栃木県における外国人生徒の進路状況
− 5 回目の調査結果報告−
田 巻 松 雄
はじめに 平成 27 年 3 月から 4 月にかけて、栃木県にお ける外国人生徒の進路についての 5 回目の調査を 行った。本稿の目的は、この進路調査の結果につ いて基礎的な事実を整理することにある。 栃木県における外国人児童生徒について、文部 科学省「日本語指導が必要な外国人児童生徒の受 入状況等に関する調査」(平成 26 年度)の結果か ら、平成 26 年 5 月 1 日現在のデータを整理して おこう。 まず、全国の公立学校に在籍している外国人児 童生徒数は 73,289 人で(平成 24 年度より 1,744 人増加)、そのうち、日本語指導が必要な外国人 児童生徒数は 29,198 人(前回の調査より 2,185 人増加)である。日本語指導が必要な児童生徒の 主要母語別状況は、ポルトガル語 28.6%、中国語 22.0%、フィリピノ語 17.6%、スペイン語 12.2% となり、この 4 言語で全体の 80.4% を占める。 日本語指導が必要な日本国籍の児童生徒は 7,897 人(平成 24 年度より 1,726 人増加)いる。 栃木県では日本語指導を必要とする外国人児童 生徒数は 562 人で、その主要学校別内訳は、小学 校 433 人、中学校 114 人、高等学校 12 人となっ ている。また、その主要母語別内訳は、スペイン 語 214 人(38.1%)、ポルトガル語 142 人(25.3%)、 中国語 37 人(6.6%)、フィリピノ語 85 人(15.1%) で、この言語で全体の 85.1% を占める。また、 スペイン語の割合が一番高く、ポルトガル語を合 わせた南米系児童生徒の割合は 63.4% となって いる。 1 調査の目的と方法 調査の目的は、栃木県における外国人生徒の進 路状況の把握にある。調査対象は、栃木県のすべ ての公立中学校に在籍する平成 26 年度中学校第 3 学年在籍生徒のうち、①外国籍生徒および、② 日本国籍で「日本語指導が必要な生徒」として把 握されていた生徒とした。外国人生徒の担任ある いは 3 学年担当の先生に①か②のいずれかに該当 する生徒の進路について回答してもらうという方 法をとった。 調査票では、性別、国籍、母語、来日年齢、就 学歴、進路希望、受検(験)方法、平成 27 年 3 月 31 日現在で確定している進路状況を聞いた。 調査票は 160 校(分校及び県立は除いた)の県内 全公立中学校に配布した。調査の協力依頼文にお いて、①か②に該当する者がいない場合でも、「該 当者なし」として返信してもらうように依頼をし た。160 校のうち、45 校から 116 人の該当する生 徒について回答があった。88 校からは「該当者 なし」の返答があった。27 校からは返信がなかっ た。 平成 26 年 5 月 1 日現在、栃木県内の公立小中 学校の外国人児童生徒数は、小学校 866 人、中学 校 441 人である。そのうち、日本語指導が必要 な児童数は小学校 433 人(総数の 50.0%)、中学 校 114 人(総数の 25.9%)である。小学生の半数 が日本語指導を必要としているのに対し、中学生 においてはその比率が 1 / 4 に留まっている。中 学生の学年別内訳は、1 年 160 人、2 年 158 人、3 年 157 人である(栃木県教育委員会提供「平成 26 年度小・中学校教育課程等に係る調査結果か ら」)。平成 27 年 3 月卒業生を 157 人と仮定すると、 今回の調査で進路が把握できた 116 人はその母数 の 73.9% に当たる。 2 生徒の属性と進路結果の概要 116 人の生徒の性別は、男性 54 人(46.6%)、 女性 62 人(53.4%)であった。主な母語別状況では、 ポルトガル語 27 人(23.3%)、日本語 22 人(19.0%)、スペイン語 22 人(19.0%)、フィリピノ語(タガ ログ語)14 人(12.1%)、中国語 12 人(10.3%)、 英語及びタイ語は 4 人(3.4%)であった。主要 国籍別では、ブラジル 30 人(25.9%)、ペルー 22 人(19.0%)、フィリピン 19 人(16.4%)、中国 12 人(10.3%)、タイ 5 人(4.3%)、韓国とボリビア とベトナムが 4 人(3.4%)であった。前回の調 査では日本語を母語とするものが一番多かったの だが今回はポルトガル語を母語とするものが一番 多かった。 ブラジル国籍 30 人のうち、ポルトガル語母語 26 人(86.7%)、日本語母語 4 人(13.3%)である。 ペルー国籍 22 人のうち、スペイン語母語 17 人 (77.3%)、日本語母語 4 人(18.2%)、ポルトガル 語 1 人(4.5%)である。中国国籍 12 人のうち、 中国語母語 11 人(91.7%)、日本語母語 1 人(8.3%) である。フィリピン国籍 19 人のうち、フィリピ ノ語(タガログ語)母語が 13 人(68.4%)、英語 が 4 人(21.1%)、日本語が 2 人(10.5%)である。 タイ国籍 5 人のうち、タイ語母語 4 人(80.0%)、 日本語母語 1 人(20.0%)である。日本国籍 3 人 のうち中国語、スペイン語、ペルシャ語が各 1 人 ずつである。 116 人のうち、中学 3 年時に日本語指導が必要 な生徒は 36 人(31.0%)、必要としない生徒は 80 人(69.0%)である。栃木県には、外国人児童生 徒を支援する制度として、外国人児童生徒教育拠 点校(通称拠点校)制度がある。日本語指導を必 要とする外国人児童生徒が比較的多い(多くの場 合 5 人以上)学校は拠点校に指定され、外国人児 童生徒のための教員が加配され、日本語教室が設 置される。116 人のうち、拠点校在籍者は 40 人 (34.5%)、非拠点在籍者は 69 人(59.5%)で、無 回答が 7 人(6.0%)いた。 来日年齢別状況は、日本生まれを意味する 0 歳 が 50 人(43.1%)、1-5 歳 13 人(11.2%)、6-9 歳 8 人(6.9%)、10-12 歳 9 人(7.8%)、13 歳以上 21 人(18.1%)、無回答 15 人(12.9%)であり、日 本生まれの者が一番多かった。 年齢が 13 歳以上の生徒の母語別状況をみると、 21 人のうち、中国語 8 人(38.1%)とフィリピノ 語(タガログ語)7 人(33.3%)が多かった。ス ペイン語 1 人(4.8%)、ポルトガル語はいなかった。 116 人の母語と来日年齢を改めてみると、母 語では日本語を母語とする生徒が 22 人(19.0%) でポルトガル語に次いで 2 番目に多く、来日年齢 に関しては、0 歳が 50 人(43.1%)で一番多い。 外国人住民の定住化が示唆される数値である。 進路希望については 116 人のなかで進学希望者 が 99 人(85.3%)と圧倒的に多く、就職希望者 は 1 人もいなかった。進学希望者 99 人のうち、 公立高校希望者は 81 人(81.8%、進学希望者 99 名を母数とした場合の比率、以下同様)、私立高 校希望者は 10 人(10.1%)、高校以外の学校への 進学 4 人(4.0%)、「進学」とだけ記載されてい たものが 4 人(4.0%)であった。 栃木県の公立高校入試では、一般選抜、特色選 抜、「海外帰国者・外国人等入学者の選抜に関す る特別の措置」(A 選抜と B 措置、内容について は後述)の 3 種類の選抜方法がある。公立高等学 校全日制の入学者選抜においては、 平成 26 年度 より、従来の推薦入試が廃止となり、「特色選抜」 による入試が実施されることになった。特色選抜 では、中学校の推薦書が不要となり、受検者自ら が「特色選抜志願理由書」を入学願書などととも に提出することになった。定時制課程のフレック ス特別選抜は、平成 17 年度より県内 1 校で実施 されている。学力検査は行わず、志願理由書(自 己 PR 書)、調査書等の書類、面接及び作文の結 果を総合的に判断して選抜する方法である。今回 の調査で、定時制課程の受検について、初めて一 般選抜とフレックス特別選抜に分けて聞いた。 栃木県内の公立高校受検者 86 人の受験形態別 状況は以下の通りであった。「全日制一般選抜」 40 人(46.5%)、「全日制特色選抜」11 人(12.8%)、「定 時制一般選抜」12 人(14.0%)、「定時制フレック ス特別選抜」5 人(5.8%)、「全日制一般選抜と特 色選抜」8 人(9.3%)、「一般選抜(全日制と定時制)」 3 人(3.5%)、「A 選抜・B 措置と定時制一般選抜」 3 人(3.5%)、「A 選抜と B 措置の両方」3 人(3.5%)、 「A 選抜」1 人(1.2%)。特色選抜受検者は 19 人で、 合格者は 11 人、不合格者は 8 人である。フレッ クス特別選抜受検者は定時制受検者の約 2 割に相 当している。 表 1 は、進路結果を示している。高校への進学 者数と全体の人数 116 人に占める割合は、公立全
日制 55 人(47.4%)、公立定時制 19 人(16.4%)、 公立定時制(フレックス特別選抜校)4 人(3.4%)、 私立全日制 24 人(20.7%)、私立通信制 1 人(0.9%) となった。高校進学者は 103 人で、回答者全体の 88.8% を占めた。 3 日本語指導必要の有無別進路結果 日本語指導の有無と進路結果の関係をみたの が、表 2 である。日本語指導「有」36 人の進学 先では、公立定時制が一番多く 14 人(38.9%、 フレックス特別選抜校 1 人含む)で、私立全日制 8 人(22.2%)、公立全日制 7 人(19.4%)と続く。 日本語指導「無」80 人の進路結果では、公立 全日制が最も多く 48 人(60.0%)、私立全日制 16 人(20.0%)、公立定時制 9 人(11.3%、フレック ス特別選抜校 3 人含む)と続いている。 4 国籍別進路結果 表 3 は、国籍別の進路結果を示している。回答 者が 2 名以下の国籍については「その他」と一括 している。回答者が 10 名以上の主な国籍別高校 進学状況をみておくと、ブラジル国籍生徒の場合、 30 人中、公立全日制 17 人(56.7%)、公立定時制 9 人(30.0%、フレックス特別選抜校 2 人含む)、 私立全日制 3 人(10.0%)である。ペルー国籍の 生徒は、22 人中、公立全日制 9 人(40.9%)、公 立定時制 5 人(22.7%、フレックス特別選抜校 1 人含む)、私立全日制 7 人(31.8%)である。フィ リピン国籍の場合は、19 人中、公立全日制 10 人 (52.6%)で、公立定時制 6 人(31.6%)、私立全 日制 1 人(5.3%)となっている。中国国籍の場合は、 12 人中、公立全日制 5 人(41.7%)、私立全日制 3 人(25.0%)、私立通信制 1 人(8.0%)となって いる。 5 母語別の進路結果 進路結果を母語別の視点からみてみよう。表 4 は、進路結果を母語別にみたものである。回答者 が 2 名以下の母語については「その他」と一括し ている。回答者 10 人以上の主な母語別高校進学 状況についてみておくと、ポルトガル語を母語 とする 27 人の場合、公立全日制 13 人(48.1%)、 公立定時制 10 人(37.0%、フレックス特別選抜 校 2 人含む)、私立全日制 3 人(11.1%)である。 日本語 22 人のうち、公立全日制 13 人(59.1%)、 公立定時制(フレックス特別選抜校)2 人(9.1%)、 私立全日制 6 人(27.3%)である。スペイン語 22 人のうち、公立全日制 10 人(45.5%)、公立定時 制 3 人(13.6%)、私立全日制 5 人(22.7%)であ る。フィリピノ語(タガログ語)の場合は、14 人のうち、公立全日制 6 人(42.9%)、公立定時 制 5 人(35.7%)、私立全日制 2 人(14.3%)であ る。中国語の場合は、12 人のうち、公立全日制 6 人(50.0%)、私立全日制 3 人(25.0%)、私立通 信制 1 人(8.3%)となっている。 6 特別措置利用状況 栃木県には、「海外帰国者・外国人等の入学者 の選抜に関する特別の措置」がある。全国都道府 県のなかには、外国人生徒の公立高校受検におい て特別枠や特別措置を用意しているところがあ る。特別枠とは、特定の高校で一般の生徒とは別 に定員を設けている場合を指し、科目の削減や面 接などの方法によって受検を行う。特別措置とは、 一般入試の定員内ではあるが、科目の軽減、時間 延長、漢字のルビうち等の配慮を行う措置を指す。 栃木県では特別枠を設けている高校はなく、特 別措置として、「A 海外特別選抜(以下、A 選抜) と「B 海外特別措置」(以下、B 措置)が用意 されている。A 選抜の場合、一般的には面接と調 査書等で合否が判断されるが、高等学校長の判断 で学力検査及び作文が課される場合がある。B 措 置の場合は、学力検査と調査書等のほか作文及び 面接が行われる。ただし、学力検査は一般入試の 5 教科に対して 3 教科(国・数・英)である。A 選抜不合格者は、A 選抜実施より後に行われる B 措置受検が可能である。外国人生徒の受検資格は どちらも「入国後 3 年以内」となっている。 今回の調査で、特別措置受検資格を有していた 生徒は 116 人中 22 人(19.0%)である。この 22 人のうち特別措置を使って受検したのは 7 人であ る。その母語別状況はフィリピノ語(タガログ語) 3 人、中国語 2 人で、その他はポルトガル語・ペ ルシャ語各 1 人、国籍別ではフィリピン 3 人、中 国 2 人、ブラジルと日本が各 1 人である。 7 人の受検結果は、以下の通りである(括弧内
は母語)。7 人全員が A 検査を受検したが、A 検 査で公立全日制に合格したのは 1 人(中国語)で あった。A 選抜で不合格となった 6 人が B 検査 で受検し、3 人(フィリピン語(タガログ語)2 人、中国語 1 人))が公立全日制に合格した。残 りの 3 人(ペルシャ語・ポルトガル語・フィリピ ノ語(タガログ語))は B 措置でも不合格となり、 定時制を受験して公立の定時制へと進学した。な お、3 人のうちの 1 人はそれに加えて私立一般も 受験していた。すなわち、特別措置を受験した 7 人の進路は公立全日制4人、公立定時制3人であっ た。特別措置で受検した 7 人の生徒のうち日本語 指導「有」の生徒は 6 人であった。表 6 は、7 人 の受検結果を母語・国籍・日本語指導の有無別に 示したものである。 海外特別措置を利用した国籍ブラジル、母語ポ ルトガル語の生徒の場合、来日年齢「10 ~ 12 歳」 で就学期間は「12 か月」と調査票に記載されて いた。来日してから中学を卒業するまでに何度か 帰国していると思われる。 なお、茨城県の特別枠で受検して、公立全日制 に進学した生徒が 1 人いた。茨城県の場合、すべ ての公立高校に定員 2 人の外国人枠が割り当てら れている(「入国後 3 年以内」であれば 3 教科と 面接で受検が可能)。茨城県全体では約 200 人の 外国人枠があることになる。しかし、外国人枠を 利用して高校進学している生徒数は極めて限ら れているようである。茨城県のある NGO が 2013 年春に卒業した生徒を調査した結果によると、「入 国後 3 年以内」と思われる生徒が 36 人いた中で 特別枠で受検したのは 9 人であった。その一因と しては、1 校に定員 2 人という限られた枠では、 一般の入試よりも競争率が上がってしまうことも 予想されるため、「入国後 3 年以内」であっても、 一般の入試を選択する生徒が多いのではないかと 指摘されている(「教育の国際化対応を考える円 卓フォーラム 会議録~茨城の外国人児童生徒の 学習環境向上のために~」平成 26 年 3 月 23 日、 筑波大学)。 7 まとめに代えて 平成 23 年度から平成 26 年度にかけて実施した 4 回の調査で 508 人の外国人生徒の進路が明らか となっている。3 回目までの調査結果の詳細につ いては、拙書『地域のグローバル化にどのように 向き合うか ‐ 外国人児童生徒教育問題を中心に ‐ 』(下野新聞社、2014 年)第 4 章「外国人生徒 の進学状況」で論じたので参照されたい。 4 回の調査結果からほぼ例年同様の傾向として 把握されてきたことは、栃木県での高校進学率が 全国平均よりも高いと思われること、日本人生徒 に比べて公立全日制への進学率が低く公立定時制 への進学率が高いことが顕著であること、特別措 置利用者が全体の 1 割にも満たないこと、特別措 置利用者のなかに南米系生徒はほとんど皆無であ ること、などであった。 公立定時制への進学率は過去 4 回、14.9%、6.3%、 12.2%、12.6% と推移してきたが、今回は 19.8% とこれまでで最大の数値となった。特に日本語指 導「有」生徒の約 4 割が定時制へ進学しているこ とは注目に値する。特別措置受検による合格者が 調査回答者に占める割合は過去 4 回 6.4%、5.5%、 5.7%、6.7% と推移してきたが、今回は 3.4% であ る。ブラジル国籍・母語ポルトガル語の生徒が 1 人特別措置受検で進学したが、3.4% はこれまで で最小の数値となった。国籍別・母語別の進路状 況については、これまで南米系生徒の進学率がや や低い傾向が確認されてきたが、今回大きな差は 確認されなかった。 今後の外国人生徒の進学率においては、全日制 特色選抜の動向が 1 つの鍵を握ると思われる。特 色選抜では、中学校の推薦書が不要となり、受検 者自らが「特色選抜志願理由書」を書いて受検す る。今回特色選抜を受検した外国人生徒は 19 人 で合格者は 11 人(57.9%)であった。従来の推 薦入試で外国人生徒がどれほど受検していたか定 かではないが、極めて少数だったと思われる。特 色選抜は外国人生徒の受検・進学にどれほどの効 果を及ぼすのか、この点にも注目しながら調査を 継続していきたい。 8 付記:外国人生徒入試の実施について 宇都宮大学国際学部は、平成 28 年度入試より、 特別入試として「外国人生徒入試」を開始するこ とを決めた。外国籍で、日本国内で高等学校や中 等教育学校もしくは外国人学校を卒業した(又は
卒業見込)者を対象にした特別枠を新設する。外 国人生徒入試を開始するに至った経緯や趣旨をご く簡潔に述べておきたい。 外国人生徒の高校進学問題について調査研究を 続ける中で、外国人生徒の大学進学問題に対する 関心が広がり、強まってきた。このことには、毎 年のように外国にルーツのある学生が国際学部に 入学しているという事実が関係している。かれら と接していると、一般的に、日本人学生にはない 力強さとポテンシャルを感じる。それにはおそら く、日本語や外国籍等の面で苦労が少なくなかっ たことや 2 つの言語や文化を有していることなど が関係しよう。いわば、外国人生徒は「グローバ ル人材」に成長するポテンシャルを高く有してい るし、将来の日本を支える有力な人材候補生でも ある。しかし、国際学部に入学してくる外国人生 徒の大半は推薦入試や編入学試験を通じての入学 である。外国人生徒がセンター試験を通じて国立 大学に入学することには、高いハードルがある。 また、経済的理由で大学への進学が難しい外国人 生徒は少なくないと思われる。 外国人生徒の進路保障は、従来、高校進学のレ ベルで留まってきた。しかし、外国人生徒を積極 的に受け入れ、育成することが、国立大学の大き な社会的役割として求められていると言えるであ ろう。本年 2 月には茨城大学で、「国立大学に移 住者の子どもが進学できるような特別枠」につい て考えるシンポジウム「大学の多様性をグローバ ルにローカルに考える」(宇都宮大学国際学部も 共催)が開催された。 外国人生徒入試の対象者として主にイメージし ているのは、日本で学んできた日本語を母語とし ない外国籍の生徒で、学習意欲とモチベーション が高い生徒である。日本の高校と外国人学校に在 籍するもの両方を対象に出願資格について検討を 重ねた。その結果、今年 2 月に文部科学省から基 本的な了解が得られ、平成 28 年度入試より実施 することとなった。本学 HP のトピックス「国際 学部 平成 28 年度より『外国人生徒入試』実施!」 に「外国人生徒募集要項について(お知らせ)」 が掲載されている。 参考文献 田巻松雄(2014)『地域のグローバル化にどのよ うに向き合うか ‐ 外国人児童生徒教育問題 を中心に ‐ 』下野新聞社。 田巻松雄(2012)「外国人生徒の高校進学問題― 入試配慮に焦点を当ててー」『理論と動態』 第 5 号、79-93 頁。 田巻松雄(2013)「栃木県における外国人生徒の 高校進学状況」『部落解放研究』第 19 号、 121-140 頁。 田巻松雄(2014)「栃木県における外国人生徒の 進路状況 ‐ 4 回目の調査結果報告」『宇都宮 大学国際学部研究論集』38 号、53-60 頁。 田巻松雄/スエヨシ・アナ編(2015)『越境する ペルー人 ‐ 外国人労働者、日本で成長した 若者、「帰国」した」子どもたち』下野新聞社。 田巻松雄(2015)「宇都宮大学国際学部が『外 国 人 生 徒 入 試 』 開 始 」『Migrants Network』 No.179、May、6-7 頁。 文部科学省「『日本語指導が必要な外国人児童生 徒の受入状況等に関する調査(平成 26 年度)』 の結果について【概要】」。 本稿は、平成 27 年度文部科学省科学研究費補 助金基盤研究 A「将来の『下層』か『グローバル 人材』か ‐ 外国人児童生徒の進路保障実現を目 指して ‐ 」(課題番号 26245056、研究代表者田 巻松雄)の研究成果の一部である。
表 1 進路結果 進路結果 人数 割合 進学 公立全日制 55 47.4% 公立定時制 19 16.4% 公立定時制(フレックス特別選抜) 4 3.4% 私立全日制 24 20.7% 私立通信制 1 0.9% 国立 1 0.9% 産業技術学校 1 0.9% 専修学校 3 2.6% 帰国 3 2.6% 未定 2 1.7% 無回答 3 2.6% 合計 116 100.0% 表 2 日本語指導「有」「無」別進路結果 結果 合計 進学率 公立 全日制 定時制公立 全日制私立 通信制私立 国立 産業 技術 学校 専修 (専門) 学校 帰国 未定 無回答 日本語指導 有 7 14 8 ― ― 1 1 1 2 2 36 31 19.4% 38.9% 22.2% 2.8% 2.8% 2.8% 5.6% 5.6% 100.0% 86.1% 無 48 9 16 1 1 ― 2 2 ― 1 80 77 60.0% 11.3% 20.0% 1.3% 1.3% 2.5% 2.5% 1.3% 100.0% 96.3% 合計 55 23 24 1 1 1 3 3 2 3 116 108 47.4% 19.8% 20.7% 0.9% 0.9% 0.9% 2.6% 2.6% 1.7% 2.6% 100.0% 93.1% 表 3 国籍別進路結果 結果 合計 進学率 公立 全日制 定時制公立 全日制私立 通信制私立 国立 産業 技術 学校 専修 (専門) 学校 帰国 未定 無回答 国 籍 ブラジル 56.7%17 30.0%9 10.0%3 ― ― 3.3%1 ― ― ― ― 100.0% 100.0%30 30 ペルー 40.9%9 22.7%5 31.8%7 ― ― ― 4.5%1 ― ― ― 100.0% 100.0%22 22 フィリピン 52.6%10 31.6%6 5.3%1 ― ― ― 5.3%1 ― 5.3%1 ― 100.0% 94.7%19 18 中国 41.7%5 ― 25.0%3 8.3%1 8.3%1 ― ― ― ― 16.7% 100.0% 83.3%2 12 10 タイ 20.0%1 20.0%1 40.0%2 ― ― ― ― ― ― 20.0% 100.0% 80.0%1 5 4 韓国 25.0%1 ― 75.0%3 ― ― ― ― ― ― ― 100.0% 100.0%4 4 ボリビア 25.0%1 ― ― ― ― ― ― 50.0%2 25.0%1 ― 100.0% 25.0%4 1 ベトナム 100.0%4 ― ― ― ― ― ― ― ― ― 100.0% 100.0%4 4 日本 66.7%2 33.3%1 ― ― ― ― ― ― ― ― 100.0% 100.0%3 3 その他 38.5%5 7.7%1 38.5%5 ― ― ― 7.7%1 8.3%1 ― ― 100.0% 92.3%13 12 合計 47.4%55 19.8%23 20.7%24 0.9%1 0.9%1 0.9%1 2.6%3 2.6%3 1.7%2 2.6%3 100.0% 93.1%116 108 ※その他とは台湾、イラン、バングラデッシュ、モンゴル、ラオス、パラグアイ、マダガスカル、コロンビア、日本 + フィ リピンのことである。
表 4 母語別進路結果 結果 合計 進学率 公立 全日制 定時制公立 全日制私立 通信制私立 国立 産業 技術 学校 専修 (専門) 学校 帰国 未定 無回答 母 語 ポルトガル語 48.1%13 37.0%10 11.1%3 ― ― 3.7%1 ― ― ― ― 100.0% 100.0%27 27 日本語 59.1%13 9.1%2 27.3%6 ― 4.5%1 ― ― ― ― ― 100.0% 100.0%22 22 スペイン語 45.5%10 13.6%3 22.7%5 ― ― ― 4.5%1 9.1%2 4.5%1 ― 100.0% 86.4%22 19 フィリピノ語 (タガログ語) 42.9%6 35.7%5 14.3%2 ― ― ― 7.1%1 ― ― ― 100.0% 100.0%14 14 中国語 50.0%6 ― 25.0%3 8.3%1 ― ― ― ― ― 16.7% 100.0% 83.3%2 12 10 タイ語 ― 25.0%1 50.0%2 ― ― ― ― ― ― 25.0% 100.0% 75.0%1 4 3 英語 50.0%2 25.0%1 ― ― ― ― ― ― 25.0%1 ― 100.0% 75.0%4 3 その他 14.3%1 14.3%1 42.9%3 ― ― ― 14.3%1 14.3%1 ― ― 100.0% 85.7%7 6 無回答 100.0%4 ― ― ― ― ― ― ― ― ― 100.0% 100.0%4 4 合計 47.4%55 19.8%23 20.7%24 0.9%1 0.9%1 0.9%1 2.6%3 2.6%3 1.7%2 2.6%3 100.0% 93.1%116 108 ※その他とは韓国語、モンゴル語、ペルシャ語、バングラデッシュ語、マダガスカル語、台湾語のことである。 表 5 特別措置を受検した 7 人の進路結果 国籍 母語 受験実地状況 日本語指導 結果 中国 中国語 A 選抜 有 公立全日制 フィリピン (タガログ語)フィリピノ語 A 選抜と B 措置の両方 有 公立全日制 日本 ペルシャ語 A 選抜と B 措置の両方(一般定時を受験) 有 公立定時制 ブラジル ポルトガル語 A 選抜と B 措置の両方(一般定時を受験) 有 公立定時制 フィリピン (タガログ語)フィリピノ語 A 選抜と B 措置の両方(私立一般を受験) 有 公立全日制 フィリピン (タガログ語)フィリピノ語 A 選抜と B 措置の両方(一般定時と私立一般を受験) 有 公立定時制 中国 中国語 A 選抜と B 措置の両方 無 公立全日制
This document presents the results of the fifth survey on the situation of foreign students after junior-high-school graduation, conducted in Tochigi prefecture. Data of 116 foreign junior-high graduates was collected. Regarding the entire sample, the main results are: the students’ high-school continuation rate is 88.8%, and most of the students made their decision among these three high-school choices, 47.4% entered full-time public schools, 20.7% went on to full-time private schools and 19.8% to part-time public schools. The high-school continuation rate of students who received Japanese language coaching is 80.5%, from which 38.9% went to part-time public schools, 22.2% to full-time private schools and 19.4% to full-time public schools. According to the above figures, another finding of the current paper is the high percentage of Japanese-language-coached students who enrolled in part-time public schools, compared with the same ratio over the entire sample. Pertaining to students who were able to take advantage of the Special Entrance Examination System, we received data of 7 students that is less than 10% of the entire surveyed population. Out of 7, the results are as follows: 4 went to full-time public schools and 3 went to part-time public schools, that is to say, 4 students were able to pass the Special Entrance Examination, from whom 3 received Japanese-language tutoring.
(2015 年 6 月 1 日受理)