408 人 工 知 能 30 巻 4 号(2015 年 7 月) 企業活動のさまざまな場面で人工知能は活躍してい る.自動車産業,IT 産業,サービス産業,農業など, 数え上げれば限りがない.特に最近の人工知能ブームの 中で,その適用先の拡大にさらなる期待(と一部では不 安)が高まっているように見える.今までの企業活動に おける適用事例は,その多くが製品開発など工学的な応 用で脚光を浴びてきた.しかし,近年の人工知能の発展 は,それらの適用領域を超えて,人間の独壇場とされて きた経営分野にも大きな影響を与える可能性を示し,経 営戦略,人事・経営組織,教育訓練,ビジネスプランニ ング,マーケティング,コーポレートファイナンス,サ プライチェーンマネジメント,企業情報システム,知識 マネジメントなど,さまざまな分野での取組みが進んで いる.それらの背景として,人工知能の最新の手法が比 較的容易に手に入るようになったことや,ビッグデータ に関連した企業側からの強い要望に対応して,大規模 データマイニングや機械学習などの分野で,急速な技術 革新が進んだこともある.本特集では,これらの経営分 野での取組みのいくつかを紹介する. 一つ目は,白井氏による経営における教育訓練に関す る記事「ビジネスゲームの最前線」を紹介する.ビジネ スゲームは体験型シミュレーション教育の一つであり, 本記事では,横浜国立大学で構築運用されてきた YBG を紹介し,それらの教育的効果および合意形成の視点か ら研究への方向性を解説している. 次に,予測市場と経営意思決定について解説した水山 氏の記事「集合知メカニズムとそのビジネスへの応用」 を紹介する.予測市場は,未来を正確に予測する集合知 手法として知られている.ビジネスにおいても,多様な 意思決定主体による合意形成とその繰返しが戦略立案に とって有効であり,それらの事例を紹介している. 三つ目は,兼田氏による都市空間における人間行動に 関する記事「店舗集積地区における来訪者の回遊行動の モデリング」である.サービス産業にとって,都市空間 における消費者行動や店舗の立地戦略は重要なテーマで ある.賑わいを形成するための回遊行動の誘発や,実態 調査に基づいたモデリング手法など,実務家にとっても 有用な記事となっている. 四つ目は,組織自身がどのように学習し環境変動に適 応していくのかを解説した高橋真吾氏の記事「組織学習 とエージェントベースアプローチ」である.ダブルルー プ学習を取り入れた組織学習と動的ハイパーゲームのモ デルは,現実の経営意思決定を的確に表現したものであ り,内部モデルの学習と共有過程のモデル化は,大変興 味深い. 五つ目は,高橋大志氏による財務上の意思決定を扱っ た記事「企業活動とマーケット」である.株式市場にお ける自社株買いと利害の対立の分析事例や,M&A によ る債権者の反応分析,そして投資家の多様性がマーケッ トに与える影響,参加型シミュレーションなど,伝統的 なファイナンス理論を基礎に人工知能との融合について 論じている. 六つ目は,三田村氏・吉田氏による「ネットワークデー タを活用した社会調査の潮流」を紹介する.ソーシャル メディアによるさまざまな調査分析法を幅広く俯瞰し, Web調査など従来の手法では調査の信頼性に深刻な影 響を及ぼすバイアス発生の可能性を指摘している.そし て,それに替わる DNS を用いた調査手法を提案してい る. 七つ目は,寺野氏による「AI ビジネス再び─エージェ ントシミュレーションの世界へ─」を紹介する.ビジネ ス活動の本質と意思決定モデルについて解説をした後, これらをモデル化する人工知能技法について,学習分類 子システム,Kaufmann モデル,エージェントベース モデルについて適用例を示し,今後の方向性としてイノ ベーション能について論じている. 最後は,倉橋・田中氏・小林氏による「社会科学にお けるエージェントモデリング環境」である.この記事で は,実際に社会シミュレーションモデルを構築するため の世界標準となっているツール群として,社会科学者 や実務家向けの NetLogo,情報系研究者向けの Repast Simphony,大規模分散シミュレーションが可能な並列 計算環境向けの Repast HPC を紹介している. いずれも魅力的で示唆に富む記事であり,研究者のみ ならず実務家や学生にとっても有用な情報になると思わ れる.利用されている技術は,人工知能研究の専門家に とってすでに「確立されたもの」のようであっても,実 際の経営課題を前にして,多くの実務家が人工知能への 希望と絶望の狭間にいることも事実である.本特集を通 して,人工知能研究の企業経営や実務への適用可能性お よび新たな研究課題発見への議論の端緒となれば幸いで ある.
特集「ビジネスが創発する人工知能と人工社会」にあたって
1
0
0
全文
関連したドキュメント
1941年7月9日から16日までの週間活動報告で述べる。
まずフォンノイマン環は,普通とは異なる「長さ」を持っています. (知っている人に向け て書けば, B
ビッグデータや人工知能(Artificial
自分は超能力を持っていて他人の行動を左右で きると信じている。そして、例えば、たまたま
業務内容 総数 要員 応援人数 復旧工事 6,400人 自社工事会社 5,200人.
b)工場 シミュ レータ との 連携 工場シ ミュ レータ は、工場 内のモ ノの流 れや 人の動き をモ デル化 してシ ミュレ ーシ ョンを 実 行し、工程を 最適 化する 手法で
例えば、総トン数 499 トン・積載トン数 1600 トン主機関 1471kW(2000PS)の内航貨 物船では、燃料油の加熱に使用される電力は
○○でございます。私どもはもともと工場協会という形で活動していたのですけれども、要