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製品寿命と異素材混入を考慮した社会基盤素材の動的マテリアルフロー分析

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Academic year: 2021

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製品寿命と異素材混入を考慮した社会基盤素材の動

的マテリアルフロー分析

著者

武山 健太郎

学位授与機関

Tohoku University

学位授与番号

11301甲第19271号

URL

http://hdl.handle.net/10097/00130568

(2)

たけ

やま けん たろう

武 山 健 太 郎

博士(工学)

学 位 授 与 年 月 日

令和2年3月25日

学位授与の根拠法規 学位規則第4条第1項

研究科,専攻の名称 東北大学大学院工学研究科(博士課程)金属フロンティア工学専攻

学 位 論 文 題 目

製品寿命と異素材混入を考慮した社会基盤素材の動的マテリアルフ

ロー分析

員 東北大学教授 長坂 徹也

論 文 審 査 委 員

主査 東北大学教授 長坂

徹也 東北大学教授 朱 鴻民

東北大学教授 北村

信也 東北大学教授 松八重 一代

東北大学准教授 福島 康裕

論 文 内 容 要 約

世界的に持続可能な社会が求められる中で、資源の有効利用が持続可能な経済活動に対する重要課題となっている。金属をはじめ とする金属素材をはじめとする社会基盤素材は現代社会において様々な用途で利用されているため、欠かすことのできない存在であ る。途上国の経済発展に伴い、社会基盤材料の需要およびその生産に使用される資源の需要は増加傾向にある。一方で、資源採掘や 精錬に伴っては、有害物質の排出や生物多様性の損失等の環境負荷・汚染や、鉱山における騒音問題等の社会的な影響が生じている 事が指摘されている。そのため、新たな採掘活動を必要とする一次資源に依存しない資源調達システムの構築が必要である。そのた めには、既に製品として使用・廃棄された素材を二次資源とみなす「都市鉱山」の理念に基づいた素材のリサイクルが重要である。 また、昨今資源ナショナリズムと呼ばれる自国に存在する資源を自国で管理・開発しようとする動きが拡大しており、リサイクルを 行う事により、資源輸入への依存度を低下させることは、資源の安定的な調達に大きく寄与する。一方で、人間の経済活動に伴って は様々な形で天然資源が使用され、散逸している事が指摘されている。 先行研究においては、リサイクルによる物理的損失の低減に伴う一次資源投入量の削減効果および環境負荷の低減について解析が 行われているが、質的損失および希釈損失の低減によっても同様の効果が期待できる。そのため、今後より一次資源の投入量、資源 消費量の低減を達成するためには量的な損失だけでなく質的な損失についても考慮する必要がある。金属素材の質的な散逸に着目し た場合、散逸の生じる要因の一つとして、随伴物質の存在が挙げられる。例えば鉄鋼材中のニッケルや銅等の元素のように熱力学的 な制約によって溶解プロセスにおいて金属相から分離する事が難しい元素は再生素材中に混入・濃化してしまい、再生素材の特性の 低下を招いてしまう。そのため、溶解プロセスにおいて金属相からの分離が困難な元素については精錬炉に投入される量のコントロ ール、つまりは、投入される二次資源中の元素量の管理を行う必要がある。 現状においては、製品解体プロセスにおいて採算性等の経済的な理由や解体の技術的な限界等の技術的な理由から完全な解体・素材 分離が行われず、スクラップへの異材の混入が生じている。素材間の混入が生じる事によって、被混入側の素材においては再生素材 の特性の低下を招くことに加え、混入側である素材においては本来回収可能であった素材量に比べて実際の回収量が少なくなるため、 二次資源の散逸になっているといえる。そのため、一次資源の消費量の低減を行うためには、従来考慮されている物理的損失だけで

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なく、素材の混入等の質的損失を含めた資源散逸を低減できる資源循環システムの構築が必要である。 本研究においては、資源循環システムの構築のための技術導入や制度設計を行うための根拠となる定量情報の提示を目的とし、資 源循環システムの評価手法の構築を行う。また、ケーススタディとして、世界で最大の生産量を誇る社会基盤素材であり、様々な金 属元素を最も大量に消費している金属素材である鉄鋼材に着目し、その資源循環システムの評価を行う。加えて、資源循環に関係す る技術の導入や制度の変化を想定したシナリオ分析を用いて技術の導入の効果の定量化を行い、資源損失の少ない資源循環の構築に 向けた技術選択や制度設計に対する提言を行う。 本研究においては、資源循環システムの評価手法の構築を行った。この手法においては、素材の生産から製品の設計・製造・消費・ 素材のリサイクルまでを網羅的に把握し、それらに対して計測すべき 5 つの要件を以下のように設定している。 1) 一次資源の投入量: 素材生産に投入される一次資源投入量および、素材生産に投入される全資源に含まれる対象元素量に占める一 次資源に含まれる対象元素量の割合 2) 資源の物理的な散逸量: 使用済素材の発生から最終製品の生産までのライフサイクルにおける物理的な資源散逸に含まれる元素量 および、使用済み素材に含まれる元素量に占める物理的な資源散逸に含まれる元素量の割合 3) 資源の質的な散逸量: 使用済素材の発生から最終製品の生産までのライフサイクルにおける質的な資源散逸に含まれる元素量およ び、使用済み素材に含まれる元素量に占める質的な資源散逸に含まれる元素量の割合 4) 再生可能材の割合: 国内で使用される製品中の素材に蓄積される元素量および、素材生産に投入される全ての資源に含まれる元素 量に占める国内で使用される製品中の素材に蓄積される元素量の割合。 5) 価値耐久性: 素材生産に投入された元素量の物理的・質的散逸によって元素の蓄積量が投入量の 50%を下回るまでに経過する年数 および、合金元素については、その合金元素を含有する素材の母材となる元素の価値耐久期間に対する比率 提案した指標について評価を行う際に複数の手法やデータソースを用いる場合、それぞれの指標の間で矛盾が生じる可能性がある。 そのため、単一の手法によって5 つの指標を評価する事が可能な手法が必要である。そのため、本研究ではこれが可能である動的マ テリアルフロー分析を用いる。 動的マテリアルフロー分析は時系列情報を含む対象物質・素材の流れや蓄積量を推計する手法であり、潜在的な二次資源となる素材 の廃棄量の推計を行うために使用される。本研究においては、産業連関分析に基づく動的マテリアルフロー分析モデルである MaTrace モデル1)を基に構築を行う。MaTrace モデルはWIO-MFA(Waste Input-Output MFA)モデルを製品寿命やリサイクル工程 での歩留まりを考慮することで動的に拡張したモデルである。このモデルを用いる事で社会に投入された素材がどのような形態で蓄 積されるかを可視化する事が出来る。本研究においては、国内における潜在的な二次資源である使用済み素材の発生量を推計するた め、スクラップや製品の輸出フローや素材生産プロセスへの一次資源の投入を考慮する拡張を行った。図2 にモデルの概要図を示す。 本研究では2005 年の産業連関表に基づいた WIO-MFA 情報3)を用い、産業構造が一定かつ生産量が一定という仮定の元で生産され

た全ての製品に含まれる鉄鋼材および随伴するNi、Cr および異種素材としてCu とAl を対象に分析を行う。シナリオ分析において 変化させるパラメータは2 つである。一つは自動車解体技術の変化を想定した自動車製品由来の異種素材の混入率 α である。もう一

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図 1 指標群と資源循環の概略図の対応

2 動的マテリアルフロー分析モデルの概要図

は鉄鋼製錬技術の変化を想定した鉄鋼材生産プロセスにおけるCuの除去率θである。これら2つのパラメータについて0%から100% まで変化させ、2 つの技術の組合せに対応するスクラップ中のCu 濃度および粗鋼中のCu 濃度を評価する。粗鋼中の元素e の量 は以下の式より推計する。

ここで、θ は素材生産プロセスにおける歩留まり率、 は老廃屑から投入される元素量、 は一次資源から投入される元素 量、 は加工屑から投入される元素量、 はスクラップの需給バランスにより余剰するスクラップ中の元素量を表している。 異種素材の混入率α は に影響を与える。

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図2 にα およびθ を0%から100%まで変化させた場合の各技術の組合せにおける粗鋼中のCu 濃度を示す。粗鋼中のCu 濃度は分析 開始から100 年経過後の普通鋼小棒向け粗鋼中のCu 濃度を示している。図2 中に示されているCu 濃度の曲面が鉄鋼材中のCu 濃 度に対する規制の値の平面より下に存在しているパラメータの組合せ・技術の組合せは、Cu 濃度の観点から持続可能な鉄鋼循環が達 成可能な技術の組合せであるといえる。 図3 にベースラインシナリオにおける鉄鋼材とニッケルの資源循環性評価指標をレーダーチャートで示したものを示す。大部分の指 標については同程度のスコアになっているが、価値耐久性の部分が合金元素であるニッケルにおいて非常に低い値になっている。そ のため、今後は素材全体の循環のためのリサイクルを行うだけでなく、合金元素の循環を目指したリサイクルが必要であるといえる。 図2 各シナリオにおける粗鋼中Cu 濃度の経時変化 図3 ベースラインシナリオでの資源循環性評価レーダーチャート 日本国内における鉄鋼合金元素の動的フローおよび各ライフサイクルの段階における散逸量・蓄積量を示した。本研究においてはシ ステム境界を国内に設定しているため、国外に輸出された製品、素材、スクラップに含まれる元素の利用については考慮をしていな い。一度国内に入った資源がスクラップ・製品として海外に輸出された後の挙動について注目し、それら製品の海外での廃棄後に回 収し、国内においてリサイクルを行うシステムの構築など、システム境界を世界中に設定し、世界規模での持続可能な循環型社会形 成に向けたシステムの構築が求められる。また、今後はパリ協定の枠組みにおいて二酸化炭素の排出量によって全ての経済活動に規 制がかかる事になる。そのため、本研究では考慮していない素材の循環に伴うエネルギーの投入や二酸化炭素の排出量を含めた分析 を行う事で、パリ協定の枠組み内において選択可能な技術の組合せの解析が必要である。加えて今回ケーススタディとして扱った鉄 鋼材、アルミニウム素材、銅素材、だけでなく、プラスチックやガラス、セメント等その他の社会基盤素材も含めた更なる多素材を 対象とした分析を行う事で、素材生産業全体における二酸化炭素の排出量を制約条件に加えた持続可能な循環型社会の形成に向けた システム構築が求められる。 参考文献

1) Nakamura, S. et al., Environmental Science & Technology 2014, 48, (13), 7207-7214. 2) Nakamura, S. et al.,Materials Transactions 2005, 46, (12), 2550-2553

図 2 に α および θ を 0% から 100% まで変化させた場合の各技術の組合せにおける粗鋼中の Cu 濃度を示す。粗鋼中の Cu 濃度は分析 開始から 100 年経過後の普通鋼小棒向け粗鋼中の Cu 濃度を示している。図 2 中に示されている Cu 濃度の曲面が鉄鋼材中の Cu 濃 度に対する規制の値の平面より下に存在しているパラメータの組合せ・技術の組合せは、 Cu 濃度の観点から持続可能な鉄鋼循環が達 成可能な技術の組合せであるといえる。 図 3 にベースラインシナリオにおける鉄鋼材とニッケル

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