河川工学 ( 第 12 回 )
計画対象水文量の決定方法
洪水制御計画における河道計画
計画対象水文量の決定方法
降水量や河川流量などの水文量の発生確率はある確率密度関数
(
probability density function
)に従う.我々が観測で得られる情報 は無数の集団(母集団;population
)の中から無作為抽出された一 部の情報にすぎない(すなわち標本;sample
).標本から母集団が従う確率分布を求め,その確率分布から任意の 水文量の発生確率や非超過確率などを求める.
確率密度関数として代表的なものに正規分布(
normal distribution
, あるいはガウス分布(Gaussian distribution
)ともいう)があげられる.これは左右対称な分布である.
2 0 2
( )
( ) 1 exp
2 2
x x
f x σ π σ
−
= −
σ
:標準偏差,x 0
:平均値降雨や河川流量などの水文量は左右対称な正規分布よりも,
非対称な確率分布に従うことが多い.
対数正規分布,ピアソンⅢ型分布,対数ピアソンⅢ型分布,
Gumbel
分布変量
(x)
頻度(確率密度)f(x)
x r f(x r )
F(x r )
W(x r )
( r ) 1 ( r ) W x = − F x
( r ) f x
( r ) x
r( ) F x f x dx
= ∫ −∞
:x r
を越えない確率(非超過確率):
x r
を越える確率(超過確率):
x r
の発生確率T
年確率雨量よりも大きい雨の降る確率を「T
年確率雨量の超 過確率」100
年確率⇒1/100
(1%
)の確率で100
年確率雨量以上の雨 が降る50
年確率雨量の超過確率⇒1/50
=0.02
(2%
)10
年確率雨量の超過確率⇒1/10
=0.1
(10%
)T
年確率雨量よりも小さい雨の降る確率を「T
年確率雨量の非 超過確率」100
年確率⇒1-1/00
(99%
)の確率で100
年確率雨量以下の 雨が降る50
年確率雨量の非超過確率⇒1-1/50
=0.98
(98%
)10
年確率雨量の非超過確率⇒1-1/10
=0.9
(90%
)なお,雨量に限らず確率年(
return period
)は他の水文量(河 川流量など)にも適用でき,確率水文量という.水文資料(データ)から(非)超過確率を求める手法は種々提案 されている.
対数正規分布:岩井法,石原・高瀬法 一般化極値(
GEV
)分布:L
積率法 など近年はコンピュータの発達より,数値計算で求めることが多い.
図式解法が手間がかからず,直感的で分かりやすい.
年最大降雨量のデータ(データ個数
N
)を小さい方から順に並 べる.i
番目のデータx i
の非超過確率F(x i )
を以下の式で求める(プロッティングポジション公式という.得られた値はプロッティ ングポジションという.)
( ) i 1 2 i a
F x N a
= −
+ −
a=0:Weibull
(ワイブル) プロットa=1/2:Hazen
(ハーゼン)プロットa=2/5:Cunnane
(カナン)プロット降水量(mm)
Weibull Hazen
48 4.8 2.5
55 9.5 7.5
60 14.3 12.5
68 19.0 17.5
78 23.8 22.5
80 28.6 27.5
84 33.3 32.5
90 38.1 37.5
97 42.9 42.5
104 47.6 47.5
110 52.4 52.5
118 57.1 57.5
131 61.9 62.5
140 66.7 67.5
153 71.4 72.5
160 76.2 77.5
172 81.0 82.5
180 85.7 87.5
205 90.5 87.5
220 95.2 97.5
非超過確率(%)
p
.148
演習問題
2
対数確率紙にプロットする.
13
13
( ) 13 0.619 20 1
13 1/ 2
( ) 0.625
20 F x
F x
= =
+
= − =
N=20 ( )
i 1 2
i a
F x N a
= −
+ −
年最大日降水量(
mm
) 非超過確率(%
)100
年確 率10 100 1000
0.01 0.1 1 5 10 20 30 40 50 60 70 80 90 95 99 99.9 99.99
Weibull Hazen 10年
確率
300mm
98%(1-1/50)
50
年確率( ) 2
0
( ) 2 exp
F ξ ξ t dt
= π ∫ −
0
log x b x b ξ α = −
−
( )
( ) 1 1 ( ) W x = 2 − F ξ
岩井法 超過確率
確率密度関数は非対称な正規分布(対数正規分布):
水文資料より定数
α
,b
,x 0
を求める.その後,上の三式を用いれば任意確率変量
x
に対する超過確率が求まる.b t
頻度(確率密度)
非超過確率関数
2
0
( ) exp log x b
f x = − α x − − b
0
0
log log 2.031
107.4 x x
n x
= =
=
∑
降水量
log
220 2.342423 205 2.311754 180 2.255273 172 2.235528 160 2.20412 153 2.184691 140 2.146128 131 2.117271 118 2.071882 110 2.041393 104 2.017033 97 1.986772 90 1.954243 84 1.924279 80 1.90309 78 1.892095 68 1.832509 60 1.778151 55 1.740363 48 1.681241
平均
2.031012
xs xt b
1 220 48 -18.3226
2 205 55 -5.7469
3 180 60 -29.1571
4 172 68 6.398413
5 160 78 40.7431
6 153 80 38.74945
7 140 84 24.48261
8 131 90 41.16774
9 118 97 -443.8
10 110 104 118.45
2 0
2 0 s t
s t
x x x
b x x x
= −
+ −
雨量の全データ数の
10%
の個数のb
の平均を用いる.この例題では
20 × 0.1=2
(個)のb
の平均を採用する.最大値と最小値のデータを対応させる.
b
が負値であることは原理的におかしい(負の雨量を意味する)ので,正の 値をとる4
,5
番目の値を採用する.12.03 b = −
23.57
b =
2
0
1 2
log
2 1.273 0.3568 20
2.803
x b
n x b
α
α
−
= −
= × =
=
∑
23.57 2.803log
107.4 23.57
ξ = x −
−
( )
( ) 1 1 ( ) W x = 2 − F ξ
降水量
(log(x-b)/(x0-b))^2 220 0.136758216 205 0.112432551 180 0.07339796 172 0.061564637 160 0.044736655 153 0.035583346 140 0.020353425 131 0.011604915 118 0.002673978 110 0.000175961 104 0.000323331 97 0.003309234 90 0.010208114 84 0.020205733 80 0.029545971 78 0.035179178 68 0.076023257 60 0.131000777 55 0.181522936 48 0.286734546
合計
1.273334721
( ) 2
0
( ) 2 exp
F ξ ξ t dt
= π ∫ −
上式の計算は数表を用いるかあるいはコンピュータで数値計算を行う.
x=300(mm)
の場合:ξ = 1.452
確率年と
ξ
の関係は以下のとおりである.(高瀬信忠著:河川工学入門,
p.84
,森北出版,ISBN4-627-49501-3
) 岩井法では300mm
の降雨は50
年 確率と判断される.(図式解法でも
50
年確率)( ) 2
0
( ) 2 exp
F ξ ξ t dt
= π ∫ −
確率年 ξ
49 1.4464
50 1.452
51 1.4578 100 1.645
100
年確率ではξ=1.645
となる.この値となるx
を逆算するとlog( x − 23.57) = 0.3568 ξ + log(107.4 23.57) −
0.3568 1.645 log(107.4 23.57)
10 23.57 347.4( )
x = × + − + = mm
23.57 2.803log
107.4 23.57
ξ = x −
−
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450
T 1 5 S5 S9 S 13 S 17 S 21 S 25 S 29 S 33 S 37 S 41 S 45 S 49 S 53 S 57 S 61 H2 H6 H1 0 H1 4
流域平均年最大2日雨量(mm) 計画雨量360mm
2005年(H17) 台風14号 414mm
1950年(S25) キジア台風 329mm
H17年までのデータ H16年までのデータ
平方根指数型最大値分布 411.7mm 401.1mm岩井法 342.3mm 322.2mm
100
年確率雨量錦川の流域平均年最大
2
日雨量10 100 1000 0.01
0.1 1 5 10 20 30 40 50 60 70 80 90 95 99 99.9 99.99
ワイブルプロット,
H17
年のデータは 除く2
日雨量(mm
) 非超過確率(%
)錦川の流域平均年最大
2
日雨量99.6%
0.4%=0.004=4/1000
=1/250 250
年確率400mm
の雨量洪水制御計画における河道計画
河川計画
総合河川計画(各種計画の基本方針の設定)
洪水防御計画 低水計画
砂防計画
環境保全計画
地すべり防止計画
急傾斜地崩壊対策計画 など
改訂版
建設省河川砂防技術基準(案)同解説 計画編 建設省河川局監修
(社)日本河川協会編 山海堂
総合河川計画
総合河川計画は,河川に関する各種計画の基本と なる事項を設定するとともに,流域内の諸計画に対す る河川からの対応の原点になすものとして策定する.
河川とその流域に関する計画である.
したがって,総合河川計画においては,流域の区分 および,その評価を行うことによって河川から見た流 域のあるべき姿を設定するとともに,陸水の制御・誘 導・利用,土砂流出の制御・調節および環境の維持・
改善等に関する基本方針を設定するものである.
総合河川計画は,国土保全上または,国民経済上
重要な水系について,通常は水系ごとに策定するもの
とする.
個々の目的のもとにつくられる施設計画が,河川お よびその流域の一面からの把握に止まり,全体とし ての配慮に欠ける危険性を排除する.
河川に関する治水計画,利水計画などの立案の基 礎条件を設定
河川・流域の目標の基本的方針の設定.細かい施
設計画までに及ぶものではない.
1.流域に関する事項(流域計画)
河川から見た流域のあるべき姿の設定 2.陸水に関する事項(陸水計画)
流出機構の評価と制御 治水・利水機能の評価と陸水 の誘導計画
3.土砂に関する事項(土砂計画)
流出土砂の制御・調節システム 許容土砂量,供給土 砂量の設定
4.環境に関する事項(環境計画)
自然環境の適切な保全 河川空間,水質・水量の維
持・改善
洪水防御計画( flood control plan )
洪水防御計画は,河川の洪水による災害を防止または軽減す るため,計画基準点において計画の基本となる洪水のハイドロ グラフ(以下基本高水という)を設定し,この基本高水に対してこ の計画の目的とする洪水防御効果が確保されるよう策定する物 とする.
このため,洪水防御計画は,基本高水に対してこの計画により 設定される施設が水系を一貫して相互に技術的,経済的に調 和がとれ,かつ,十分にその目的とする機能を果たすよう策定さ れなければならない.
また,洪水防御計画の策定にあたっては,河川の持つ治水,
利水,環境等の諸機能を総合的に検討するとともに,この計画 がその河川に起こりえる最大洪水を目標にさだめるものではな いことに留意し,計画の規模を越える洪水(以下,超過洪水)の 生起についても配慮しなければならない.
計画規模の決定
計画降雨(群)の決定
基本高水(たかみず)の決定 洪水処理方法の決定
計画高水・計画高水流量の決定 各洪水防御施設の計画
流出解析
河道断面の拡大 ダム,遊水池など 河川の重要度
水系一貫
洪水調節計画 超過洪水の配慮 ハイドログラフ(群)
計画ハイドログラフ(カバー率
50%
以上)実績降雨(群)
基本高水はハイドログラフで表現される.
現地観測のハイドログラフから直接基本高水をきめるのではない.
データ不足
計画降雨から流出解析で基本高水を決める.
降雨はデータが豊富 計画降雨:
降雨の継続時間,総降水量,降雨の時間分布,降雨の空間分布 を決める.
総降水量は過去に観測された降水量を統計的に処理して求められる.
継続時間や降雨の時間分布はすなわちハイエトグラフに相当する.
過去の重大な洪水を引き起こしたハイエトグラフを参考に決める.
計画降雨を複数用意する(計画降雨群)
計画された総降水量を基に過去のハイエトグラフを参考 にして計画ハイエトグラフを決める.
実績部分
引き伸ばし部分 引き伸ばし部分と実績部分の和が計画降雨
引き伸ばし率は
2
倍程度時間 降雨量
計画降雨継続時間
実績降雨継続時間が計画降雨継続時間よりも短い場合 実績降雨継続時間
時間 降雨量
計画降雨継続時間 実績降雨継続時間
切り捨てる
初期損失 分のみ付 加する.
計画降雨継続時間が実績降雨継続時間よりも短い場合
計画降雨(計画ハイエトグラフ)から流出解析により流 出流量を算定しハイドログラフを求める.
複数の計画降雨から複数のハイドログラフを求める.
これをピーク流量の大きい順にならべ,既往最大洪水 を含み,かつ並べた順の中位以上のもの(カバー率 50% )を基本高水(たかみず)として採用する.
さらに河道,ダムなどに配分する計画高水(こうすい)
流量を決定する.
河道計画
洪水防御計画の基本は計画高水流量を安全に下流へ流すこ と.所定の流量を流しうる河道の設計が重要.この計画を河 道計画(
channel design
)という.河川の横断あるいは縦断形 状を改変することを河川改修(river improvement
)という.河道ルート:改修前の河道の蛇行性状を考慮して平面形状 を決める.(堤防の位置,放水路,捷水路(しょうすいろ))
河道縦断形状:勾配が急になりすぎないようにする.
河道の低下や堆積がおこらないようにする.
河道横断形状:計画高水位(
high-water level
)が堤防よりも 低くなるようにする.洪水対策 河道断面の拡大
河床の掘り下げ(浚渫),河幅の拡幅 堤防の建設
ダム 洪水時に流量の一部を貯水池に貯留する.
遊水池 洪水流量の一部を調整池に貯留させる.
調整池
時間 流量
捷水路(
cut-off channel
):河川湾曲部は流れにくく,また 水衝部となり浸食などの被害が発生しやすい.そこで湾 曲部を回避するように河川を新しい川で結ぶ.これを捷 水路またはショートカットという.石狩川,千代川放水路(分水路):河道の洪水流量流過能力が低い場 合で,近くに海や大きな河川がある場合,新しい川を掘 削して,海や大きな河川へ流すことが行われる.これを
分流(
diversion
)という.このときの新川を放水路(分水路)という.大河津分水(信濃川),太田川放水路
捷水路 本川
放水路 海または川