132 (1985)
2)村松敬一郎,大矢真弓,原征彦=日本農芸化学会要旨集,363(1984)
3) 岡部昭二,「嗜好検査による市販紅茶の品質評価及びその購買行動と消費態様につい て」,『彦根論叢』第222・223号,273〜290(1983)
4)脇本和昌,垂水共之,田中豊『パソコン統計解析ハンドブック1,■』共立出版(1984)
5)A.L.コムリー著,芝裕順訳『因子分析入門』,サイエンス社(1979)