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酒井・宮里論文へのコメント

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酒井・宮里論文へのコメント

2011.3.23 RIETI

森川

○分析の概要

・家計研パネル(

14

年間)を使用して、補償賃金格差の考え方に基づき(非)ファ ミリー・フレンドリーな職場特性が転職女性の賃金に及ぼす効果を計測。

・通勤時間、育児休暇、介護休暇、企業規模をファミリー・フレンドリーに関する 職場特性データとして使用。

・未婚/既婚、フルタイム/パートタイム、持家/借家別に推計。

・分析結果:既婚女性において通勤時間の延伸に対する補償賃金が存在(他方、通 勤時間の短縮に対する負の補償賃金は確認されず)。ただし、この関係はパート タイム労働者でのみ確認される。

○コメント

・ワーク・ライフ・バランス(

WLB

)に対する関心が高まる中にあってエビデンス に基づく分析は残念ながら未だ限られており、ミクロデータを用いた実証研究と して貴重な貢献。サンプル数が少ないという制約はあるが、分析方法も丁寧で、

テクニカルに大きな問題はないと考える。

・通勤時間の係数の大きさは比較的小さいと控えめに記述しているが、通勤時間の 増加が平均値+1標準偏差(約

40

分)だと補償賃金は既婚女性において約

12

%で あり、それなりの経済的マグニチュードと言える。1

・育児休暇、介護休暇、通勤時間短縮への補償賃金が有意に計測されないこと自体 が一定のインプリケーションを持っているのではないか。賃金の減少を受け入れ てでも

WLB

を重視したい女性がそうした職場を選択することは現実には難しく、

結果として退職(専業主婦)を選択している可能性があるかも知れない。

・なお、引用していただいた

Morikawa

(

2010

)は、正社員固有の仕事上の拘束への補

償賃金を

10~20%と分析しているが、この数字は現実の賃金格差ではなく、主観

的な「望ましい補償賃金格差」。

WLB

と補償賃金を考慮した賃金水準の組み合わ せ(賃金の柔軟性)が重要なことを指摘。

1 ただし、通勤時間を含む拘束時間当たり賃金で考えるとずっと小さいか有意ではなくな る可能性。

(2)

○その他

・家計研パネル調査には転職者に対して「なぜ、あなたは現在の会社等を選びまし たか」との設問があり、「休日、休暇が多い」、「拘束時間が少ない、労働時間 が自由になる」、「家に近い、通勤時間が短い」といった選択肢がある。未婚/

既婚といった区分だけでなく、例えばこれらと賃金の関係を分析することも考え られるのでは?

・転職者のサンプルは約

600

と少ないため、多くのコントロール変数を用いるのは 難しい。他方、同パネル調査では仕事時間(

10

分単位)の情報が利用可能であり、

転職者にサンプルを限定せず、仕事時間の変化と賃金の関係を全サンプルで分析 することも考えられるのでは?

参照

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