木材保存 Vol.47-2(2021) 78 ― ―
「多摩産材利用拡大フェア2020」
山 本 幸 一
*1.はじめに
多摩産材利用拡大フェアは,2020年12月2日~ 3日に新宿NSビル大展示ホールAで開催された。 主催者である(公財)東京都農林水産振興財団は, 「木を伐って使って植えて育てる」をコンセプト として,木材産業の振興,様々な公共施設や民間 での木材利用の促進に取り組んでおり,多摩産材 の新たな活用を促進するため多摩産材製品に関わ る業者・団体が集合する展示会を開催している。 同フェアは2016年から毎年開催されて,例年2日 間で概ね600~700人程の来場があり,今回は666 人とのことであった1)。筆者が同フェアを初めて 訪れたのは,木塀の展示があった2019年である。 当時は,大阪北部地震(2018年6月)でブロック 塀の倒壊事故が発生して木塀が見直され,日本木 材防腐工業組合による「木塀(もくべい)の手引 き」(2018.12)や,東京都による「国産木材を活 用した塀等の設置ガイドライン」(2019.3)など の動きにより,木塀に興味を持ったからである。2.イベントの概要
2.1 外構・外装に関する出展 会場に入るにあたり,新型コロナウイルス感染 拡大防止対策としての所属・住所の明記,サーモ カメラによる検温,手指消毒,マスク着用が求め られた(写真1)。会場の広さは前回に比べて余 裕を持たせたようで,広々と感じられゆったりと ブースを回ることが出来た。 出展者は,建材関係が11社,家具・什器が9社, 外構・外装が7社であった。外構・外装の関係で は(写真2),江間忠木材㈱から公園等向けに丸 棒加工材を熱処理した木杭(エステックウッド), 九州木材工業㈱から樹脂処理木材(エコアコール ウッド),越井木材工業㈱から多摩産材を用いた 熱処理材(サーモウッド)の木製フェンスが出展 されていた。更には,㈱ザイエンスによる加圧注 入処理(ペンタキュア ECO30)を行った多摩産 *森林総合研究所フェロー 写真1 スペースをゆったりと取った会場 写真2 外構・外装に関する展示の並び 情 報木材保存 Vol.47-2(2021) 79 ― ― 材の製品,㈱プラセラム/㈱アクトによる多摩産 材を用いた削孔支柱ピン工法による木塀,日本木 槽木管㈱によるミニチュア木槽,港製器工業㈱に よる柱がアルミでパネル部が防腐処理材の木材塀 (スーパーフェンス)も展示されていた。 2.2 木塀の特別展示 特別展示として木塀が2体展示されていたが (写真3),この事は,東京都における木材利用の 拡大にとって,木塀が重要なメニューの一つであ ることを示していると考える。 先に示した「東京都 国産木材を活用した塀等 の設置ガイドライン」では,その目的を,「都市 の安全性を高めるとともに,良好な景観を形成し, 国産木材の利用拡大に寄与すること」としている。 また,ガイドラインの必要性としては,「都有施 設において,現行法令等に適合しないコンクリー トブロック塀,組積造の塀,万年塀(以下「ブロ ック塀等」)を改修・更新し,国産木材を活用し た塀や柵(以下,「木塀等」)の計画・設計を行う 場合や新たに木塀等を整備する場合の標準的な仕 様を示す」と述べている。さらに,材料の仕様と しては,原産地等を表示する認証制度(地域認証 制材等)の活用の推奨や,耐久性向上のための防 腐・防蟻処理(保存剤の加圧注入,熱処理(焼杉 も可で品質の確認を特記),保存剤の塗布等(塗 り替えの必要への言及))等が細かく示されてい る。なお,材料は東京都産材に限定することなく 国産材(多摩産材を始めとする国産木材)である と定義している点が興味深い。これは,全国知事 会に設けられた「国産木材活用プロジェクトチー ム会議」において2),木材の大消費地である東京 都が音頭取りを任った効果のようである。 2.3 いろいろな展示 本報告では外構材を中心に紹介したが,実際に は更に多くの展示があった。その中で筆者の興味 を引いた,処理された木材の幾つかを紹介する。 先ずは,細田木材工業㈱による多摩産杉の不燃木 材,ナイス㈱による多摩産材の表層圧密材(ギュ ッド),飛驒産業㈱による多摩産を多用した圧縮 杉,帝国器材㈱による難燃処理を施した木製ブラ インドなどである。これらとは別に興味を持った のは,木材に特化したノベルティグッズ(企業な どが無料で配布する記念品)を製作する FRON-TIER JAPAN ㈱であり,多様な製品が印象的で あった(写真4)。なお割愛した展示については, 公益財団法人東京都農林水産振興財団のホーム ページで参照可能である1)。 (公 財)東 京 都 農 林 水 産 振 興 財 団 の 展 示 で 「MOCTION(モクション)」のことを知ることが できた。「MOCTION」は,国産木材の利用拡大 を進める空間(新宿パークタワー5階,館長は隈 研吾氏)で東京都により12月3日に開設されたと のことであり3),筆者は興味を持った。そこで, 本フェアから時間が過ぎた2月下旬,新宿駅西口 から徒歩で15分程の,新宿中央公園の南側にある 新宿パークタワーの「MOCTION」を訪ねた。洒 落た高層ビルで入口から圧倒されたが,エスカ レーターで3階に上がると7階までは「リビング デザインセンターOZONE」(家具,生活用品, 住宅設備,建材などのテナントが入っている)と 写真3 特別展示と銘打っての木塀の展示 写真4 ノベルティ小物の出展
木材保存 Vol.47-2(2021) 80 ― ― な っ て お り,フ ロ ア は 落 ち 着 い た 雰 囲 気 で, 「MOCTION」はその一角を間借りしていた(写 真5)。 木製フロアが心地よい空間は,多摩産材を使っ たオフィス空間提案スペースと全国の道府県がイ ベント等を行う展示スペースからなっていた。常 駐担当者の説明では,常設の多摩産材を使ったオ フィス空間は,木材製品による都市での二酸化炭 素固定を意識し,テーブルを構成する角材には再 利用を想定し穴をあけないで結合しているとのこ とであった(写真6)。 一方,全国の道府県の展示スペースでは群馬県 による展示が行われていた(写真7)。群馬県か らは,県産の2×4材を用いたコロナ対策パー テーションや組み立て式のワーキングスペースな ど時機を得た製品が展示されていた。初回の展示 は高知県であり,栃木県,和歌山県,山形県,そ して群馬県へと続いていた。各展示期間は2週間 程度であり,既に次年度の展示道府県も決まって いるそうだ。