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児童の調査・見学活動に対する指導方法ノート : 活動報告資料の内容分析および学習活動のエピソード分析をもとにして

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Academic year: 2021

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(1)Title. 児童の調査・見学活動に対する指導方法ノート : 活動報告資料の内容分 析および学習活動のエピソード分析をもとにして. Author(s). 山口, 好和; 塩谷, 佳子. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 57(1): 57-66. Issue Date. 2006-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/425. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第57巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.57,No.1. 平成18年8月 August,2006. 児童の調査・見学活動に対する指導方法ノート 一括動報告資料の内容分析および学習活動のエピソード分析をもとにして−. 山口 好和・塩谷 佳子* 北海道教育大学函館枚教育方法学研究室 *福島町立福島小学校. ANoteonTeachingMethodsofChildren’sFieldResearch −AnAnalysesofChildren’sReportandEpisodesofActivity− YAMAGUCHIYoshikazuandSHIOYAYoshiko* DepartmentofEducation,HakodateCampus,HokkaidoUniversityofEducation. *FukushimaElementarySchool,FukushimaTown. 要 約 社会的な見学や体験を活動の中薇とした,いわゆる「課題解決型学習」の指導方法について,児童の実態 に即したカリキュラム設計や指導上の要点を探るために,記述的研究を実施した。/ト学5年生の見学調査を 対象に,児童の活動報告資料(壁新聞)分析と,学習活動時のエピソード分析とを行った結果,指導方法の ポイントを数点具体化できた.. 1.問題と目的. 1990年代中盤以降,「総合的な学習の時間」に代表される,学習者の関心にもとづく「自主的な学習活動」 の重要性が説かれるたびに,一方では,「どう指導すればよいかわからない」という声も根強く聞こえる(1). これまでにも,文部科学省や各地方教育委員会による指導資料が相当量作成されてきたと思われるが,“カ リキュラムモデル’’を示すことと同時に,その逆に,得られた成果の成否を問わず,逐次記録していくアプ. ローチも必要であると思われる.つまり,失敗も含めて学習指導のための知見を蓄積すべきだろう. そこで本稿では,子どもによる調査見学を中心とした学習活動を対象にして,学習過程で得られた制作物 の分析と活動の事後評価をもとに,指導方法の留意点を記述してみたい. ここで意図している学習活動とは,「課題解決型学習」「プロジェクト学習」「調べ学習」「作業単元」などと. 称されるものである.つまり,個人ないしはグループにより特定の調査目的のもとで実施される,見学や実. 57.

(3) 山口 好和・塩谷 佳子. 習などの実体験を伴った調べ活動を行う学習を指す.. 2.研究方法 実際の学習活動をもとに,次の2つの方法を用いて,各々得られた知見を整理してみる. ・方法1:児童の制作物の分析 ・方法2:学習活動におけるエピソード分析. 調査対象としたのは,福島町立福島小学校の5年生児童37名による函館西部地区の実地見学調査活動であ る.同校では,5年生の宿泊研修で,福島町から車で2時間ほどの函館市へ出かける.日頃,町内から出る 機会の少ない子どもたちであるので,グループごとに計画を立てて見学するという形態が採られている.. この学習活動のねらいは大きく二つある.一つは,函館市の町の特徴を調べることで,自分たちの住む町 との違いを意識し,郷土愛を深めること.もう一つは,見学調査を通して,課題解決力の育成をはかるとい うものである.. 通常,小学5年生程度では,大人の指示に従って行動するよりも,自分たちのアイディアを盛り込んで活 動することを好むものである.しかし,このクラスの児童は平均的な5年生像と比較すると,やや指示待ち の感が強く,自分の意見や考え方を表明するという姿勢が乏しい傾向にあった.そこで,函館市の西部地区 に活動範囲を限定し,子どもだけで計画を立て研修を実行するという活動を,「総合的な学習の時間」の計 画に盛り込んだ.下表1は,活動の大まかな流れである.. 表1福島小学校5年生・函館市西部地区見学調査 活動の流れ 1時間目. オリエンテーション. 2∼5時間目. 西部地区にどんな名所があるか調べよう(1)∼(4). 6時間目. 行ってみたいところランキングⅢを決めよう. 7∼10時間目. グループに分かれて計画を立てよう(1ト(4). (実地調査). 自主研修「函館町並みウオッチング」. 11∼12時間目. 宿泊研修後のまとめ(作文). 13∼16時間目. 自主研修壁新聞づくり. 17∼18時間目. 自主研修のまとめ,壁新聞発表会. 3.結果と考察 (1)児童の活動報告資料の内容分析. 本研究で調査対象とした5年生による「自主研修学習」では,活動報告資料を「壁新聞」の形式で作成し ている.その内客分析に際して,まず,「学習のステージ」と「学年(発達段階)」の二軸からなる能力項目 表を準備した.表2が,その能力項目表である. 「学習のステージ」は,通常,「調べ学習」などで平均的に見られる活動の順序に即して,“「課題を決める」 →「調べる」→「まとめる」→「伝える」→「聞く」’’とした.さらに,それぞれの活動段階で,学習指導 要領の記述から,該当する能力項目を抽出してみた.. 次に,表2をもとにして,児童の活動や制作物の分析のために作成したのが,表3である.評価枠組みと しての利用を念頭に,児童の活動レベルでの記述をしている.. 58.

(4) 児童の調査・見学活動に対する指導方法ノート. 表3の各項目について,児童が制作した「壁新聞」の内容における有無を調べた結果,表3内にセルの濃 淡で示した結果が得られた(およその人数は凡例を参照).. 表2 課題解決型学習のステージと発達段階別目標項目 1・2年生. 3・4年生. 5・6年生. 課. 社会的な事象から(5・6社). 題 を 見出した問題を興味関心を持って 見出した問題を見出した問題を. 決 め. 計画的に追及す多面的に追及す. 追及する(3・4理). る. る(5理). る(6理). ・身近な人に聞く(1・2国). ・観察・体験・見学・調査活動(社). ・観察を通して気づいたこと(1・. ・博物館や郷土資料館,科学学習センターの活用(社)(理). 2国)(生). ・学校図書館や公共図書館,コンピュータの活用(社) ・コンピュータの活用(算). 調. ・コンピュータ,視聴覚機器適切な機器を選ぶとともにその扱いにな れ,それらを活用できるようにする(理). 田 ・必要な事柄を選ぶ(3・4国). 国). ・比較しながら調べる(3理) る. ・関連付けながら調べる(4理). ・資料を分類整理し,その特徴を 調べる(4算). 〔直接資料・具体物〕. と. 簡単な組み立てを考える(1・ 2国). め ・絵に言葉を入れる(1・2国) る ・文にあらわす(1・2国). する(5・6国) ・かかわる条件に目を向けなが ら調べる(5理) ・関連付けながら調べる(6理). 〔間接資料〕. ・自分の考えが明確になるように ・相手や目的に応じて,自分の考 ま. 見通して,必要な事柄を整理. 〔間接資料〕 ・表現の効果を考えて効果的に. えが明確に伝わるように書く (3・4国). ・記録文や学級新聞などにあらわ す(3・4国) ・グラフや衣であらわす(3算). 書く(5・6国). ・必要に応じて資料を作成する (5・6国). ・グラフや衣を用いてその特徴 をあらわす(6算). 年 ス_. で話す(国). る. ・友達の話をきちんと聞く(1・ 聞. 2国). ・必要なことはメモをとる.(3・ 4国). ・考えに違いがあることを知る (3・4国). ・目的意識をもって聞く(5・ 6国). ・調べたことや,まとめたこと について話し合う(5・6国). 59.

(5) 山口 好和・塩谷 佳子 表3 児童の学習活動レベルに即した評価枠組みとその結果 高学年段階 社会的な辛がらから,課題決め る. ・地域の人に聞く ユン ・身近な人に聞く lタ. ・博物館や郷土資料館等,施設の人に聞く ・自分の調べる事柄と関係のある人に聞く ・学校図書舘や公共図書館の蔵書から調べる ・博物館や郷土資料館,科学学習センターを利用して調べる. 調. ・関係する本を探す. ベ る. ・インターネットを利用する ・観察したことをもとにする. の. ・体験したことをもとにする. 検 索. 情 報 整 理 す る. ・全体を見通して,必要な事柄 を集めた情報から整理する. と. の. る. 向. ≡盲めた情報を 関連付ける. き. ・関わる条件に目を向ける. A l:コ. ・資料を分類し しl 方. ・関連付けながら調べる. む ・自分の考えをはっきり伝える. ・相手や目的に 応じて書く. ・表現の効果を考えて効果的に. ま と. 書く. め. ・記録文や学級. る. 表 現 停 え. る. の. 能. ・はっきりとした発音で話す. ・必要に応じて資料を提示しな. ・友達の話をきちんと聞く. く. がら話す. 速さで話す ・必要なことは メモをとる. 聞. ・必要に応じて資料を作成する. ・考えの違いに 気をつけて聞く. ・目的意識をもって聞く ・調べたことや・まとめたこと について話し合う. 凡 例. 37名. 60. 36∼34名 33∼30名 29∼26名 25∼18名 17名以下. 0名.

(6) 児童の調査・見学活動に対する指導方法ノート この結果を見ると,以下の点が指摘できるだろう.. ・見学した施設の様子を紹介したり,見聞した内容に言及することは,多くの児童において実現している. また,関連資料の参照も行えている.. ・関連資料の参照は,あくまでも単純な引用(もしくは貼り付けのみ)にとどまっており,自分が得た情 報との「関連性」には言及していない(付録・図3を参照).同様に,複数の情報の扱い方(選ぶ・関 連付ける・考察を述べる)には不慣れである.. ・体験や見学を通して得られた「全体的な」情報を見渡した上で,気づいた点や発見した事項を述べるこ とは,できていない.. ・レタリングや飾り付けに凝りすぎて,記事内容の精査に時間をかけないケースが見られる(付録・図4 を参照).. これらの点を念頭に置いた,指導方法の工夫を意識する必要がある.. (2)学習活動におけるエピソード分析. 本節では,学習過程で見受けられたエピソードのうち,2点について,考察の対象としたい.一つには, 見学前のウェブ検索を通じた調べ活動についてであり,もう一つには,ある児童の活動観察である.. a)ウェブ検索による事前の調べ活動. 活動前の「函館市に行ったことのある人」という問いには,37名全員,経験があると答えていた.その目 的は「買い物」「食事」がほとんどで,西部地区に行った辛がある(通過しただけでも可)児童は10名程と 少数であった.さらに,西部地区で教会や公開堂等の史跡を見学したことがある,と答えた児童は,わずか 4名であった.. そのため,自主研修の活動計画を立てる前に,函館市の名所をさまざまな方法で調べ,子どもたちが興味 を抱けるように配慮した.函館市の名所調べに時間をかけることで,子どもたちが西部地区にあるたくさん の史跡へ行ってみたいという欲求を高めようと考えた. 子どもたちの史跡への興味は増幅した.だが,十分にとったはずの調べ学習に費やす時間が,インターネ、リ トの操作に不慣れな子どもたちにとっては十分ではなかった. 家庭での利用状況を尋ねると,「インターネット利用ができる」という子どもは5人.「塾でのインターネッ. ト利用機会がある」という子どもを含めると9人.学校近郊の福祉センター内国書館にもインターネット接 続はなされているものの,普段はほとんど利用していないのが実情である.今回,函館市の名所調べ活動が 開始してから,同施設を訪問して利用した子どもは2名であった.. コンピュータの使用方法,調べものに役立つサイトは,この9人の児童と教師を中心に,周辺の子どもた ちへと広がっていった.学校で子どもたちに「インターネットで調べてよい」と言うと,嬉々としてコンピュー. タールームに向かうのだが,関心が高い割に収穫が少ないという印象が否めない.一方,学校の図書資料は というと,これも郷土資料が少なく,興味関心を満たすには不十分であった.子どもたちが調べて,. 自分た. ちで宝の山から探り当てた情報を生かして,活動への興味関心を高めてもらいたいと考えていたが,その技 術が不足していたことから,結果的には ・教師の側から有用なウェブページを周知(URLや当該ページへのアクセス方法を教える) ・図書資科のコピーを配布. 61.

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(8) 児童の調査・見学活動に対する指導方法ノート. NHK函館支局でA児がとったメモの大半は,実は事前に担当者宛に送っていた質問状の返答である.A 児は事前に「課題」を把握していた事項については反応し,大量のメモをとることができた.しかし,その. 図2 A児のワークシートの記述内容(1日目). 63.

(9) 山口 好和・塩谷 佳子. ほかの見学対象については,その場で気づいたことに対して,メモをとっていない.. それぞれの見学場所に対して「こんなことを調べたい」という課題を用意して,計画を立てたのだが,そ の疑問に直接返答をもたらすもの以外には,反応することができなかったのであろう.これは,活動から「発 見」を自分の気づきだと認識すること,「疑問」を自分の問いとして認識することに,訓練が必要だという ことが示されているように思われる.日頃の学習を通じて「発見」を見つける活動,「疑問」を持つ活動を 取り入れ,訓練する必要性が示唆されている.. まとめると,A児のワークシートには,次のような記述傾向が見られた.. ・事前に用意した「疑問・質問」に直結する回答でなくては,反応することができない. ・見学から「答え」を探すことに終始し,その場で発見したことや,気づいたことに反応することができ なかった. ・メモ,をとる習慣ができていない. ・自分の思いや感想を重視していない.また,人から聞いたことと,自分で発見したこととの区別ができ ていない.. 【NHK函館支局 ワークシート】 このワークシートの記載内容 (メモ書きになっているため記載の順序はわからない). ・テロップ……字まくのこと ナレーション **(解読不可). ・ラジオ大正15年・JOAK(内容)・100件くらいまいにちニュースが 入ってくる ・外国の衛星放送はとったあと東京からがキホン ・NEWS のカメラー台400万∼500万番組編集用1000万7台・クロマキーバック合成 できる ・映像音声は副調整室でちょうせい・コリゾント いろがうつる. かべ・日本放送協会・日本68海外3つ ・北→700人・札ぽろ,あさ ひかわ,はこだて,くしろ,おびひろ,きたみ,むろらん=約80名・カメ ラマン,デイレクター,アナウンサ,ぎじゅつぶの人,へんしゅうの人営業. の人Etc…・民間放送=CMが流れるところ ・キャットウォーク=ふう せんや かみふぶき うえからおとすためにある。・受信料=みんなの家 から平どうにおかねを集める ・公共放送= ・国営放送=中国などにあ る ・200cⅡf(第一スタジオ)たたみ120枚分 ライト120台(大・小一緒) 【市立中央図書館ワークシート】 Q:本は全部で何冊あるのですか? A. ※後は白紙. 図3 A児のワークシートの記述内容(2日日). 64.

(10) 児童の調査・見学活動に対する指導方法ノート. したがって,活動の過程で使用する,いわゆる「ワークシート」については,次のような問題点をできる 限り避けるような準備が考えられる.. ・「事前調べ」と「当日のメモ」という区切りだけのシートは,全体的にまだ記述力が初歩的な段階にあ る児童にとって,不親切である.. ・対象児童にとって「疑問の答えを探す」ということと「気づいたことを探して記す」という作業を同時 に行うことは負担が大きい.. ・「発見」や「気づいたこと」を探すことが教師のねらいなのであれば,そちらの方を重視したワークシー トが望ましい.. 4.まとめと今後の課題 小学5年生による函館西部地区の実地見学調査学習を題材として,(i)学習のまとめ段階での制作物分析, (ii)学習過程のエピソード分析によって,今後のカリキュラム設計・学習指導上の留意点を抽出してみた.. その結果,見学を通じて得られた情報の役割や関係性に目を向ける指導の必要性,児童の経験値に配慮し た情報検索時の指導方法,気づいた事柄を丁寧にメモ書きできるよう支援するシート類の工夫などが,指導 上の留意点として明らかにされた.. 今後は,同様の「課題解決型学習」を通じて,今回の知見をより具体的な場面で確認していく作業が必要 であろう.. 注 (1)苅谷(2002)は,「総合的な学習の時間」導入にともなう問題点を,制度的な側面から,きわめて明快に指摘している(苅 谷剛彦(2002)『教育改革の幻想』 筑摩書房). (2)先行研究として,以下が挙げられる.田中博之(2000)『総合的な学習で育てる実践スキル30』明治図書,および,田中 博之(1988)「中学校での課題研究」水越敏行編著『子どもの情報能力を育てる』ぎょうせい pp.67−85 (3)この点については,以下の論文に詳しい.塩谷佳子「複数教科による『課題解決』を志向した学習の指導法一教育関連雑 誌記事分析および児童の制作物分析による目標の体系化を中心に−」北海道教育大学大学院教育学研究科 平成17年度修. 士論文. 65.

(11) 山口 好和・塩谷 佳子. 付 録. 図3 資料の貼り付けに終始している作品例. (山口 好和 函館校助教授) (塩谷 佳子 福島小学校教諭). 66.

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参照

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