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Academic year: 2021

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児童の発言を促す教師の指導言の在り方について

高度学校教育実践専攻 実習責任教員 川上 綾子 教員養成特別コース 実習指導教員 中妻 佳代 林 侑佑

キーワード: 対話,発言,指導言,児童の実態

1.研究主題について

筆者が目指す授業像は,「対話的な授業」である。

そう考えるようになったきっかけは,大学院授業

「授業づくりのチーム演習」にある。そこでの経 験を通して,筆者は,子どもたちが主体的になっ て,友だちの同じ意見に付け加えて発言したり,

異なる意見にはどの部分がどのように違っている のかを説明したりして,クラス全体で互いに意見 を交換しながら問題解決を進めていくような授業 をしたいと考えるようになった。そのような,筆 者の理想とする「対話的な授業」のためには,対 話によって一人ひとりの考えが広がったり深まっ たりすることが求められる。ここでの「対話」に は,子ども同士の対話,子どもと教師の会話,作 品の作者との対話などが考えられる。子ども同士 や子どもと教師との対話は,個々の考えが明確に なっていない時や多様な視点で物事を考える必要 がある時などに位置づけることが有効であろう。

このような対話を通した学びを,学習の様々な場 面で位置づけることで,子どもたちの学びを深め ていけるような授業展開をしたいと考えた。

2.基礎インターンシップでの授業実践

第5学年社会科「必要な情報を伝える,ニュース番組」

(1)授業概要

本時は,ニュース番組を扱い,テレビのニュー ス番組が放送されるまでの様子を調べ,情報を伝 える放送局のはたらきについて捉えることができ

るようにすることをねらいとする。筆者は,この 授業を行うなかで,児童に身近なものとして新聞 のテレビ欄を導入で用いることで学習意欲を高め,

児童の発言を促せるように心掛けた。また,ニュ ース番組が制作されている様子の映像を見せて視 覚的に捉えさせ,その後児童一人ひとりがワーク シートにニュース番組が制作されるのに必要な人 数や道具,場所や担当の仕事などを書くことによ って,発表しやすくなるのではないかと考えた。

さらに,ニュース番組制作の流れを「①情報を集 める」「②情報を選ぶ・選択する」「③情報を伝え る」の3つに大きく分け,その仕事に関わってい た人やその人たちが気をつけているポイントを①

~③の段階ごとに聞くようにした。

(2)課題

対話的な授業を目指し,児童の発言を促すよう な授業づくりを行っていたつもりであった。それ にもかかわらず,実際の授業では児童からの積極 的発言は多くなく,また数少ないそれも決まった 児童からの発言が主であった。ニュース番組がど のようにつくられているのかの疑問を持たせるた めに,新聞の番組表を教材として利用したが,そ れによって,児童はニュース番組が1日を通して 多く放送されていると捉えただけで,めあてまで のつながりを持たせることが出来なかった。また,

教師(筆者)が主体になり,誘導的な発問が多い 一方で,児童の活動は少なく,その結果,授業が 淡々と進行することとなり,子どもの学習意欲が

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低下してしまったように思う。総合インターンシ ップでは,いかにしたら児童が積極的に授業に取 り組めるかを考えながら指導案づくりや教材づく りをしていきたい。

3.総合インターンシップⅠでの授業実践 第4学年算数科「一億をこえる数」

(1)授業概要

本時の目標は「一億をこえる大きな数を調べよ うとする課題をみつけ,十億の位までの数を正し くよむ。」ことである。筆者は,児童の発言を促す ために,導入部分で,身近な数(人口)を使うこ とにより,児童の学習意欲を高めようと考えた。

子どもたちの小学校の全校人数や鳴門市や徳島県 の人口を例にして比較的大きな数にふれることで 億をこえる数も捉えやすくなるだろうと予想した。

また,既習内容を子どもたちと確認していく作業 を入れた。「10万は1万の何倍か。」などを子ども たちと対話を通して確認することによって,既習 内容を思い出すことができるのではと考えた。ま た,この授業実践では,基礎インターンシップの 授業実践では出来なかったグループ活動を取り入 れようと計画した。

(2)課題

①児童を主体とした授業展開ができなかった 授業の中で児童の理解度に合わせて,臨機応変 に発問を変えることができず,細案に縛られた授 業展開になった。そのため,児童がすでに理解し ているだろう内容も掘り下げて聞き,教師が児童 の発言を誘導したような授業となった。例えば,

日本の人口の読み方について,児童たちはすでに 十分わかっているようだったにもかかわらず,重 ねて読ませたことなどである。授業設計の段階で 児童の実態に合わせた発問内容にするとともに,

問題を解いたり,友達の意見を聞いたりする中で,

学習内容を理解できるような展開にしたい。

②既習事項の振り返りに多くの時間をかけたため,

適用問題の時間が十分に確保できなかった 本時のねらいは,「一億をこえる大きな数を調べ ようとする課題をみつけ,十億の位までの数を正 しくよむこと」であるが,これを児童が十分に達 成するためには数回の適用問題に取り組む必要が あった。しかし,今回,既習事項の振り返りに多 くの時間をかけてしまったために,児童が適用問 題を1問解いただけで,まとめを行った。児童の 実態に合わせながら既習事項の確認を適切に行い,

児童の学びを定着させるために適用問題を解く時 間を確保することを心掛ける必要がある。

③発問に対して特定の児童しか発言できなかった 授業全体の児童の発表回数は増えたものの,既 習事項の確認の場面やポイントを伝える場面で,

教師の発問と児童の意見とで答え合わせをしてい るようになった。そこから間違った発言をしては いけないような雰囲気になり,挙手しなくなった 児童もいたのではないかと思われる。また,発言 の途中で分からなくなった児童がいたが,筆者が 誘導的にやりとりを進め,その児童の意見をしっ かりと聞くことができなかった。どこが分からな いか聞いて,その部分を発問として全員に問いか け共有することで,児童の学びがより深まったの ではないかと考える。

4.総合インターンシップⅡでの授業実践 第4学年算数科 「がい数」

(1)授業概要

本時では,概数に関心をもち,その意味を理解 し,概数の表し方を調べることができることが目 標であった。具体的には,がい数の意味を知り,

四捨五入を使って概数を求めることができるよう にすることをねらいとした。

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筆者は,今回の授業を行うにあたり,まずは子 どもの実態に合わせようと考えた。すべての児童 の関心を呼び起こし,思考を促すためにも,発問 後にペア活動を取り入れるなどして,個々の学習 速度の違いを考慮に入れた支援が大切であると考 えた。また,概数を扱うにあたり,ポイントとな る部分の掲示物を用意して,視覚的に分かりやす い板書を心掛けるようにした。基礎インターンシ ップの授業実践を含め,筆者は発問に気を取られ がちであったが,板書を効果的に書くことによっ て,児童が少しつまずいたときも,板書がヒント になるのではないかと考えたからである。授業全 体としては,いままで同様,児童との対話を大切 にして進めていきたいと思い実践を行った。

(2)成果と課題

○成果

①身近な題材を導入で使うことにより,児童の学 習意欲を高めることができた。

よくクラスで話題になっていたラグビーワール ドカップの日本代表戦の観客数を題材にして導入 を行ったところ,児童たちの反応がよく,関心意 欲を高めることができたと考える。

②板書を通して,視覚的に児童が内容を理解する ことができた。

ポイントごとの掲示物を準備し,できるだけ板 書が整理されるように心掛けたところ,ある児童 から授業後に「黒板が見やすかった」という意見 を聞くことができた。

③ある児童が発言した内容を掘り下げて,他の児 童に聞くことで全体で学びを深めることができた 前回の反省点で,筆者が誘導的に説明しすぎた ために児童自らの気づきが少なかったことが挙げ られたので,今回は児童が発言した内容を掘り下 げて,他の児童に聞くようにしたところ,児童の 発言が増えた。例えば,筆者が「〇〇さんがさっ

きがい数を7000にするって言ってたけど,なん で7000にするか説明できる子おる?」と発問し たことで,普段なかなか手が挙がらない児童が挙 手し,説明したことがあり,思考作業のプロセス をクラスで確認・共有することができたと考える。

○課題

①千の位までのがい数の説明が不十分であった 筆者は,児童とのやりとりのなかで千の位まで のがい数を理解させたいと思っていたが,実際に 使った数直線の教材からやりとりをうまく広げる ことができなかった(図1参照)。そのようなこと から,筆者は千の位までのがい数について一方的 に口頭で説明したが,児童にとっては数直線を用 いて考えたことと筆者の説明が整合せず,千の位 までのがい数を表すにはどの位の数字を四捨五入 するか混乱した児童がいた。

[図1 がい数の学習で利用した数直線の掲示物]

②机間指導の時間が短く,一人一人の理解度をみ とることができなかった

児童が適用問題を解いている時間,筆者は次の 掲示物の準備をしたり,黒板に児童が書きやすく なるように区切り線を書いたりして,机間指導の 時間をしっかり取らなかった。また,机間指導を することで児童の集中が途切れてしまうのではと 思い,あえて長くはしなかったということもある。

その結果,机間指導を一切しなかった列もあった。

授業後の振り返りで,まだ問題が解けていない 児童がいたり,どう問題を解いたらいいのか迷っ

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ている児童もいたりしたことを,担任の先生から 教えていただいた。つまり,筆者が机間指導を十 分にしなかったために,このような児童への支援 ができていなかったことになる。このことから,

児童一人ひとりの理解度を把握し必要な支援を行 うために,授業の中では十分に机間指導の機会を 設けることが重要だと考えを改めた。それにより,

児童たちも安心して授業に取り組むことができ,

授業に対する意欲や態度も変わってくると考える。

④数の大きさの量感を捉えるような発問や掲示物 がなかった

前回の授業と同様,今回も万を超えるほどの大 きい数を扱う単元だった。児童たちは数字を声に 出して読めるものの,その数字が一体どのくらい 多いのかといった量感を捉えることに対する手立 てがなかったためにそれが難しかっただろうと,

振り返りで教頭先生からご指摘いただいた。導入 部分でラグビーワールドカップの日本代表戦の観

客数が67666人と伝えたところで,その人数がど

のくらい多いのか,その量感を捉えさせる必要が あった。このような大きい数を児童たちが学習す るときは,実際に数の対比ができるような写真や 画像を黒板に貼ったり,テレビに映したりするこ とで,児童は視覚的に数の量感を捉えやすくなる ことが考えられる。今後,同様の授業を行うとき には工夫していきたいと思う。

5. まとめと今後の展望

筆者は,大学院に入学した理由として授業力の 向上を目的としていた。当初は授業力の向上とい っても,どのような観点で考える必要があるのか,

筆者自身がどのように授業に取り組むべきなのか 分かっていない状況だった。そのなかで,大学院 の授業で学んだり,基礎インターンシップ,総合 インターンシップで実際に授業実践をしていくな

かで,筆者の授業では児童が主体的に学ぶ時間が 少なかったことに気がつくことができた。そして,

どのようにしたら児童が主体的に学べるか考えた ときに,まずは児童が授業に参加することが大切 だと思った。そこで,授業中に児童の発言を促す ことで自然に児童も授業に取り組みやすくなるの ではと考え,そのための指導言に注目した。

研究授業では,事前にさまざまな準備をしてい ろいろと考えて挑んだが,いざ児童の前で実際に 授業をすると,そのたびにたくさんの課題がみつ かり,改めて,納得できる授業をすることの難し さを知ることができた。

筆者が発問に関して実践した内容として,促し たい思考に応じた発問を行う(島根県教育センタ ー,2010)ということがあった。それを心がける と,確かに児童の発言は増えた。ただ,児童の発 言が増えることを意識しすぎたために分かってい る児童ばかりがどんどん発言し,つまずいている 児童が授業についてこられないことがあった。

今までの研究授業を通して,児童の実態に合わ せて授業づくりをすることの重要性も知った。そ のためにも,授業前には児童一人ひとりの前時の 学習の様子を捉えておき,授業中には机間指導を して個々の理解度をしっかりとみとる必要がある。

そして,4月からは,念願の教師として,子ども たちの前に立ち,学校組織の一員となる。研究テ ーマである「児童の発言を促す指導言」について はまだまだ不十分であり,改善すべきところは山 のようにある。それを私自身常に考えながら,引 き続き,子どもたちが主体的に対話的になれるよ うな授業を進め,深い学びに繋げていきたいと考 える。そのためにも,子どもたちはもとより同僚 の先生方とも円滑なコミュニケーションのもと,

児童の視点を優先した授業づくりに取り組んでい こうと考える。

参照

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