【目的】転倒は子どもたちにとっても重大な問題の一つとなっている。そのため,転倒予防を目的とした運動を学校 体育の授業で指導し,その効果を検証することは必要であると考える。そこで本研究は,児童の転倒予防を主眼とし て,体育授業において動的バランス運動を実施し,その効果を明らかにすることを目的とした。 【方法】小学 3 年生の児童 34 名を対象にした。考案した身体が揺さぶられる 4 つの「ぐらぐら運動」を体育授業で全 3 回(45 分/回)指導し,その指導前後で,開眼片足立ち・立ち幅跳び・反復横とびの測定を行った。加えて,形成 的授業評価等を実施した。 【結果】授業実施前後において,立ち幅跳びと反復横とびにおいて有意な差が示され,運動後に値が向上した。加え て,形成的授業評価では,全 3 回の体育授業において,全ての項目で評定 3 以上が得られ,児童にとってよい授業で あったことがわかった。特に,「学び方」では全 3 回において評定 5 で推移した。 【結論】児童の転倒予防目的で考案・指導したぐらぐら運動を 3 回実施したことで , 立ち幅跳びと反復横とびの値が 向上した。さらに,児童らの授業評価が高い値で推移し,ぐらぐら運動を実施した授業は,児童らが自ら進んで楽し く学ぶことができる体育の内容であることが示された。 児童 転倒予防 体つくり運動 運動教材 体育 要 約 キーワード 連絡先:新潟大学人文社会科学系(教育学部) 檜皮貴子 〒 950-2181 新潟県新潟市西区五十嵐 2 の町 8050 番地
TEL:025-262-7080 FAX:025-262-7080 E-mail:[email protected] 受付日:2019. 11. 27 受理日:2020. 4. 7
報 告
転倒予防を目的とした小学校体育授業に関する研究
~動的バランス運動介入の効果~
檜皮 貴子
1)菅原 知昭
2)長谷川 聖修
3) 1)新潟大学人文社会科学系(教育学部) 2)新潟市立沼垂小学校 3)筑波大学体育系 Ⅰ 緒言 学校管理下の災害において,児童の死亡件数は平成 27 年度で 12 名,平成 28 年度は 8 名で,そのうち転倒 に起因するものは 1 件と 0 件であった。一方,児童の障 害報告註 1)によれば,学校管理下での外傷のおよそ 3 割 が転倒に起因し,そのうち半数以上が休憩時間中に発生 していた1)2)。例えば,「廊下で友人と追いかけっこを していて,滑って転んでしまった。そのとき手をつかな かったので,顔面をそのまま床にぶつけてしまい歯を痛 めた(小 6 年男子)。」1)などの報告がある。そのため, 学校現場においては,危険から身を守る方法や休憩時間 中の過ごし方についての指導が特に重要であり,危険回 避能力を自然に高めることができるような遊びを積極的 に導入する必要があるといわれている3)4)。 現在の小学校学習指導要領5)では,体育科運動分野 で 6 領域註 2)が設定され,その中に「体つくり運動」領 域が置かれている。体つくり運動領域は小学第 1 学年か ら高等学校第 3 学年までの必修領域である。昨今の子 どもたちの体の変化や社会環境の変化に伴い,ねらい が「体力の向上」に加えて「体ほぐしの運動」も加わっ たことで,平成 10 年より「体操」から「体つくり運動」 へと名称変更された。以前は遊びの中で身に付けていた天羽ら11)は,危険回避ができる運動指導について研究 し,動的バランスを手がかりに児童の危険回避能力を高 めることを試みた。しかしながら,身体重心を支持基底 面から大きく外すことを意図した運動は実践されていな い。また,健康な児童を対象とした転倒予防運動に関す る研究は見当たらないのが現状である。 海外の研究に目を向けると,イギリスでは,意図しな い子どもの事故における死亡の原因の第 4 番目に転倒が 挙げられており,児童の転倒予防は日本のみにとどまら ない問題と捉えることができる12)。しかしながら,転 倒で死亡・けがをした事例から転倒要因を明らかにした り,小児科患者のための転倒予防研究はなされているも のの13)14),健康な児童のための転倒予防に関する運動 介入研究は国外においても取り組まれていない。 そこで本研究は,児童の転倒予防を主眼として,体育 授業において動的バランス運動を実施し,その効果を明 らかにすることを目的とした。 Ⅱ 研究方法 1. 研究デザイン 本研究のデザインは,非ランダム化の前後比較研究と した。 2. 対象者 N 市立 K 小学校に通う小学 3 年生児童 34 名(男子 15 名,女子 19 名)を対象とした。対象者を 3 年生(9 ~ 10 歳)の児童に設定した理由は, 9 ~ 12 歳の時期につ いて,運動系の発達の中でこの期間が最高潮を示してお り,少年少女時代の最適な運動期とされる子どもたち に指導をするためであった15)。また,K 小学校にセッ ティングした理由は,校長より体育授業において転倒予 防運動実施の許可を得られたためであった。 3. 実施日・場所・指導者 転倒予防運動の実施日は,2015 年 6 月 23 日,30 日, 7 月 7 日の 3 日間で体育授業における体つくり運動の単 元として実施した。1 回の授業は 45 分であり,K 小学 校の体育館で実施した。指導者は,体操を専門とする大 学教員(女性,教員歴 9 年)と担任教諭(男性,教員歴 13 年)で,指導スタイルは一斉指導であった。 4. 動的バランス運動の内容 指導した運動内容を以下に示す。運動内容は,児童の 体力や運動経験の現状をクラス担任から聞き取った上 で,体操を専門とする大学教員が構成した。全ての運動 は,足元を不安定にさせ,支持基底面から身体重心を外 すことをねらいとした。これらの運動は,総称として 「ぐらぐら運動」と呼ぶことにした(図 1)。 動きを体育授業で意図的に育む時代となっており,体つ くり運動はその役割を担う領域といっても過言ではな い。 小学校第 1 学年から第 4 学年の体つくり運動の内容 は,「多様な動きをつくる運動(遊び)」と「体ほぐしの 運動」の 2 つのカテゴリーから成り立っている。転倒と 関連が深いバランス運動に関わる事項として,多様な動 きをつくる運動(遊び)の中に,「体のバランスをとる 運動(遊び)」が示されている。そこには,姿勢や方向 を変えて,回る,寝転ぶ,起きる,座る,立つ,渡るな どのバランスをとる動きが明示され5),身体重心の高さ を変化させる中でバランスをとったり,狭い支持基底面 の中でバランスを保持する運動が紹介されている。 しかしながら,転倒予防をねらうバランス運動におい ては,転倒の発生とその回避動作について考える必要が ある。転倒とは,重心を通る鉛直線が支持基底面を外れ ると重力を支えるものがなくなるため,今までその人を 支持していなかった体の部分が床等の支持面と接触する こと6)や「他人による外力,意識消失,脳卒中などに より突然発症した麻痺,てんかん発作によることなく, 不注意によって,人が同一平面あるいはより低い平面へ 倒れること」7)である。また,東京消防庁では同一平面 上でバランスを失い倒れて受傷したものと定義されてい る。 このような転倒を回避するためには,足関節や股関 節,踏み出し動作が関与しているといわれている8)。小 さく垂直方向へ力がかかり,姿勢が変位する時には足関 節の調整(ankle strategy)が生じる。さらに,水平方 向に力がかかり姿勢に変化が加わる時には股関節(hip strategy)の動きが生じ,体を立位に保とうとする。さ らに,この 2 つの調整に加えて,振幅の大きな外乱が生 じた時には支持基底面を拡張するために踏み出し動作 (stepping strategy)が発生し,転倒を回避している。 これらの回避動作に着目して,檜皮ら9)は自作のバ ランスボードを用いて転倒回避動作を誘発させる転倒予 防体操を考案し,高齢者に指導し,その効果を示した。 さらに,板谷10)は,不安定面上でのエクササイズは平 衡機能に関わる感覚に揺さぶりの刺激を与え,中枢神経 系における感覚統合機能の順応性が向上することで,バ ランスの頑健性が高められることを示唆している。 児童の転倒は,段差や廊下,昇降口などの日常の何気 ない場所で発生している。このことに鑑みると,児童を 対象にしたバランス運動では,同じ姿勢を静的に保つバ ランス運動のみならず,身体重心を支持基底面から大き く外すアンバランスな運動の経験も必要と考えられる。
運動名 手押しずもう ぐらぐらケンパ ぐらぐらキャッチ 新聞紙スケート 実施内容 2 回目 1 回目 3 回目 バランスボード上で実施 床面上で実施 バランスボードを自由に 組み合わせて実施 10 個の JP クッションと 2 つの 輪,2 つのケンステップを自由 に組み合わせてケンパ運動 25 cm × 25 cm の滑り止め上で ボールをキャッチ 小さくたたんだ滑り止めの上や,片足姿勢でボールをキャッチ 輪の中でボールをキャッチ 仲間と鬼ごっこやリレー, スケート等を実施 2 回目と同様の内容 新聞紙を足元に敷いて歩く 20 個の JP クッションと 4 つの 輪,4 つのケンステップを自由 に組み合わせてケンパ運動 5 つの JP クッションと 1 つの 輪を組み合わせてケンパ運動 図 1 ぐらぐら運動の内容
1)手押しずもう 檜皮ら9)が高齢者の転倒予防研究で用いた自作のバ ランスボードを手押しずもうに利用した。 指導 1 回目は,床の上でペアと手が届く距離で実施さ せた。足を肩幅に開いた姿勢や閉脚姿勢で実施させた。 2 回目は,バランスボード上で実施させた。ボートの置 き方を横と縦の 2 つのパターンで実施させた。3 回目 は,バランスボードを積み重ねたり,軸棒の置き方を児 童に工夫させて実施した。 2)ぐらぐらケンパ
JP クッション(Jumping Pleasure Cushion,サンハー ズ製)や輪(直径 85cm,sasaki 製),ケンステップ(ニ シ・スポーツ製)を用いて,床面にそれらの用具を直線 に並べ,ケンパ運動を実施させた。 JP クッションは,酢酸ビニル樹脂を射出し,立体網 状構造をもつ直方体に成形した用具である。そのため, JP クッションは動揺性や反発性を有しており,立位姿 勢が不安定となる。JP クッションを用いた運動介入研 究は,幼児や高齢者を対象に行われており体力測定値の 向上や動きの改善が認められている16)-18)。そのため, 児童にも有効であると考え,ぐらぐらケンパ運動の用具 として用いることとした。 1 回目は,5 つの JP クッションと 1 つの輪を組み合 わせたコースを教員が予め準備し,ケンパの運動を実施 させた。2 回目は,10 個の JP クションと 2 つの輪,2 つのケンステップを用いて児童が自由にコースを作成で きるようにした。ケンステップの中では「片足で 2 秒間 静止する」ルールを定めた。3 回目は,20 個の JP クッ ションと 4 つの輪,4 つのケンステップを用いて児童に は自由に直進のコースを作成させた。 3)ぐらぐらキャッチ 二人組でボールの投げ手と受け手に分け,受け手には 足元を動かさないでボールをキャッチさせた。使用した ボールはソフトギムニクボール(ギムニク社製)であっ た。ソフトギムニクは,触り心地が柔らかく,当たって も痛くないため,恐怖感なくボールを投げたり,取った りできるボールとして日本 G ボール協会で推奨されて いることから,本研究に用いた。 1 回目は,受け手の足元に輪(直径 85 cm,sasaki 製) を前後に 2 つ置き,どちらかの輪の中でボールをキャッ チさせた。2 回目は,25 cm 四方の滑り止めの上に乗 り,その上で足を動かさないようにボールをキャッチさ せた。3 回目は,滑り止めを小さくし,片足姿勢や閉脚 姿勢でボールをキャッチさせた。 4)新聞紙スケート 足元に新聞紙を敷き,滑りながら移動させた。 1 回目は,足元に新聞紙を敷き前進することに慣れさ せた。2 回目は,仲間との鬼ごっこやリレー,フィギア スケートの真似など,児童が考えた遊びを実施させた。 3 回目も 2 回目と同様に自由に新聞紙で滑る運動をさせ た。 5. 測定方法 測定時期は,事前測定が 2015 年 6 月 23 日,事後測定 が 7 月 7 日であった。両日共に,実施場所は K 小学校 の多目的室であった。測定項目は, 3 種類の体力・運動 能力測定を実施した。平衡性の指標として開眼片足立ち (最大 30 秒),瞬発系や前方への移動能力の指標として 立ち幅跳び,俊敏性や左右への移動能力,切り返し能力 の指標として反復横とびを実施した。なお,各測定は, 厚生労働省および文部科学省が示した測定方法に準じて 実施した19)20)。 6. 調査内容 1)事前調査 対象者の転倒歴について,自記式質問紙で回答させ た。一般的な転倒歴を調査する場合は過去 1 年と設問さ れているが,小学 3 年生の児童の場合,過去 1 年間の振 り返りは困難と判断し,進級後(4 月以降)の約 3 か月 以内とした。 2)形成的授業評価 質問紙調査として,高橋ら21)が考案した 4 観点 9 項 目の形成的授業評価法を実施した。4 観点は,「意欲・ 関心(精一杯の運動,楽しさ),成果(わざや力の伸び, 新しい発見,感動体験),学び方(自主的学習,自発的 学習),協力(仲良く学習,教え合い・学び合い学習)」 から構成されている。9 項目の質問項目は表 1 に示す。 各項目を,「はい」「どちらでもない」「いいえ」の 3 件 法で回答させ,「はい」には 3 点,「どちらでもない」に は 2 点,「いいえ」には 1 点を与えて採点した。さらに, 得られた平均値を長谷川ら22)が提案した 5 段階の診断 基準に当てはめた。診断基準では,評定 3 を子どもの目 から見て普通の授業,評定 4 以上をよい授業,評定 5 は 特に優れた授業,一方,評定 2 以下を普通より劣る授 業,評定 1 は特に劣る授業とされている。 7. 分析方法 各種体力測定値の授業前後の比較には対応のある t 検 定,転倒群と非転倒群を分けた事前事後測定値の比較に は二元配置分散分析,全 3 回実施した形成的授業評価の 比較には一元配置分散分析を行った。全ての統計は,統 計解析ソフト SPSS Statistics 26(IBM 社製)を用い
た。有意水準は 5 %とした。 8. 倫理的配慮 対象児童が在籍する小学校の校長およびクラス担任に 研究の趣旨や方法,データの保管方法,匿名化などの倫 理的配慮を文章と口頭で説明し,同意を得た。本研究 は,新潟大学教育学部保健体育学研究倫理審査委員会の 承認(受付番号 20160901-1)を得て実施した。 Ⅲ 結果 1. 対象者 対象者 34 名のうち,2 名(男子 2 名)が足の骨折等 のけがのため不参加となった。さらに,アンケートの 回答に不備があった者が 1 名(男子)いたため,最終 的な対象者は 31 名(男子 12 名,女子 19 名)となった (図 2)。 対象者の平均身長は,127.9 ± 4.6 cm,平均体重は 26.4 ± 1.7 kg,BMI は 16.1 ± 1.7 であった。平成 27 年 度学校保健統計23)による小学 3 年生の全国平均身長と 体重はそれぞれ 128.1 cm,26.9 kg であったため,対象 児童の基本的な身体特性は全国平均と同等レベルであっ たといえる。 2. 体力測定値 1)全対象者における体力測定値 児童 31 名における体力・運動能力調査の結果を表 2 に示した。 対応のある t 検定の結果,開眼片足立ちの事前事後比 較において,有意な差は認められなかった。 立ち幅跳びにおける事前事後比較の結果,t(30)= -2.36,p < .05 となり(p=0.03),事後測定において有 意に値が高かった。 反復横とびにおける事前事後比較の結果,t(30)= -3.22 ,p < .01(p=0.003)となり,事後測定において 値が有意に高かった。 2)転倒群と非転倒群における体力測定値 児童 31 名のうち,過去 3 か月以内に転倒を経験した 者が 22 名(男子 9 名,女子 13 名),転倒していない者 が 9 名(男子 3 名,女子 6 名)であった。転倒経験者を 「転倒群」,転倒をしていない者を「非転倒群」として 2 楽しかったですか せいいっぱい全力をつくして運動できましたか 今までできなかったことができるようになりましたか 深く心にのこることやかんどうすることはありましたか 「あっわかった!」とか「あっそうか!」と思ったことがありましたか 友達と協力してなかよく学習できましたか 友達とおたがいに教えたり助けたりしましたか 自分のめあてに向かって何回も練習できましたか 自分から進んで学習できましたか 表 1 形成的授業評価の質問9項目(高橋ら,1994) 質問項目 観点 意欲・関心 成果 協力 学び方 2015年6月23日 事前測定 34名(男子15名,女子19名) (開眼片足立ち,立ち幅跳び,反復横とび) 体育授業 32名(男子13名,女子19名) (ぐらぐら運動45分間,形成的授業評価) 事後測定 31名(男子12名,女子19名) (開眼片足立ち,立ち幅跳び,反復横とび) データ欠損1名 分析対象者31名 不参加2名 2015年6月23日,30日 7月 7日 2015年7月7日 図 2 研究のフローチャート
群に分け,各測定値の変化を比較した(表 3)。 各測定値を従属変数とし,測定時期(事前測定・事後 測定)と転倒経験の有無(転倒群,非転倒群)の二元配 置分散分析を行ったところ,開眼片足立ち,立ち幅跳 び,反復横とびの全ての測定で交互作用は示されなかっ た。 各要因の主効果の検定を行ったところ,立ち幅跳びと 反復横とびの測定時期に主効果が認められた。 3. 形成的授業評価 全児童および転倒群,非転倒群における形成的授業評 価の結果を表 4 に示す。 因子を授業回数,従属変数を形成的授業評価の得点と して,一元配置分散分析をした結果,授業回数における 主効果は認められなかった。加えて,転倒群と非転倒群 開眼片足立ち (sec.) 29.8±1.1 29.4±2.3 p=0.41 事前測定 事後測定 p値 全児童 (n=31) 立ち幅跳び (cm) 133.2±14.2 137.4±18.9 p=0.03* 反復横とび (回) 32.8±6.2 37.0±6.9 p=0.003** 表 2 事前事後測定値の比較 *p<.05,**p<.01 †対応のある t 検定を行った。 表 3 事前事後測定値の被験者内・被験者間比較 片足開眼立ち (sec.) 30.0±0.0 29.6±1.7 29.3±2.0 28.9±3.3 0.006 0.938 0.619 0.438 2.196 0.149 事前測定 事後測定 事前測定 事後測定 F値 p値 F値 p値 F値 p値 転倒群 (n=22) 非転倒群 (n=9) 交互作用 測定時期 転倒有無 各要因の 主効果 立ち幅跳び (cm) 133.5±14.2 135.5±18.3 132.4±15.1 142.0±20.6 3.798 0.061 9.593 0.004** 0.187 0.668 反復横とび (回) 32.7±6.0 35.4±7.0 33.0±6.9 41.1±5.1 4.101 0.052 15.008 0.001** 2.053 0.163 **p<.01 †繰り返しのある二元配置分散分析,主効果の検定を行った。 意欲・関心 †一元配置分散分析を行った。 2.93±0.31 2.89±0.25 2.94±0.28 0.521 0.596 2.91±0.20 2.93±0.18 2.93±0.32 0.087 0.816 3.00±0.00 2.78±0.36 2.94±0.17 2.537 0.110 成果 2.63±0.45 2.60±0.42 2.65±0.42 0.226 0.798 2.62±0.46 2.62±0.42 2.65±0.44 0.089 0.915 2.67±0.44 2.56±0.44 2.63±0.39 0.509 0.522 協力 2.77±0.36 2.71±0.44 2.81±0.40 0.730 0.486 2.70±0.40 2.73±0.40 2.77±0.46 0.250 0.780 2.94±0.17 2.67±0.56 2.89±0.22 2.154 0.178 学び方 2.85±0.37 2.87±0.41 2.85±0.47 0.065 0.878 2.80±0.43 2.84±0.47 2.86±0.47 0.870 0.426 3.00±0.00 2.94±0.17 2.83±0.50 1.000 0.390 総合 2.78±0.23 2.75±0.27 2.79±0.26 0.798 0.455 2.74±0.24 2.76±0.25 2.79±0.27 0.864 0.823 2.88±0.17 2.72±0.31 2.80±0.25 2.761 0.093 評定 4 4 4 4 4 4 5 3 4 評定 4 4 4 4 4 4 4 4 4 評定 4 4 4 4 4 4 5 4 5 評定 5 5 5 4 5 5 5 5 5 評定 5 4 5 4 4 5 5 4 5 1回目 2回目 3回目 F値 p値 1回目 2回目 3回目 F値 p値 1回目 2回目 3回目 F値 p値 全児童 (n=31) 転倒群 (n=22) 非転倒群 (n=9) 表 4 形成的授業評価の結果
に分けて分析を行ったが,全ての観点において差は認め られなかった。 評定においては,全児童,転倒群,非転倒群のグルー プに関係なく,全ての観点で 3 以上の評価が得られた。 「意欲・関心」の観点においては,全児童および転倒 群は授業回数に関係なく評定は 4 で推移した。非転倒群 は,1 回目が評定 5 ,2 回目が評定 3 ,3 回目が評定 4 であった。 「学び方」の観点においては,全児童および非転倒群 は授業回数に関係なく評定 5 であった。一方,転倒群 は,1 回目が評定 4 ,2 回目と 3 回目が評定 5 であった。 Ⅳ 考察 本研究は,小学 3 年生の児童を対象に動的なバランス 運動を全 3 回指導し,その指導前後における体力・運動 能力測定値および体育授業に対する評価の変化を明らか にした。 1. ぐらぐら運動を通した各測定値の変化 児童 31 名におけるぐらぐら運動実施前後の開眼片足 立ちの記録には有意な差は示されなかった。一方で,立 ち幅跳びと反復横とびでは実施前後で有意な差が示さ れ,事後の値が有意に高かった。スポーツ庁が調査して いる全国体力・運動能力調査結果によると,平成 30 年 度小学 3 年生の立ち幅跳びの平均値は,男子が 137.76 ± 17.91 cm で,女子が 129.44 ± 17.04 cm であった24)。 本対象者は男女共に,事前測定では全国平均値を下回っ ていたが,事後測定において全国平均値を上回った。加 えて,反復横とびの全国平均は,男子が 36.10 ± 7.56 回,女子が 34.62 ± 7.00 回であり24),事前測定では男子 が全国平均を下回っていたが,事後測定においては男女 共に全国平均値を上回った。 姿勢を崩させ,新たな支持基底面を作る動きを意図的 に繰り返し児童に経験させたことが,測定動作にも反映 され,測定値の向上へ繋がったとものと考えられた。9 ~ 12 歳の時期は,多様な条件に適応して新しい運動経 過を素早く把握して習得する特徴を有するといわれてい る15)。今回の対象者は,「手押しずもう」や「ぐらぐら ケンパ」などの教師が提示した運動に即座に順応し,よ り刺激を求めて活動した結果,測定課題に繋がる動作を 身につけることができたと考えられる。また,先行研 究によると,小学 1 年生 30 名を対象にドッチボールや しっぽ取り,ケンパ走等の運動を 20 分間,全 29 回実施 し,実施後に男子の反復横とびが有意差に向上したこと や小学 5 年生 34 名を対象に長縄を使った運動を 45 分 間,全 7 回,体つくり運動の授業として実施し,授業後 に反復横とびや立ち幅跳び等の記録が有意に向上したこ とが報告されており25)26),本研究も先行研究に近い結 果となった。つまり,本研究で実施したぐらぐら運動 は,すでに小学校で実施されている運動プログラムと同 程度の効果があるものと考えられた。 反復横とびは,動作を連続させるために平衡性とも密 接に関連するといわれている27)。また,小学 1 年生か ら 3 年生の児童 136 名を対象に反復横とびと足圧中心測 定値の相関関係を検討した研究では,反復横とびと足圧 中心動揺の単位時間軌跡長および外周面積との間に有 意な相関が認められ,発育期にある小学校低学年男女児 童において,静的立位時における姿勢制御系の安定性が 俊敏性のパフォーマンスに関与している可能性が示唆さ れている28)。さらに,転倒に関する研究では,バラン ス能力と関連性が高い足趾把持力の測定を用いることが あるが,児童を対象にした足趾把持力の研究では,反復 横とびや立ち幅跳び等 6 つの運動能力との相関が認めら れている29)。そのため,本研究で反復横とびと立ち幅 跳びの有意な向上が認められたことより,児童において はぐらぐら運動を通して平衡能力向上に繋がった可能性 が推察される。今後の研究において,重心動揺計や足趾 把持測定を用いて,反復横とびや立ち幅跳び等の運動能 力と合わせて平衡能力についても検討することで,ぐら ぐら運動の転倒予防効果について明らかにできると考え る。 一方,本研究では,静的姿勢を測定するために開眼片 足立ちを実施したが,有意な差は示されなかった。先行 研究ではミニバスケットボールチームに所属している小 学生を対象に基本動作を 1 か月実施し,その前後に運動 能力を測定したところ,立ち幅跳びと反復横とびは有意 差が認められたものの,閉眼片脚バランスでは有意差が 認められず,本研究と同様の傾向であった。さらに,小 学生を対象とした場合,片脚立ち測定では,短期間で 変化を求めるのが困難であることも述べられている30)。 また,平衡性を片足立ちで測定することは,個人の心理 的・生理学的,およびテスト場面の環境的諸条件も結果 に関与しているため,平衡性の体力要素を把握するこ とは難しいとも述べられている27)。これらのことから, 児童を対象に静的バランス能力を測定する方法は,今後 検討の余地があるものと考えられた。 対象者 31 名のうち,3 か月以内に転倒した転倒群が 22 名,非転倒群が 9 名であった。二元配置分散分析の 結果,交互作用は認められなかったため,転倒経験の有 無による測定値の差は示されなかった。 また,本研究では,自然成長期間(非介入期)を設定
引用文献 1) 独立行政法人日本スポーツ振興センター.学校の 管理下の災害[平成 28 年版]平成 27 年度データ , しなかったため,運動能力測定の変化が児童の発育発達 によるものである可能性は払拭できない。しかしなが ら,幼児を対象とした運動能力に関する先行研究では, 自然成長期間(10 週間)と運動介入期間(10 週間)を 比較したところ,開眼片足立ちには有意差がなく,立ち 幅跳びやサイドジャンプには運動期間で有意に高値を示 したことが報告されている16)。さらに,平衡性と俊敏 性の最大発達量は 6 歳以前に現れると考えられており, 6 歳以降一貫して発達量の減少傾向が示されている27)。 本研究では事前測定から事後測定までの期間が 15 日で あったことを踏まえると,結果で示した変化が自然な発 育発達に伴う現象であったと捉えることは難しいと考え る。 2. ぐらぐら運動に対する授業評価 全児童,転倒群,非転倒群の形成的授業評価におい て,全ての観点で 3 以上の評定が得られ,転倒予防を目 的とした体育授業は群に関係なく全児童に受け入れられ たことがわかった。特に,全児童の「学び方」において 1 回目から 3 回目まで評定 5 で推移し,高い評価が得ら れた。児童を対象とした体つくり運動の単元で形成的授 業評価を実施した先行研究と同様またはそれ以上の結果 が得られたことがわかった26)31)32)。 また,転倒群と非転倒群に分けた被検者内比較におい ても,有意な差は認められなかった。しかしながら,着 目すべき点が 2 点ある。1点目は,「学び方」の評価で ある。非転倒群は 1 回目から 3 回目は評定 5 と授業初め から高い評価が得られた。一方,転倒群では,1 回目が 評定 4 であったが,2 回目と 3 回目で評定 5 へと向上し た。すなわち,転倒歴がある児童にとっては授業初めよ りも,回を重ねることで,授業への関わり方が積極的 になっていったことがわかる。「学び方」については, 平成 29 年に告示された学習指導要領の重要な観点にも なっており,体育を通しても「学びに向かう力,人間性 等」の資質・能力を育むことが明示されている。その視 点から,今回の取り組みを捉えると,児童は自ら進んで 積極的に授業に参加できたと評価しており,本研究の指 導内容がこれからの体育授業の方向性にも適応するもの であったと考える。 2 点目は,「意欲・関心」の変化についてである。転 倒群は,1 回目から 3 回目は 4 で推移し,よい体育授業 と評価したことがわかった。一方で,非転倒群は,1 回 目 5 ,2 回目が 3 に低下し,4 回目が 4 であった。つま り,非転倒群の児童にとって,1 回目の授業は好奇心を 持ち,精一杯取り組めるものであったが,2 回目には繰 り返しや運動への慣れによって,その気持ちが一度低下 していたと考えられる。体つくり運動でバランスボール を用いて 4 時間実施した研究においても,4 時間目に意 欲・関心の評定が 3 に低下した報告がある31)。児童が 意欲を減退させることなく,運動に取り組んでもらうた めには,ぐらぐら運動の内容や用具の工夫,授業マネジ メントについて改善の余地があるものと考えられた。 Ⅴ 本研究の限界 本研究では,ランダム化比較試験ではなく,小学 3 年 生 1 クラスのみを対象者としたことが挙げられる。予め 児童には実験の内容を伝えているため,ピグマリオン効 果やホーソン効果が皆無であったとは言い難い。また, 動的バランス能力を評価していないことに加え,コント ロール群を設けた効果の比較検討には至らなかったこと も挙げられる。 Ⅵ 結論 児童の転倒予防目的で考案・指導したぐらぐら運動の 実施により , 立ち幅跳びと反復横とびの値が向上した。 加えて,ぐらぐら運動を実施した授業は,授業評価が高 い値で推移し,児童らが自ら進んで楽しく学ぶことがで きる体育授業であることが示された。 Ⅶ 利益相反 本研究において申告すべき事項はない。 Ⅷ 謝辞 本研究を実施するにあたりご協力をいただきました K 小学校の皆様に深謝いたします。 なお,本研究の一部は科学研究費補助金(若手研究 (B),課題番号:26750249)の助成を受けて実施したも のである。 註 1 )児童の障害報告とは,独立行政法人日本スポーツ振 興センターにおいて,医療費(負傷・疾病)が給付さ れた報告のことである。 2 )体育科運動分野 6 領域 小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説では,体育科の運動領域は次の 6 つ が示されている。体つくり運動系,器械運動系,陸上 運動系,水泳運動系,ボール運動系,表現運動系。
東京,2016. 2)独立行政法人日本スポーツ振興センター.学校の 管理下の災害[平成 29 年版]平成 28 年度データ, 東京,2017. 3)長谷川ちゆ子ほか.学校管理下における障害事例 の分析.安全教育学研究.8(1);21-29, 2008. 4)笠次良爾.学校管理下における児童生徒のケガの 特徴について.KANSAI 学校安全 2011 第 6 号; 2-7, 2011. 5)文部科学省.小学校学習指導要領(平成 29 年告示) 解説体育編.東洋出版社,東京.2017, p.24, pp.40-41, pp.72-73. 6)大築立志.「たくみ」の科学(現代の体育・スポー ツ科学).朝倉書店,東京,1988, p.97. 7)転倒予防学会 HP.入手先<http://www.tentou yobou.jp/senmonka/teigi.html>,参照 2020-3-3. 8)Horak F. B., et al. Central Programming of
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A Study of Physical Education Class for Fall Prevention in
Elementary School:Effects of Dynamic Balance Exercise
Intervention
Takako HIWA1) Tomoaki SUGAWARA2) Kiyonao HASEGAWA3)
1) Faculty of Education, Niigata University 2) Nuttari Elementary school, Niigata City
3) Faculty of Health and Sport Science, University of Tsukuba
【Objective】Falling down is one of the problems for the children. Therefore, it seems important to instruct children on fall prevention exercise at the elementary school physical education classes. The aim of this study is as follows Focusing on preventing children from falling, we conduct dynamic balance exercises in the physical education classes and reveal the effect of this Exercises.
【Methods】The subjects were 34 the 3rd graders students. We instructed them on four “wobble movement exercises” at physical education class 3 times in total(45 minutes each), and measured physical strength data for one-leg standing duration with vision, standing long jump and repeated side stepping before and after the instruction of the exercise. In addition, for the reflective analysis, formative evaluation of the lesson was performed.
【Results】A significant difference was observed in the physical strength data for standing long jump and repeated side stepping before and after 3 classes. According to the formative evaluation of the lessons, furthermore, the evaluation level 3 or higher was obtained for all items in 3 classes that the classes were good ones for students. Especially, for “learning method”, the evaluation level 5 was maintained for all 3 classes.
【Conclusion】The value of the standing long jump and repetitive stepping was improved by the wobbling exercise. And children's class evaluation has been high, it was shown that the physical education class aimed at preventing falls was a content of physical education in which children could voluntarily and happily learn.
elementary school students, fall prevention, physical fitness, wobble movement exercises, physical education
和文抄録 Abstract
Keywords
Corresponding author: Takako HIWA, Faculty of Education, Niigata University 8050 Ikarashi 2-no-sho, nishi-ku, Niigata, 950-2181 Japan
TEL:+81 25262-7080 FAX:+81 25262-7080 e-mail:[email protected] Received:November 27, 2019 Accepted:April 7, 2020