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看図作文の授業開発(VII) -看図作文を活用した行事作文の授業モデル-

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Academic year: 2021

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(1)Title. 看図作文の授業開発(VII) −看図作文を活用した行事作文の授業モデ ル−. Author(s). 鹿内, 信善; 渡辺, 聡; 石田, ゆき; 伊藤, 公紀; 兒玉, 重嘉. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 59(2): 183-193. Issue Date. 2009-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/954. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第59巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.59,No.2. 平成21年2月 February,2009. 看図作文の授業開発(Ⅶ). 一着図作文を活用した行事作文の授業モデルー. 鹿内 信善・渡辺 聡*・石田 ゆき**・伊藤 公紀***・鬼玉 重嘉****. 北海道教育大学岩見沢枚教育心理学研究室 *札幌市立平和小学校 **北海道教育大学岩見沢枚美術教育研究室 ***札幌大学経営学部 ****札幌市立藻岩北小学枚. DevelopmentofCompositionClassDesignbyAdopting. theFigurative−Sign−interpretationApproach(Ⅶ) SHIKANAINobuyoshi,WATANABESatoshi*, ISHIDAYuki**,ITOHKohki***andKODAMAShigeyoshi**** DepartmentofEducationalPsychology,IwamizawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. *HeiwaElementarySchool,Sapporo 3B*. DepartmentofArtEducation,IwamizawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. ***. FacultyofBusinessAdministration,SapporoUniverslty. 練絨. MoiwakitaElementarySchool,Sapporo. 概 要 看図作文は,中国の国語(語文)教育で盛んに行われている作文指導方法である。筆者らは,中国式の看 図作文に心理学の研究成果を取り入れた「あたらしい看図作文」を碇案し,その授業方法開発を進めてきた。 本研究も,一連の授業開発研究の中に位置づけられる。本研究では,看図作文を活用した「行事作文」の授 業モデルを提案する。また,実験授業により,授業モデルの有効性も検証する。. Ⅰ.問題と目的 行事作文のマイナス効果. 学校では,「生活の中の出来事や学校での行事. 来事に取材して書かせようとする指導は,児童の 『書きたくない』『何を書いて良いか分からない』 という思いにつながっていく。(菅原2005,p.10)」. そういう可能性は大いにある。とくに行事作文は. 等を取り上げ,一人称で,主に時間的順序で記述. 嫌われる。そのことを示す文言は文部科学省が出. した文章(菅原2005,p.10)」を書かせることが. している資料の中にすら見つけることができる。. 多い。しかし「文章・作品を生活の中の事件や出. 例えば文部科学省のホームページ「海外子女教育,. 183.

(3) 庭内 信善・渡辺 聡・石田 ゆき・伊藤 公紀・鬼王 墓嘉. 帰国・外国人児童生徒教育等に関する総合ホーム. p.22)では,「第3学年及び第4学年」の「書く. ページ(CLARINET)」には,次のようなワンポ. こと」の指導内容として,次の事項をあげている。. イントアドバイスが載っている。「行事作文・反. 「身近なこと,想像したことなどを基に,詩をつ. 省作文は,子ども達に作文は面倒なもの,退屈な. くったり,物語を書いたりすること。」しかし,. ものとの印象を与えるマイナス効果がある。」. このことを可能にするための指導法は確立されて. 運動会や学習発表会などは,学校生括の中では. いない。学校行事は児童自らが体験できる「身近. 非日常的な活動としてなされる。したがって「行. なこと」のひとつである。学校行事で体験した出. 事」は,本来,作文のよい題材になりうるはずの. 来事と想像したことを組み合わせて物語を書かせ. ものである。そう思うからこそ,多くの教師は行. る指導法を考案していく必要もある。本研究では. 事作文を書かせ続けている。しかし,意に反して,. 看図作文を導入することによってこの指導法を確. 行事作文を書かせることによって作文嫌いの子を. 立していく。これが本研究の第二の目的である。. 育ててしまうのである。. Ⅱ.授業モデル 動機づけを高める作文指導法. 鹿内(2003),鹿内他(2001,2003,2004,2005,. 看図作文を活用した行事作文の授業モデルを以. 2007a,2007b,2007c,2008a,2008b,2008c). 下に記しておく。取り上げる学校行事は「運動会」. は「あたらしい看図作文」を碇案している。看図. である。ここで構想した授業モデルは5つのス. 作文はもともと中国の国語(語文)教育で盛んに. テップからなる。本来なら,推敵指導や作文作品. なされている作文指導法である。しかし,鹿内他. のシェアリングなどのステップも必要である。し. が碇案しているのは中国の看図作文そのものでは. かし,今回は時間制限のある実験授業だったので,. ない。中国の看図作文に教育心理学や記号論・物. 推敵やシェアリングは省略した。また,今回は5. 語論等の研究成果を取り入れた「あたらしい看図. つのステップに3時限を配当したが,休み時間に. 作文(以後『看図作文』と略記)」である。. くい込んでの実践になった。以下に呈示する授業. 鹿内他は多くの看図作文の授業開発研究を行 なっている。これら一連の研究の中で一貫して見. モデルで,実際に授業を行なうときには4時限程 度の配当が必要である。. 出されていることがある。それは,看図作文は,. 作文に対する学習者の動機づけを高める,という ことである。看図作文を行なうと学習者は楽しみ. 表1 授業モデル. ステップ1 絵図の読み解き. ながら作文を書き進めていってくれる。 (今回は5枚の絵図を利用). ステップ2 各絵図の内容に関するメモづくり 研究目的. 学校行事は作文の題材となりうる貴重な体験で ある。しかし,それを楽しみながら書かせる工夫. が,これまでの作文教育ではなされてこなかった。 もし,看図作文を用いて行事作文を書く授業をつ くることができたら,行事作文も楽しくすること ができるのではないだろうか。看図作文を活用し. (ワークシートを利用). ステップ3 児童が実際に運動会で体験したこ とに関するメモづくり (ワークシートを利用). ステップ4 絵図内容と実際体験を組み合わせ た作文記述. ステップ5 授業に対する感想記述. た「楽しく書ける行事作文の授業モデル」をつく. ることが,本研究の第一目的である。 さらに,新しい学習指導要領(文部科学省2008,. 184. (注:5枚の絵図は論文末にまとめて掲載する。).

(4) 看図作文の授業開発(Ⅶ). Ⅱ.授業の実際 表1に示した授業モデルにしたがって実践した. C 動物と女の子。 T なるほど。女の子,男の子,動物と人間。動 物っていうのは,人間以外のって意味を含めて. 授業の実際を,各ステップ毎に紹介していく。授. るんだね,きっとね。すごいね。はい,続けて。. 業者は,本論文の第2筆者渡辺,学習者は小学校. はいD君。. 4年生1クラスである。渡辺はクラスを担任して いないため,1クラスを借りて授業を行なった。. D リレーの選手が,アンカーの人にバトンを渡 そうとしている。. T どうしてアンカーだとわかったの? ステップ1一絵図の読み解き. このステップは,これまでに鹿内他が発表して きた看図作文授業と同様に進めていく。. D アンカーの人は,目印になる何か,たすき…。 (以下略). このように絵図1から5まで読み解いていく。. 学習者に対して一連の絵図を1枚ずつ呈示して いく。本研究では5枚の絵図(凶1∼5:論文末 参照)を用いる。ここで用いる絵図はすべて,本. ステップ2一絵図の内容に関するメモづくり. 絵図の読み解きが全部終了したら,各絵図に描. 論文の第3筆者石田が制作したオリジナル作品で. かれていることをメモさせる。児童には5枚の絵. ある。学習者は変換・要素関連づけ・外挿活動を. 図をすべて配布してある。児童はそれらの絵図を,. 行なうことにより絵図を読み解いていく。授業者. 再度見ながら,絵図に描かれていることをワーク. は,学習者が変換・要素関連づけ・外挿活動を行. シートにメモしていく。次に児童1の絵図読み解. なえるように,教示によってサポートしていく。. きメモを載せておく。. 変換・要素関連づけ・外挿の定義や実例について は鹿内(2003)などで繰り返し紹介してきている。. そのため本論文では,その説明は割愛する。 以下に絵図読み解き授業の一部を載せておく。. T (1枚目の絵図配布)はい,じゃあ今配った ものを見てください。ここに貼ってあるのと同 じものです。はい,じゃあ,みんなにちょっと. 質問します。手を挙げて言ってくれたらいいで す。ここに描かれているもの,もうみんなの手 元にありますね,ここにはどんなものが描かれ ているでしょうか?はい,A君。 A リレー。 T リレー?リレーが描かれてる。他に…。はい, Bさん。. B 女の子が男の子にバトンを渡しています。 T 女の子,男の子,バトンを渡している。続け てどうぞ。はい,C君。 C リレーをもっと詳しくして,動物と人間のリ. 児童1の絵図読み解きメモ ・絵①のようす. キリンが心ばいしていて,女の子は男の子に バトンをわたそうとしていて,ダチョウはペ ンギンにバトンをわたして,ペンギンの目が 光っている。 ・絵②のようす. ペンギンがころんでいる。男の子があせをか いてる。キリンはよゆうな感じではしってる。 ・絵③のようす みんなが,ペンギン,キリン,人間のことを. おうえんしていて,ペンギンの左がわはほれ ている。 ・絵④のようす キリンがあせっている感じで,ペンギンが口 ばしでバトンをもっておよいでいる。 ・絵⑤のようす. キリン,ペンギン,人間が1位になれて,と. レーだと思います。. T 動物もいるし,人間って動物か。. てもうれしそうにわらってる。. 185.

(5) 庭内 信善・渡辺 聡・石田 ゆき・伊藤 公紀・鬼王 墓嘉. ステップ3一笑際体験についてのメモ. 児童が実際に運動会で体験したことをメモとし て整理させる。このメモは,ワークシートに印刷. 指示した。. 前2ステップでも抽出児とした児童1の作文を 載せておく。. してある次の教示によって作成させた。 あなたはこの前の運動会で本当にしたこと・. がんばったり・がんばれなかったことはどんな ことですか?書いてみましょう。. ステップ2で抽出児とした児童1のメモを次に 載せておく。. 児童1の実際体験メモ ・うんめいそうで,はずれたけど,1位をとれ. 児童1の作文 「みんなのリレー」. これから,リレーが始まります。 今ダチョウがペンギンにバトンをわたしまし た。女の子がもうちょっとで男の子にわたせそ うです。おっと,キリンはつかれてきてます。 それからペンギンはころんでしまいました。 1位はキリン,2位は男の子です。ペンギンは, 3位です。 「ペンくんがんばってください。」キリンは. るようにがんばりました。. ・リレーで2位から1位になってたけど,あん まりがんばれなかった。. ・50mそうで,さいごまではしって,1位に なれてとてもがんばりました。 ・高学年リレーに出てみたくて,今年は出れて, うれしかった。. よゆうではしっています。ゆうくんはあせをか いています。3位のペンギンもがんばっていま す。 「ペンくんはひさしぶりにリレーのせん手に なれてうれしそうにはしゃいでいましたね。」 おうえんが,とっても聞こえます。ヒョウは, 足をケガしていて,はしれませんでした。でも,. ステップ4一絵図内容と実際体験を組み合わせた 看図作文. ステップ2でつくったメモとステップ3でつ くったメモをもとにして物語を書かせる。つまり, 児童が実際に体験したことを織り込んだ看図作文. そのかわりに,みんなをしんじて,はしっても. らうことをけついして,ほけつの人にはしって もらうことにしました。ペンギンはボンボンで おうえんしていたり,ホレてるペンギンもいま す。キリンは心ばいそうに,見ています。 「さきにゴールに行くのはだれだ?」. を書いてもらう。これは,鹿内他がこれまでに碇. 案してきた看図作文をさらに発展させたスタイル である。 この作文は次の教示によって書かせた。. ①から⑤の絵に描かれていることを物語にし てください。また,その物語の中に,自分の本 当にあったことをまぜて入れてください。. 自分の実際体験は,どこか一箇所に「まとめて 入れてもいい」し,あるいは「いろんなところに 散りばめてもいい」ということも教示する。 また,作文中の「どこが,本当の事実かわかる. ように,本当にあったことには傍線を引く」よう. 186. みんなは,ゆうくんが1位だと思いました。. でも,1位は,みんなでした。それは,ゆうく んは足がゴールに入ってて,キリンは首がゴー ルに入ってて,ペンくんは口ばしがゴールに 入っていたので,みんな1位で,金メダルがお くられました。ペンくんは, 「ゴールまでいっしょうけんめいはしったの 写し1位になれました。」 キリンは,. 「3位だったけど,1位になれることをしん じてはしりました。」 ゆうくんは,.

(6) 看図作文の授業開発(Ⅶ). 「1位だったけど,ぬかされないようにはしっ ていました。」 「3人とも,インタビューありがとうござい ました。」. 物は,走り終わったからおうえんしました。 「がんばれ。」 と言ったら,他の人も, 「がんばれ。」 「1位とってね。」. ステップ5一授業に対する感想記述. 次の教示をプリントしたワークシートに感想を 書いてもらった。. 絵をつかった作文を,やってみての感想を教 えてネ。. これまでのステップ同様,児童1を抽出児とし て,その感想を載せておく。. 児童1の感想. この時間で,作文が前よりも大好きになれて. 「ぎゃくてんしてね。」 「ペンギン負けないでね。」. と,みんなおうえんしました。 一人で言えたのは,表現(引用者注;「表現」. はこの小学校での運動会種目のひとつ)で, やってる時, 「がんばって。」 「しっぱいしないように気をつけてね。」. とか言ってもらったから,おうえんできたと 思ってました。. 走り始めたら,ペンギンがころんでしまいま した。1位だったのに3位になってしまいまし. うれしかったです。人の気持ちをもちながら作. た。男の子は,2位で同じままです。何と,キ. 文を書いたことがなくて,今,考えながら書け. リンは3位だったのに1位になっていました。. て楽しかったです。さいごはみんな,ハッピー. その時キリンは,. エンドになっていて,うれしかったです。. 「ぼくが,1番足が長いから,1位はぼくだ。」 と頭の中で思っていました。 前,おうえんした,動物と人以外にも,おう. Ⅳ.作文・感想の事例と考察 前節では,児童1を抽出児として,授業ステッ プの内容及び児童の活動を説明してきた。本節で は,その他の児童の作文例・感想例を紹介してい く。前述したように,今回は推敵指導を行なって いない。そのため,冗長な表現がまじったりする がそのまま載せておく。ただし,あきらかな誤字 や送り仮名の間違いは修正してある。. 児童2の作文 「動物アンド人間運動会」 ある日,運動会が始まって,リレーをやって. て,アンカーにわたす時のことです。 その時,1位はペンギンで,2位は男の子で,. 3位はキリンです。アンカーにわたした人と動. えんしています。おうえんしている人と動物は, ヒョウと,ペンギンと,キリンと,男の子と女 の子と,たぬきとキツネと,ねこです。阜旦旦. はリレーだったけど,けがしてでられなくなり ました。かわったのがダチョウで,ヒョウはダ チョウに, 「かわりに1位ペンギンにとらせてね。」. とおうえんしました。キリンは心の中で, 「3位だけどだいじょうぶかな。」 と思いました。ペンギンは, 「よゆうでしょ。」 「ペンくん,1位になってね。」 「かっこいいかも。」 とペンギン3匹,みんな言いました。男の子は, 「なおとくん,がんばって,1位とってよ。」. と聞こえない声で言ったら,女の子は,. 187.

(7) 庭内 信善・渡辺 聡・石田 ゆき・伊藤 公紀・鬼王 墓嘉. 「がんばれえ,なおとくうううううん。」 と大きな声で言いました。それから女の子は, 「ほら,つばきくんも,大きな声でおうえん しな。」 と言いました。男の子は, 「分かったよ。」 と言って,大きな声で,おうえんしました。も. う一人いた女の子も,大きな声でおうえんして います。. 何と,キリンが3位になってて,2位がペン. 図をもとにして書いた看図作文の中に,自分が実 際に体験したこともたくさん書き加えてくれてい る。看図作文を活用すると,「長文の作文は書け. ない」と思っている子にも,これだけの質と量を もった行事作文を書かせることができる。. 児童3の作文 「動物たちの大運動会」 今日は,動物たちの運動会です。スタートし. てから1分がたちました。そして,やっとアン. ギンで,1位がなおとくんです。おうえんして. カーにわたす時には,ペンギンがとトップで,. いるみんなはいっせいに,. 人間が2位で,キリンが3位です。キリンのア. 「ペンギンとなおとくんに負けないで。」. ンカーは,後ろのキリンがおそく,心配です。. 「なおとくんに負けないで。」. キリンがバトンをわたす時は,男の子とペンギ. 「そのまま1位になってよ。」. ンはもうスタートをきっています。. とみんなが言って,声がぐちゃぐちゃになって いました。 それがなおとくんにも,ペンくんにも,キリ. ンくんにも伝わって,なおとくんは歯をくいし. ところが,1位だったペンギンが転んでしま いました。そして3位だったキリンがペンギン をぬかして,人間もぬかし,1位になりました。 その間に,かん客せきでは,ペンギンたちが. ばって,ペンくんはすべっていきおいつけて,. とてもはしゃいで,となりのヒョウはけがをし. キリンくんは顔を前にだしました。. てしまってリレーに出れずにくやしそうです。. 何と,みんな1位でした。なおとくんはふつ. 女の子は,男の子にむかっておこっています。. うに,ペンくんはくちばしがゴールに入ってて,. その上のキリンは,とても心配そうな顔をして. キリンくんは顔がゴールに入っていました。. います。. おうえんしていたみんなは,よろこびました。. トラックでは,転んでしまったペンギンは,. バトンを口にくわえて,必死に地面をバタバタ 児童2の感想. して走っています。男の子も,あせをたくさんか いて,キリンもあせびっしょりになっています。. 最初は,今日は1枚しかできないと思ってた けど,思ったよりできてよかった。. そしてさい後は,順位を発表します。すると, ひょうしょう台には,何とキリンも,男の子も ペンギンものっています。その2ひきと一人は,. 看図作文は,「書くことがない」という,児童. の悩みを克服するよい方法である。このことは,. 校長先生に金メダルをもらって,キリンも,ペ ンギンも男の子もうれしそうでわらっています。. これまでの鹿内他の実践研究によって,繰り返し 確かめられている。児童2の特徴は,長文の作文 を書き上げていることである。児童2は,感想の 中で「今日は1枚しかできないと思ってた」と述 べている。そう思っていた子でも,これだけの長. さの作文を書いてしまう。しかも,児童2は,絵. 188. 児童3の感想. いろんな事をたくさんそうぞうできて楽し かったです。思ったよりかんたんでとてもおも しろかったです。.

(8) 看図作文の授業開発(Ⅶ). 運動会などの学校行事は,確かに非日常的な出 来事である。しかし,だからと言って,すべての. 子どもたちが,特別思い出に残る学校行事を体験 しているわけではない。そんな子どもたちにも, 無理に書かせるから,行事作文は楽しくないもの になってしまう。. 児童3が,作文の中に書き込んでいる自らの体 験は「必死に」「わらって」の2つだけである。「運 動会では,一生懸命がんばって楽しかった。」こ. の程度の思い出しかもっていない子もいる。その ような子でも看図作文を書かせれば,児童3のよ うなボリュームで行事作文を書いてくれる。 また児童3は,「思ったよりかんたん」「楽しかっ た」「おもしろかった」という感想を述べている。. 簡単にできるという「低コスト感」,それに「楽. 児童4の感想. とてもやりやすくおもしろかったです。一番 おもしろかったのは,みんながいっしょにゴー ルをして,1位になったことです。. しさ」。看図作文は,作文を内発的に動機づける. よい方法である。児童3の感想はそのことを証明 してくれている。. 本実験授業の中で,授業者は,児童が直接体験. したことを「作文の中に散りばめてもいいし,ま とめて入れてもいい」と教示している。児童4は,. 児童4の作文. 「自分の直接体験をまとめて最後に書き込む」と いうスタイルを採用している。. 「動物運動会」. ある日動物たちの運動会がありました。3番 目に,キリンと人間と,ペンギンとダチョウが かけっこをしました。そして,さいしょは,ペ. ンギン(アンド)ダチョウが1位でした。でも ペンギンは,ころんで,すぐ男の子とキリンに. ぬかされてしまいました。ペンギンは,3位に おいこまれました。キリンは1位で,男の子は 2位です。. そこでかんきゃくせきでは,男の子と男の子 がけんかをしています。ヒョウは走りたそうで す。でも足にはけががあります。その備には,. すごくニコニコの女の子が元気におうえんをし. ごく普通に運動会の行事作文を書かせていた ら,児童4の作文は,おそらく,作文例中最後の 下線部分のみの内容になっていたであろう。それ だけの作文なら,たとえ書き上げても達成感や楽 しさを感じ取れないのではないだろうか。. しかし看図作文と組み合わせることにより,児 童4は「おもしろさ」を感じながら行事作文を書 いてくれている。また,児童4は「やりやすく」. という言葉で,看図作文を書くにあたっての低コ スト感を表現してくれている。看図作文は,作文. に対する児童の抵抗感を取り除くよい方法なので ある。. ています。ペンギンのオスは,ボンボンをもっ ておうえんしています。そのとなりには,目が ハートになっているメスのペンギンもいます。. キリンと男の子とペンギンがゴールしまし. 児童5の作文 「おもしろい運動会」. ある学校で,動物と人間のリレーがありまし. た。1位2位3位の発表のときにみんなビック. た。ペンギンのペンタが,1位です。人間は2. リ。キリン・ペンギン・男の子みんな1位だっ. 位で,キリンが3位です。それぞれにバトンが. 189.

(9) 庭内 信善・渡辺 聡・石田 ゆき・伊藤 公紀・鬼王 墓嘉. 児童5の感想 わたされています。よく見ると,アンカーでし た。キリンは, 「違めい走では,1位なのに…。」. リレーを,運動会でやったことないけど絵と 作文で,やってるところのそうぞうがうかんだ。. とつぶやいて,バトンがくるのを心ばいに見て いました。. アンカーが走っている時,ペンタがころびま した。バトンがころがっています。その時には, キリンは1位でした。とてもよゆうな顔で走っ ています。男の子は2位のままです。男の子は, 「たんきょり走であまり走れなかったけど, リレーは2位だぞ。」 とうれしそうに言いました。 そのころ,おうえんしている人たちは,楽し そうな子もいるし,かなしそうな子も,おこっ ている子,いろいろあります。チーターのチコ は,足がけがしていて,リレーに出れませんで した。ペンタのともだちは,楽しそうにボンボ. ンを持っておうえんしています。女の子のペン ギンは,ペンタのことを,ホレていました。女. の子と男の子がけんかしています。女の子は, 「そんな小さい声でおうえんしてたら3位に. 運動会などの学校行事では,すべての子が活躍 できるとは限らない。例えば,走るのが得意でな い子はリレーに出ることはできない。また,短距 離走などでもよい成績を収められない。. 児童5もそういう子である。児童5は,「あな たはこの前の運動会で本当にしたこと・がんばっ. たり・がんばれなかったことはどんなことです か?」というワークシートに記入しているのは次 のことだけである。「たんきょり走であまりはや く走れなかった。」このような子でも,本研究で. 提案している看図作文を行なえば,リレーの作文 を書けるのである。しかもこのような作文を書く ことに対する感想もポジティブなものである。こ のやり方で,行事作文の授業を進めていけば,こ. れまでは一度も参加したことがなかったリレーに ついても「そうぞうがうかん」でくるのである。 ここで提案している看図作文指導法を用いれば,. なるよ!!」. とおこっていました。男の子は, 「そ,そんなにおこらなくても。」 と言いました。キリンは,こまった顔をしてい ます。. そのころリレーをやっている人たちは,まだ 走っています。しかも,ペンタがすなけむりを. 行事で活躍できなかった子でも行事作文を書き進 めることができる。. 児童6の作文 「運動会」. リレーの1番目の人がアンカーのキリンく. だしておよいでいます。そして2位になってい. ん,男の子,ペンギンくんにバトンをわたしま. ます。1位は,人間です。男の子が女の子から,. した。. ちゅういされたから大きな声でおうえんしたか らでしょう。キリンは,3位です。. リレーがおわって,1位・2位・3位がきま りました。見ると全いん1位!きっとキリンの 顔,ペンタのクチバシ,人間の足が入ったから です。みんなは, 「やったあ」 と言いました。 これで運動会リレーがおわりました。. 190. アンカーがスタートしました。ぺんぎんが1 位で,男の子が2位で,キリンが3位だったけ ど,全部がぎゃくになって,いまリードしてい るのはキリンくん。. でもおうえんせきでは,1番目にバトンを もっていたキリンが心配していました。. おうえんせきにいるヒョウは,ケガをしてか わりにダチョウにはしってもらって「だいじょ うぶかな。」.

(10) 看図作文の授業開発(Ⅶ). と心配していて,ケガをしてかわりにはしって もらったからおかえしにいっぱいおうえんしま した。. アンカーは3しゅうします。 1しゅう目は, 「すごくリードしているよ。」 とじまんげにはしっていたキリンくんでした。 ペンギンと男の子はキリンくんにまけないよ. うに,力強くはしっていました。 2しゅう目は,だんだんアンカー全いんがつ かれきっていました。あと1しゅうで1位にな. ペンギンは, 「やった−」. 男の子は,. 「2位か3位かなって思っていたけど1位で うれしいな。もっとうれしいメダルも,もらえ てよかった。」 キリンくんは,. 「3位1位3位てきてたけど,みんなのおう えんで1位になってよかった。」. 1つのだいに全いんのれたのは運動会では1 回もなかったので,さいこうの運動会でした。. ると思って全いんがゴールをめざしてはしって います。. 3しゅう目のさいごは,ころびそうになった りしたけどいっしょうけんめいにはしりまし た。. ゴールのせんが近くにせまっていきます。卑. 児童6の感想. 絵をつかったり,ほんとうにおきたことだっ たら作文をたくさん書けました。 作文を書くのがまえより楽しくなりました。. うえんせきのみんなもドキドキしてゴールに足 を入れるのをまっていました。 おうえんせきから見たら,1位が男の子で,. 2位がペンギンで,3位がキリンだと見ていま した。さいごにはメダルがもらえるとしんさの 人が言っていたので,自分がメダルをもらえる ようにはしっていきました。さっきの近くより もっと近くになってきました。. あつい日だったのであせをかいて,たすきが おちそうになっても,がんばりました。1番さ いしょから思いだしながらはしったら,ゴール しました。. で,1位は男の子,2位はペンギン,3位は キリンかと思っていたら,全いん1位になりま した。 キラキラ光るメダルをぶらさげて,さいごに,. 鹿内他が碇案している「あたらしい看図作文」 は,もともと,子どもたちからの評判がいい作文 指導法である。そのことは,これまでの研究で繰 り返し確かめられている。本研究では,学習者自 身が体験した本当のことも書き加える看図作文を 試みた。またそれを行事作文指導に応用した。児. 童6の感想は,ここで碇案している行事作文指導 法が効果的なものであることを端的に示してくれ ている。. 以上の抽出事例でみてきたように本論文で紹介 した授業は「看図作文を活用した行事作文指導」. のよい授業モデルとなる。看図作文を活用した運 動会以外の行事作文を書かせる方法を検討してい くことが,次の課題である。. 191.

(11) 庭内 信善・渡辺 聡・石田 ゆき・伊藤 公紀・鬼王 墓嘉. ⑥yuki.ishida. 区= 絵図1枚日. 図2 絵図2枚目. 図3 絵図3枚目. 図4 絵図4枚目. 192. ⑥yuki.ishida. ⑥yuki.ishida. ⑥yuki.ishida.

(12) 看図作文の授業開発(Ⅶ). ⑥yuki.ishida. 図5 絵図5枚目 道教育大学紀要(教育科学編)』58巻1号 265−278. 文 献 文部科学省 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/ clarinet/00l.htm 「海外子女教育,帰国・外国人児童 生徒教育等に関する総合ホームページ(CLARINET)」 文部科学省 2008『小学校学習指導要領』東京書籍 鹿内信善 2003『やる気をひきだす看図作文の授業一創 造的[読み書き]の理論と実践−¶春風社 鹿内信善・工藤真理・田中岬・武田亘明 2001「/ト学校 における[看図作文]の指導(Ⅰ)−2年生に対する授 業実践−」『年報いわみざわ』22号 37−47 鹿内信善・渡辺聴・伊藤公紀・工藤真理・田中岬 2003 「/ト学校における[看図作文]の指導(Ⅱ)−3年生に 対する授業実践−」『年報いわみざわ』24号 33−45 鹿内借善・渡辺聴・伊藤公紀・人江芙由起 2004「/ト学. 鹿内信善・渡辺聴・栗原裕一・伊藤公紀・石田ゆき 2008a「看図作文の授業開発(Ⅳ)−オリエンテーショ ン変更作文に活用可能な絵図の作成−」『北海道教育大. 学紀要(教育科学編)』58巻2号147−157 鹿内信善・渡辺聡・石出ゆき・伊藤公紀・栗原裕一 2008b「看図作文の授業開発(Ⅴ)−インプット・ア ウトプット法に活用する絵図の作成−」『年報いわみざ わ』29号 29−40. 鹿内信善・鬼玉重義・石田ゆき・渡辺聡・伊藤公紀 2008c「看図作文の授業開発(Ⅵ)−『見通す力』を 育てる試み−」『北海道教育大学紀要(教育科学編)』59. 巻1号 209−224 菅原稔 2005「『書く力が育たない』理由と原因一二つの. 観点・方法から考える−」『教育科学国語教育』 No.657 8−10. 枚における[看図作文]の指導(Ⅲ)−4年生に対する 授業実践−」『年報いわみざわ』25号19−28 鹿内借善・渡辺聡・伊藤公紀 2005「/ト学校における[看 図作文]の指導(Ⅳ)オリエンテーション変更作文の 試み−」『年報いわみざわ』26号1−10. 鹿内信善・栗原裕一・渡辺聡・伊藤公紀・石田ゆき. (鹿内 借善 北海道教育大学教授) (渡辺 聡 札幌市立平和小学校教頭) (石田 ゆき 北海道教育大学大学院学生). 2007a「看図作文の授業開発(Ⅰ)一心理的リアクタ. (伊藤 公紀 札幌大学経営学部教授). ンスを作文の動機づけに活用する試み−」『北海道教育. (鬼玉 重嘉 札幌市立藻岩北小学校教諭). 大学紀要(教育科学編)』57巻2号101−111 鹿内信善・渡辺聴・栗原裕一・伊藤公紀・石田ゆき 2007b「看図作文の授業開発(Ⅱ)一創造的看図作文 を可能にする絵図の作成−」『年報いわみざわ』28号 9−20. 鹿内信善・渡辺聴・栗原裕一・伊藤公紀・石田ゆき・菅 原春紀 2007c「看図作文の授業開発(Ⅲ)一自己を ふり返り,未来を探る活動を促す絵図の作成−」『北海. 193.

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参照

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