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「記録基本法」の制定に向けて: 沖縄地域学リポジトリ

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(1)

Title

「記録基本法」の制定に向けて

Author(s)

仲本, 和彦

Citation

沖縄県公文書館研究紀要 = OKINAWA PREFECTURAL

ARCHIVES BULLETIN OF STUDY(6): 77-100

Issue Date

2004-03-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/9165

(2)

記録基本法」の制定に向けて

仲 本 和 彦 T 「この法律は、国民_喜藤 の屠ノ合にの っとり、行政文書の園示 を′請求 する膚SIJにつ き定め ること 等によ り、行政戯園の保有 する膚#の一層 の公園 を図 り、 占って政府 の有 するその諸藩勢 を国民 に説FWする責務が全 うされるよ うにするととil二、愚民のbク確 を理解 と舵flJの 下にある公正で 民 主飴を行政の挽 進に資することをH府 とするo」 (「情報公開法」第 1条)1 はじめに 1 我が国における記録管理の現状 1- 1 記録管理の基本

1-2

我が国における記録管理の仕組み

1-3

我が国おける記録管理の問題点

1-4

アメ リカ連邦政府記録 との比較

1-5

アメ リカ連邦政府 における記録管理の仕組み 2 記録基本法の制定へ向けて

2-1

公文書館 を中心 とした記録管理体制の確立

2-2

記録基本法の骨子

2-3

周辺整備の必要性

2-4

地方 自治体への波及 おわ りに 付 録

1:1

9

5

0

年の連邦記録法 (抜粋) 付 録

2

:記録管理 に関す る合衆国法典見出 し 付 録

3

:合衆国法典第

4

4

条 (抜粋) はじめに

2

0

0

1

4

月、地方で先行 していた情報公開に関す る法律 が国で も施行 された。同法は、国民の 「知 る権利」 と国家公務員の 「説明責任」 を明確に定め、 これ まで行政の 占有物 と考 えられて きた公文書 に対す る国民のアクセスを保証す る画期的な法律であった。 ところで、同法の制定過程では、政府の 保有す る記録の管理 に関す る法律の制定 も同時に議論 された2。 とい うの も、「情報公開 と記録管理 は 車の両輪」 と言われ、情報公開の適正 なる運用は、記録の適正 な管理が前提 となるか らである。 しか し、記録管理 に関 しては、法律の制定 にまでは至 らず、情報公開法運用の鍵 としてのその重要性 が確 認 されるにとどまった。 行政が国民の税金により賄われていることを鑑みれば、その活動の結果作 り出 され る記録は、国民 T財団法人沖縄 県文化振興会公文書管理 部公文書専門員 1 「行政機 関の保有す る情報の公開 に関す る法律」 (1999年5月14日法律第42号)Q Z 内閣府 「第 1回歴 史資料 と して重要 な公文書等の適 切 な保存 ・利用等 の ための研究 会議事要 旨 (以 下、「第1回研 究 会議 事要旨」)」 (2003年5月12日)、5頁。

(3)

-77-の共有財産 と見な し、適正 に管理 され るべ きである。 しか し、現在、我が国には、記録の管理 を包括 的に定めた法律 はな く、情報公開法やその他の関連法で部分的な規定があるだけである。その結果、 後で詳 しく見 るように、行政 による窓意的な記録の廃棄や隠蔽などの問題 が後 を絶 たない。 また、現 在の ような記録管理制度の運用では、国家の歩み を後世の我々の子孫 にきちんと残 していけるかどう か も危 うい。 記録管理の先進国 と言 われ るアメ リカ、カナダを始め、お隣の中国、韓国などの取 り組み を見てい ると、記録管理 に関す る法律 に基づいて情報公開や歴 史資料の保存 が行 なわれていて、 この分野にお いての我が国の立 ち後れは歴然 としている。本稿では、国民の共有財産である行政記録の保存や利用 に関 してどのよ うな問題 があるのか、また、その状況 を改善す るためには何 を為すべ きかについて考 えてい くことに したい。 1 我が国 にお ける記録管理 の現状 我が国における記録管理 は、アメ リカの 「連邦記録法 (FederalRecordsAc

t

)」や韓国の 「公共機関 記録物管理法」の よ うな記録管理のみ を限定 的に扱 った法律 によって規定 されてい るのではな く、 「情報公開法」、「国立公文書館法」 3、「公文書館法」 4など、記録の管理 に何 か しら関わる法律 におい て部分的な規定があるだけである。 また、よ り具体的な運用取 り決めが、法律 に比べ強制力の弱い政 令 、省庁間の申合せ 、文書管理規程 などで規定 されているため、悪意的な廃棄や隠蔽などの問題が生 まれやすい状況 になっている。そこで、本章では、記録管理の基本的な要素や外国における実態 を見 なが ら、我が国における記録管理 にはどのような問題が内在す るかを見てい くことにす る。 1-1 記録管理 の基本 記録管理 は、 まず、組織の活動 をきちん と記録化 (文書化)す ることか ら始 まる。図 1はアメ リカ連邦政府の記録管理 に関す る ポスターで あるが、「文字 は残 る。文字 にせ よ・.・そ して保存せ よO」 となっていて、菓議書 にとどまらず、会議の議事や業務 に関す る 電話や会話の内容 まで文書化す るよ う呼びかけてい る。 この よ う に、活動 を記録 に残す ことは、自 らの業務の遂行 に必要 なだけで なく、第三者 に対す る説明責任 を果たす上で も重要である。 作 られた (あるいは受け取 った)記録は、必要な時にいつで も取 り 出せるよう分類 され、業務上の利用価値が存在する限 り、大切に保管 されなければならない (現用段階)。ところで、行政機関においては、 日々、膨大な記録が作 られるが、これ らの記録をずっと事務所に貯め 続けることはできない。棄てずに貯め続けると、やがて貴重なスペ-図1:アメ リカ連邦省庁 で配布 され て いる記鐸管理 に関す るポスターの一例 スや財源までも圧迫することになるか らだ。経済性や効率性 を考 える ことも記録管理の重要な要素である.そこから、記録の 「保管期間 (retentionpehod)」や 「中間書庫」と いう概念が出て くる。行政上の利用価値 に応 じて1年、 3年、 5年、10年、30年、永年などという記録の 保管期間を設定 し、保管期間が過 ぎた記録は、随時廃棄 していくことになる。また、まだ行政上の利用価 値はあるものの、利用頻度の低い記録は、廃棄 までの間、「中間書庫」 と呼ばれる管理費の比較的安い場所 3 「国立公文書館法」 (1999年6月23日法律第79号)0 4 「公文書館法」 (1987年12月15日法律第115号)。 -7

(4)

8-に移 して保管 してお くこともある (半現用段階)。 さらに、保管期間が過 ぎて行政上の利 用価値 がな くな っ た記録で も、証拠的 または情報 的 な観 点 か ら時間が経 って も価値 が下 が らない もの が ある。 その よ うな記 録は、公文書館へ移管 され 、記録遺産 と して永久保存 され、再利 用 され ることになる (非現用段 階)0 この よ うな記 録 の 「作 成 ・収 受 」、 「保 管 ・利 用 」、 「廃 棄 (廃 却 ・公 文 書 館 へ の移 管

)

」 に亘 る局 面 は、「記 録 の ライ フサ イ クル」 と呼 ばれ 、欧 米 な どで は法 律 に基 づ い た体 系 的 な管 理 が な され て い る。 例 えば 、各 省庁 の政 策 及 び 業務 は正 確 かつ 包 括 的 に記 録 され て い るか 、保 管 す る記 録 の量 は適 正 か 、 記録 の保 管 並 び に利 用 につ い ての 手順 は明確 か 、 そ して最 後 に 、記 録 の廃 棄 は合 理 的 かつ合 法 的 に行 なわれ て い るか な ど につ い て の規 定 が法 令 や規 則 で定 め られ て い るの で あ る。 (ア メ リカ連 邦 政 府 の 例 につ いて は巻 末付 録 1-3を参 照 。) 以上 が記録 管理 の 基本 的要 素 で あ るが 、 これ を踏 ま えて 、我 が国 お け る記 録 管理 が どの よ うな仕 組 み にな って い るの か を見て い くこ とに しよ う。 1-2 我 が 国 お け る記 録 管 理 の 仕 組 み 政府 にお け る記 録管理 につ いて は、 まず 、情 報 公 開法 に次 の よ うな定 め が あ る。 第

37

条 行政 頗 ノ野の長/よ この法律 の適 正か つ円 滑 を運 用 に資 す るた め 、 行政 文 書 を遮 正に 管理 する畠の とする 0 2 行政磯 原 の長 は、政 令 で定 め る と こ ろに よ り行政 文 書 の管理 に関 す る定 め を,,iRJtける と と iに、 これ を「殿 の原 質 に供

な けれ ば な らない 0

3

前項 の政 令 にお い では 、行政 文 書 の分腰 、 作成 , 保存R び廃 棄 に関 す る基 準 その 他 の 行 政 文書 の管理 に関 す る必要 な事項 に つ い て定 める古の とす るo ここで言 う 「政 令 」 が 、 「行 政機 関 の保 有 す る情 報 の 公 開 に関 す る法 律施 行 令 (以 下 、 「施 行 令

)

で あ る。紙 幅 の 関係 上 、全 文 を紹 介 す る こ とはで きない が 、特 に本稿 の テ ーマ に深 く関係 す る と思 わ れ る部 分のみ を取 り上 げてみ る と表 1の よ うに な る。 表 1:施行令第16条 (行政文書の管理に関する定め) (抜粋) 項 条 文 項 目 1 当該行政機関の事務及び事業の性質、内容等に応じた系統的な行政文書の基準を定めるものであることo 分 類 基 準 2 当該行政機関の意思決定に当たつては文書を作成 して行なうこと並びに当該行政機関の事務及 記 録 化 び事業の実績について文書を作成することを原則とすることo (文書化)義務 3 行政文書の専用の場所において適切に保存することとするものであること○ 保 存 場 所 4 当該行政機関の事務及び事業の性質、内容等に応じた行政文書の保存期間の基準を定めるものであることo 保 存 期 間 8 臣に移管することとするもの及び第保存期間が満了した行政文書については、国立公文書館法第2条第 1項に規定する機関に移管することとするものを除き、15条第2項の規定により内閣総理大 保 存 期 間満了時の廃棄 廃棄するものであることo 9 文書を廃棄することができることとする場合にあつては、廃棄する行政文書の名称、当該特別理行政文書を保存期間が満了する前に廃棄 しなければならない特別の理由があるときに当該行政 保 存 期 間満 r前廃 棄 由及び廃棄 した年月日を記載 した記録を作成することとするものであることo 10 行政文書ファイル及び行政文書の管理 を適正に行 うため、これ らの名称その他の必要な事項を 文 書 フ アイ 記載 した帳簿を磁気ディスクをもって調製することとするものであること○ ル 帳 簿 ll 職員の中から指名する者に、その保有する行政文書の管理に関する事務の運営につき監督を行なわせ 文 書 管 理 ることとするものであること○ 担 当 者 12 -行政機関の長は、行政文書の管理に関する定めを記載した書面及び前項第10号の帳簿を一般の閲覧に供 帳 簿 閲 覧所 -7

(5)

9-「作成」か ら 「廃棄」 までの記録の ライフサイクル全般 に自 る管理方法 を確立す ることが重要であ ることは先 に触れ た通 りだが、情報公開法や政令第

1

6

条の記録管理 につ いての定めは、その うち、 「作成 ・収受」 と 「保管 ・利用」の局面のみ を取 り扱 ってい る。 ライフサ イクルの最終局面である記 録の 「廃棄」 については、1987年 に制定 された公文書館法 と1999年の情報公開法の直後に制定 された 国立公文書館法に関連す る規定がある。 公文書館法では、歴 史的な価値 を持つ記録の保存 と利用について行政 が果たすべ き義務 を次のよう に条文化 している。 第3桑 田虜 び地方公共団体ば、歴 史資料 と して重要 を公文書等の保存及 び耐用 に圃し、適 材を措置 を# ずる責務 を有 す

るo

また、国立公文書館法では、歴史的な価値 を持つ記録の移管 と保存について、次のように定めている。 第

1

5

桑 田の機関は、西暦線費大臣 と当該国の磯園 とが紛議 して定め るところによ り、当該 国の機関の保管に係 る歴 史資料 と して重要 を公文書等の適 材を保存のために必要な措置 を諾 ずる畠のとす

る0

2 内脚 大臣 は、前項 の協議 による定めに基 づ き、歴 史資料 と して重要 な公文書等につ いて、田並公文書館 において保存 する必要 が

ると認 めるときば、当該公文書 を保存す る団の機関 との合意 によ り、 その移管 を受けることが でき

る0

3 前項 の場合 にお いて、必要 があると認 め られ るときは、西暦踏産大臣 は、あ らか じめ、 鼻 立公文書宙の意見 を磨 (ことが できる0 4 内脚 大臣 は、第2宙の虜窟 によ り移管 を受けた公文書等 を国立公文書静に移管す

畠のとす

るo

この条文 を受 けて、 さらに具体的な細 かい取 り決めが、「閣議決定」、「各府省庁官房長等申合せ」、 「各府省庁文書課長等 申合せ」 において規定 されてい る。閣議決定 においては、特 に歴 史資料 として 重要な公文書等の中核 となる記録が次のように規定 されている。 (1)我が国政府の過去の_主要 な店瀞 を顔づけるために必要 な、国政上の重要 な事項又はその 伸の所 管行政1 の重要 を事項の うち廊 曹行政 に係 る重要な政夢等国政上 の重要な事項に 準 ずる重 要性が

ると,嘉,gめ られる畠のに係 る決定 (2) (1)の決定 に至 るまでの審議、顔Ff,fR は鯵議の適厚顔びその決定 に基 づ (魔窟の遂行適者 また、官房長等や文書課長等の申合せ においては、特 に移管の手続 きが規定 されている。それによ ると、移管 は次の ような手順 をとる (要約)。 (1) 内閣総理大臣は、国立公文書館の意見 を聴 いて、行政文書の うち、各府省庁官房長等申 合せ 1(1)か ら(3)までの一に該 当す ると認め られ るもの を申 し出るよう求める。 (2) 各行政機 関の長 は、各府省庁官房長等申合せ1(1)か ら(3)までの一 に該 当す るもの として 国立公文書館 において保存す ることが適 当であると認め られ るもの を内閣総理大臣に中 一8

(6)

0-し出る。 (3) 内閣総理大臣は、各行政機関の長か らの申出 を受 け、国立公文書館の意見を聴 いて、同 館 において保存す ることが適当なもの として移管 を受 ける対象について各行政機関の長 と協議す る。 (4) 内閣総理大臣は、移管に関す る協議がすべて整 ったところで、各行政機関の長 との合意 に基づ き当該年度の移管計画 を決定す る。 以上が国における記録管理 につ いて定めた関係法規の主 な内容 だが、 これ らに各省庁独 自の 「文書 管理規程」 を加 えたものが、我が国政府 における記録管理の基本的な枠組み となる。 これ らは、記録 管理の重要性 を認識 し、歴 史的価値の ある記録の保存や利用への道 を大 きく開いた点では大いに評価 で きる。 しか し、我が国の情報公開や歴 史資料の保存 は、本当にこれで十分であろうか。残念なが ら、 情報公開制度導入後 も政府内外か ら記録管理 についての問題 を指摘す る声 は無 くな らない。我が国に おける記録管理の運用にはどのような問題点があるのか、その実態 を詳 しく見てい くことに しよう。 1-3 我が国おける記銀管理 の問題点 情報公開法の成立によって、国民 による行政情報へのアクセスは保証 され るはずで あった。 ところ が、情報公開法が施行 された2001年

4

月以降 も、表2にあるように、記録管理の不備 にまつわるニュ ースは後 を絶 たない。 表

2

:記録管理の不備に関する新聞報道の例 事 例 内 容 ① 連文書 を発見/環境省「水俣病 : Fない』 と答 えた関」 5 環境省による文書開示 に対す る異議 申立てを受 けた情報公開審査会が 文書の存在 を指摘 し、公開す るよ う答申 したとい うものo文書見落 と し の他 に、重要 な関係文書の廃棄が問題視 されたo ② 「出張費用公文書 :旧郵政省 が を旧郵政省が出張 で実際 に使 った費用 を明記 した 「3年か ら1年 に短縮 し、関係文書 が廃棄 されていたとい うものo郵政復命書」の保管期間 廃棄通達

/

「保管3割 を1年に」6 局による監査 は3- 4年に1度 、郵政監察局の業務考査 は2年 に 1度 し かないため、関係文書が監査の対象か ら外れ る可能性 が問題視 されたo ③ 「特報 .外務省 :極秘電報 を- 情報公開法施行 を目前 に控 えたか見ることがで きない在外公館向けの 「2001年3月、外務省事務次官 ら上層部 し部内連絡」 と呼ばれ る極秘文香 斉廃棄/情報公開法対策か」 7 が、急速、一斉廃棄 されたとい うもので、公開請求か ら逃れ るための恋 意的な廃棄 との疑いが もたれた○ ㊨ 通信が情報公開請求/文書開示「引 き継 ぎ書 ない省庁 も/共同 請求 に対 し、公開に応 じた省庁 がある一方で、文書 自体 を作成 していな各省庁の事務次官 など直近の幹部交替 に伴 う 「引 き継 ぎ書」の情報公開 『毎日新聞』(2002年3月6日)0 F毎日新聞』(2001年5月8日)。 F毎日新聞』(2001年3月31日)0 F沖縄 タイムスj(2001年5月17日)o 181

(7)

-これ らの例 を見てみ ると、記録管理の重要性 を確認 し、その基本的要素 を漏れな くカバー している ように見えた法令や申合せ にもまだ問題 があることが分かる。 これ らの うち重大 なのは、上の①か ら ③ にあるよ うな記録の廃棄に関する問題 だ。 省庁での保管期間が過 ぎた記録の廃棄 には、シュレッダーなどを使 って廃却す る方法 と公文書館へ の移管 が ある。 どの よ うな記録 を歴 史資料 と して公文書館 に移管す るかにつ いては、諸外国では、 「評価 ・選別」 9のプロたるアーキ ビス トがその役 目を担 っているが、我が国では、国立公文書館のア ーキ ビス トは省庁の決定 に対 して口を挟 めない体制 になっている。先 に紹介 した国立公文書館法第15 条や各府省庁文書課長等の申合せ をよく読 むと分かるように、公文書館への移管については、各省庁 の合意が前提 になってお り、省庁 が "No" と言 えば、移管 されない。その結果、情報公開法や国立公 文書館法が施行 された後 も移管冊数は増 えていないとい うのた。 10 表3 省 庁 名 冊 数 人事院 ll,860 内閣府 185,177 宮 内庁 2,854 警察庁 856 防衛庁 59 防衛施設庁 21,348777 金融庁 総務 省 省 庁 名 冊 数 公害等調整委員会 911 法務 省 23,801 財務 省 6,947 文部科学省 31,998 厚 生労働 省 42,549 社会保険庁 1,951 農林水産 省 2,814 経済産 業省 576 省 庁 名 冊 数 国土交通省 47,948 高等海 難審判庁 634 海 上保安庁 1,130 気 象庁 4,990 環境省 10,791 民事判決原本 5,710 さらに、国立公文書館法は、行政府 だけでな く立法府や司法府の記録の移管 を受けることになって いるが、立法府や司法府 との間では、移管 について協議 がで きていない とい うのが現状のようだ。 もう一つ深刻 な問題 がある。表2の④ に挙げたような、活動の非記録化 (非文書化)の問題である。 これについては、あるシンポジウムで、次のような例 が紹介 された。 吉田茂首相の東南 アジア訪問に関す る外務省の公開記録では、実質的な外交政策に関す るようなも のがほ とんどな く、新聞記事のスクラップ、宴会の席順 、 レセプシ ョン招待者 リス トなど形式的な資 料 しか公開 されていないとい う。一国の政治の最高責任者 が外国政府 を訪ねて政策に関す る実質的な 話 し合いなど持 たずに、毎晩、パ ーテ ィに明け暮れ たとい うことは考 えられないので、これは、活動 の内容か ら来 るとい うよりは、活動 を記録 していないとい う問題か ら来 るものだろう。 ll

9

評価 とは、現用業務、法務上 ・財務上の利 用、証拠価値 な らびに情報価値 、その資料の整理 と現況および他の記録 との関係 に基づいて、価値 を決定 し、記録 を最終措置す る記録管理および史料管理の基本機能。 また、選別 とは、文 書館等で永久保存すべ き文書 と廃棄す る文書 をよ り分けること。特 に膨大な量 となる行政文書 については、この作業 が必要 となる。あらか じめ定め られた一定の基準によりな され る場合が多い。文書館用語集研究会編 『文書館用語集

(大阪人学出版会1997年)、76、107貢。 IO 前掲 「第1回研究会議事要旨」、18-22頁。表3は,1971年か ら2001年 までの各省庁か らの公文書等の移管実績だが、 記録が的確 に移管 されてい る省庁 と、30年間の簿冊数 が100に満たない省庁 もあるO また、冊数があって許認可の個 別案件が大半 を占め るとい うところもあるよ うだ。省庁 か らの移管につ いては恒常的な問題 が存在 していたことが分 か る.内閣府 「歴 史資料 と して重要 な公文書等の適切 な保存 ・利用等の ための研究会資料集 (以 卜、研究会資料集

(2003年5月)、63頁。 (※省庁 糾 ま、2001年1月の省庁再編後の名称。) 11 明治学院大学Bl際平和研究所 、 ノーチ ラス研究所主催 「市民社 会 におけ る情報 公開制度の役割 と可能性 (The ImportanceofFreedomoflnformationtoEastAsianSociet

y

)」(2003年1月31日∼2月1日)0 -82

(8)

-この廃棄の問題や活動の非記録化の問題 は、「この よ うな記録 は存在 しない。 よって、その ような ことは行われなかった。」 と情報公開において政府の言 い分 を通す根拠 にな り得 るし、「歴 史資料 とし て保存 されてい る記録の中味 が乏 しい。」 とい う研究者の不満の原因になってい る。 この ことは、次 に見るように、情報公開先進国 と呼ばれ るアメ リカとの比較で見 るとより明 らか となる。

1-

4

アメ リカ連邦政府記錦 との比較 沖縄県は

、1

9

9

7

年 より、米国国立公文書館 を中心にアメ リカによる沖縄統治時代の記録の調査 と収 集に取 り組んでいるが、アメ リカ政府の公文書 を目に して気付 くことは、 日本ではあまり残 らない政 策決定過符 を示す手書 きの メモや職員同士での往復書簡 などがた くさん残 ってい ることで ある。 12 こ れは筆者だけでな く、アメリカ政府の公文書 を目にす る日本人が一般的に持つ印象のようだ。例 えば、 中馬清福は、「-公式の公竃 、覚書 、口上書 などに とどまらず、相手の某 は こう言 った とか、こんな 感 じだったとか まで含めて、交渉の経過が ことこまか く記 されている。内輪の打合せ も容赦 しない 。

A

が話 したこと

、B

が難色を示 したことなどが記録 されてお り、 ときには、電話のや りとり、メモの 類 まで残 されている。・.・」 と、アメ リカの記録化の徹底ぶ りに驚 きを表 している.13 ところで

、1

9

7

2年の沖縄返還 に向けた 日米交渉の際 には、核兵器の持込みや返還 され る米軍基地の 復元補償費の 日本政府 による肩代わ りなどに関す る秘密合意があったとされてい る。 日本政府 は "文 書の不存在"を盾 に秘密合意の存在 を否定 し続 けているが、アメ リカ側で関連文書が公開 されている ことや当時の関係者が保管 していた密約文書 を公表 して しまったことか ら、密約の存在はほぼ間違い ないと思われ る。14この沖縄返還交渉 における日米交渉に関 して、部内者への インタビューを適 して 日本政府の政策決定過程の舞台裏に迫 った福井治弘によると、交渉では、外務省の通常のル ー トでは なく、大浜信泉 を座長 とす る 「沖縄問題等懇談会」や佐藤総理の密使 として若泉敬 を派遣 した りす る など "非常時型"の手続 きが採 られたため、交渉の記録は部分的に しか残 されず、いちいち宴議書 を 作 って認証 を押す ことも行われなかったとい う。非公式 チ ャンネル を使 う外交 とい うのは、一つの手 法 として認め られ るべ きものであろうが、自国の領土 を回復す るとい う歴 史的な一大事件 に、その交 渉過程 を記録に残 さなかったとい うのは、行政の持つ アカウンタビリテ ィーの点か ら看過で きない問 題ではなかろうか。15 この ような国定に関わるような問題では、政府の アカウンタビリテ ィーが強 く 問われ ることになるが、現在のような記録管理体制では同様 な事例の発生 を防 ぐことは難 しい。 以上のように、日米の外交交渉に関 しては、公開 され る記録の質や量 において決定的な違 いがあり、 日本政府の記録か らは見えてこない政策決定過程 がアメ リカ側公文書か ら見えて くるとい うような不 思議な現象が起 きている。 アメ リカの記録管理制度 とは、一体、どのようなものであろうか。 12 沖縄県が米国で取 り組んでいる米国政府公文書調査 .収集事業の詳細については、拙稿 「ケース ・スタデ ィ :米国統治時代の ``歴史"を再構築する-USCAR文書をマイクロフィルムで収集-

F月刊IMj第41巻第3号 (2002年3月)、10-15頁を参照のこ と。 13 中馬清福 r密約外交j(丈垂春秋、2002年)、170頁。 14 上記の いわゆ る 「核密約」 については 、若泉敬 F他策 ナカ リシヲ信 ゼム ト欲 ス』 (文華春秋、1994年) を、 また、 「財政密約」については、我部政明 r沖縄返還 とは何 だったのか 口米戦後交渉 史の中でj(日本放送出版協会、2000年) を参照の こと。 15 福井治弘 「沖縄返還交渉- 日本政府 における決定過程

F沖縄返還交渉の政治過程』 (日本国際政治学 会縮 『国際政 治」52号、有斐閣、1975年)、120頁。 -83

(9)

-1-5 ア メ リカ連 邦 政 府 に お け る記卓 管 理 の 仕 組 み ア メ リカ連邦政府 におけ る記録管理 の基盤 は、1950年 に制定 され た 「連邦記録 法 (FederalRecords Act)」 に求 め ることがで きる。 ア メ リカで は、 「情報 自由法 (Freedom oflnfom ationAct)」の成立 が 1966年 だが、情 報 公 開制度 がで きる前 に記轟 管理 制度 が構築 され てい た ことにな る。 これ がア メ リカ で 情報 公開制度 が比較 的 ス ムーズ に運 用 され てい る要 因の一つ だ と言 われ てい る。16 我 が国 には記録 管理 その もの に関す る法律 が ない ため 、両 国の法律 を直接比 較検 討 す ることはで き ないが 、それ ぞれ 関連 す る規 定 を細 か く見 て い くと、先 に紹 介 した両 国 間の記録 の質や量 の違 いの原 因が 見えて くる。 まず 、政府 が残 すべ き記録つ いて 、両 国 を比較 してみ よ う (表

4

)0 表4:記録の定義及び活動の記録化に関する日米比較 日 本 ア メ リ カ 記 行政機 関の職員が職務上作成 し、 または取得 し 物理的形態や特徴に闘わず、合衆国政府省庁に た文書、図画及び電磁気的記録 (電子的方式、 より連邦法の下で又は公的取引 きとの関連で作 磁気的方式その他人の知覚 によっては認識す る 成、収受 され、組織 、機能、政策、政策決定、 録 ことがで きない方式で作 られた記録 をい うO)で 手続 き、運営 、その他政府の活動の証拠 として の あって 当該行政機 関の職員が組織的に用いる 又は内包する情報的価値 ゆえに、その省庁 ある 定 もの と して 当該行政機関が保有 しているもの いはその後継機関によって保存 されている又は 義 をいうo(情報公開法第2条第2項) 4保存す るにふ さわ しいあらゆる図書 、文書、地図、写真、機械可読資料 を含むo(4粂第3301項)17 合衆国法典第 活 当該行政機関の意思決定に当たつては文書 (図画 各省庁の長は、組織 、機能、政策、決定並びに 動 及び電磁的記録 を含むo)を作成 して行 なうこと 重要 な取引 きについて十分かつ適切な情報 を含 の 並びに当該行政機関の事務及び事業の実績 につ む記録や、政府 又はその活動によって直接影響 記 いて文書 を作成することを原則 とし、次に掲げ を受ける人々の法的、経済的権利 を守 るのに必 錦

る場合についてはこの限 りではないこととす る 要な情報 を提供す る記録 を作成 し、保存 しなけ 両者 を比較 す る と、 ア メ リカの方 が、若干 、細 か い規 定 にな って い るが、物理 的形態 を問わ ない こ とや 、意思 決定過程 や施 策 の遂 行過程 が分 か る もの とな っていて 、全体 的 には大差 が ない ことが分 か る。 で は、 よ り具 体 的 な取 り決 めで あ る政 令 や管理規 程 の段 階 は ど うな ってい るだ ろ うか。 これ も、両 者 の果 たす 目的 や機 能 が若干違 うため、直接比較検 討 す るこ とはで きないが 、我 が国の各府 省庁官房 長等 申合 せ や文書 課 長等 申合 せ とアメ リカ連邦 政府 の 『連邦規約 集 (CodeofFederalRegulations)』

を比 べ てみ ると、興味深 い違 いが見 えて くる。 我 が国の場 合 、上 の例 で見 た よ うに 、法律 や政 令 の段 階 で は、記録 の定義 と して は、決裁 ・供 覧手 続 を終 えた文書 に限定せず 、 また紙 以外 の媒体 も含 め ることに してい た。 しか し、次 に挙 げ るよ うに、 歴 史資料 と して公文書館 へ移 管 すべ き記録 につ いて定 め た各府 省庁 官房 長等 申合せ や文書課長等 申合 せ の段 階 に な る と、突 如 と して 「決裁 文書」 19や 「報 告 書 」 の オ ンパ レー ドに変 わ って しま うの だ。 これ は、各省庁 の文書 管理規 程 が決裁 ・供 覧文 書 中心 、紙 の文書 中心 にな って い ることに原 因 が ある ら しい .2O 16 杉浦允他 『情報公開と文書管理』(ぎょうせい、1997年)、107頁。 17 44UnitedStatesCode(hereafterU.S.C.)3301:Definitionofrecords. 18 44U.S.C.3101:Recordsmanagementbyagencyheads;generalduties.

19 決裁文書とは、別に 「回議文書」、「同書

「葉議書」とも呼ばれ、組織の意思決定や事務処理のため、関係者に回

議 し、決裁を受けるために作成 された文書のことo前掲 『文書館用語集」、34貢0

2() 前掲 『情報公開と文責管理県 138氏0

(10)

-(i) 国政 上の重要な事項又は所管行政上 の重要 な尊者の うち所 管行政 に係 る重要 な政欝等国 政1の重要を事項 に準 ずる_看穿J性があると認め られ

畠の (以 下 /岳僚 1の重要事膚等J とい うo) に係 る意思決定 を行な うための決裁文■書 (当,f1jF決裁文書 と一体不 可分のB=E顔 であって、当該決裁文書の内容jZは当該意思決定 に至 るまでの密議、顔討者 L,(ば協議 の過岸が,,-=E題 された 畠のを含むo) [傍線筆者] (2) 国政1の重 要事宙等に係 る意思決定 に基 づ (当該行政磯厨 の事務及 び事業の実膚がB=E轟 きれた るの ((i)(=該当する古の を併 (.) (3) 昭和2(輝 までに件成 され、又は覇得 された 畠の ((i)又は(2)に該当す

直の を傑 fo) (4) 各行政頗関 (3(i)に掲 げる機関が置かれ る行政磯ノ野を傑 (D以 下固 Co) の保有 する行政 文着 であって、(i)カ}ら(3)までのいすゞわに 芭該当 しない 古のの うち、,#男 と して国政 上多 大を影響

を及

ぼす こととなった事項 について記頗 された 畠のぞの鹿肉原糸L野犬Lfが国立 公文書戯'において保存することが適当 であると認め

畠の であって、移管について各行 政磯原 と合意 した 畠の21 決裁 ・供覧文書が組織の 「意思決定」 を記 した最 も重要 な記録類であることに間違いはないが、組 織の意志決定過程 を解明す るのには、決定 に至 るまでの草稿や メモ、関係者同士のや り取 りを記 した 電子メールなども同様 に重要である場合が多いO その点について、アメ リカの場合 は、どの ようになってい るのだろ うか。連邦規約集では、「組織 の業務について、承認、コメン ト、指示 、推奨、 フォローア ップなどの 目的で回覧 された り、作成者 以外のために作 られた場合」や 「組織の基本政策決定 、行動 、責務 を適切に理解す るために必要な注 記やコメン トなどのユニークな情報 を含んでいる場合」 は、草稿 やメモなどまで も公文書 と して根 うこととなってい る。22これ ら の規定 に従 って、各省庁 は、組織の意思決定 の最終 結果 と して の ポ ジ シ ョ ン ・ペ ーパ ー (Position Paperあ る い は Memorandum)、議事録 (Minutes)、公電 (Telegram)な どだ けでな く、会話録 (Memorandum ofConversation=MemCon) や電子 メールのや り取 りまで きちん とフ ァイル し、保管 してい る。 中馬 が指摘 したよ うに、ア メ リカ連邦政府 の公文書で 、決 裁文書の前後 に手書 きの メモが挟 まっていた り、起案文書 その もの にコメ ン トが書 き込 まれ て いた りす るの は、 その ためだ。 それでは、その実例 を紹介す ることに しよ う。 図

2

は、米国国立公文書館収蔵 の沖縄 関係 フ ァイルの 中か ら コピー して きた一一枚の メモである。23 これは、アメ リカによる沖 縄統治時代 、地元沖縄 では 「帝王」 と怖 れ られ た第

3

代 高等弁 務官 ポ ールW .キ ャ ラウ ェ イ中将 が残 した メモで あ る。"Mr. 図

2:

手書 きのメモ例

1

21「平成13年3月30日各府官 房長等 申合せ」。

22 36CodesofFederalRegulations(hereafterC.F.R.)1222.34:IdentifyingFederalrecords.

23 "Memorandumfrom PaulW.Caraway,HighCommissioner,toGeraldWarmer,PoliticalAdvisor,(undated),"Bank

ControlFiles,1962:BOR,EconomicDepartment,UnitedStatesCivilAdministrationoftheRyukyuIslands,RecordGroup 260,NationalArchivesandRecordsAdministration.

(11)

-図

3

:手書 きの メモ例

2

叫■事■一一●

坐 .恕 _幽 _叫 ・ q-.9叔 ▲ノん - 、仏ん ム-

3 礼 J†∼ 山ノ仙〟 btcL- - 山、-叫 仙J Li払 -㌢- 一応 山 腔 -SL* 山 叫 h J ti- ふ -t耶 山サ -一、㌧1-A-灯己・-L十 il.II.二.ふ p- こ- J一 丁LJt・Lくト→n九泌7んId山.】Ka」_ -1聖 .I,r叫 一- 一山 ーふ;・trLtlL-I 縦 し車 上_I_」ab:t

図4 :手書 きのメモ例 3 図5:手書 きの メモ例4 W armer,Wow?!"と殴 り書 きされてい る。 これ は、キ ャラウェイが部下 にあた るジェラル ド ・ワ-ナ -政治顧 問 に宛 てた メモで 、 これ を受 け取 った ワ-ナ」 ま、 コメ ン トをつ けて高等弁務官へ メモ を戻 す。取 り消 し線 が引 かれ 、 イニ シャル が書 いて あるの は、 ワ-ナ -が この メモ を読 んだ ことを示す も ので、下の方 には "Commentattached."と書 かれていて、 コメ ン トが添付 されてい ることを示 してい る。図3がその コメ ン トで あ る。24図4は、数 ペ ー ジに渡 ってキ ャラウェイが書 いた手書 きの メモの 一部で あ る。25また、図

5

は、部下 か らの報 告書 にキ ャラウェイが直接 コメ ン トを書 き込 んだ もの も ある。「私 は現 時点でいかな る配 当金 も認 めない。(Idonotagreetoanydividendnow

.

)

」 と書 き込 ま れ 、部下へ差 し戻 されてい る。26 いずれの文書 に もキ ャラウェイ特有 の署 名が あ り、た とえ手書 きで も誰の コメン トかが分か るよ うになっていて、組織 の意思決定過程 を示 す立派 な 「公文書」 とな り得 るの だ。 この他 に も同 フ ァイル には、 タイプ打 ちの報告書 に混 じって手書 きの メモが作成順 に下か ら 順 に収 め られて お り、それ を順序 よ く読 み進 めてい くと当時の内部のや り取 りの様子 が浮 かび上 がっ て くる。 実 は、 この一連 の手書 きの メモは、 1960年代 に沖縄 で吹 き荒 れ た金融機 関粛正 の嵐 の際の施政者で ある米国側 の対応 を示 す もので、 これ まで その内実 はベ ール に包 まれ た ままだった。 この出来事 につ いては、2000年

4

月、当時琉 球政府 の金融検査 部長 を務 めていた外 聞完和 こよる回想録 が出版 され、 金融粛正 は地元琉球政府 の金融検査部主導 で行 われ た もので あ り、米 国側 か らは何の指示 も介入 もな か った と してい る。27 しか し、 この よ うな米 国側 の部 内 メモや手書 きの コメ ン トな どが きちん と保管 され、公開 されてい ることで、実際 には当時の沖縄 にお け る最高権 力者 で ある高等弁務官 自 ら深 く関 わ っていた ことが分 か るの だ。 我 々は、過去 において 「何 が起 こったか (結果)」 につ いて は大体知 ってい る。 しか し、「何故起 こ ったのか」、「どの よ うに起 こったか」 な どにつ いて は、知 らない ことが多い。 これ らに対す る行政側 の "説 明" を提供 して くれ るの が記録 で あ り、それへの ア クセスや その保存 を保証す るの が記録管理

24 "MemorandumfromWarmertoCaraway(27Jun1962),"1'bl'd.

25 .1MemorandumfromCarawaytoEdwardK Shultz,DeputyCivilAdministrator,(21July1962)],")'bL'd.

26 "Memorandum血・om OrbaF.Traylor,Director,FinanceDepartment,toCaraway(28May1963),''BankingFacilities

Files,1963,1'bJ'd.

27 外聞完和 『キ ャラウェイ旋風 琉球政府金融検査部長回顧録』 (ひ るぎ社、2000年)0

(12)

6-制度なのである。 しか し、 日米両政府の記録 を比較 してみ ると、我が国のそれは量 ・質 ともに明 らか に劣っていることが判 る。28 この ような状況 を改善す るためには、行政の活動の きちん と記録化す る こと、記録 を適正に廃棄す ることなど、その作成 か ら廃棄 に至 るまでの包括的な記録管理制度 を構築 することが必要である。 以上、我が国における記録管理の仕組みや問題点 についてアメ リカとの比較 も交 えなが ら見て きた。 その内容 をまとめてみ ると、我が国における記録管理 は、それに関す る包括的な法律 がないため、情 報公開法、国立公文書館法、政令などによる "継 ぎはぎ"的な対応 になっている。その結果、行政の 意思決定へ至 る重要 な側面が記録 されない、記録の悪意的な廃却 を許す、公文書館への移管がバ ラバ ラといった問題が生 じている。 これでは、民主的な社会の基礎 となる行政のアカウンタビリテ ィーが 果たせない し、我が国の歩み を記 した重要 な記録 を残す ことがで きない。 これ らの問題 は、記録管理 が省庁任せ になっていて省庁 が保有す る記録の実態 が外部か ら見 えに くいことや、自らの記録の廃棄 権限 を省庁 自身が握 っていることに原因がある。 また、記録管理 を本務 とす る公文書館の関わ りが少 ないことも問題である。我が国が民主的かつ文化的な国家 として発展 してい くためには、情報公開法 だけではなく、記録の作成 、保管、廃棄、歴 史資料 としての保存 まで を網羅 した体系的な記録基本法 の確立が必要である。次章では、記録基本法の制定へ向けて、網羅すべ き内容や具体的な取 り組みに ついて見てい くことにす る。 2 記録基本法の制定 に向 けて これ まで見て きたように、記録 は、その作成か ら廃棄 までの ライフサ イクルに自 って体系的に管理 することが重要である。 この記録管理 が比較的スムーズに行われてい るアメ リカでは、公文書館の果 た している役割が大 きい。 これは、後世の人々を して 「見たい」 と思わせ るような記録が きちん と作 成 されているか (作成)、利用者 が検索 しやすいような分類 になっているか (保管)、永久保存すべ き 記録が確実に公文書館 に移管 されているか (廃棄)などについて公文書館が積極的に関わっているこ とによる (図6参照)。 図6:記録の ライフサイクル 28 その他、米国国立公文書館 には、沖縄戦や沖縄統治 に関す る文書約400万ページ、写真11万枚 、映画 フ イル ム1,200 本、空 中写真3,500校 、地図1,000枚 など膨大 な量の記録が保管 されていることが判 っている。地元沖縄 、 日本国内 を 見回 して もこれほど多様 な歴 史資料は残 ってお らず、 ここにも日米 における記録管理の違 いが如実に現れている。 -87

(13)

-それでは、アメ リカの法令 を参照 しなが ら、我が国において確立すべ き管理制度や法制について考 えてい くことに しよう。 211 公文書館 を中心 と した記録管理体制の確 立 日米外交 史の機密文書が発見 され る度 に新聞やテ レビなどでよく紹介 され る米国国立公文書館であ るが、歴 史資料の保存や閲覧サービスだけではな く、連邦省庁 における記録の作成か ら廃棄 までを指 導 ・監督す る責任 と権限 を有 していることは、一般 にはあまり知 られていない。29

アメ リカ連邦政府 における記録管理 は、基本的に総務庁 (GeneralSeⅣicesAdministration)と国立 公文書館 とに指導 ・監督権が委ね られていて、前者 は、書式、複写

、OA

などの分野 において経済性や 効率性 を促進す る役割 を担い、後者 は、連邦各省庁 が組織 、政策、活動 などをきちん と記録に残 して いけるような仕組み を構築す る役割 を担 っている。

連邦政府の記録管理 に関す る定めは、現在、『合衆国法典 (UnitedStatesCode)』の第44条 「公共印 刷物及び公文書 に関す る法律」が中心 になってお り、全部で22の章か ら成 る。そのなかに国立公文書 館の機能 (第21章)、合衆国アーキビス トの責任 と権限 (第29章)、連邦政府 による記録管理 (第31章)、 記録の廃棄 (第33章)などについて定めがある。 (巻末付録2及び3を参照の こと

) これ らの規定の中 で、まず、国立公文書館の位置づ け、つ まり、責任 と権限について見てい くことに しよう。 同法第2904項 は、記録管理 に係 る国立公文書館館長の一般的な責務 について、「国立公文書館長は、 連邦政府の政策や業務 を適切かつ十分に記録 し、その記録 を適切 に廃棄す るために、連邦省庁 を指導 し、補助 しなければな らな

い。

」 と定めてい る。 この責務 を果たすために、国立公文書館長は、 さら に次の ような具体的な仕事 を行なうことになっている。30 ① 記録管理 と記録管理研究 に関す る基準、手順 、指針 を発令す る0 ② 記録管理の実践 とプログラムの改善 に関 して研究 を行 なう。 ③ 記録管理 に関す る トレーニ ング ・プログラム、テクノロジーの進展状況 、その他の活動に関す る情報 を収集 し、発信す る。 ④ 記録管理 に関 して連邦省庁内で 情報 を共有す るのに必要 な省庁間委員会 を設置す る。 ⑤ 記録管理 を規定す る適切 な政策に関 して常に連邦省庁や米国議会の関心 を引 く。 ⑥ 記録管理 に関す る研究 を進めると同時に、記録管理 において時間 と労力 を節約す るための シス テムと手法 を確立す るための研究 を行 なうよう自らの裁量で各省庁の長へ指示す る。 ⑦ 連邦省庁 における記録 と記録管理 プログラム及びその実践 についての検査 と調査 を行なう。 ⑧ 監督省庁 、米国議会予算委員会、管理 ・予算局長 に対 し、報告書 を提出す る。 このような規定 に従 って、国立公文書館 は、全省庁的な記録管理方針の設定、省庁 が保管す る記録

29 米国国立公文書館 は、その正式 名称 を 「国立公文書館 ・記録管理庁 (NationalArchivesandRecordsAdministration)

と呼び、後半の 「記録管理f=F・」の部分が同館の持つ記録管理機能 を象徴 しているO同館が現在の地位 を得 るようにな ったのは、第2次 世界大戦が きっかけであった。"戦争" とい う-大事業で連邦政府の業務が人幅に拡 人 し、それに 伴 って膨大な記録が作成 され るようにな り、その管理 が大 きな課題 となったoそこで、各省庁 を "文語の洪水''か ら 救 うと同時 に重要 な記録 が きちん と保存 され るよ うな仕組み を構築す るとい う役割 が同館 に委ね られたのである。

Smith,ChristinaRudy,刀leNationalArchivesandRecordsAdministration(NewYork:ChelseaHousePublishers,1989),

48-50.

30 44U.S.C.2904:Generalresponsibilitiesforrecordsmanagement.

(14)

-の最終廃棄に関す る決裁、各省庁の記録管理状況の査察、政府職員に対す る文書管理 トレーニ ングの 実施 などの業務に取 り組んでいる。その中で も特筆すべ きは、各省庁 は、保有す る全記録の リス トと その廃棄計画書 を国立公文書館へ提出 し、承認 を得 なければ記録 を廃棄で きないような仕組みが採 り 入れ られていることである。つ まり、廃棄については、我が国 と違 って各省庁任せではな く、国立公 文書館側 に最終権限があるのだ。 しか も、記録の廃棄決定の内容 は 『官報 (FederalRegister)』に載 せ られ、国民 に 「パ ブ リック ・コメン ト」の機会が与 えられ る。31また、記録の不法な除去や廃却 に 対 しては、法律 に従 って罰則 が適用 され る。32 廃棄が悪意的にな らないよ う、 しっか りセーフガー ド が設けられているのだ。 次項で取 り上げる記録基本法では、この ような記録管理のプロ集団の集 まりである国立公文書館の 機能 と権限 を強化 し、省庁の記録管理全般 を指導 ・監督す る立場 を与 えることが不 可欠だと思われ る。 公 文書館のアーキ ビス トは、政府 において各省庁 が果 た している機能や組織構造 を詳 しく分析 し、そ れに社会的、歴 史的背景 を加味 しなが ら、どの ような記録 を作成 し、残 してい くべ きかを行政職員に 指導す る。 また、効率的で経済的な記録の管理方法や廃棄 スケジュールの作 り方 について助言 をした り、 トレーニ ングを施 した りす る。社会において急速な電子化が進む中、電子記録の管理 について も、 システムの導入や電子記録の長期保存 などについてアーキ ビス トの専門的見識が必要 になって きてい る。

"スペシャリス ド の養成 を重視 し、行政の記録管理 について も 「主任情報官 (ChiefInformation Officer)」や 「記録管理官 (RecordsOfficer)」 などを専任で置 くアメ リカと違 って、我が国において は、行政職員は通常3年ほどで異動す る。専門的、全体的かつ継続的な視野で記録管理 を統括す るア ーキビス トの力は、アメ リカ以上に必要だと思われ る。 このような行政 における公文書館の果たすべ き役割 を踏 まえて、次 に、本稿の中心 テーマである記 録基本法の中味 について考 えてい くことに したい。 2-2 記録基本法の骨子 これ まで見て きたように、「情報公開法」、「施行令」 は、国民の知 る権利 を保証 した り、行政 がア カウンタビリテ ィーを果 たすために十分な内容 とは言 えない。 また、歴 史的資料 を保存す るために制 定 された 「公文書館法」や 「国立公文書館法」 も、記録の作成や移管 に関 して十分な内容 にはなって いない。 この ままでは、異の民主国家 を達成す ることはで きない し、記録 を通 して過去の成功や失敗 か ら学び、未来へ向けてバ ランス感覚 を備 えた国民 を育て上 げることはで きない 。現在 、我が国に早 急に必要 とされているのは、行政が保有す る記録 を国民の 「共有財産」 と位置づ け、その作成 か ら保 管、廃棄、公文書館での保存 までを適正に行なうための新たな法律である。それが 「記録基本法」だ。 ところで、法律 とい うものは、その国の歴 史や社会制度 などによ り、各国において異 なった背景で 形成 されてい くため、外国の法律 をその まま持 ち込んで適用す ることはで きない。 しか し、記録管理 の分野において、我が国は、明 らかに "後進国"であり、法案の制定 においては、情報公開法 など我 が国の既存の法令 との兼ね合いや行政慣行なども加味 しなが ら、世界の動向や標準 に合 ったもの を作 り上げることが大切である。

31 44U.S.C.3303a:ExaminationbyArchivistoflistsandschedulesofrecordslackingpreseⅣationvalue;disposalof

records.

32 44U.S.C.3105:Safeguards.

図 3 :手書 きの メモ例 2 叫■事■ 一一● ■ 也 ■坐.恕̲ 幽 ̲ 叫 ・q‑.9叔 ▲ノん ‑ 、仏ん ム‑・3 礼J†〜山ノ仙〟 btcL‑ ‑ 山、‑叫仙J Li払‑㌢‑ 一応 山腔 ‑S L *山叫h J ti‑ふ‑t耶山サ‑一、㌧1‑A‑灯己・‑L十il.II.二.ふ p‑ こ‑ J一丁LJt・Lくト→n九泌7んId山.】Ka」̲‑1聖 .I,r叫 一‑ 一山 ーふ;・trLtlL‑I縦し車 上̲I̲」ab:tチ図4 :手書 きのメモ例 3 図 5 :手書 きの メモ例 4 W ar

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