• 検索結果がありません。

ルテナシクロベンテンを中間体とする新規環化反応の開発

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ルテナシクロベンテンを中間体とする新規環化反応の開発"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 薬 学 ) 田 中 大 輔

学 位 論 文 題 名

ルテナシクロベンテンを中間体とする新規環化反応の開発 学位論文内容の要旨

遷 移 金属 錯 体を 用い たメ タセ シス 反応 は有 機合 成化 学に これ まで に ない 新た な概 念 を創 出 した 。当 研究 室で はル テニ ウム錯体を用いて分子内エニ ンメタセシスの再検討 を行 っ たが 、そ の研 究途 上興 味深 い結果を得た。即ち、多重結 合上に置換基を持たな いエ ニ ンと ルテ ニウ ム錯 体を エチ レンガス雰囲気下で反応させ たところ、メタセシス 生成 物 と同 時に 副生 成物 とし てエ チレンガスが分子内に取り込 まれた環化体が生成し た。得られた環化体はジエン部 位を側鎖に持つ。この環化体は恐ら・く基質のエニンが 低原 子 価ル テエ ウム に酸 化的 環化 付加しルテナシクロペンテン を形成する。ルテナシ クロ ペ ンテンに対しエチレンが挿入 しルテナシクロヘプテンを与え、p―水素脱離、還 元的 脱 離を 経て 環化 体が 生成 した ものと考えられる。エニンと ルテニウム錯体の反応 で生 成 する ルテ ナシ クロ ペン テン は、有用な反応中間体として 注目されているものの ルテ ナ シクロペンテンに多重結合が 挿入後、p‐水素脱離が進行 する反応はこれまで全 く知 ら れて いな い。 そこ で演 者は 本反応の一般化について検討 を加えることにした。

更に 本 反応 の研 究途 上、 ルテ ナシ クロペンテンを経由する新た なニつの環化反応を見 出した。

  本反応の至適条件を検討した ところ、Cp*RuCl(cod)錯体 を用いると5nlol%の触媒量 でも 反 応は 室温 で速 やか に進 行し 、ジェンを側鎖に持つ環化体 が収率よく得られるこ とが わ かっ た。 そこ で本 反応 のメ カニズムを確認するために末 端アルキンを重水素化 した エ ニン を用 いて 反応 を行 った 。その結果、ジエン上に重水 素の導入された環化体 が85% の 収 率 (D化 率90% ) で 得 られ た。 この 結果 は、 エニ ンと ル テニ ウム 錯体 か ら生 成 した ルテ ナシ クロ ペン テン を経由して反応が進行すると いう当初予想したメカ ニズ ム を支 持す るも ので ある 。次 に、基質の適用範囲の拡大を 目指し、様々なエニン を用 い て反 応を 行っ た。 アル ケン 上にエステル基を持つエニン でも反応は良好に進行 し望みとする環化体が得られた。また、1,1←二置換オレフインを持つエニンを用いたと き 、60℃ ま で加 熱す る必 要は あっ たも のの 目的 とす る5員 環化 合物 が51ワDの 収率 で 得ら れ た。 ー方 アル キン 上の 置換 基にこエステル基、アルキル 基を持つエニンでもエ チレン挿入を伴う環化反応が進 行し、それぞれ望みとする環化体が収率よく得られる。

この よ うに 本反 応は 、多 重結 合上 に様々な置換基を有するエニ ンでもジエン部位を持 つ環化体を収率よく与えた。

  エ ニ ンの 多重 結合 上の 置換 基の 効果を検討している際、アル キン上にアシル基を持 つエ ニ ンを 、エ チレ ンガ ス雰 囲気 下ルテニウム錯体と反応させ たところ、望みとして いた ジ エン 部位 を持 つ環 化体 は痕 跡量 しか 得ら れず 、3員 環を 持つ環化体が定量的に 得ら れ るこ とを 見出 した 。環 化体 の3員 環部 位は 、恐 らく 系中 でルテニウムカルベン が発 生 し、 それ がエ チレ ンと 反応 することによって形成された ものと考えた。すなわ ち、 エ ニン とル テニ ウム 錯体 から ルテナシクロペンテンを形成 するが、恐らくこの場

767

(2)

合 、 置換 基 の カル ポ ニ ル 基が ル テ ニウ ム に 配位 し て いる も のと思 われる。 酸素の配 位 を 受けた ルテニウ ムはエチ レンと 反応しに くく、 速やかに プロト ン脱離、 オレフイ ンの 移動を 伴い、ル テニウ ム一炭素 結合を開裂することで、オキサルテナサイクルを与 える 。これ がルテニ ウムカ ルベン錯 体となり、エチレンと反応し、還元的脱離を経て、

3員 環を 有 す る環 化 体 が 得ら れ たも のと思わ れる。 既に述ぺ たよう に電子求 引性の置 換 基 である エステル 基を持つ エニン は同条件 下でジ エンを持 つ環化 体を与え たが、こ の違 いは、 カルポニ ル基の ルテニウ ムに対する配位能カの差によるものと推測される。

本 反 応機構 を確認す るために 、オレ フイン上 の水素 を重水素 化した エニンを 、エチレ ン ガ ス雰囲 気下ルテ ニウム錯 体と反 応さ世た ところ 、メチル 基上に 重水素の 導入され た 環 化体が 得られた 。この結 果は、 当初予想 したよ うなルテ ナシク ロペンテ ン中間体 から ルテニ ウムカル ベン錯 体を経て 進行するメカニズムを支持するものである。更に、

ル テ ニウム カルベン 錯体が形 成され ているか どうか を分子内 のオレ フィンで 捕捉する こ と によっ て確認し ようと考 えた。 すなわち 、アル キン上の 側鎖に 末端オレ フィンを 持つ1,12ージエン―6‐インを、アルゴンガス雰囲気下、ルテニウム錯体と反応させたとこ ろ 、3員 環 を 持つ 環 化 体 が76%の収 率 で 得ら れ た 。こ の 環 化体は 、ルテ ニウムカ ルベ ン錯 体が分 子内のオ レフイ ンが反応 し得られたものと考えられ、先.の反応機構を支持 す る もので ある。次 に、アル キン上 にアシル 基を持 つ種々の エニン を用いて 反応を行 った 。アル キン上に ブタノ イル基、2‐メ チルプ ロパノイ ル基、 シクロヘキサンカルポ ニ ル 基を 持 つ エニ ン を 用 いて も 、それ ぞれ良好 な収率 で3員 環の形 成を伴っ た環化反 応が 進行し た。また 、側鎖 にベンジ ルオキシ基を持つエニンをエチレンガス雰囲気下、

ル テ ニウ ム 錯 体と 反 応 さ せて も 、高い 収率で3員環 を持つ環 化体を 与えた。 このよう に 本 反応は アルキン 上に種々 のアシ ル基を持 つエニ ンに適用 できる ことが明 らかとな った。

  一方 、アル キンから 末端オ レフィン までの炭 素鎖が 先に用い たジエ ンインよ りーつ 短い1,11‑ジエン‐6−インを、同様にアルゴンガス雰囲気下でルテニウム錯体と反応させ たところ、予想していた3員環を持つ環化体は全く得られず、【2十2十2]環化反応が進行 し、三環式化合物が定量的に生成した。ルテニウム錯体を用いた[2十2十2]環化反応は、

伊 藤 、山本 らによっ て精力的 に研究 がなされ ている が、一つ のアル キンとニ っのオレ フインからなる[2十2十2]環化反応はこれまで殆ど知られておらず大変興味深い。炭素鎖 のーつ短い1.11−ジエン‑6−インを用いると分子内シクロプロパン化ではなく【2十2十2]環 化 反 応が進 行する理 由は次の ように 考えられ る。ま ず基質と ルテニ ウムと反 応しルテ ナ サ イクル を与える が、その 際アル ケンがル テニウ ムに配位 した錯 体とカル ボニル基 が配位した錯体の2っの中間体の平衡となっていると考えられる。1,11―ジエン‑6−イン を 用 いた場 合は、側 鎖のアル ケンが 配位した 錯体か ら反応が 進行し 、アルケ ンが挿入 す る こと に よ って7員 環 ルテ ナ サイ クルを形 成し、 還元的脱 離を経 て三環式 化合物が 得られたものと考えられる。一方、1,12‑ジエン−6‐インを用いた場合は、1,11‑ジエンー6‐ イ ン と比ベ オレフイ ン側鎖部 のメチ レン基が ーつ多 いため自 由度が 大きく、 オレフイ ン が ルテニ ウムに配 位しにく くなっ ていると 考えら れ、ルテ ニウム カルベン 錯体を経 て 反 応が 進 行 し、3員 環 を持 つ 環化 体が生成 したも のと考え られる 。更に、 種々のジ エ ン インを 用いて反 応を試み ること にした。 アルキ ン部と側 鎖のオ レフイン 部を結ぶ   りンカー部分の原子の数が1,11―ジエン‑6‑インと等しいジエンインではいずれの場合 も[2十2十2]環化反応が良好に進行した。本反応はイナミドを持っジエンインにも適用 が 可 能であ り、イン ドール骨 格を持 つ三環式 化合物 を直鎖状 分子か ら一挙に 構築でき た 。 以上の ように両 末端にア ルケン をもっジ エンイ ンから一 挙に三 環式化合 物を得る 新しい[2十2十2]環化反応の開発に成功した。

768

(3)

学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 助教授 助教授

佐藤 高橋 齋藤 小笠原

学 位 論 文 題 名

美洋     保     望 正道

ルテナシクロベンテンを中間体とする新規環化反応の開発

近 年 の 有 機 金 属 化 学 の 進 歩 は 、 こ れ ま で 困 難 であ っ た 分子 変 換 を次 々 と 可能 と し 、 有 機 合 成 化 学 に 大 変 革 を も た ら し た 。 中 で も 、ル テ ニ ウム 触 媒 によ っ て 進行 す る メ タ セ シ ス 反 応 は 、 複 雑 な 生 物 活 性 化 合 物 の 合 成に も 利 用さ れ る など 幅 広 い応 用 性 を 有 し 、2005年 の グ ラ ブ ス 教 授 ら の ノ ー ベ ル 化 学 賞 の 受 賞 へ と 繋 が っ た 画 期 的 な 反 応 であ る 。

  田 中 大 輔 氏 が 所 属 す る 研 究 室 で は 、 以 前 か ら エ ニ ンを 基 質 とし た メ タセ シ ス 反応 の 検 討 を 行 っ て い た が 、 そ の 研 究 途 上 、 第 二 世代 グ ラ ブス 触 媒 を利 用 し たエ チ レ ン ガ ス 雰 囲 気 下 で の メ タ セ シ ス 反 応 に お い て 、 メタ セ シ ス生 成 物 と同 時 に エチ レ ン ガ ス が 取 り 込 ま れ た 環 化 体 が 副 生 成 物 と し て 生 成す る こ とを 見 出 して い た 。田 中 氏 は 本 反 応 に つ い て 詳 細 に 検 討 を 加 え 、1) 副 生 成 物 で あ る エ チ レ ン ガ ス を 取 り 込 ん だ 環 化 体 は 、 低 原 子 価 ル テ ニ ウ ム と 基 質 エ ニ ン とか ら 生 成し た ル テナ シ ク ロペ ン テ ン を 経 由 し て 生 成 す る こ と ,2) グ ラ ブ ス 触 媒 に よ っ て 進 行 す る 反 応 で は な く 、 他 の 二 価 ル テ ニ ウ ム 錯 体 に よ っ て も 進 行 す る こ と 、 な ど を 見 出 し た 。 更 に 田 中 氏 は 本 反 応 の 至 適 条 件 を 検 討 し 、Cp*RuCl (cod)錯 体 が 本 反 応 に 最 適 な触 媒 で あ る こ と を 見 出 し 、 基 質 エ ニ ン と エ チ レ ンか ら ジ エン を 側 鎖に 持 つ 環化 体 が 収 率 よ く 得 ら れ る こ と を 明 ら か と し た 。 本 反 応 の反 応 機 構は 、 ア ルキ ン 末 端を 重 水 素 化 し た エ ニ ン を 用 い た 反 応 に よ り 、 ジ ェ ン 上 に 重 水 素 の 導 入 さ れ た 環 化 体 が85%の 収 率 (D化 率90%)で 得 ら れ る こ と か ら 確 認 さ れ た 。 更 に 基 質 の 適 用 範 囲 の 拡 大 を 目 指 し 、 様 々 な エ ニ ン を 用 い て 反 応 を 行 っ た とこ ろ 、 アル ケ ン 上に エ ス テル 基 を 持 つ エニ ン 、1,1ー 二置 換 オ レフ イ ン を持 つ エ ニン 、 及 び アル キ ン 上に エ ス テル基、 ア ル キ ル 基 を 持 つ エ ニ ン で も エ チ レ ン 挿 入 を 伴 う 環 化 反 応 が 進 行 す る こ と を 明 ら か と した 。

  と こ ろ が 、 田 中 氏 は エ ニ ン の ア ル キ ン 上 に ア シ ル 基を 持 つ エニ ン を 同条 件 下 、反 応 さ せ る と 、 予 期 し た ジ ェ ン 部 位 を 持 つ 環 化 体 は 痕 跡 量 し か 得 ら れ ず 、3員 環 を 持

(4)

つ環 化体が定 量的に得 られること を見出し た。環化 体の3員環 部位は、 恐らく系中 でル テニウム カルベン が発生し、 それがエ チレンと反応することによって形成され たも のと考え られた。 すなわち、 エニンと ルテニウム錯体からルテナシクロペンテ ンを 形成する が、恐ら くこの場合 、置換基 のカルボニル基がルテニウムに配位して いる ものと考 えられ、 プロトン脱 離、オレ フインの移動を伴い、ルテニウム一炭素 結合 が開裂す ることで オキサルテ ナサイク ルを経由し、ルテニウムカルベン錯体が 生成 するとい う反応機 構を提唱し た。この ルテニウムカルベン錯体がエチレンと反 応す ると3員環 を有する 環化体が生 成するこ とになる 。本反応 機構を確 認するため に、 オレフイ ン上の水 素を重水素 化したエ ニンを、エチレンガス雰囲気下ルテニウ ム錯 体と反応 させたと ころ、メチ ル基上に 重水素の導入された環化体が得られた。

この 結果は、 当初提案 したルテナ シクロペ ンテン中間体からルテニウムカルベン錯 体を 経て進行 するとい う反応機構 を支持す るものである。更に田中氏は、ルテニウ ム カ ルベ ン 錯体 が 形成 されてい るかどう かを分子内 のオレフ アンで捕 捉するこ と によ って確認 しようと 考えた。す なわち、 アルキン上の側鎖に末端オレフィンを持 つ1,12一ジェン―

6

―インを、アルゴンガス雰囲気下、ルテニウム錯体と反応させた と こ ろ、

3

員 環 を持 つ環 化体が76%の 収率で得 られた。こ の環化体 は、ルテ ニウム カル ベン錯体 が分子内 のオレフイ ンが反応 し得られたものと考えられ、先の反応機 構を支持するものである。

一 方 田中 氏 は、 ア ルキ ンから末 端オレフ インまでの 炭素鎖が 先に用い たジェン イ ンよりーつ短い1,11一ジェン―6−インを、同様にアルゴンガス雰囲気下でルテニウ ム 錯 体と 反 応さ せ た とこ ろ 、予 想 し てい た

3

員 環を 持つ環化 体は全く 得られず 、

[2十2十2]環化反応が進行し、三環式化合物が定量的に生成することを見出した。ル テニウム錯体を用いた[2十2十2]環化反応は、伊藤、山本らによって精力的に研究が なされているが、一っのアルキン部とニっのオレフアン部から[2十2十2]環化反応が 進行 する例は 極めて少 ない。そこ で田中氏 は、更に種々のジエンインを用いて反応 を試 み、アル キン部と側鎖のオレフィン部を結ぶりンカー部分の原子の数が1,11− ジェン―6−インと等しいジエンインでは[2十2十2]環化反応が進行することを見出し た。 また、本 反応はイ ナミドを持 っジェン インにも適用が可能であり、インドール 骨格 を持つ三 環式化合 物を直鎖状 分子から 一挙に構築できることも明らかとした。

  

以上 のように 、田中氏 はルテニウ ム錯体によるエニンの反応性を詳細に検討し、

ル テ ナシ ク ロペ ン テン 中間体を 経由する 三つの新し い反応形 式の環化 反応の開 発 に成 功した。 また、そ れらの反応 機構を詳 細に検討し、ルテニウムカルベン中間体 の生 成を含む 、これま で報告され ていない いくっか の新しい 機構を提 唱した。8族 に属 するルテ ニウムの 化学は、同 族の鉄や オスミウムに比較してこれまで余り進展 し て いな か った が 、近 年興味深 い反応性 が見出され 注目が集 まってい る分野で あ る。 上述の田 中氏の研 究成果は、 ルテニウ ムの化学に新たな知見として加えるべき 極めて独創性の高いものであり、本審査委員会は田中氏の研究成果に対し、博士(薬 学)の学位を授与するに十分値すると評価するものである。

    

―770―

参照

関連したドキュメント

1) 特に力を入れている 2) 十分である 3) 課題が残されている. ] 1) 行っている <選択肢> 2) 行っていない

Pretazettine(45)(式11)はクリーン型ヒガンバナ科ア

ル(TMS)誘導体化したうえで検出し,3 種類の重水素化,または安定同位体標識化 OHPAH を内部標準物 質として用いて PM

を軌道にのせることができた。最後の2年間 では,本学が他大学に比して遅々としていた

睡眠を十分とらないと身体にこたえる 社会的な人とのつき合いは大切にしている

This novel [7+2] cycloaddition with RhI catalyst involves the unprecedented Csp3−Csp3 bond activation of “normal-sized” cyclopentane ring presumably via the intermediate A..

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

2リットルのペットボトル には、0.2~2 ベクレルの トリチウムが含まれる ヒトの体内にも 数十 ベクレルの