塩類化の現状と除塩技術
乾地緑化保全学概論 (4)
5. 塩類集積地の除塩技術
5.1 水理的除塩技術(リー
チング)
5.2 化学的除塩技術(ソー
ダ質土の改良)
5.3 生物的除塩技術(ファ
イトレメデーション)
5.4 土木工学的除塩技術
(1) 水資源が豊富な場合
(2) 水資源が乏しい場合
6. おわりに
1. はじめに
2. 塩類化の原因
2.1 自然的要因
2.2 人為的要因
3. 塩類化の現状
3.1 塩類土の分類
3.2 塩分濃度の測定
3.3 海外の塩類化の現状
4. 塩類集積の軽減と予防対策
4.1 上向きの塩移動
4.2 下向きの塩移動
1. はじめに
人口増加に伴って,食糧
危機,水資源の枯渇,エ
ネルギー不足,環境悪
化などの深刻な問題が
発生している。
その中で
土地の劣化,とりわけ塩
類化の問題は世界100
ヶ国以上で発生し,塩性
化とソーダ質化が進行し
ている。
塩類化は世界の農業生産を減少させる主要因の一つである。通常の灌漑や作
物管理法では土中の過剰な塩分濃度を経時的に減少できない。持続的農業のた
めに実現可能な塩類化の予防対策が急務である。
ここでは,塩類化の原因,塩類化の現状,塩類集積の軽減,塩類化の予防対策,
塩類集積地の除塩技術について解説する。
世界の灌漑農地の24%が塩害の被害を被っている.
100以上の国で塩害の影響を受けている.
出展:Szobolcs, I. (1989)この40年間に人口は2倍に増加,穀類は生産と消費がともに2.5倍以上に増加した結果、
世界の自給率は103%で、食糧は全体としては不足していない。
しかし、飢餓に直面している地域は多く、特に,アフリカの食糧危機は厳しい。
中国は2005年に穀類の輸入国になり,急激に増加している。
(出展: The State of Food Insecurity in the World, FAO , 2009 )
世界102国の発展途上国における全人口に対する栄養不足の割合を表した分布図 (2004-2006年の統計データに基づく) 朝鮮民主主義 人民共和国 エリトリア モンゴル イエーメン タジギスタン バングラデシュ カンボジア エチオピア マダガスカル ケニア タンザニア エルトリア マラウイ ジンバブエ ザンビア ボツワナ セナガル ベナントーゴ シェラレオネ リベリア ニジェール チャド 中央アフリカ コンゴ アンゴラ
地球の水の量はおよそ
14億km
3,その約
97%が海水で残りの3%の淡水の大
部分が南極と北極地域の氷で,地下水や河川などの淡水は
0.8%,
実際に使用
できる水資源は,地球の水総量の
0.01%程度である。
限られた淡水資源 単位 (千km3/年) 世界の人口増加に伴う食糧(穀類)確保のために、水資源は十分にあるか? 人類は世界の水の中で、何%利用できるか? (1) 実際に使用できる水資源は,地球の水総量の1%程度である。 (2) 実際に使用できる水資源は,地球の水総量の0.1%程度である。 (3) 実際に使用できる水資源は,地球の水総量の0.01%程度である。 クイズ 1 人口増加に伴う食糧確保,水資源確保,エネルギー確保は 今世紀の最重要課題である。水は,われわれ人間の体重の約5 5−65%を占め,生命を育む源であ る。通常,人間は一人当たり,食物か ら1.15リットル,飲料水から1リットル, 体内代謝から0.35リットル,合計2.5 リットルを毎日,補給する必要がある。 世界の人口増加と生活様式の変化に 伴って,水需要は,この100年の間に 図に示すように,農業用水,工業用 水,生活用水が増加し,水需要の総 量は,9倍以上も増大してきている。 (出展 乾燥地・半乾燥地の節水灌漑) 人口が増加すると,この生命維持 に必要な水量に加えて生活用水が 増え,さらに,農業用水,工業用水を 確保する必要がある。 1) 世界の水需要は,1900年から2000年の100年で何倍,増大したでしょうか? 2) 水需要の何%が,農業に使用されているのでしょうか?
9倍
70 %
人口増加に伴う食糧確保,水資源確保,エネルギー確保は 今世紀の最重要課題である。 クイズ 2 1900 1920 1940 1960 1980 2000 6000 4800 3600 2400 1200 0 西暦 全世界の水需要 km 3 /年 総量 農業用水 工業用水 生活用水図
全世界の水需要の推移
今世紀は,水需要の増加に伴う水不足が問題にな る。 世界の水需要 5000 4000 3000 2000 1000 0 その中で,水需要の多い「農業用水」は世界の 水使用量の70%に相当する。 500 Km3/年 4500 Km3/年水資源確保の問題
基礎岩盤
不透水層
地下水位
伝統的な地下水利用法として,カナートがある。地方に よってカレーズ,フォガラ,ファライとも言い,乾燥地にお いて,帯水層の水を横坑によって自然流下で導く地下給 水施設である。しかし,最近,周辺の農地を開発し,動 力のポンプで地下水を汲み上げた結果,地下水位が低 下し,従来のカナートが使用できなくなった事例がある。 (出展 世界の灌漑と排水)新井戸施設
母井戸
竪坑
横坑
事例:地下水の枯渇帯水層
農
地
貯
水
池
導
水
路
竪坑入口 横坑入口 導水路 (写真: 井上光弘) 人口増加に伴う食糧確保,水資源確保,エネル ギー確保は今世紀の最重要課題である。ナイル川上流にアスワンハイダムが完成し,従来発生したナイル川の氾濫を抑え,80万ha の農地を開発し,年間常時,灌漑農業が可能になった。 人口が8000万人を超え,さらに農地が必要で,砂質土壌 までも農地が開発されている。ナイルデルタ地帯では,伝 統的なサキアが消滅し,揚水ポンプが活躍している。 移動式揚水ポンプ 砂質土壌の農地開発 畜力水車灌漑 (サキヤによる揚水) 動力エンジン付サキアによる揚水 (出展 世界の灌漑と排水) 多くの灌漑設備にディゼルエンジンを使用し,エネ ルギーの確保が重要な課題になっている。 バイオ燃料ジャト ロファ栽培の開始 (写真: 杉田倫明 写真: 井上光弘) エジプトの事例 人口増加に伴う食糧確保,水資源確保,エネルギー確保は今世紀の最重要課題である。
液体燃料の消費動向と石油寿命の予測 (出展: 図解バイオディゼル最前線) 20年後にはバイオ マス由来の液体燃 料が45-50%必要 となろう。
揚水ポンプなどの燃料に,化石液体燃料を使用しているが,今後は,バイオマ
ス(植物,微生物,藻類など)に由来した液体燃料を使用する割合が増加する。
また,太陽エネルギや風,波などの自然エネルギを利用することになる。灌漑用
のポンプも風車を利用し,自然エネルギーの使用頻度を高める必要がある。
地下水灌漑農業(風力による揚水) (出展 世界の灌漑と排水) 人口増加に伴う食糧確保,水資源確保,エネルギー確保は今世紀の最重要課題である。シルダリア川
問題
天山山脈やパミ−ル高原を源とし
たアムダリア川とシルダリア川に,
多くのダムや頭首工が建設され,
大規模な水資源開発が行われた。
緑色で示した地域が綿花,水稲栽
培を中心とした大規模灌漑地域。
上流で水を取りすぎて,下流に 水が流れない。 上流の排水が下流に混ざり,河 川水の塩分濃度が下流へ行く ほど高くなる。 (出展:世界の灌漑と排水) アムダリア川乾燥地の河川水を利用した
灌漑農業において、上流側
の過剰な取水による問題
アラル海の縮小による環境破壊環境悪化の事例
(出展:世界の灌漑と排水)
20年間で流入量が10分の1に減少した結果,ア
ラル海が縮小し,干陸した湖底に漁船が放置さ
れて,漁業は壊滅状態。
干陸地では,露出した地表面に塩が吹き出し,
風で塩と砂が吹き上げられて,周辺の農地に塩
害が発生。
干上がりで放棄された漁船群2008年10月5日
http://rapidifire.sci.gsfc.nasa.gov/実際には,近年,小アラルに流れるシルダリア川の流入だけが頼りで,大アラル
は海水よりも塩濃度が高くて,農業用としては放棄。
乾燥地の河川水を利用した灌漑農業において、上流側の過剰な取水による問題対策は,極めて困難
上流側の用排水分離による水量と
水質の適切な管理,除塩など。
例えば, 中国黄河中流部の灌漑水 電気伝導度が1dS/m (塩0.5g/Lに相当) 年間灌漑水量が1000mm (日灌漑水量3mm以下) 100年間灌漑 塩の密度が2g/cm3
農地の塩害は,灌漑そのものが塩を与えている。
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 0 20 40 60 80 100 120 結晶塩の集積 高 ( cm) 経過年数 (年)持続可能な農業のために、塩類化の原因を整理してみよう。
一面に2.5cmの白い塩を 堆積させる計算 実際には さらに肥料も塩なので,施肥も 考慮すると相当量の塩を圃場 に供給することになる。2. 塩類化の原因
自然的要因
粘土鉱物など土の負荷電に吸着されているナトリウム(Na+),カルシウム(Ca2+),マグネ
シウム(Mg2+),カリウム(K+)などの主要な交換性陽イオンが水に溶けて移動し,陰イオ
ンと結合して塩化物(NaCl,CaCl2,Mg Cl2など),硫酸塩(K2SO4,CaSO4など),炭酸塩 (Na2CO3,K2CO3,CaCO3,MgCO3など)などの塩になる。
これらの塩の溶解度は温度に依存するが,20℃の場合を示すと,塩化カルシウム74.5> 塩化マグネシウム54.6>塩化ナトリウム35.9>硫酸マグネシウム25.5>炭酸ナトリウム 21.5>硫酸ナトリウム19.5>硫酸カルシウム(石膏)0.21>水酸化カルシウム0.17>炭 酸カルシウム6.5×10-3(g/100mL)の順に小さくなる。つまり,土中を塩が移動する場合, 溶解度の低いイオンは移動しにくい。 土壌に陽イオンが吸着している。 塩の溶解度の相違,降雨条件などによって塩類化の分布が規定される。
降水量が少なく上向きの土中水の流れが卓越する乾
燥地では,蒸発によって土中水から塩が析出し集積す
る。この時,
蒸発能
や
地下水位
が高いほど,また
粘土
含量
や
水分量
が多いほど,塩類化が進行する。
• 古代に海底にあったものが隆起して乾燥し岩塩を産出する土地
• 海岸に近い土地では,台風や強風による海水の飛散侵入
• 津波による低平地への海水侵入
• 地震に起因する土地の沈下による海水侵入
人為的要因
人口増加に伴う食糧確保のため,近年,農業の環境変化が著しい。
例えば,1960∼2000年に世界人口は2倍,品種改良や灌漑・施肥導入,耕地面積の増大 で穀類は2.5倍,灌漑面積は1.8倍に増加した。全世界水需要の70%を占める農業用水の 水需要は1.9倍に増加し,全農地面積(15億ha)の約18%を占める灌漑農地で全食糧の 40%を生産している。 (出展: 家の光協会 「水不足が世界を脅かす」) 世界人口は2011年10月に70億人 30億4160万人 60億8490万人 30億4000万人 30億4000万人その結果,
過剰な灌漑
によって
地下水が枯渇
し,灌漑水の
水質が低下
し,
排水
不良
と蒸発によって
塩類集積
が進行して,
塩害
による作物
収量が低下
し,塩類
化によって最終的に
農地を放棄
している。
1900 1920 1940 1960 1980 2000 6000 4800 3600 2400 1200 0 西暦 全世界の水 需要 km 3/年 総量 農業用水 工業用水 生活用水 図 全世界の水需要の推移 世界の水需要 5000 4000 3000 2000 1000 0砂漠化のひとつの原因として過灌漑:不適切な灌漑
① 良質な灌漑水であっても,過剰灌漑によって深層地盤の塩を含む地下水位が上昇 ② 河川の下流側で,上流と比較して塩分濃度が高い灌漑水を供給 ③ ハウス栽培で長年に渡って肥料を施与 ④ 灌漑水路が土水路の場合,送水に伴い水路からの漏水が著しく周辺の地下水位の 上昇によるウォーターロギング(湛水湿害) ⑤ 水盤灌漑や畝間灌漑のような地表灌漑では,地下浸透水の停滞によって圃場内の 地下水位が上昇 ⑥ 大型トラクター等の導入によって,作土層直下で踏圧による耕盤層が形成され,排水 不良による作土層の水分量が多くなって蒸発量が増加 ⑦ 広域森林地帯の大規模な伐採によって,森林の根による吸水が停止して地下水位 が上昇し,裸地化した大地で蒸発量が増加 ⑧ 計画リーチング(溶脱)水量の不足によって土中の塩分濃度が増加 ⑨ リーチングによって根群域の塩分濃度は低下したが,周辺や下流側では塩分濃度が 高くなった地下水を灌漑 ⑩ 工業廃水や農地の排水などが灌漑用水に混ざり,塩分を含む水を灌漑 など世界中で塩類化は進行している。
塩類化の人為的要因の事例
3.塩類化の現状
3.1 塩類土の分類
塩類土(salt affected soil) pHe ECe ESP
塩性土(saline soil) 8.5未満 4dS/m以上 15%未満 ソーダ質土(sodic soil) 8.5以上 4dS/m未満 15%以上 塩性ソーダ質土(saline-sodic soil) 8.5未満 4dS/m以上 15%以上 pHeは土の飽和抽出溶液のpH値 ECeは土の飽和抽出溶液の電気伝導度 ESPは陽イオン交換容量に対するナトリウム吸着量の割合を表す交換性ナトリウム率 ECe=4.0 dS/m pHe=8.5
Sodic
Saline-Sodic
Normal
Saline
塩の量
塩の組成
塩性土壌
ソーダ質土壌 塩性ソーダ質土壌 塩性土壌に対してはリーチングを 行い,ソーダ質土壌に対してはカ ルシウム資材を添加し,透水性を 改良するなど,塩類土の種類に よって,塩類化防止の対処方法 が異なるので,あらかじめ塩類土 の分類が必要である。3.2 塩分濃度の測定
電気伝導度
を測定することよって意味が
異なる。
① 溶液採取装置を土中に挿入して負圧
をかけて溶液を直接吸引採取する
溶
液の電気伝導度(ECw)
を測定する。
② 土を採取して,ペースト状になるまで
蒸留水を加え,減圧濾過あるいは遠
心分離で前処理して
飽和抽出液の電
気伝導度(ECe)
を測定する。
③ 土を採取して,その土の乾燥重量の
5
倍の蒸留水を加えて,
1:5抽出液の
電気伝導度(EC
1:5)
を測定する。
④
非破壊センサー
(水分・塩分・地温セ
ンサー)を不飽和土に挿入して,
みか
けの電気伝導度(ECa)
を測定する
塩分濃度の計測
モニタリング技術
図 4極法の測定原理と4極水分計電気抵抗法 (4極法)
温度T に依存
2 1V
V
R
G
R
b c R :電気抵抗 V :電圧 T:温度 Gc :形状係数 Rb :土中電気抵抗 温度が高いほど、水分 量が多いほど、塩分濃 度が高いほど、電気抵 抗は、小さい。 (a) 可搬式土中導電率計 (b) 多点式4極センサー
2 1V
V
R
G
R
b c R = R t {1-0.02(T-25)}水分と塩分濃度の同時計測
モニタリング技術
ADR法と4極法の組み合わせ
4極センサーで測定したみかけの 土壌の電気伝導度ECaは
ECa = Tc ECw + ECs
で表される。 ADR水分センサー(例えば,ML2,SM200な ど)が10dS/mの塩分濃度まで水分測定に影 響されない範囲であれば,測定した体積含水 率を上の式に代入して,土中溶液の電気伝 導度を測定できる。 0 1000 2000 3000 4000 5000 Concentration C [ mg/L ] 0 200 400 600 800 1000 Ou tp ut vo lt ag e V [ m V ] = 0.35 [ cm 3 /cm3 ] = 0.21 = 0.12 = 0.033 塩濃度 (ppm) 出力電圧 (mV) ここで,Tcは伝達係数,は体積含水率, ECsは固相のみかけの電気伝導度, ECwは土壌溶液の電気伝導度である。
ECw = a() ECa + b() なる実験式でも表される。
測定事例
畝間10cmと30cmに、
4極塩分
センサー
と
ADR水分セン
サー
を埋設し、大根栽培圃場
で、追肥による土中の溶質濃度
を検討した。評価式から求めた
値の変化を図7に実線で示し
た。また、同じ深さで定期的に
土壌サンプルを行い、1:5法
抽出液の電気伝導度を測定し、
図7にドットで示した。その結
果、両者はよく一致していて、
追肥に伴う変動を確認できた。
水分の計測
モニタリング技術
TDR法
時間領域反射率測定法は,一定周波数(30MHzから
3GHzの高周波)の電磁波が土中に埋設したロッド
(金属製の電極棒)を往復する速度を時間領域で測
定して,誘電率を求める方法である。
2 2 0 2 02
p a rLV
L
L
t
c
v
c
-0.5 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 0.2 0.0 -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 時間 t ( ns ) Δta Δtp 点A 点B Δto ● ● 反 射 係 数 ロッド電極 同軸ケーブル図
パルスの伝播時間の決定
εr:比誘電率,c0:真空中の 電磁波速度(3×108 m/s), v:伝播速度(m/s),t:パル スの伝播時間(ns),L:ロッド 長(m),La:みかけのロッド長 (m),Vp:相対伝播係数 ケーブルテスター 波形解析が必要T
ime
D
omain
R
eflectometry
水分と塩分濃度の同時計測
モニタリング技術
TDR法の場合
) c d c b a ( ) ( EC ) ( A ) ( B EC EC a a w 2 3 4 0 4 8 12 16 20 20 16 12 8 4 0 Measured EC EC wm (dS/m) Esti m ate d E C E Cwe (dS/ m ) VWC 0.0155 0.031 0.0465 0.062 0.093 0.124 0.155 0.186 0.248 0.420 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 Measured VWC m (cm3/cm3) Es tima te d VW C e ( cm 3 /cm 3 ) ECw(dS/m) 1.01 (0.5 g/L) 1.99 ( 1 g/L) 3.83 ( 2 g/L) 6.52 (3.5 g/L) 9.15 ( 5 g/L) 17.7 (10 g/L) 48.2 (30 g/L) 74.7 (50 g/L) θ = 0.000824 εr2 +0.0431 ε r 0.125 波形処理(発信器付き)TDR100とSK-1008(温度センサー付きTDRセンサー)を使用 した場合,生データとして,誘電率εr,インピーダンスIL,地温Tが得られ,次式で{1 0.02(
25)}
(
)
C a L cableK
T
EC
I
I
体積含水率θと土中溶液の電気伝導度ECwを計算でき,ECw<17.7dS/m, θ>0.03の範囲で,実用的な精度で測定できる。市販測器による土中塩分のモニタリング
灌漑農地の土壌表面から深さ20cm付近の根群域で,土壌水分量,塩分濃度,
地温を同時にモニタリングできる携帯型の測器が市販されている。米国の
デカゴン社製のECH2OプローブモデルECHO TE,英国のデルタT社製の
WET2,韓国未来センサー社製のWT1000Nの諸元を表1に示す。
表1 携帯型水分塩分温度測定センサー センサー名 ECHO TE WET2 WT1000N ロッド数 ロッド長 ロッド間隔 ロッド材 EC 地温 水分精度 記録方式 3 53 mm 10 mm 非金属製 0 - 8 dS/m -40∼50℃ ±3% 手動・自動 3 67 (62 mm) 15 mm 金属製 0 – 3 dS/m -5∼50℃ ±3% 手動・自動 3 115 (62 mm) 12 mm 金属製 0 – 6 dS/m -10∼60 ℃ ±3% 手動 図 携帯型水分塩分温度測定センサーいずれのセンサー(図参照)も,土壌固有の校正を行えば測定精度を向上で
きるが,根群域の塩分濃度が高くなると,土壌水分量を過大評価することに
なる。また,海水のように電気伝導度が40dS/mを超える塩分濃度になると,
波形解析が困難になり,TDR法では土壌水分量を測定できない。
3.3 海外の塩類化の現状
四大文明の発祥の地,メソポタミア文明はチグリス・ユーフラテス川の恵みと肥沃な 土地で古代農牧畜業が栄えた。しかし,民族間の争い,森林伐採や不適切な灌漑に よって塩類化が進行し,繁栄は衰退していった。また,インダス文明も同様に,河川の 氾濫,ウォーターロギングによる塩類化で衰退していった。 最近では,1960年代の旧ソビエト連 邦時代の中央アジアの大規模農地 開発後,不適切な灌漑と水管理シス テムによって,カザフスタンにおける 農地の塩類化 は著しく,アラル海の 縮小の問題 は有名である。 また,メキシコ や中国,オーストラリア でも塩類化は問 題になっていて,世界的に除塩対策が急務である。 20年間で流入量が10分の1に減少した結果,アラル 海が縮小し,干陸した湖底に漁船が放置されて,漁業 は壊滅状態。 干陸地では,露出した地表面に塩が吹き出し,風で塩 と砂が吹き上げられて,周辺の農地に塩害が発生。 http://rapidifire.sci.gsfc.nasa.gov/ 2008年10月5日 (出展:世界の灌漑と排水)(写真提供:本名俊正) 排水設備のない畑地に,過剰な 灌漑を行うと地下水が上昇す る。 地中の毛管上昇水が地表に届 き,蒸発すると,地表面に塩分が 残る。 対策として,地表排水,地下水位 低下などの排水整備法,リーチ ング,土壌表層除去などの除塩 法,アルカリ土壌の改良,pH調 整などの土壌改良法,がある。 しかし,健全な土壌に回復させる には,経費と時間が掛かる。 3年前まで畑,塩類集積による農地の放棄
塩類集積
細いガラス管ほど 表面張力によって ガラス管の中の水 位は上昇する。 毛細管現象4. 塩類集積の軽減と予防対策
① 地下水位が上昇し,土中
水が液相から気相へ変化
する蒸発過程に伴って,
地表面付近の塩分濃度が
高くなり,塩が析出して集
積する場合
② 灌漑や施肥など長期間に,
あるいは災害など短期間
に系外から塩が侵入して
集積する場合がある。
塩類化機構
上向きの塩移動 下向きの塩移動 降水量 Pr (mm/day) 。。。。。。。。 蒸散量 Tr (mm/day) 排水量 D(mm/day) z = 0 z = L リーチング水量 Le (mm/day) ETc 作物消費水量 Cu (mm/day) 灌漑水量 Ir (mm/day) 土壌面蒸発量 Ev (mm/day) ECi ECd4.1 上向きの塩移動
塩類集積の軽減と塩類化の防止対策は,基本的に地下水位を上昇させないこと, 毛管上昇を抑制して蒸発を軽減することである。 ① 地下水位を低下させる対策として, 明渠(排水溝)や暗渠による土木的排水, 井戸に設置した揚水ポンプによる機械的排水, ポプラなど根の吸水による生物的排水, などがある。 ② 蒸発を軽減して,上向きの土中水の移動を少な くする対策として,ワラ,枯れ葉,礫,砂などを地 表面に敷いて蒸発量を軽減するマルチング ③ 作土層の毛管上昇を遮断するために深く耕し乾 燥層を地表面に形成させる伝統的な深耕法, ④ 作土層と地下水面の間に礫層などを敷き,毛管 上昇を遮断するキャピラリーバリアの埋設 などの土木的対策がある。 具体的には,予防対策
10mm玉石 稲ワラ ウッドチップ(松) 再生紙 松葉地下水位制御 樹木や灌木の根の吸水力を利用した生物的排水(バイオ排水)を採用し て,地下水位,蒸発散量,土壌中のポテンシャルの経時変化を測定する。 正確な地下水位測定用の埋設型感圧センサーを導入し,土壌中のフラッ クスを自動記録可能な装置を開発して,土壌水分量,地温,ポテンシャル, 土壌溶液の電気伝導度,土壌中の溶液採集,蒸発散量,地下水位低下 量,気温,湿度,風速,日射量,茎内流量,葉温などを測定して,バイオ 排水のメカニズムを明らかにし,樹木の耐塩性と吸水能力を把握する。 205 207 209 211 213 215 0 20 40 60 80 100 100 80 60 40 20 0 バイオ排水による地下水位低下の推移 経過日数 地 下水位 (c m) 積算 蒸発 散量 ET (mm) 初期地下水位50cm (カラム3) 初期地下水位40cm (カラム2) 深さ70cmの全水頭 (カラム3) 深さ70cmの全水頭 (カラム2) 積算蒸発散量(カラム3) 積算蒸発散量(カラム2) 地下水位 簡易ポテン シャル計 簡易水位計 生物的排水(バイオ排水) 7月24日18:00から8月2日12:00までの地下水位の変化と積算蒸発散 量を下図に示す。実験の結果,7月24日から8月2日の期間に,地下水 位は約40cm低下し,その期間の日平均蒸発散量は8.2mmであった。 ウラジオハコヤナギ の栽培(8月) 生物的排水実験
4.2 下向きの塩移動 電気伝導度ECは土中水の電解質濃度(mol/L)と比例す る。 作土層の塩分濃度を高くしないように管理するためには, 作土層に入る塩 = 作土層から出る塩 作土層に入る塩 = Ir × ECi 作土層から出る塩 = D × ECd ここで,ECi : 作土層に入る灌漑水の塩分濃度 ECd : 作土層から下方への排水の塩分濃度 作土層の塩分濃度が上昇しないようにリーチング (洗脱)水量として,作物に必要な消費水量(ETc)に, 作土層から下方への排水量(D)を加えて,灌漑水 量(Ir)とする。 Ir = ETc + D = ETc + Ir × LR 降水量 Pr (mm/day) 。。。。。。。。 蒸散量 Tr (mm/day) 排水量 D (mm/day) z = 0 z = L リーチング水量 Le (mm/day) ETc 作物消費水量 Cu (mm/day) 灌漑水量 Ir (mm/day) 土壌面蒸発量 Ev (mm/day) Ir = ETc / (1 - LR) ………. (1) ECi ECd Ir × ECi = D × ECd LR = D / Ir = ECi / ECd
Ir = ETc + D
Ir - Ir × LR = ETc Ir (1 - LR )= ETc Ir = ETc / (1 - LR ) 重要なことは,リーチングに伴って地下水位が上昇しないように,地盤の排水を十分に 行うことである。特に粘質土の場合には暗渠排水が効果的である。 計画排水量( D )に対する灌漑水量( Ir )の比を リーチング要水量( LR )と定義すると, リーチング時の灌漑水量は塩をわずかでも含む灌漑水を節水することが持続的農業のために重要である。 さらに,系外から塩が侵入する対策事例として, ① 台風や強風による海水の飛散侵入に対する防潮堤や防風林, ② 用水路の漏水に伴う周辺地下水の上昇を軽減するための用水路のライニング, ③ 高塩分濃度の工業廃水や農業排水の侵入を防止するための用水路と排水路の分離 など有効な土木的対策がある。
予防対策
河川
地下水位の上昇
漏水
水面蒸発
水路の漏水による湛水過湿害
対策として,水路のライニング が漏水防止に有効。搬送効率 は,土水路50%,コンクリートラ イニング80∼90%,パイプライ ン95%以上である。ウォーターロギング(湛水過湿害)
土水路の漏水
5. 塩類集積地の除塩技術
塩類集積地を回復するための水理的,
化学的,生物的,土木工学的な除塩技
術を紹介する。
5.1 水理的除塩技術(リーチング)
降水量 Pr (mm/day) 。。。。。。。。 蒸散量 Tr (mm/day) 排水量 D(mm/day) z = 0 z = L リーチング水量 Le (mm/day) ETc 作物消費水量 Cu (mm/day) 灌漑水量 Ir (mm/day) 土壌面蒸発量 Ev (mm/day) ECi ECdリーチング
は,系外から
十分な水を確保できる
こと
,地下水位を上昇させないように
明渠
や
暗
渠
などの排水を完備すること,
浸透性を維持す
ること
などの条件が前提である。しかし,実際に
は,
水資源の枯渇
,
低平地の排水不良
,
地下
水位上昇
や
下流側農地の塩分濃度の増加
によ
る農地の二次的塩類化の問題が多い。
5.2 化学的除塩技術(ソーダ質土の改良)
塩類化の進行は,①強い日射エネルギーに関連した
蒸発による濃縮
,②可
溶性塩類の溶解度に関連した
選択的な無機塩の沈殿
,③降雨や灌漑の
強
度と累積量
,④
土性と土の構造
,などの要素に強く依存している。
溶解度の関係
から,塩類集積の現象としては,
炭酸カルシウムから最初に
沈殿
し,降雨や灌漑による希釈で
塩化物から溶解
し,リーチング過程でも
ソーダ質化は進行し,
ナトリウムを含む塩が下方へ流亡してソーダ質土の
形成
に関与する。
ナトリウムを多く含む
ソーダ質土
は,強アルカリ性を呈し主に
低平地に分布
し,コロイド物質の分散や粘土の膨潤によって
透水性と通気性が悪くなり
,
塩クラストが地表面に形成されるなど,
リーチング効果は期待できない
。
ソーダ質土の改良
は,吸着されたナトリウムをカルシウムと置換するために,
石膏(
CaSO
4・
2H
2O),塩化カルシウム(CaCl
2・
2H
2O)などの
水溶性のカ
ルシウム資材を土に施与して透水性を改良
透水性を改善するために,排水不良の粘土層では,深耕や耕盤層破砕の
ような物理的改良が有効である。
5.3 生物的除塩技術(ファイトレメデーション)
特徴は,
① 耐アルカリ性植物によるソーダ質化の軽減
② 植物根が作土層を貫通することによる浸透性の改善
③ 石膏などのカルシウム資材の施与では作土層の施与部位
(表層
20cm程度)しか改良されないが,ソルガムやスーダン
グラスなどの植物を利用すると,根の到達する深い部位まで
広範囲の土層改良
④ 耐塩性の灌木移植後,土層調査の結果,深さ
1.2mまでの
土層で電気伝導度・イオン濃度が低下した(除塩効果)。
⑤
経済的に有用な耐塩性植物
による塩害の持続的防止
などである。
スアエダの若芽は食用に 成長したスアエダやコキアは牧草に テーブルビートは色素や抗酸化物質を利用し、 機能性食品の開発が期待できる テーブルビート (G-COE農業生産G発表2011Dec2) スアエダ耐塩性植物
の例としては,
マングローブのようにすでに発芽した胎生種子で繁殖する
(生態的機構)
,
アカザ科の植物のように塩を葉の表面の毛に蓄積させて毛を脱落させ体外
に塩を除去する
(形態的機構)
,
ヨシのように根がナトリウム吸収を抑制する,
タマリクスのように吸収した塩を特定の組織(塩腺)から排出する,
葉肉細胞の巨大な液胞にナトリウムを貯留する
(生理的機構)
などの種々の機構で塩害を防いでいる。
収量が10∼15%減少するが,
ECeが8∼12dS/m程度
で収穫が期待できる有用植物には,ワタ,テンサイ(サ
トウダイコン),アイスプラント,アッケシソウ,オオムギ,テーブルビート,バー
ミューダグラス,コキア,ソルトグラスなどがある。
ワタ テンサイ アイスプラント アッケシソウ テーブルビート コキア3∼8dS/m程度
でソルガム,ヒマワリ,スーダングラス,フダンソウなどがある。
ここで有用植物とは,繊維生産,精油,食糧,牧畜用飼料(牧草に配合する),
野菜など人間に役立ち収入源になる植物である。
ソルガム ヒマワリ スーダングラス フダンソウアイスプラントはサラダに,アッケシソウはサラダやピクルスの材料に使用され
る。このような好塩性植物を除塩対策に採用する方法は経済的に成り立つ。
アイスプラント アッケシソウファイトレメデーション
は,好塩性植物を生産することが目的ではなく,除塩に
よって農地を回復させて通常の作物を栽培することにあり,今後の土の管理、
つまり、
農地の保全
が重要となる。
salt tolerant shrubs
Phytoremediation
移植前と比較して収穫後の土壌は,pH, Ece,SARの値が少なくなり,耐塩性低木に
よる除塩効果が認められ,社会経済的にも有効な方法であることを示した。
Irshad, M., Inoue, M., Ashraf, M., Zahoor, A. and Faridullah,The mitigation challenge of salt affected soils in Pakistan, Journal of Food, Agriculture and Environment,5(2),280283,2007
パキスタンの乾燥地,半乾燥地では,600万ha以上の塩類土壌が,過剰な灌漑や,排水
不良で問題となっている。塩類化の軽減法が急務であり,パキスタンの塩類化の原因と可 能な改良法を論じた。
耐塩性低木による除塩