2007 3 MARCH
農水産物流通の現状と課題
●野菜輸入の動向と課題
●水産物産地市場の現状と課題
●組合金融の動き
2 0 0
年7
月 第 巻 第 号
60 3
3
2007
年3
月号第60
巻第3
号〈通巻733
号〉3
月1
日発行農林中金総合研究所は,農林漁業・環境 問題などの中長期的な研究,農林漁業・
協同組合の実践的研究,そして国内有数 の機関投資家である農林中央金庫や系 統組織および取引先への経済金融情報 の提供など,幅広い調査研究活動を通じ 情報センターとしてグループの事業を サポートしています。
中国の農村金融改革と我が国農協制度
昨年,我が国の農協,農村金融制度について中国の農業金融関係者に説明する機会があ った。現在の中国においては,都市部と農村部の所得格差が極めて大きな社会問題となっ ており,農村部の経済発展を阻害している大きな要因の一つとして考えられているのが,
農村における金融機能の著しい遅れである。この農村金融改革の方向の一つのモデルとし て,我が国農協が農村金融に果たしてきた役割が注目されている。
我々の説明は,歴史的な視点から,農協を中心とする日本の農村金融制度が,いかにし て農村の維持・発展に寄与してきたかについて,中国側関係者の理解を求めることにあっ たが,我が国の制度をそのまま現在の中国に適用することには障害も多い。中国の関係者 に理解を求め,議論する過程は,同時に,我が国の農協制度がいかにして成立し得たかを 自ら省み,今まで当然のこととして受け入れてきた我が国の社会的・制度的条件がいかに 貴重なものであったかを再認識する過程でもあった。
一つの驚きであったことは,かつての我が国農村において当然のように存在していた
「村落共同体」的な考え方が,現在の中国においては希薄化し,むしろ協同組織の導入に 反感をもたれる傾向すらあるということであった。かつての人民公社による,いわば「強 制された共同体」に対する反発が,自発的・民主的な共同体の形成をも阻害している可能 性があるということである。我が国の制度が,国の政策的意図のもとに導入されたもので あったにせよ,その基盤にあった村落共同体の思想が,制度の定着・発展にいかに重要で あったかが改めて認識されることとなった。
再認識の第二は,我が国農協の総合事業制が,経済的に弱い立場にあった農民の力を結 集するうえでいかに重要であったか,という点である。現在,中国の農村部においては,
信用合作社という,信用事業のみを行う協同組合組織が存在する。しかし,農作物の販売 を個々の農家が集荷業者との相対取引で行い,かつその取引の大半が現金決済で行われる ことから,貸付のほとんど唯一の担保手段である農産物,その販売代金ともに,信用合作 社がそれを補足する手段がない。決済性預金の歩留りに乏しく,吸収する預金の大半は金 利の高い貯蓄性預金であり,高い貸倒率と相まって,貸付金利は高利とならざるを得ない。
農業収入の不安定性,万一の事故等をカバーする共済の手段も持たない。これらが,ただ でさえ乏しい農村部への資金還流のパイプをさらに細くするといった悪循環をもたらして いる。
現在,農村金融改革の方向として,中国当局の中には大きな路線の対立があると言われ ている。一つが上記のような協同組合形態の金融機関を利用する方向であり,いま一つが 農村部における金融機関を商業銀行化し,市場メカニズムを活用しようとする方向である。
現在の状況を見れば,市場メカニズムの盲目的な信奉は,弱者の切り捨て,信用不安の増 大により,農村経済,農村金融機関に壊滅的な打撃を与えかねない。中国農村の自律的発 展のためには,たとえそれが遠回りに見えようとも,農民の協同意識の育成と,弱い事業 基盤の相互補完が可能な協同組織の形成が極めて重要であるように思われる。
((株)農林中金総合研究所基礎研究部長 原 弘平・はらこうへい)
今 月 の 窓
99年4月以降の『農林金融』『金融市場』
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【農林漁業・環境問題】
・市部・郡部別世帯構造等にみる農村の人口問題
・食品の安全・安心を巡る動向と課題
【協同組合】
・組合員の視点から事業方式の再構築を目指す JA四万十
・フランスの協同組合銀行と連帯ファイナンス機関 ADIEの連携
――協同組合銀行のCSRの一部として――
【組合金融】
・コーホート分析による農家人口の将来推計
【国内経済金融】
・住宅ローン需要の動向と地域金融機関のローン戦略
・遅れる「企業から家計への波及」
――労働生産性上昇率を下回る状況が続く賃金上昇率――
・八千代銀行の資産運用アドバイス業務
・横浜信用金庫の社会貢献
【海外経済金融】
・米国クレジットユニオンの個人ローン戦略
――経営理念に強く結びついたサービス展開――
・米国産トウモロコシの日本向け輸出の物流と価格構成
――流通コスト上昇がもたらした状況変化――
本誌に掲載の論文,資料,データ等の無断転載を禁止いたします。
みど くろ り 最 新 情 報
トピックス
今月の経済・金融情勢(2007年1月)
日中農村金融セミナーを開催(2006年11月,北京)
2006〜07年度経済見通し改訂(2次QE後)
(2006/12/11発表)
2006〜07年度経済見通し(2006/11/17発表)
平成20年4月入社新卒研究員採用情報
日本の農業・地域社会における農協の役割と将来展望
――最近の農協批判に応えて――
(「総研レポート」18調一No.3/2006年5月)
地域住民・地域社会への農協の取組み
――平成17年度農協経営力調査結果から――
水産物産地市場の現状と課題
農 林 金 融 第
60
巻 第3
号〈通巻733号〉 目 次 今月のテーマ今月の窓
談 話 室
農水産物流通の現状と課題
(株)農林中金総合研究所基礎研究部長 原 弘平
北海学園大学教授 太田原高昭
――
本誌において個人名による掲載文のうち意見に
統計資料 ――
38
農村の団塊世代
インターネットによる金融商品・
サービスの利用状況
28
重頭ユカリ
―― 36
組合金融の動き 組合金融の動き
出村雅晴
―― 15
藤野信之
―― 2
野菜輸入の動向と課題
(財)農村金融研究会副主任研究員 尾中謙治
―― 30
中国の農村金融改革と我が国農協制度
情 勢
農林金融2007・3
2
- 120〔要 旨〕
1 近年野菜の輸入が漸増し,2005年では約300万トンと国内需要量約1,500万トンの21%を 占めるに至っている。輸入野菜を形態別にみると,生鮮野菜が100万トン強で増加傾向が 強く,次いで冷凍野菜が80万トン,その他がまとめて100万トン弱で,うちトマト加工品,
その他調製野菜が増加傾向にある。
2 輸入先国別にみると,中国からの輸入量が圧倒的に多く,全体の56.9%,165.4万トン
(05年)を占めて増加傾向にあり,輸入野菜全体の輸入増の主因となっている。2位は米 国の17.8%,51.7万トン(同)で,近年減少傾向にある。中国産野菜の価格競争力は強く,
全体輸入単価を押し下げ,生鮮ブロッコリー,スイートコーン(その他調製野菜)では主 力輸入先である米国のシェアを切り崩しつつある。
3 05年の生鮮野菜輸入量の上位10品目の価格を,国内卸売市場価格ベース(04年)で国産 品と比較してみると,すべての品目で国産品の価格が上回っており,にんにくを除く9品 目の単純平均で1.6倍となっている。
4 主要な輸入野菜は5品目とも近年(98〜04年)輸入量シェア(=100−自給率(%))が上 昇傾向にある。04年におけるシェアは,高い順にさといも(31.4%),たまねぎ(22.7%), ねぎ(12.6%),にんじん(11.6%),キャベツ(5.3%)となっている。
5 国内野菜の生産量は,82年の1,678万トン以降減少が続き,05年では1,248万トン(82年 の74%)となった。これは,1人1年当たりの消費量の減少による需要減と,野菜輸入増,
生産者の高齢化による規模縮小等が複合的に生じた結果となっている。
6 国内野菜販売農家の規模拡大は,徐々にではあるが進んでいる。一方,野菜販売農家の 年齢層別の農業従事者割合の動向を見てみると,95年に28.5%だった65歳以上の割合は,
00年には34.8%に上昇しており,高齢化と後継ぎ(農業後継者)不足が進んでいる。
7 野菜生産の低コスト化はいずれの産地においても避けて通れない課題であり,そのため には,機械化の一層の推進等が必要なものと考えられる。しかしながら,輸入産品との価 格差は非常に大きく,国内産品は鮮度や「安全・安心」を中心とする国産プレミアムを確 保しつつ,加工・業務用需要へも的確に対応していく必要がある。
野菜輸入の動向と課題
近年野菜の輸入が漸増し,
2005
年では約300万トンと国内需要量約 1,500万トンの
21
%を占めるに至っている。輸入野菜を形 態別にみると,生鮮野菜が100
万トン強で 増加傾向が強く,次いで冷凍野菜が80
万ト ン,その他がまとめて100万トン弱で,う ちトマト加工品,その他調製野菜が増加傾 向にある。これは,プラザ合意後の円高基調のもと で,バブル崩壊後のデフレ傾向のなかでの 消費者の低価格志向,および食の簡便化,
外部化の進展等が複合して生じてきたもの である。輸入割合から輸入野菜の需要先を 見てみると,粗食料全体における輸入割合 が
15
%となっているなかで,家計消費需要 の輸入割合が2%,加工・業務用が26
%と(注1)
, 食の簡便化,外部化を担う加工業者,外 食・中食事業者の輸入割合が大きくなって おり,輸入野菜の増加は加工・業務用需要 が牽引している。
国内野菜の産出額は,
90
年代以降農業産 出額の25
%程度で推移し,稲作,畜産と並 ぶ基幹部門であり,米価の下落もあって04年には
24.6
%とコメ(22.8%)を上回った。しかしながら国内野菜生産量は,輸入野菜 増と国内消費減に挟撃され,全体としては 長期的な減少傾向にある。
そこで,本稿では近年における野菜輸入 の動向を整理するとともに,対応する国内 産地の動向を概観して,その課題について 確認してみることとしたい。
(注1)小林茂典(2006,13頁),指定野菜14品目 からばれいしょを除く13品目に関する推計値
(00年度)。なお,05年度の速報値では,加工・
業務用需要における輸入割合は32%と6ポイン ト上昇した(07年1月聞き取り)。
(1) 野菜需給の長期的動向
国内野菜の生産量は,
82
年の1,678
万ト ン以降減少が続き,05
年では1,248
万トン(82年の74%)となった。これは,1人1年 当たりの消費量の減少(89年の110.6kgが05
年には96.2kg)による需要減と,野菜輸入
増,生産者の高齢化による作付面積の規模 縮小等が複合的に生じた結果となっている。
1人1年当たりの消費量の減少は,食の 簡便化志向のなかでの若年層を中心とした 野菜離れが主因となっている。
目 次 はじめに
1 野菜輸入の動向
(1) 野菜需給の長期的動向
(2) 形態別の輸入動向
2 主要野菜の輸入地位と国内産地の動向
(1) 主要野菜の輸入地位
(2) 国内野菜産地の動向 3 国内産地の課題
はじめに
1 野菜輸入の動向
野菜の輸入量は85年ごろから徐々に増加 しており(第1図),このため,野菜の自 給率は
89
年には91.4
%だったが,05
年には78.8
%と傾向的に低下してきた。また,野 菜の作付面積は92
年の63.1
万ha
から減少傾 向が続いており,04年には51.9万ha(92年 の82%)まで減少している。(2) 形態別の輸入動向 a 全体動向
近年における野菜輸入量の動向をみる と,
01
年のセーフガード暫定発動(生しい たけ,ねぎ)による生鮮野菜の減少を主因 に02年にはいったん減少したが,その後は 生鮮野菜の増加を主因に増加傾向にある(第2図)。
05
年の輸入量は290.5
万トンで,生鮮野菜が
111.4
万トン(野菜輸入量全体の 38.3%),冷凍野菜が81.4万トン(同28.0%)と,この2つで66.3%を占めている。次い で,その他調製野菜
47.4
万トン(同16.3%), トマト加工品21.6
万トン(同7.4%),塩蔵等野菜17.1万トン(5.9%),乾燥野菜5.5万ト ン(同1.9%),酢調製野菜
3.6
万トン(同 1.2%),甘藷(生鮮・冷凍)2.5
万トン(同0.9%)と続く(輸入形態区分は農畜産業振興
機構による)。
輸入先国別にみると,中国からが圧倒的 に多く全体の
56.9
%,165.4
万トン(05年)を占めて増加傾向にあり,輸入野菜全体の 輸入増の主因となっている。2位は米国の
17.8
%,51.7
万トン(同)で,近年減少傾 向にある(第3図)。農林金融2007・3
4
- 122輸入量 国内生産量
資料 農林水産省「食料需給表」から作成
(注)1 国内生産量+輸入量=国内需要量
(輸出量は僅少のため省略)
2 05年度は概算値。
18
(百万トン)
140
(kg)
16 14 12 10 8 6 4 2 0
120 100 80 60 40 20 65 0
60 年度
70 75 80 85 90 95 00 05 第1図 野菜の生産量・輸入量・消費量の長期推移
1人1年当たり消費量
(右目盛)
資料 農畜産業振興機構(2005)「2004年野菜輸入の動向」, ホームページ「ベジ探」から作成
350
(万トン)
300 250 200 150 100 50
0 93 年
第3図 国別野菜輸入量の推移
95 97 99 01 03 05 米国
その他 中国
資料 農畜産業振興機構(2006)『野菜情報』3月号から作 成
350
(万トン)
300 250 200 150 100 50 0 99
年
00 01 02 03 04 05 第2図 輸入形態別野菜輸入量の推移
甘藷(生鮮・冷凍)
酢調整野菜 その他調整野菜
冷凍野菜
乾燥野菜
生鮮野菜 トマト加工品 塩蔵等野菜
輸入形態と輸入国をあわせてみると,近 年における野菜輸入量の増加は,中国から の生鮮野菜の輸入増によってもたらされて いる。
なお,
06
年5月に農薬等の残留規制の強 化(ポジティブリスト制の導入)があり,厚 生労働省検疫所の輸入食品モニタリング検 査では,農産・農産加工食品の当該違反件 数が06
年度上半期93
件(前年同期15件)に 増加した(厚生労働省資料)。しかしながら,06年6〜11月の野菜輸入量は130万9千ト
ン(同134万3千トンの△2.5%),中国から は
79
万8千トン(同82万3千トンの△3.0%)と,全体輸入量への大きな影響は出ていな い。この減少の主因は,生鮮野菜輸入で主 力のたまねぎが中国の播種期の大雨により 作付減となったことによる(前年同期比△
2万5千トン,△13.8%)。
(注2)
b 生鮮野菜
05
年の生鮮野菜 輸入量の上位品目 とその輸入量をみ ると,たまねぎが35.8
万トン(生鮮 野菜輸入量全体の32.1%)とトップ
で,かぼちゃ12.2 万トン(同11.0%), にんじん
10.1
万ト ン(同9.1%),ね ぎ7 . 1
万 ト ン( 同 6.4%),キャベツ6.9万トン
(同6.2%)と続き,これら上位5 品目で64.8
%を占めている(第1表)。輸入 品目数は,全体で43
品目ある(品目分類は 農畜産業振興機構による。以下同じ)。これら上位5品目のうち,2位のかぼち ゃを除く4品目は価格安定制度の(注3)対象品目 である指定野菜,かぼちゃは特定野菜とな っており,上位
10
品目(同84.5%)でみる と6位以下でも指定野菜1,特定野菜4と,わが国の主要な野菜が生鮮形態での輸入対 象となっている。2位のかぼちゃの主力輸 入先国はニュージーランド(生鮮かぼちゃ 輸入量全体におけるシェア69%)で,日本と 季節が逆転する地域特性を利用した補完的 輸入となっているが,それ以外の品目は基 本的に国内産品と競合関係にある。
近年の輸入量の変化(99〜05年)をみる と,横ばいから減少傾向がみられるかぼち ゃ(05年の輸入量は99年比0.8倍)を除く上 位4品目で大きく増加してきているのが特
(単位 千トン,%,倍)
指定
○
○
○
○
○ 特定
○
○
○
○
○
品目 たまねぎ かぼちゃ にんじん ねぎ キャベツ ブロッコリー ごぼう しょうが さといも にんにく 上位10品目計
合計
資料 財務省「貿易統計」から作成
(注)1 指定, 特定欄は指定野菜14品目, 特定野菜32品目への該当状況。
2 ねぎの(a)の数値は01年のもの。
3 NZはニュージーランド, OGはオーストラリアの略。
4 にんじんは「にんじん及びかぶ」, キャベツは「キャベツ等あぶら菜属」の数値。
5 05年の輸入量8位のメロンは除いた。
第1表 生鮮野菜輸入量の変化と主要輸入先国
223 154 50 30 42 91 72 34 10 26 732 920 99年
(a)
358 122 101 71 69 61 58 39 32 30 941 1,114
32.1 11.0 9.1 6.4 6.2 5.5 5.2 3.5 2.9 2.7 84.5 100.0 05
(b)
1.6 0.8 2.0 2.4 1.6 0.7 0.8 1.1 3.2 1.2 1.3 1.2
中国(62), 米国(23), NZ(11)
NZ(69), メキシコ(17), トンガ(10)
中国(90), OG(4), NZ(3)
中国(100), 韓国(0)
中国(86), 韓国(14)
米国(73), 中国(26), OG(1)
中国(89), 台湾(11)
中国(99), インドネシア(0)
中国(100), トンガ(0)
中国(100), 米国(0)
(b/a)
×100
構成比 05年の主要輸入先国(シェア)
徴となっている。
主要輸入先国とその輸入先国間における シェアをみると,かぼちゃと6位のブロッ コリー(主力輸入先国は米国<シェア73%>)
を除く上位10品目においては,前記からも 推し測られるとおり中国が圧倒的に大き く,総じてそのシェアを上昇させつつあ る。
これは,中国産生鮮野菜の価格競争力が 圧倒的に強いことが主因となっているもの と考えられる。
05
年の生鮮野菜輸入量の上 位1 0
品 目 の 輸 入 単 価(CIF価格)とその近年 に お け る 変 化 を み る と,かぼちゃ,しょう がを除く全品目におい て輸入単価が低下基調 にあるなかで,たまね ぎを除いて中国産品の 価格競争力が一番強く
(第2表),年々その競
争力を強めてきている。逆から言うと,
中国産品の低価格性とその進展による輸 入先国間でのシェアアップが,各品目の 平均輸入単価を低下させている。
米国が主力輸入先となっているブロッ コリーにおいてさえも,中国産品はその 価格競争力よって年々輸入先国間におけ るシェアを拡大しつつあり,米国産品の シェアを99年の96%から05年には73%に 低下させた(中国産品のシェアは同3%か ら26%に上昇)。
05
年の生鮮野菜輸入量の上位10
品目の価格を,国内卸売市場価格ベース(04年)
で国産品と比較してみると,すべての品目 で国産品の価格が上回っており,にんにく を除く9品目の単純平均で
1.6
倍となって いる(第3表)。輸入生鮮野菜の国内流通 は卸売市場外流通が半分程度あり,(注4)実際の 価格差はこれ以上にあるものと考えられ る。加工・業務用実需者が国産プレミアム を認め,国産品のシェアが拡大する水準と して考える価格差水準は,生鮮たまねぎで1.1
倍程度,生鮮にんじんと生鮮ねぎで1.2
農林金融2007・3
6
- 124(単位 円/kg,倍)
指定
○
○
○
○
○ 特定
○
○
○
○
○
品目 加工・業務用
実需者の許容 価格比 たまねぎ
かぼちゃ にんじん ねぎ キャベツ ブロッコリー ごぼう しょうが さといも にんにく
資料 農林水産省(2006)『平成16年青果物卸売市場調査報告』, 野 菜政策に関する研究会(2005)から作成
(注)1 指定, 特定欄は指定野菜14品目, 特定野菜32品目への該当 状況。
2 対象は, 国内1・2類都市の市場計。
3 加工・業務用実需者の許容価格比は, 農林水産省の対象者ヒ アリングによるもの。
第3表 輸入生鮮野菜の国内卸売価格と国産品価格 (2004年)
91 149 112 349 91 320 197 576 178 1,188 国産品
(a)
67 145 77 135 73 237 118 282 101 142 輸入品
(b)
1.36 1.03 1.45 2.59 1.25 1.35 1.67 2.04 1.76 8.37
1.10程度 ・・・ 1.20程度 1.20程度 ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ 輸入品
価格比
(a/b)
国内卸売価格
(単位 円/kg,倍)
指定
○
○
○
○
○ 特定
○
○
○
○
○
品目 たまねぎ かぼちゃ にんじん ねぎ キャベツ ブロッコリー ごぼう しょうが
さといも にんにく 資料, (注)とも第1表に同じ
第2表 生鮮野菜輸入単価の変化と主要輸入先国の輸入単価(CIF価格)
33.4 64.1 58.2 91.5 50.4 164.8 71.5 62.5 50.2 91.2 99年
(a)
30.8 70.7 43.3 81.4 37.7 151.7 42.5 98.1 44.5 88.1 05
(b)
0.9 1.1 0.7 0.9 0.7 0.9 0.6 1.6 0.9 1.0
中国(29), 米国(28), NZ(40)
NZ(68), メキシコ(85), トンガ(65)
中国(40), OG(80), NZ(82)
中国(81), 韓国(325)
中国(36), 韓国(46)
米国(165), 中国(112), OG(172)
中国(41), 台湾(55)
中国(97), インドネシア(152)
中国(45), トンガ(105)
中国(87), 米国(384)
(b/a)
×100 05年の主要輸入先国の単価
しょと3位のさといもは指定野菜,4位の スイートコーンは特定野菜となっており,
上位10品目(同70.9%)でみると6位以下 でも指定野菜1,特定野菜4と,冷凍野菜 の形態でもわが国の主要な野菜が輸入対象 となっている(同表)。基本的に,すべて の品目が国内産品と競合関係にある。
近年の輸入量の変化(99〜05年)をみる と,ブロッコリーとごぼうを除く上位
10
品 目すべての品目で横ばいから減少傾向にあ るのが特徴となっている(同表)。これは,輸入冷凍野菜市場が成熟期を迎えているこ(注7)
とによるものと考えられる。
主要輸入先国とその輸入先国間における シェアをみると,ばれいしょと4位のスイ ートコーン(主力輸入先国はそれぞれ米国<
シェア78%,64%>)を除く品目において は,生鮮野菜と同様に中国が圧倒的に大き く(同表),総じてそのシェアが上昇しつ つある。
これは,中国産冷凍野菜の価格競争力が 圧倒的に強 く,
02
年に 発生した冷 凍ほうれん 草の残留農 薬問題等の 影 響 か ら「 ほ う れ ん 草等」のシ ェアは半減 し た も の の,中国政 倍程度となっており,(注5)輸入品に対抗するに
は国産品のより一層の価格低下が求められ ている。
次いで,主要な輸入形態である冷凍野菜,
生鮮換算す
(注6)
ると3位に浮上する乾燥野菜,
3位のその他調製野菜について輸入形態別 に詳細を見てみよう。
c 冷凍野菜
05年の冷凍野菜輸入量の上位品目とその
輸入量をみると,ばれいしょが
28.1
万トン(冷凍野菜輸入量全体の34.5%)とトップで,
えだまめ
6.9
万トン(同8.5%),さといも4.8
万トン(同5.9%),スイートコーン4.7万ト ン(同5.8%),混合冷凍野菜3.2
万トン(同 3.9%)と続き,これら上位5品目で58.6
% を占めているが,上位品目への集中度は生 鮮野菜より低い(第4表)。また,輸入品 目数も生鮮野菜より少なく14
品目となって いる。これら上位5品目のうち,1位のばれい
(単位 千トン,%,倍)
指定
○
○
○
特定
○
○
○
○
○
品目 ばれいしょ えだまめ さといも スイートコーン 混合冷凍野菜 いんげん豆等 ブロッコリー ほうれん草等 えんどう ごぼう
上位10品目計 合計 資料 第1表に同じ
(注)1 指定, 特定欄は指定野菜14品目, 特定野菜32品目への該当状況。
2 05年の輸入量7位のいちご, 11位のその他の豆は除いた。
3 NZはニュージーランドの略。
第4表 冷凍野菜輸入量の変化と主要輸入先国
281 73 52 52 37 35 15 44 20 4 613 773 99年
(a)
281 69 48 47 32 30 23 22 17 8 577 814
34.5 8.5 5.9 5.8 3.9 3.7 2.8 2.7 2.1 1.0 70.9 100.0 05
(b)
1.0 0.9 0.9 0.9 0.9 0.9 1.5 0.5 0.9 2.0 0.9 1.1
米国(78), 中国(3), カナダ(16)
中国(45), 台湾(34), タイ(16)
中国(100), フィリピン(0)
米国(64), NZ(26), タイ(7)
中国(53), 米国(29), NZ(17)
中国(69), タイ(26), 米国(4)
中国(62), エクアドル(24), メキシコ(9)
中国(55), ベトナム(27), 台湾(12)
中国(43), NZ(32), 米国(25)
中国(100)
(b/a)
×100
構成比 05年の主要輸入先国(シェア)
府の監理強化等による改善(残留農薬違反 件数の減少)(注8)等により,全般的に輸入先を 変更するまでには至っていないことによる ものと考えられる。
05
年の冷凍野菜輸入量 の上位10
品目の輸入単価(CIF価格)とそ の近年における変化をみると,ほうれん草 等とスイートコーンを除く全品目において 輸入単価が低下基調にあるなかで,スイー トコーンとえんどうを除き中国産品の価格 競争力が一番強く(第5表),年々その競 争力を強める傾向にあるが,単価の低下傾 向は生鮮野菜よりは緩やかなものとなって いる。そのなかで,ほうれん草等では価格 は高めながらベトナム,台湾からの輸入 量・シェアが増加・上昇しており,えだま めでは同様に台湾,タイ,インドネシアか らの輸入量・シェアが上昇傾向にあるのが 特徴的である。d 乾燥野菜
05
年の乾燥野菜輸入量の上位品目とその 輸入量をみると,しいたけが8,375
トン(乾 燥野菜輸入量全体の15.3%,生鮮換算8.4万ト ン)とトップで,だいこん6,212
トン(同11.4%,6.2万 ト ン ), た ま ねぎ
6,040
トン(同11.1%,6 万 ト ン )と こ の3品目で全 体の
37.8
%を 占めるが,上 位品目への集 中度は生鮮野菜より低い。また,輸入品目 数も11
と冷凍野菜より少なくなっている。これら上位3品目のうち,1位のしいた けは特定野菜,2,3位のだいこん,たま ねぎは指定野菜となっており,乾燥野菜の 形態でもわが国の主要な野菜が輸入対象と なっている。基本的に,すべての輸入品目 が国内産品と競合関係にある。
近年の輸入量の変化(99〜05年)をみる と,上位3品目ではしいたけが横ばいなの を除くと,2,3位のだいこん,たまねぎ は増加傾向にあり,
05
年の輸入量は99
年に 比し,だいこんで1.1倍,たまねぎで1.2倍 となっているほか,その他の乾燥野菜が1.1
倍となっている。4位以下では,4位の きくらげが微増傾向にあるほかは,5,6,7位のかんぴょう,たけのこ,ぜんまいが 減少傾向にある。乾燥野菜の05年の全体輸 入量は,
99
年に比し横ばいとなっている。主要輸入先国とその輸入先国間における シェアをみると,3位のたまねぎ(主力輸 入先国は米国<シェア65%>)を除く品目に おいては,ほとんど中国が独占しており,
近年そのシェアに揺るぎがない。米国が主
農林金融2007・3
8
- 126(単位 円/kg, 倍)
指定
○
○
○
特定
○
○
○
○
○
品目 ばれいしょ えだまめ さといも スイートコーン 混合冷凍野菜 いんげん豆等 ブロッコリー ほうれん草等 えんどう ごぼう 資料, (注)とも第4表に同じ
第5表 冷凍野菜輸入単価の変化と主要輸入先国の輸入単価(CIF価格)
110.8 185.5 115.2 132.2 175.3 131.4 181.0 107.6 128.1 115.5 99年
(a)
104.0 172.9 106.8 136.7 168.2 109.0 147.6 150.3 125.4 100.3 05
(b)
0.9 0.9 0.9 1.0 1.0 0.8 0.8 1.4 1.0 0.9
米国(104), 中国(103), カナダ(117)
中国(150), 台湾(200), タイ(182)
中国(106), フィリピン(167)
米国(138), NZ(131), タイ(124)
中国(195), 米国(146), NZ(120)
中国(101), タイ(127), 米国(123)
中国(119), エクアドル(200), メキシコ(181)
中国(142),ベトナム(148), 台湾(182)
中国(140), NZ(106), 米国(124)
中国(100)
(b/a)
×100 05年の主要輸入先国の単価
力輸入先となっているたまねぎにおいてさ えも,中国産品はその価格競争力によって 年々輸入先国間におけるシェアを拡大しつ つあり,米国産品のシェアを
99
年の81
%か ら05
年には65
%に低下させた(中国産品の シェアは同11%から20%に上昇)。これは,乾燥野菜輸入品目の生産が東ア ジアに特有のものが多いなかで,中国産乾 燥野菜の価格競争力が圧倒的に強いことに よるものと考えられる。
05
年の乾燥野菜輸 入量の上位10品目の輸入単価(CIF価格)とその近年における変化をみると,上位3 品目のうち1,3位のしいたけ,たまねぎ において輸入単価が低下基調にあり(2位 のだいこんは横ばい),輸入量が減少傾向に あるかんぴょう,たけのこでは上昇傾向に あるのが特徴的である(ぜんまいは横ばい)。
e その他調製野菜
05年のその他調製野菜輸入量の上位品目
とその輸入量をみると,たけのこが
11.2
万 トン(その他調製野菜輸入量全体の23.6%)とトップで,スイートコーン5万トン(同 10.5%),人参ジュース3.6万トン(同7.6%), しょうが
2.9
万トン(同6.1%)とこの4品目 で全体の47.8
%を占めるが,上位品目への 集中度は生鮮野菜よりやや低い。また,輸 入品目数も20と生鮮野菜より少なくなって いる。これら上位4品目のうち,3位の人参ジ ュース(にんじん)は指定野菜,2,4位の スイートコーン,しょうがは特定野菜とな っており,その他調製野菜の形態でもわが
国の主要な野菜が輸入対象となっている。
すべての輸入品目が基本的に国内産品と競 合関係にある。
近年の輸入量の変化(99〜05年)を
05
年 の輸入量上位8品目についてみると,1位 のたけのこが横ばい,2,6位のスイート コーン,マッシュルームが減少傾向にある 以外は増加傾向にあり,ことに3位の人参 ジュースの輸入量は99
年に比し6年間で3.3
倍と,健康食ブームを背景に輸入量が 急増している。その他調製野菜の05年の輸 入量は99
年に比し,全体で1.4
倍と大きく 増加してきている。主要輸入先国とその輸入先国間における シェアをみると,2,3位のスイートコー ン,人参ジュース(主力輸入先国は米国<
シェア79%,51%>)を除く品目において は,ほとんど中国が独占しており,近年そ のシェアが上昇しつつある。米国が主力輸 入先となっているスイートコーンにおいて さえも,中国産品はその価格競争力よって 未だ低位にあるものの輸入先国間における シェアを拡大しつつあり,米国産品のシェ アは99年の85%から05年には79%に低下し た(中国産品のシェアは同0.7%から3.3%に上 昇)。
中国産その他調製野菜の価格競争力は,
必ずしも全品目で強いとは言えないが,05 年のその他野菜輸入量の上位8品目の輸入 単価(CIF価格)とその近年における変化 をみると,2,4位のスイートコーン,し ょうがにおいて輸入単価が上昇傾向にある 以外は低下傾向にあり,その価格競争力を
維持・強化しつつある。
(注2)農畜産業振興機構ホームページ「ベジ探」
輸入情報データベースから算出。原資料は財務 省「貿易統計」。なお,たまねぎの輸入減少要因 は,同機構『野菜情報』「東京都中央卸売市場に おける入荷量・価格および輸入の動向」(06.4〜
07.1)による。
(注3)指定野菜・特定野菜の価格安定制度は,野 菜価格の著しい低落により野菜の再生産が阻害 されることがないように,一定水準以下に価格 が下落したときに国・都道府県が生産者からの 負担金とあわせて補給金を交付して,生産者へ の影響を緩和するもの。現在,指定野菜は14品 目,指定野菜32品目となっている。
(注4)小林茂典(2001,75頁)
(注5)野菜政策に関する研究会(2005)関係デー タ編26頁。
(注6)藤島廣二(1997,26頁),乾燥野菜の生鮮 換算率は10とされている。
(注7)菊池昌弥(2006a,14-15頁)
(注8)菊池昌弥(2006b,38頁)
(1) 主要野菜の輸入地位
次に,前記の輸入形態別輸入数量を主要 な野菜について名寄せ,合計して,それら の各合計数量が国内需要量全体に占める割 合(輸入量シェア=100−自給率(%))とそ の推移を見てみよう。
主要な野菜の品目は,生鮮野菜輸入量の 上位品目(05年)でかつ指定野菜である,
たまねぎ,にんじん,ねぎ,キャベツ,さ といもの5品目とし,たまねぎには乾燥た まねぎ(10倍換算),にんじんには人参ジュ ース,さといもには冷凍さといもを含める。
なお,関税品目「その他の塩蔵野菜(HSコ ード071159.000)」の大宗は塩蔵たまねぎだ が,数量・金額が特定できないの(注9)でここで
は含めない。
第4図のとおり,主要な野菜は5品目と も近年(98〜04年,以下本項において同じ)
輸入量シェアが上昇傾向にある。
04
年にお けるシェアは,高い順にさといも(31.4%), たまねぎ(22.7%),ねぎ(12.6%),にんじ ん(11.6%),キャベツ(5.3%)となってい る。なお,たまねぎの輸入量シェアが02
年 にいったん大きく低下したのは,国内の単 収が平均収量対比で107
となる豊作による 価格低下の影響などに(注10)よるものである。この間,各品目の輸入単価(CIF価格,
加重平均)は総じて低下傾向にあった(第 5図)。
主要輸入野菜の近年における国内需給に おけるポジションを整理すると,第6表の とおりとなる。輸入野菜全体のポジション は「国内需要減を上回って国内生産量が減
農林金融2007・3
10
- 128資料 財務省「貿易統計」, 農林水産省「野菜生産出荷統計」
から作成
(注)1 品目は, 生鮮野菜輸入量の上位品目(05年)で指定 野菜である5品目。
2 輸入量シェアは, 「輸入量/国内供給量(輸入量+
国内生産量)×100」。
3 たまねぎには乾燥たまねぎ(10倍換算), にんじん にはジュース, さといもには冷凍さといもを含む。
35
(%)
30 25 20 15 10 5 0 98
年 99 00 01 02 03 04 第4図 主要野菜の輸入量シェア推移
さといも
にんじん
ねぎ
キャベツ たまねぎ
2 主要野菜の輸入地位と 国内産地の動向