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幼児・児童における自己と他者の行動の系列記憶と推測

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(1)

幼児・児童における自己と他者の行動の系列記憶と

推測

著者

鈴木 智子

雑誌名

東北教育心理学研究

12

ページ

1-11

発行年

2011-10-01

URL

http://hdl.handle.net/10097/00120642

(2)

幼児・児童期における自己と他者の行動の系列記憶と推測

鈴 木 智 子

(帝京科学大学) 問題と目的 一般に人は他者と適切な社会的かかわりをもっとき, 相手の行動に合わせて自己の行動を調整することが求め られる。自己の行動調整が適切に行われるためには,相 手の行動についての適切な社会的認知がなされなくては ならない。本研究の主要な関心は,適切な社会的相互作 用に必要な社会的認知はどのようなもので,どう発達し ていくのかについて探る点にある。この点について,ま ず社会的適応に困難を示す子どもの認知メカニズムを想 定した社会的情報処理モテ、ルを参考にしたい。このモデ ルでは,社会的認知は単一的なものではなく複数の独立 した情報処理のステップから構成されるということを想 定 し て い る (Crick & Dodge, 1994, 1996; Dodge, Pettit, McClaskey, & Brown, 1986;潰口, 1992;松 尾・新井, 1997; Richard & Dodge, 1982; Rubin & Krasnor, 1986)。なかでもDodgeらの研究では, I手が かりのコード化JI手がかりの解釈JI目標の明確化」 「反応アクセス・構成JI反応決定JI行動実行」の

6

つ のステップを想定している。これらのステップのいずれ かがうまく機能しない場合,その子どもの行動は社会的 に適応しないものとなる。 従来,主に最初のステップである「手がかりのコード 化」や「手がかりの解釈」を中心として,社会的適応に 問題のある子どもの認知過程の特徴が明らかにされてい る。例えば,あいまいな挑発場面において相手の意図を 推測する際に,外的な手がかりの利用が少なく (Dodge & Newman, 1981),内的な手がかりを利用する傾向が あること (Dodge& Tomlin, 1987),最初に提示され た手がかりよりも最後に提示された手がかりを利用する 傾向があること (Gouze,1987),などである。これら の特徴から,社会的適応に問題のある子どもは,記憶能 力に問題がある可能性が指摘される。つまり,外的な情 報の記憶が媛昧なために手がかりとして利用できないの ではないかと考えられる。この点については, Crick & Dodge (1994)も同様に,不適切な行動を示す子どもの 記憶能力について検証の必要性を指摘している。こうし た社会的適応が困難な子どもの社会的認知の特徴から, 社会的適応には記憶能力が大きく寄与していることが示 唆される。 しかし, Dodgeらが問題視しているのは,他者の行 動に対する記憶であって,自己の行動との関係での検討 はなく,十分なものになっていないと恩われる。実際の 社会的相互作用の場面では,他者の行動は自己の行動の 影響を受けており,また逆の場合もある。したがって, 社会的相互作用を円滑に進めるためには,他者のみなら ず自己の行動についても記憶していなければならないだ ろう。そこで本研究では,社会的相互作用場面における 自己と他者の行動の記憶に焦点を当て,その発達的変化 を調べていきたい。以下では自己や他者の行動記憶につ いての先行研究を見ていく。 従来の記憶研究では,刺激として音,単語,絵や文章 などを提示し,記憶容量・正確さや記憶の仕方を測るも のが多くみられる。結果として,加齢に伴って記憶容量 が増加し,また方略が高度に精織化されていくことが知 られている(森, 1993;山内・山口, 1983)。しかし,人 の行動を対象とした記憶はそう単純ではない。行動の主 体(誰がどの行動を行ったか)についての記憶を調べる ソース・モニタリングの研究 (Johnson,Hashtroudi, & Lindsay, 1993)では,課題への参加形態や自己と他 者という記憶の対象によって,異なる結果が得られてい る。まず参加形態について,自己と他者が同時期に交替 で一つのパズルを作り上げる形態では 4歳児において 他者の行動を自己の行動であると答えるエラーが多いが, 6歳児ではそれが見られなかった。しかし,自己と他者 が担当する部分を分担し,別々の待聞にそれぞれの担当 部分を完成させる形態では 4歳児でもエラーが少なかっ た (Foley,Passalacqua, & Ratner, 1993)。一方 6 歳以上の子どもと成人を対象としたFol巴y& Johnson (1985)の研究では,自己と他者が同時並行で行動する 場面と単独で行動する場面とでは行動の再認数に違いが 見られないという結果が出ている。したがって 4歳か ら6歳という年齢範囲では,参加形態の違いによって自 己と他者の行動記憶の難しさが異なるが, 6歳以上では その差がなくなっていくと考えられる。 次に自己と他者の行動記憶の違いについては,それぞ

(3)

れが単独で行動する場面,同時並行で行動する場面のど 率よく他者の行動を手がかりとして利用するようになる ちらの場面でも,自己と他者の行動再認数が6歳児では ことが予想される。これらの結果から,加齢に伴う記憶 差が見られなかった。一方 9歳児や成人になると他者 容量の増大だけでなく,推測の発達によってより多くの の行動に比べて自己の行動再認の成績が高くなることが 外界の情報を取り入れることができると考えられる。そ 示されている (Foley& Johnson, 1985)。これに対し こで研究2では,より効率よく情報処理ができるために, て, Foley et al. (1993) では,他者の行動を自己の行 自己と他者の行動聞に関連がある場合の他者の行動の推 動であると答えるエラーが多く出ているが,自己の行動 測について調べることとする。 についてのみ尋ねているため,自己と他者の再認の比較 今回の研究では,年齢が上がるにつれて,社会的行動 は難しい。この二つの研究において,質問の仕方(自己 が洗練され,適応が難しい状態からできる状態へと変化 の行動のみ尋ねる場合と自己と他者の行動を別々に尋ね していくことを想定し,加齢による記憶と推測の発達的 る)や参加形態(同時並行で行動する形態と交替で行動 変化を見ることで,社会的適応に関連する認知の変化を する形態)が直接比較可能な状態ではないため,自己と 調べることとした。また社会的情報処理モデルでは,児 他者の行動の記憶について断定的に結論を下すことは難 童期の適応困難な子どもを対象としているが,より低年 しい。しかし,年齢だけでなく自己と他者の単独・共同 齢児の子どもも社会的適応が十分でないという点では同 という参加形態の違いや質問の仕方の違いによって,白 じ立場であり,情報処理の難しさには共通点があると考 己と他者の行動の記憶が異なる可能性があるだろう。し えられる。そのため,本研究の発達的変化の結果から社 たがって,研究1では自己と他者が行動する場面の条件 会的適応に困難を示す子ども理解への新たな観点が示唆 を整理した上で,行動の系列記憶について調べることと する。 加えて,ここでは自己と他者の行動の区別を調べてい るが,人の行動はその一つひとつが独立ではなく,ある 意思に基づいて相互に関連している。そのため,発信さ れた一連の行動の系列を狸解することで,相手の意図を 理解できると考えられる。この系列記憶の発達に関して は,まず3歳ごろまでに生活上体験する出来事の手順 (例:お風呂に入る,ご飯を食べる)を理解し (Nelson, 1978 O'Connell & Gerard, 1985), 4歳から 6歳に かけては相互に関連のない情報に関しても,提示された 順序通りに再生できる CHudson& Nelson, 1983) こ とが示されている。これらの結果から, 3歳ごろから時 間的な系列を記憶し,再生することが可能となり,加齢 に伴ってその容量は増加すると考えられる。 しかし,一般に記憶容量には限界があるため,情報量 が増えるにつれてある情報から次の情報を推測すること の重要性が増してくると考えられる。この点については, 4歳以上の幼児を対象としたなじみのある行動系列 (Fivush & Mandler, 1985) や時間的順序のある出来 事 (Brown& Murphy, 1975) の再生についての研究 から,情報間の関連を理解することで推測が可能となり, 系列の単純な記憶の限界を補うことができるという結果 が報告されている。さらにこの推測能力は 4歳から 6 歳にかけて上がることも示されている (Hudson & N巴lson,1983)。これらの研究は絵カードについての記 憶や推測であるが,自己と他者の行動についても,行動 の関連を理解し,次の行動の推測が可能となることで効 できると考えている。 研 究

1

通常の社会的相互作用の場面では,自分が相手に働き かけながら同時に自己や他者の行動を記憶している。し たがって研究1では, Foleyらの研究を参考に,社会的 相互作用に近い場面として臼己と他者が交替でミ課題に参 加する場面を設け,課題を行いながら自己と他者の行動 系列を記憶する能力について調べることを目的とした。 本研究ではこの共同場面に加えて,自己と他者が単独で 行動する場面を設け,二つの場面を比べることで,共同 場面における行動の系列記憶の特徴を明らかにすること とし fこO 方法 被験児 A市内のlヶ所の幼稚園に在籍する幼児, 3 ヶ所の児童館に来館した小学生のうち,課題の概要を説 明した上で参加に同意した子ども111名を被験児とした。 各年齢群の被験児数は,年少児18名(男児 7名,女児11 名),年中児18名(男児 8名,女児 10名),年長児 18名 (男児9名,女児 9名), 1年生19名(男児 8名,女児11 名), 2年生 18名(男児 5名,女児13名), 3年生20名 1) 研究 1・2共に,被験児の保護者への連絡について は,各園・児童館の先生方と協議し,園長・館長が必 要であると判断した場合に,園・館の先生を通じて文 書を渡した。文書の内容は課題の概要を説明した上で, 課題への参加は自由であり,参加を希望しない場合は 筆者・先生方に連絡をいただきたいという主旨のもの である。保護者から参加を希望しないという申し出は なかった。

(4)

(男児11名,女児9名)。各年齢群の平均年齢は年少児3: 9 (範囲(R)=3 : 4 -4 : 2).年中児4: 9 (R= 4 : 5-5:2).年長児5: 8 (R = 5 : 3 - 6 2 ). 1 年 生7: 1 (R = 6 : 8 -7 : 6) . 2年 生8: 0 (R= 7 : 7 -8 : 4). 3年生9: 2 (R = 8 : 7 -9 : 8)

期間 1999年6月-2000年11月 課題の概要 複数のピースによって見本と同じ図形を 構成し, 構成したピースの順番を答えるという課題を行っ た。場面に関しては被験児,実験者がそれぞれ単独で別々 の図形構成に取り組む 「単独場面

J

.

被験児と実験者が 一緒に一つの図形構成に取り組む 「共同場面」の2つを 設定した。各場面において自己の行動を時系列的に再認 することを求める 「自己再認課題

J

.

他者の行動を時系 列的に再認することを求める 「他者再認課題」の2課題 を設けた。なお再認は構成した図形を提示したままの状 態で行った。 (a)

i

単独場面

J

の課題の材料は次の通りである。 ①課題の見本・

2

x

2

4

ピースで構成されている見本 を自己・他者の再認課題用に2課題ずつ(模様が異なる). 計4課題用意した(見本の一例をFigure1に示す。 太 枠で固まれている部分がーピースに当たる)。②構成ピー ス・ 10x10cmの正方形からなり,その模様は1ピース の斜線を境に半面のみ色がついているもの (色はピース ごとに異なっている)を4ピース用いた。 ③ピースを構 成する(置いていく)枠。 (b)

i

共同場面」の課題の材 料は次の通りである。①課題の見本

3

x

2

6

ピース で構成されている見本を自己・他者の再認課題用にl課 題ずつ計2課 題用意し た (見本の一 例をFigure2に示 す。太枠で固まれている部分がーピースに当たる)。 ② Figure 1 単独場面の見本 Figur巴2共同場面の見本 構成ピース

i

単独場面」と同様のピースを6ピース用 いた。③ピースを構成する枠。 手続き 実 験は,被験児と実験者が一対ーで対面した 形で行った。 1.

i

単独場面J

i

自己再認課題」では被験児に構 成してもらい,その構成したピースの順番 (系列)を尋 ねた(例 1番最初に置いたのはどれ?)。被験児が構 成するピースは実験者が1枚ずつ手渡した。「他者再認 課題」 では実験者が構成し,その構成したピースの順番 (系列)を尋ねた。「自己再認課題J

i

他者再認課題」を 各2課題,計4課題行った。

2

.

i

共同場面」 ・被験児と実験者が

1

枚ずつ交替で、 ピースを置くことによって図形を構成した。被験児が構 成するピースは実験者がl枚ずつ手渡した。「自己再認 課題」では,被験児が置いたピースについてのみ,置い た順番を尋ねた。「他者再認課題」では, 実験者が置い たピースについてのみ,置いた順番を尋ねた。「自己再 認課題J

i

他者再認課題」を各1課題,計2課題行った。 最初に課題の手続きを説明する 「練習課題J1課題, 「単独場面J

4

課題.

i

共同場面J

2

課 題の計

7

課 題を一 人の被験児に行った。各場面の 「自己再認課題

J

i

他者再 認課題」の施行順序はカウンターバランスされた。 結果と考察 「単独場面J4課 題のうち 「自己再認課題」と「他者 再認課題」 とで同じ内容の見本を構成した課題2課 題と 「共同場 面」の2課題を分析の対象とした。系列を正 確 に回答できたピース数を個人ごとに得点化した。 この得 点を従属変数として,場面ごとに年齢(被験者間要因) ×課題 (被験者内要因)の二元配置の分散分析を行った。 Figure 3には.i単独場面」での課題正答数について 年齢別・課題別の平均得点をプロッ卜して示した。分散 分析の結果,年齢の主効果 (F(5,105)= 29.63. pく.001). 課題の主効果 (F(1,105) =21.40.p<.OOl)が得られた。 また交互作用は認められなかった。年齢については

LS

4.00 4 内 ぺ υ n , L 課題正 答 数 回 一← 自己再認課題 -{}ー他者再認課題 0.83

年少児年中児年長児 1年生 2年生 3年生 Figure 3 単 独場面における平均得点

(5)

3 η 4 1 A 課題正答数(回 2.55

ー←自己再認課題イコー他者再認課題 年 少 児 年 中 児 年 長 児 1年生 2年生 3年生 Figure 4 共同場面における平均得点 D法による多重比較の結果,年少児主年中児<年長児< 1年生主 2年生であった。 3年生は 1年生以下の全ての 年齢群との聞に有意差が得られた。課題の主効果につい ては「他者再認課題 (M=2.9)Jが「自己再認課題 (M二 2.3)J よりも得点が高かった。 Figure 4には「共同場面」で・の課題正答数について 年齢別・課題別の平均得点をプロットして示した。分散 分析の結果,年齢の主効果 (F(5,105)ニ19.68,p<.OOl), 課題の主効果 (F(1,105) =22.30, p<.OO1) が得られた。 また交互作用は認められなかった。年齢の主効果につい ては LSD法による多重比較の結果,年少児=年中児< 年長児ー1年生 '=<2年生 <3年生であった。このことか ら,年齢が上がるにつれて課題正答数が増加していると いえる。課題の主効果については「自己再認課題 (M= 1.7)Jが「他者再認課題 (M=1.0)J よりも得点が高かっ た。この自己と他者の課題結果については, 1"単独場面」 の結果と逆転している。 自己と他者の行動の再認得点の違いが行動の区別の記 憶によるものなのか,系列記憶によるものなのかを確か めるため, 1"共同場面Jの自己と他者の行動の区別につ いても分析を行った。行動の系列に関わらず,自己,他 者の行動として正確に再認できた平均正解ピース数は 「自己再認課題」では,年少児:1.78 (SDO.73),年中児: 1.89 (0.96),年長児:2.50 (0.79), 1年生:2.58 (0.61), 2年生:2.61 (0.61), 3年生:2.65 (0.49), 1"他者再認 課 題 」 で は 年 少 児 : 1.83 (SDO.71), 年 中 児 :1.78 (0.65),年長児:2.33 (0.84), 1年生:2.32 (0.67), 2 年 生 :2.39 (0.70), 3年生:2目65 (0.59)で あ っ た (3 点満点)。年齢(被験者間要因)x課題(被験者内要因) の三元配置の分散分析を行った結果,年齢の主効果のみ 得られた (F(5,105)二8.29,p <.001)0 L S D法によ る多重比較の結果,年少児主年中児<年長児'=<1年 生 = 2年生与 3年生であった。課題の主効果が得られなかっ たことから,行動の区別の記憶に関しては自己と他者で 違いがないといえる。平均得点、と多重比較の結果から, 年長児以降は自己と他者の行動の区別がほぼできている といえる。また,年中児以前であっても,系列の得点に 比べて自他の区別についての得点が高いことから,自己 と他者の区別の困難さが系列の記憶に大きく影響してい るとは考えにくい。したがって,ここで得られた共同場 面における自己・他者の行動再認の難しさは,その系列 を記憶するところに大きな原因があり,系列の記憶能力 が発達的に変化していると考えられる。 以上の結果から,自己と他者の行動の系列記憶の難し さは場面によって異なり,単独で行動する場面では,他 者の系列記憶は自己に比べて易しいが,共同で行動する 場面では逆に他者の系列記憶が難しいことが示された。 この結果から,他者については場面が異なることによっ て,系列記憶が大きく影響を受けるといえそうである。 一方自己については,両場面の得点を見るとその値が比 較的近くなっている。ちなみに両場面のピース数を合わ せるために「単独場面」の「自己再認課題」得点、を3/4 と変換した。その結果,年少児:0.75,年中児:0.62, 年長児:1.67,一年生:2.01.二年生:2.50,三年生:2. 78となり, 1"共同場面」の「自己再認課題」得点とかな り近い値となった。両場面の「自己再認課題」を直接比 較することはできないが,場面が異なっても「自己再認 課題」得点、に大きな差はない可能性が考えられる。つま り自己の行動については,他者の行動を記憶するという 負荷が加わっても,系列記憶の成績に大きく影響しない と考えられる。反対に他者の行動については,自己があ る行動を行い,それを記憶するという負荷が加わると成 績が低下すると考えられる。そのため,系列記憶が最も 難しい共同場面での他者の行動をどのように理解してい くかということが,今後の問題となってくる。 研 究 2 研究lにおいて,共同で行動する場面において他者の 行動の系列記憶が難しくなることが示された。さらに先 行研究から系列情報を理解するときに,系列の記憶とと もに系列の推測が発達し,推測が行われることで記憶容 量の限界を補うことができると示唆された。自己と他者 の行動という社会的な情報においても系列情報を推測す る能力が発達するのかという点を確かめるために,研究 2では,共同場面における他者の行動の系列のある行動 から別の行動を推測する能力について,発達的変化を調 べることを目的とした。 方法 被験児 A市内の 2ヶ所の幼稚園に在籍する幼児, 1 ヶ所の児童館に来館した小学生のうち,課題の概要を説

(6)

明した上で参加に同意した子ども

1

0

0

名を被験児とした。 各年齢群

2

0

名(年中児:男児

1

0

名,女児

1

0

名,年長児: 男児

1

0

名,女 児

1

0

1

年生:男児

7

名,女児

1

3

名.

2

年 生:男児9名,女児11名 3年生:男児

1

0

名,女児

1

0

名)を対象とした。各年齢群の平均年齢は年中児5: 2 (範囲(R)=4 : 9 -5 : 6).年 長 児6・1(R= 5 8 -6 : 6). 1年 生6: 11(R= 6 7 -7 : 4). 2 年 生8: 0 (R = 7 : 5 -8・6). 3年 生9: 0 (R= 8:7-9:6)。研究1において年少児・年中児は自 己と他者の区別が難しいことが示されたため,研究2に おいてはその区別が出来始める年中児以降を対象とした。 期間

2

0

0

1

3

月一

2

0

0

2

1

月 課題の概要 系列情報開の関連については,従来用い られている因果関係やスクリプ卜などが一般的である。 しかし,本研究ではそれらに対する被験児の既有知識の 差を排除するため,また研究1との関連性を持たせるた め,図形を構成する課題を用いて,見本課題として関連 を示すこととした。 被験児は自身で図形を構成しながら,同時に実験者の 構成する図形を参照することによって実験者と同じ図形 に自身の図形を修正し,再構成することを求められた。 図形については行動の系列を作るために複数のピースを ー列に構成していく内容とした。 推測をするためには情 報開に重要性の違いを見出すことが必要となる。そのた め他者が自分と同じピースを選択する時と異なるピース を選択する可能性のある時が生じるように図形の見本を 二つ用意し,提示した。最後に推測の必要性を高めるた めに相手と同じ図形を構成することをルールとして設け

]

j

h

J

1

Figure5 推測課題の見本 fこ。 本課題の材料は以下の通りである。①課題の見本 4 ピース構成の課題の見本図形は,縦に4種類の動物の絵

(

A

.

B

.

c

.

D)

が描かれているものを二種類 (ア・ イ)用意した。Figure5には,課題の見本の一例を示 した。各見本図形4ピースのうち.2ヶ所は二つの見本 で同じ絵が描いてあり 2ヶ所は異なる絵が描いてある。 4ヶ所のうち異なる絵を2ヶ所に異なる柄が配置される ように構成したが. BとDが異なる場合とBとCが異なる 場合を設定した。②構成ピース:6種 類の動物の絵が描 かれているピースを,取り出しやすくケースに入れたも のを2組(被験児用と実験者用)用意した。③ピースを 構成する枠と枠を立てかける台座2組(被験児用と実験 者用)対面している状態で,お互いのピースの枠を台 座の上に斜めに立てかけたため,構成している時は相手 の構成図形を参照することはできない。④参照について 意思表示するカード・実験者が構成したピースを被験児 が見るか,見ないかを意思表示するカードを用意した。 見る場合に提示する 「見せて」カード4枚,見ない場合 に提示する 「見ません」カード4枚。 手続き 課題は,被験児と実験者が一対ーで対面した 形で行った。 <教示内容>被験児には以下の事項を教示した。①2 種類の見本図形を提示し, 二つの見本のうちどちらか一 つを選んで,構成して欲しいこと, ②実験者も被験児と 向かい合って同じように見本図形から一つを選んで構成 すること,③最終的には実験者と同じ見本図形を構成し て欲しいので,実験者の置いたピースの絵を(自分が1 ピース置いた後に)見にきて,異なっている場合に同じ 絵になるようピースを変更して欲しいこと。なお②では 両者が向かい合っているため,被験児は参照しない限り 実験者が異なる見本を選択しているか否かを知ることは 出来ない。一方, 実験者は被験児の選ぶピースを被験児 のケース内の決められた位置に置かれているピースから, 被験児に気づかれないように確認した。その上で,必ず 被験児とは異なる見本を選択し,被験児と同じタイミン グで置い た (実験者のケースは机の下に置き,被験児か らは見えないようにした)。③では実験者が以前に置い たピースはカバーで隠し,被験児はその時自分が置いた ピースと同じ位置にある実験者のピースしか参 照するこ とが出来ないようにした。 <参照回数についての条件>実験者の置いたピースを 参照するという判断が,必要性を理解してのものなのか, 好奇心のためなのかを区別するために,以下の二つの条 件を設けることとした。情報の必要性を理解し,参照す

(7)

Table 1 課題の成功率と平均成功数 年 中 児 年 長 児 1年 生 2年 生 3年 生 平 均 自由条件成功率(弛) 52.5 85.0 75.0 82.5 87.5 76.5 限定条件成功率(%) 42.5 62.5 67.5 72.5 87.5 66.5 平 均 成 功 数(SD) 1.90 (1.45) 2.95(1.23) 2.85 (0.93) 3.10 (0.91) 3.50 (0.83) 2.86 (1.20) 主.平均成功数の最大値は4 年 中 児 1年 生 Table 2 一課題あたりの平均参照頻度 (8D) 平 均 年 長 児 2年 生 3年 生 自 由 条 件 2.20(1.11) 2.10(1.06)1.75 (1.08)1.28 (0.88)1.23 (0.62)1.71(1.04) 限 定 条 件 1.35 (0.70)1.53 (0.68)1.38 (0.63)1.10 (0.55)1.33 (0.57)1.34 (0.64) 主 . 平 均 参 照 頻 度 の 最 大 値 は 自 由 条 件 で4,限定条件で2 べき情報がわかっていたとしても,すべてを参照できる る多重比較の結果,年中児<年長児'=;1年生 '=;2年 生 = 状況(自由条件)では,必要以上に好奇心によって情報 3年生であった。この結果から,年中児から年長児にか を参照している可能性がある。その場合,自由条件だけ けて,課題成功率が飛躍的に上昇し,その後は高い割合 では判断できているのか,好奇心のみによって参照して を保っているといえる。条件の主効果については,自由 いるのかの違いがわからなL、。したがって,参照の回数 条件 (Mニ1.53)が限定条件 (M二1.33)に比べて高かつ を制限する条件(限定条件)を設けることによって,本 た。 当に必要な情報を判断ができているのかを確認すること 次に, Table 2には実験者の構成ピースを参照したー とした。 課題あたりの平均頻度を示した。条件ごとに年齢(被験 a)自由条件:4固まで自由に見ることができる, b)限 者間要因)による一元配置の分散分析を行った。その結 定条件:2回までしか見ることができない。被験児への 果, 自由条件において年齢の主効果が得られた

(F

教示は, a)自由条件の場合は「見せて」カード, I見ま (4,95) =5.83, p <.001)0 L 8 D法による多重比較の結 せん」カードを4枚ずつ渡して,好きな方を選択できる 果,年中児ー年長児>2年生ー 3年生であった。 l年生 ことを伝えた。 b)限定条件の場合は「見せて」カード 2 はどの年齢とも有意差が見られなかった。また,限定条 枚,

I

見ません」カード

4

枚を渡して,参照する機会は 件においては年齢の主効果は得られなかった。 2固までしかないことを伝えた。 a)・b)条件の提示順序 これらのことから,加齢に伴って参照頻度が減少し, は,カウンターパランスされた。 成功率は上昇するという変化が示された。したがって, 全体の手続き理解のための練習課題2課題,各条件の 参照頻度の多さではなく,重要な箇所に限って参照する 理解のための練習課題2課題の計 4種類の練習課題を行つ ことが成功率と関連していると考えられる。自由条件と た。さらに各条件2課題 (B.C, B. Dが異なる)を含 限定条件の参照頻度の違いを見ても,同様のことが考え めた,計8課題を一人の被験児に行った。 られる。条件によって最大値が異なるため,直接的に比 結果と考察 較することが難しいが,自由条件の年中・年長児は2・ 各条件での本課題(一人当たり自由条件2課題,限定 3年生に比べて参照頻度が高く, 2・3年生の参照頻度 条件2課題,計 4課題)の結果を分析対象とした。 課題の成功と参照頻度 Table 1には実験者と同じ図 形を構成することができた成功課題の割合(各年齢の成 功課題数を施行課題数で割った値)と一人当たりの平均 成功数を示した。一人当たりの課題の平均成功数を得点 と見なし,年齢(被験者間要因)

x

条件(被験者内要因) の二元配置の分散分析を行った。その結果,年齢の主効 果

(F(

4

9

5

)

5

.

8

2

,p <.001), 条 件 の 主 効 果

(F

(1,95)ニ6.14,p <.05) が得られた。また交互作用は認 められなかった。年齢の主効果についてはL8D法によ 2 参照頻度 回

年中児年長児 1年生 2年生 3年生 Figure 6 同じ絵・異なる絵の参照頻度 (一課題あたりの平均数)

(8)

は両条件でほぼ近似した数値であることから,年中・年 長児においては限定条件に比べて自由条件で参照頻度が 高いように見受けられる。年中児は課題正答率が低いこ とから,限定条件において適切な情報を参照しておらず, 両条件とも好奇心によって参照していると考えられる。 一方,年長児は,課題正答率が高いことから,限定条件 で参照した情報は適切であり,好奇心だけでなく,情報 の必要性を判断して参照していると考えられる。そのた め以下では,参照した絵の位置に焦点を当てて分析を行っ H ,~。 絵の異同による参照頻度の違い 両条件において 2 種類の見本で同じ絵が並んでいる位置 (Figure5のA. C,以下同じ絵)と異なる絵が並んでいる位置 (Figure 5のB.D,以下異なる絵)において参照した頻度を比較 した。 Figure6には各位置における一課題あたりの平 均参照頻度を示した。年齢(被験者間要因)

x

絵の異同 (被験者内要因)の分散分析を行った結果,年齢の主効 果

(F(

4

9

5

)

=

5

.

2

6

, p

<

.

0

1),絵の異同の主効果

(F

( 1,9

5

)

=

1

7

9

.

8

6

, p

<

.

0

0

1

)

,年齢と絵の異同の交互作用 (F (4,95)ニ4.38,p <.01)が得られた。この交互作用 について

LSD

法による多重比較を行った結果,同じ絵 の単純主効果については年中児>1年 生 >2年生=.3年 生,年長児>2年生与3年生,異なる絵の単純主効果に ついては,年長児>2年生であった。 この異なる絵のなかでも一番目 (Figure5のB)と 二番目 (Figure5のD)では,その情報の必要性に以 下のような違L、がある。一番目に異なる絵については, そのピースを参照していない場合は実験者と異なる絵を 構成することになるため,課題成功のためには必ず参照 する必要がある。さらに,一番目に異なる絵を参照すれ ば,その情報から実験者の選択した見本を理解し,次の 行動を時系列的に予測することが出来るため,二番目に 異なる絵を参照しなくても効率的に同じ絵を構成するこ とができるO この必要性の差異についての判断を調べる ため,異なる絵について一番目と二番目を参!照した頻度 の比較を行った。 Figur巴7には異なる絵について, 参 l

ofn7A

0.7608LJ

8

9

照 ! ^ ハ

-

-

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-

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異なる絵(二番目) 回

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0

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{i両正正面宅

l Figure 7 異なる絵の参照頻度 (一課題あたりの平均数) 課題あたりの平均参照頻度を示した。年齢(被験者間要 因)

x

異なる絵の位置(被験者内要因)の二元配置の分 散 分 析 を 行 っ た 結 果 , 異 な る 絵 の 位 置 の 主 効 果 (F (1,9

5

)

=6

1.

3

5

, p <.001)と位置と年齢の交互作用 (F

(

4

9

5

)

ニ4.19,p <.01)が得られた。この交互作用につ いて

LSD

法による多重比較を行った結果,一番目に異 なる絵の単純主効果については,年中児<2年生='3年 生,二番目に異なる絵の単純主効果については,年中児 >2年生,年長児>2年生と3年生であった。 1年生に ついてはどの年齢の子どもとも有意差が得られなかった。 ちなみに,同じ絵についても同様の分析を行った結果, 位置の主効果・位置と年齢の交互作用は認められなかっ た。したがって,異なる絵の情報聞に必要性の違いがあ ることを理解して参照を判断していると考えられるO 参照パターン 上記のように一番目に異なる絵と二番 目に異なる絵には,参照する必要性に違いがある。しか し,同じ絵も異なる絵と同時に参照している場合は,異 なる絵の必要性を理解しているというより,偶然参照し た可能性が高L、。したがって,参照パターンを以下のよ うに定義した。時系列的参照:一番目に異なる絵のみ参 照する(一番目に異なる絵から他者の次の行動を推測で きる),即時的参照:異なる絵(ー・二番目共に)のみ 参照する(目の前にある見本から他者の行動の選択肢を 推測できる)。一人四課題中,三課題以上で同じパター ンを示した子どもの数をそのパターンの度数とみなし, Figur巴 8に示した。参照パターン(3)X年齢(5)の

x

2検 定を行った結果,有意差が得られた (x2 (4)ニ 25.72,p

<

.

0

1

)

。残差分析の結果,年中児では特定の参照パター ンを示さない子どもが多く,時系列的推測は少なかった。 年長児では即時的推測が多く,時系列的推測は少なかっ た。 2年生と3年生では時系列的推測が多く 3年生で は特定の参照パターンを示さない子どもが少なかった。 これまでの結果から,課題の成功と参照との関連を年 齢別にまとめていく。まず幼児期では,年中児は参照頻 20 反 15 応 度 数 10 人

年 中 児 年 長 児 l年生 2年生 3年生 ロ特定のハ@トンなし ロ即時的参照 園時系列的参照 Figur日8 参照パターンを示した人数

(9)

度が高いものの特定のパターンで参照しているわけでは なし、。また成功率が低いことから,課題成功につながら ない不必要な情報を多く参照しているといえる。年長児 においては,参照頻度は年中児と同じく多いが,成功率 が上昇している。これはパターンの結果から,年中児と 比べて課題成功に必要な異なる絵についての情報を参照 することが増加したためであると考えられる。 次に,児童期を見てみると,参照頻度が減少するよう になるが,年長児と比べて異なる絵のなかでも一番目の 絵というより必要な情報に焦点化ができるようになるこ とによって課題に成功している。加齢に伴って効率のよ い参照が可能になっていることから,情報間の関係の理 解が進むことで推測ができるようになることが示された といえる。 言 す 論 本研究では,二つの研究を通して,自己と他者の行動 の記憶と推測の発達的変化を幼児期から児童期にかけて 調べることを目的とした。以下では,大きく二つの視点、 から討論を進めていく。 自己と他者の行動に対する系列記憶 研究1の結果か ら,まず自己と他者の行動の区別について,年中児から 年長児にかけてできるようになる (80%前後の正答率を 示す)ことが示された。これは先行研究の結果 (Foley et al.,l993)と一致していた。次に,行動の系列につい て,自己の系列記憶は場面による大きな違いは見られな いが,他者の系列記憶は場面によって大きく異なること が 示 さ れ た 。 こ れ は , 先 行 研 究 の 結 果 (Foley & Johnson, 1985)とは異なっていた。この理由として, 先行研究では行動の区別(一つ一つの行動を誰が行った かを尋ねた)だけであったが,本研究では系列を尋ねた という測度の違いが影響していたと考えられる。本研究 で見られた場面による自己と他者の系列記憶の違いを解 釈すると,以下のように考えられるO 共同場面では他者 の行動を記憶する場合には自己も同時に課題に参加して いるため,自己の行動に注意を向ける必要が生じていた。 しかし,単独場面の他者の行動を記憶する場合には自己 の行動に注意を向ける必要がなかった。そのため共同場 面の他者の行動を記憶することが難しくなったと考えら れる。このように自己が参加しているか否かによって, 自己と他者の行動系列記憶の困難さが変わることが明ら かとなった。 特に社会的相互作用においては他者の系列記憶が難し く,やりとりが進み,双方の情報が増えるにつれて単純 な系列記憶が次第に困難になっていくことが想定される。 社会的適応の困難な子どもの手がかりの利用の少なさ (Dodge & Newman, 1981)や内的な手がかりへの注 意の偏り (Dodge& Tomlin, 1987)の問題にも,他者 の行動の系列記憶が難しいことから,自己の行動にばか り注意が向くということが関連してくると考えられる。 こういった現象に対しては①記憶容量の増大,②情報聞 の関連に基づいた推iJlJIの三つによって一部改善すること が期待される。しかし,共同場面において交互作用が見 られず,常に他者の行動再認が難しかったことから,こ の他者の系列記憶の難しさは年齢が上がり,①の記憶容 量が増加しでも継続していく問題であるといえる。した がって,研究2の結果からの②の推測能力の発達につい てみていく。 他者の行動推測 研究2においては他者の行動を推測 する能力を調べた。その結果,以下のような発達的変化 が明らかとなった。まず年齢の低い時期では他者の行動 を好奇心によって多く参照しようとすること,次に年齢 が上がるにつれてその他者の行動のなかから推測によっ て不必要な行動を参照しなくなることが示された。そし て,後者の推測については,以下の二段階があることが 示された。まず同じ絵を参照しなくなることから,①今 回の前にある他者の行動の選択肢が明らかに悶ーである 場合には,その選択肢から他者の行動を推測しようとす る段階(即時的推測)がある。次に異なる絵の二番目を 参照しなくなることから,

c

g

他者の行動の選択肢が同ー ではないが,以前の他者の行動から時系列的に推測しよ うとする段階(時系列的推測)がある。そして幼児期に 即時的推測,児童期に時系列的推測という変化が見られ た。これは行動聞の関連を理解することで推測が可能と なり,系列の単純な記憶の限界を補うことができるとい う先行研究の結果 (Brown

&

Murphy,l975 Fivush & Mandler,l985)が社会的行動にも適用されうること を示している。 本研究の結果から,他者とのやりとりの中で,自己が 活動にどの程度関与しているかによって他者の行動記憶 が異なること,他者の行動からやみくもに情報を参照す る段階から,焦点を絞って効率的な推測の段階へと変化 していくことが示された。この自己の関与の重要性や他 者の行動認知に発達的段階があるという観点、は,社会的 適応に問題のある子どもの社会的認知の理解や支援を進 めていく際に検討する価値があると考えられるO しかし, 今回の研究では年齢が上がることで社会的適応が上がる ことを前提としたが,実際にこの結果が社会的行動や適 応にどれだけ寄与しているかについては,社会的適応が できている子ども,適応に困難を示す子と、もの記憶や推

(10)

測と行動のつながりを調べることを通じて,今後明らか にされていくものと考える。 ただし,本研究で取り扱った行動は図形を構成すると いうもので,社会的相互作用で通常起こるやりとりと比 べるとかなり限定的なものである。例えば,図形を置く という行動と自分に向けられた言動との違いや,図形と いう視覚的な情報と言語という聴覚的な情報との違いな どが存在すると考えられる。また行動聞のつながりのルー ルは,通常の記憶研究で用いられている因果関係やスク リプト,一連の行動をまとめている意図などと比べると 行動間のつながりの必然性や蓋然性に欠けるという欠点 がある。そのため,ここで得られた結果が社会的相互作 用にどれだけ適用されうるかという問題は,今後の検討 課題である。 文 献

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X

浮うじ.f!!!:寺普

I

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付 a -一 司 一 回 コ ﹂

(11)

館の児童のみなさん,先生方に深く感謝申し上げます。 また本論文の作成にあたり,丁寧なご指導を賜りました 東北大学大学院教育学研究科教授本郷一夫先生に厚く御 礼申し上げます。

(12)

幼 児 ・ 児 童 期 に お け る 自 己 と 他 者 の 行 動 の 系 列 記 憶 と 推 測 本研究では,幼児期・児童期において自己と他者の行動についての系列記憶と推測を発達的に調べることを目的と した。幼児から児童期前半の子ども211名を対象とし,実験者と一対ーで対面する方法で実験を行った。研究 1では単 独で行動する場面と共同で行動する場面で自己と他者の行動の系列を記憶する能力を調べた。その結果,場面によっ て自己の系列記憶は大きく変化しないが,他者の系列記憶が単独場面では自己に比べて易しし共同場面では自己に 比べて難しいという場面による違いが見られた。両場面において幼児期,児童期において大きな発達的変化が見られ た。研究2では自己と他者が共同で行動する場面において,他者の行動を推測し,必要な他者の行動を参照する能力 を調べた。その結果,幼児期において他者の行動の選択肢を推測することができ,児童期においては他者の行動を時 系列的に推測することができるようになった。研究1と研究 2の結果から,社会的認知における自己の関与の重要性、 他者の行動認知に発達的段階があることが示された。 キーワード・系列記憶,推測,自己・他者

Memory and inference of sequential actions of the self and another in the preschool and the elementary school children

The present study examined developm日ntalchanges of memory and inferenc巴m s巴qu巴ntialactions of the self and another. Participants for the two experiments included 211 children from preschool to third grade In study 1, the children participated in two tasks, which examined the memory of sequential actions of the self and another. In the single task, in which only the children or th巴 experimenter participated, the remembering of sequ巴ntialactions of another was easier than that of the self. However, in the collaborative task, involving both the children and th巴 巴xperimenter,the remembering of sequential actions of the self was eaS!巴rthan that of another. In study 2, the children participated in the collaborative task, which examined the inference and referencing of the relevant action of another. The pr巴schoolchildr巴nwere able to infer the alternative action of another. The elementary school children w巴r巴ableto infer the action of another sequentially

参照

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