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数理的な処理のよさを味わわせるための指導の工夫

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Academic year: 2021

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(1)

平成20年度 理数教育ステップアップ研修 実践記録 

数理的な処理のよさを味わわせるための指導の工夫 

―小学校6学年算数「分数のかけ算とわり算」の指導を通して―

(実践者 胎内市立黒川小学校 網代 鋼一)

 理数の面白さを感じる時のひとつに,他者,または以前の自分がやっているよりも,より 楽により速く答えにたどり着ける方法を見つけ出した時がある。算数・数学のよさはそれを 学習することで「先を見通すことができるようになること」であると考える。ただ教えられ た方法で問題を解くのではなく,「どうやって解決するか」を考え,課題解決することでより 面白さを感じることができるはずである。

本実践では,自力解決,発見,活用がある授業を構成することで,児童は考えることのよ さを学び,よりよく考えることができるようになると考え,「数の計算の不思議さ・意外性」

「規則性を発見する楽しさ」を味わえるような課題と学習活動を仕組んだ授業を行った。

 課題は残るものの,主体的に課題に取り組む姿,効率よく解決するために規則性やアイデ アを見つけだそうとする姿が見られるようになってきた。

1 「理数の面白さや深く追究することの楽しさを味わわせる」ための構想 

(1) 追究意欲がふくらむ単元構想 

「かけてもひいても同じ数になる数の計算を見つけよう」と提示することで,子どもたちは

「本当にそんな数があるかな」と疑問をもつ。次に,かけてもひいても答えが同じ2つの分 数の組み合わせを提示することで,整数では成り立たないことが分数では成り立つことがあ ることを知る。そこから児童は,他の分数の組み合わせでも成り立つことがあるか追究意欲 をふくらませ,学習活動に取り組むことができる。そして,分子が1同士の分数で成り立つ 組み合わせから,分子が2同士や3同士の分数では成り立つ組み合わせがあるかどうかにつ いて主体的,意欲的に学習に取り組むことができる。 

 

(2) 規則性を見つけ,考える算数的活動 

算数の学習の中で,「あっ!」「もしかして!」「いつ も〜になっている」などと規則性を児童が見つける場 面がある。こうしたときには,他の場合はどうか,こ のきまりを使ってうまく解決できないかと主体的に考 える姿が見られるようになる。また,友達に伝えたい と意欲的に発表しようとする。

本単元では,「かけてもひいても同じ数の計算」で分数の分母の○や□に数字を入れて組み 合わせのきまりを自分なりの観点で見付ける算数的活動を取り入れる。この数と計算の中に 潜むきまりを探すことが算数的活動となる。また,見つけたきまりを全体の話合いで発表し,

自分の考えを確かめ,友達の考えを聞くことから,どんなときでも成り立つきまりがあるこ とに気付くことができる。これらの算数的活動から,算数の不思議さ,面白さ,美しさを感

(2)

じ,味わうことができる。 

 

(3) 考える楽しさを味わえる発展的な教材 

「楽にできる」「こうすると簡単だ」という方法を見つけ出そうとすることは,数学的な思考 を働かせる大きな原動力になる。大変なことをしなくてはならない場合にも,ある手続きを することで,労力が大きく節約されることがある。そんなときには,考え,追究することの よさ,楽しさを感じることができると考える。このよさを実感することができた児童は,あ る特別な場合に成り立つことではなく,「この場合はどうなるのか(成り立つのか)」「これで できたのだから,今度はこうすればできるはずだ」と適用場面を広げていくようになる。

本単元では,分子が1同士の組み合わせだけでなく,分子が2同士,3同士の分数でも成 り立つ組み合わせがあるか確かめる学習活動を通して,分子と分母の関係のきまりに気付か せる。そこから,分子がどんな整数同士でも成り立つ組み合わせを見付けることができる。

つまり,自分たちでそのきまりを発見し一般化できるなど発展的に考える楽しさを味わうこ とができる。

 

(4) 本時の構想 

   本単元は,分数のかけ算とわり算の発展的な学習として行う授業である。「既習事項を活か して考えたり,きまりを見つけ,数理の面白さを感じたりする」こと,「意欲的に追究する」

ことをねらって授業を構想する。 

    本時では,□×○=□−○のように,かけてもひいても同じ数になる分数の組み合わせを 見つけ,そのきまりを活かすことによって,かなり難解な分数計算も,より簡単に解くこと ができるという面白さに気付かせるよう工夫する。 

規則性を発見する面白さ 

前半は,同じ分数によるかけ算とひき算の答えが一致するものがあることに気付かせ,

それが成り立つ分数の組み合わせには,きまりがあることを発見させる。

『かけ算は増えるもの,ひき算は減るものだから,かけ算とひき算の答えが一致するこ とはありえない。』と考えがちである。しかし,1より小さい数をかけるかけ算では,積 が被乗数よりも小さくなることは既習事項である。ここに帰着させることで,分数の組 み合わせを発見していくことができると考える。見つけ出した組み合わせは,順序良く 板書し,児童の力できまりを見つけ出すことができるようにする。その過程において,

数理の不思議さや面白さ,美しさを感じ,味わうとともに,意欲・関心を高め,考える 楽しさも味わうことができると考える。

 

活用による労力の節約 

後半は,見つけたきまりを活用し,難解な計算 を楽に処理する方法を考えさせる。児童が分数計 算をして,『面白い』とか『便利だ』と感じるとき の一つは,一見難しそうだと思った問題も,やっ てみるとどんどん約分ができて案外簡単にできた ときだと考える。つまり,労力が節約され(時に

(3)

は大幅に),自分が想定していたよりもずっと楽に課題解決できたときである。難しそう だと思ったときほど,効率的にできる方法を考えるようにさせたい。

ここでは,コツコツと計算をするのも一つの方法として認め,見つけたきまりを有効 に活用することと比較することで,より算数のおもしろさを実感することができると考 える。一方,児童の実態から,見つけたきまりを活用して計算することに気付く児童は そう多くないと考える。児童が自分で気付くことができない場合には,「前半で見つけた きまりが入っている部分はないかな」などの声がけで,発見したきまりを活用した解法 もできることを気付くようにする。全児童がきまりを使わなくても,使って計算した児 童の説明を聞いたり,式を見たりすることで,「なるほど」「自分もやってみよう」「こっ ちのほうが簡単だ」と考え,そのおもしろさを体感することができると考える。

 

(5) 指導と評価の計画 

学習のねらい 学習活動 評価規準

○ かけてもひいて も答えが同じに なる分数同士の 組み合わせを見 つ け よ う と す る。

○分数計算の不思 議さ,面白さ,美 しさを感じる。

・ 分子が1のかけ算,ひき 算 を 計 算 し て 気 付 い た ことを話し合う。

・       に な る よ う な 分 数 の 組 み 合 わ せを見つけ,気付いたこ とを話し合う。

・  見 つ け た こ と を 活 か し て 難 し い 計 算 問 題 を 解 いてみる。

・  かけ ても ひ いて も答 え が同 じ にな る分 数 同士 の組 み 合わ せ を見つけようとしている。(態 度)

・  かけ ても ひ いて も答 え が同 じ にな る分 数 同士 の組 み 合わ せ がど んな と きに 成り 立 つか 考 えている。(ノート・発表)

・ 見つけたことを活かして,難解 な分数計算を解き,分数計算の 不思議さ,面白さ,美しさを感 じ,味わう。(ノート・発表)

○ かけてもひいて も答えが同じに なる分数同士の 組み合わせを見 つけようとした り,そのきまり をみつけようと したりする。

○ 分数計算の不思 議さ,面白さ,

美しさを感じ,

味わう。

・       が 成 立 す る よ う な 分 数 の 組 み 合わせを見つけ,気付い たことを話し合う。

・ 分子が3や4,または好 き な 数 の 分 数 に つ い て も調べてみる。

・  かけ ても ひ いて も答 え が同 じ にな る分 数 同士 の組 み 合わ せ を見つけようとしている。(態 度)

・  かけ ても ひ いて も答 え が同 じ にな る分 数 同士 の組 み 合わ せ がど んな と きに 成り 立 つか 考 えている。(ノート・発表)

・ 分数計算の不思議さ,面白さ,

美しさを感じ,味わう。(ノー ト・発表)

× =

2 2

2 × =

(4)

2 授業の実際 

(1) ねらい 

かけてもひいても答えが同じになる分数同士の組み合わせを見つけ,分数計算の不思議 さや面白さ,美しさを味わう。 

 

(2) 展開 

【□×○=□−○が成り立つ計算があるか考える】

 整数の計算では成り立たないことから,分数の計算へと 視点を変えさせるためである。

C:「できない。」

C:「小数が入ればできそう。」

 という反応であった。分数計算への視点が出てこなかったため,

という課題を与えた。 

  試行錯誤しやすいように,ワークシートを使って考えさせた。 

児童の多くは,はじめはあてずっぽうに数字を入れていたが,

次第に成り立つ組み合わせを見つける児童が出てきた。ひとつで も見つけた児童には,できるだけ多くの組み合わせを見つけるよ う声をかけた。そんな中から,「見つけたよ。」「あっわかった!」

「いっぱいできる。」という声が聞かれるようになった。 

成り立つ組み合わせの式と,成り立たない組み合わせの式を板 書し,成り立つ場合のきまりを考えさせた。 

                           

□×○=□−○にあてはまる数はありませんか。

にあてはまる分数の組み合わせを見つけよう。

できる       できない   

               

  ・・・ 

1 1 1

1 × = −

=1 3 1 2 1×

=1 3 1 2 1−





20

= 1 5 1 4 1×

20

= 1 5 1 4 1−





15

= 1 5 1 3 1×

15

= 2 5 1 3 1−





30

= 1 6 1 5 1×

30

= 1 6 1 5 1−





42

= 1 7 1 6 1×

42

= 1 7 1 6 1−





(5)

児童が見つけ,発表したきまりは次のようなものだ った。 

・ 分母の数が1ちがう。 

・ 分母が先に大きい数だとできない。(ひき算) 

・ 分母がどんなに大きい数でもできる。 

本時では,一桁の分母の分数のみを全体の前で扱っ たが,  や   といった数で確認する児童もいた 

       

ので,次時には,成り立つ例を多く並べ,組み合わせは限りなくあること,計算が大変で はあるが,分母の数がどんなに大きくなっても1違いならば式は成り立つことが確認され た。 

 

【見つけたきまりを活かして】 

今日見つけたことを生かして,こんな問題を解いてみましょう。

 

前半で見つけたきまりの活用として,上のような計算問題を与えた。児童には,6つに 区切って,順々に式を延ばしていく形で提示した。 

   大変長く,通分を何度もしなければできないため,一見簡単には解けそうもない問題で ある。問題が提示された直後の児童の姿には大きく2つの様相が見られた。 

               

順序良く,こつこつとかけ算,通分を繰り返す。 

すぐには計算しない。 

ア:単純に計算するのではなく,簡単に計算できる方法はないかと考えている。

イ:どうしたらいいか分からず,何もできない。 

100 1

10 1 9 1 9 1 8 1 8 1 7 1 7 1 6 1 6 1 5 1 5 1 4 1 4 1 3 1 3 1 2 1 2 1 1

1

× + × + × + × + × + × + × + × + ×

30 1

(6)

 

本時の中では,       を活用すればいいということを児童が自力で発見するこ とはできなかった。そこで,上記の「すぐには計算しない」児童に対し,式の中の9つあ る分数のかけ算の部分に注目させた。 

分母が1違いであること,分子は1であることを確認し,その部分を取り出して,直前 にきまりを見つけた分数のひき算に置き換える方法をヒントとして提示した。 

そのため児童のワークシートは次の2通りとなった。 

① 

 

②       

 

   ①のように,粘り強くこつこつと解いていく方法では,結局児童は一人として答えにた どり着くことはできなかった。 

②のように分数の加減のみの式に変形した後, 

       

のように順に相殺されていくことを利用して,一気に答えにいたる鮮やかさに感動を覚え てほしいと考えていた。しかし,児童が目をつけたのは,      の部分だった。 

 

以下発表児童の説明である。 

 

      の部分に注目して計算すると, になって,次は      をやる。 

 

そうすると,また, に戻って,その次も同じように  に戻る。 

 

これを繰り返していくと,最後に    になって,答えは   になる。 

 

一気に相殺するという形ではないが,順にひいた分をたしていくから, に毎回戻る。そ   

      ・・・ 

1 1 1 1× =

2 1 2 1 1 1− +

1 1

3 1 3 1 1 1 − +

1 1

10 9 10

1 1 1 −

10 1 9 1 9 1 8 1 8 1 7 1 7 1 6 1 6 1 5 1 5 1 4 1 4 1 3 1 3 1 2 1 2 1 1

1

× + × + × + × + × + × + × + × + ×

90 1 72

1 56

1 42

1 30

1 20

1 12

1 6 1 2

1 + + + + + + + +

=

10 1 9 1 9 1 8 1 8 1 7 1 7 1 6 1 6 1 5 1 5 1 4 1 4 1 3 1 3 1 2 1 2 1 1

1 − − − − − − − − −

= + + + + + + + +

10 1 9 1 9 1 8 1 8 1 7 1 7 1 6 1 6 1 5 1 5 1 4 1 4 1 3 1 3 1 2 1 2 1 1

1

× + × + × + × + × + × + × + × + ×

2 0 1 2 1 + =

− 0

3 1 3 1 + =

− 0

4 1 4 1 + =

2 1 2 1 1 1 − +

1 1

1

1

(7)

して最後に簡単な式     になるので楽に計算できるというものである。 

 

事前に考えていた「次々に相殺されて と  が残る」という考え方にほぼたどり着くこ とができた。 

 

【授業後に児童から出てきたきまり】 

本時の中では出てこなかったが,児童が見つけたきまりはもうひとつあった。かけ算を 先にして通分していくという単純ではあるが,計算の手順としては大変な方法の中から発 見したものである。 

つまり,最後のかけ算の2つの分母の数が,それぞれ答えの分子と分母になっていると いうものである。一気に通分することがたいへんだったために,順に計算していたらきま りを見つけたという。このきまりが,「すごい!」「なるほど!」「わかりやすい」と最も児 童の支持を得たものになった。 

   

3 実践の考察とまとめ 

(1) 規則性を発見する面白さについて 

「かけてもひいても同じ数になる2つの分数を見つ        けよう。」と提示し,分数の組み合わせを見つける活       動に入った。児童が自ら積と差が等しい分数の組み合        わせを見つけることができた。また,友達が見つけた       組み合わせと比べ,共通するきまりを発見することな        ど,追究意欲を膨らませて学習活動に取り組むことが        できた。これらを通して,規則性を見つけることの楽しさを味わった児童が多くいた。

 

                   

                  

・・・・・・ 

 

                       

○ 最初に問題を見たとき,難しそうだなと思ったけど,通分ができなくて大変でした。

でも,きまりが見つかると簡単にできました。 

○ 2,6,12,20,30,42,56,72,90の最小公倍数を見つけるのが大 変だった。 

○ 難しかったけど面白かった。きまりを見つけるのが楽しかった。 

○ 最初はぜんぜん意味がわからなかったけど,Aさんの説明(上記の考え方)を聞いて わかってくると,法則も理解できました。 

10 1 1 1    10

1 1 1 −

3 2 6 1 2 1 3 1 2 1 2 1 1

1 × + × = + =

4 3 12

1 6 1 2 1 4 1 3 1 3 1 2 1 2 1 1

1 × + × + × = + + =

+

× +

× +

×

4

1 3 1 3 1 2 1 2 1 1

1

× × =

10 1 9 1 9 1 8

1

10

=

9

… …

(8)

(2) 活用による労力の節約について 

自ら発見した規則を活用し,問題を工夫して解いていた。予想していた解法とは違い,

子どもらしい発想からの発見であった。これは,ただ闇雲に計算するのではなく,よりよ い方法はないかと考えながら取り組んでいる姿から生まれたものと捉えられる。また,難 解な問題をうまく解くコツはないかと考える姿が見られた。「すぐ計算しよう」というだけ でなく,「どうやって計算しよう」と解決の方針を立てて取り組む姿が見られるようになっ てきた。今までに学習したことが使えないかと考え,常に効率よく処理する方法を考えよ うとする態度が育ってきている。こうした態度が数学的な考え方を育てる基礎になると考 える。

計算が複雑で大変な問題を「かけてもひいても同じ数になる」分数の組み合わせを活か すことにより,簡単に解くことができる面白さを体感させたかった。しかし,児童の多く は,式全体に目を向けることができず,一つ一つの計算をしていったために,その面白さ を体感するには至らなかった。ヒントとして,直接その方法を提示したが,結果として,

児童の計算の手順とのズレが見られたと考えられる。計算せずに簡単に解けることに気付 かせられるような教師の支援が必要であった。

 

(3) 指導内容の吟味について 

本時の指導内容は45分間ではとてもおさまりきらないものであったと考える。2時間 の小単元と考えたとき,次時の学習に考えていた積と差が同じになる計算の「分子が2や 3の場合を考えること」を本時で扱い,難解な分数計算の解決を2時間目に持ってくるこ とも考えられた。そうすることで,分子が1の式について,その積と差がなぜ同じになる のかを深く考えさせることができたと考

える。また,難解な計算の式を細分化して 提示したり,着目点を示したりする支援が 必要であった。

児童の実態と教材のバランスをもっと考 慮する必要があった。今回は,教材に意識 を重く置き過ぎたため,児童の実態に合わ ない展開を選択してしまった。

【参考文献】

・ 「2学期計算ドリル」文溪堂(2008)

・ 森川幾太郎監修「できるできる算数練習帳6年」きょういくネット(2005)

・ 細水保宏著「考える楽しさを味わう」東洋館出版(2001)

参照

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