学 位 論 文 内 容 の 要 約
氏名 髙山 義裕
論文題目
Thrombin induces MCP-1 and MMP-3 production and disc degeneration via PAR1 on mouse intervertebral disc
( ト ロ ン ビ ン は 椎 間 板 に お い てPAR1を介 してMCP-1と MMP-3を誘導し、椎間板 変 性 を もた ら す) 学位論文内容の要約 (目的) 椎間板変性の起こるメカニズムとして、髄核細胞周囲の環境変化により、炎症性サイトカインの産生 と相互作用、また異化作用によるMMP-3 などのタンパク質分解酵素の産生が一因とされている。我々 は以前より、マウス椎間板の実験において炎症性サイトカイン(MCP-1, TNF-α, TWEAK and TSLP)が血 管新生およびマクロファージの遊走に寄与すること、また、MMP-3 発現を増強することにより椎間板 変性を促進させることを示してきた。凝固第Ⅱa 因子であるトロンビンは組織因子(TF)と第Ⅶ因子の 複合体によってプロトロンビンより形成されるが、凝固以外の機能として炎症を惹起する因子の一つと しても知られている。トロンビンの受容体はPARs が知られており、中でも特に PAR1 が重要である。 我々は、このトロンビンが骨折の炎症期においてPAR1 を介して MCP-1 産生を促進し、骨折部位への マクロファージ遊走をさせることにより治癒過程に寄与することを過去に報告した。近年、トロンビン が椎間板よりMCP-1 を発現させることが報告された。しかしながら、椎間板変性におけるトロンビン の関与については、未だ不明な点が多い。そこで我々は本研究によって、マウス椎間板に対するトロン ビンの作用と機序、および椎間板変性との関連性について解明することを目的とした。 (方法)
5 週齢の雄マウス(Homozygous wild-type C57BL/6J mice)を CLEA ジャパンより購入し、顕微鏡下に 尾椎椎間板を摘出し培養実験に使用した。遺伝子発現をPCR 法で、タンパク発現および細胞内シグナ ル発現をWB 法で、培養上清中タンパク濃度を ELISA 法で定量した。炎症サイトカインの発現をサイ トカインアレイにて、その局在性を免疫染色法で評価した。また、機能評価としてマクロファージの遊 走をMigration assay にて、椎間板の変性をプロテオグリカン量の変化として Safranin-O 染色にて評価し た。 (結果) TFとPAR1は髄核細胞(NP)、線維輪細胞(AF)、終板軟骨細胞(CEP)と、椎間板のすべ て の 構 成要 素 に局 在 して い た 。一方 ト ロン ビン は 、AF、CEPには存在すもののNPにはみられ な か っ た。ト ロン ビ ン刺 激 に より 椎 間板 か らのMCP-1発現が増加し、その増加はPAR1inhibitor に よ り 抑 制 さ れ た 。 椎 間 板 に ト ロ ン ビ ン 投 与 し た 培 養 液 は マ ク ロ フ ァ ー ジ 遊 走 能 を 増 強 さ せ た 。 こ の 遊 走 能 はMCP-1中 和抗 体によ って 抑制さ れた 。トロ ンビ ン刺激 によ り、椎 間板 内の シ グ ナ ル と してAKTとERKのリン酸化が確認された。さらに、PI3KおよびMAPK-ERKの阻害 剤 に よ る リ ン 酸 化 の 抑 制 とMCP-1タ ンパ クの発 現抑 制がみ られ た。ま た、 トロン ビン は椎間 板 か らMMP-3の発現を増加させ、その局在はNP、AF、CEPのすべてに確認できた。椎間板へ の ト ロ ン ビ ン 投 与 は 椎 間 板 組 織 内 の プ ロ テ オ グ リ カ ン 含 有 量 を 減 少 さ せ た が 、PAR1inhibitor は そ の 作用 を 抑制 す るこ と が 可能 で あっ た 。
学 位 論 文 内 容 の 要 約 ( 続 紙 ) 氏名 髙山 義裕 (考察) マウス椎間板では内在性に TF、トロンビン、PAR1 が存在していることを示した。トロンビンが NP に局在していないことは椎間板が体内最大の無血管臓器であることが関与していると考えられた。トロ ンビンは椎間板に発現するPAR1 と結合することで MAP-ERK、PI3/AKT を介して MCP-1 の発現を増加 させた。誘導されたMCP-1 は、マクロファージの遊走能を有しており、以前の我々の研究成果と考え 合わせるとトロンビンは椎間板においても炎症を惹起する一因となりうることが示唆される。また、ト ロンビンは椎間板のPAR1 と結合することで MMP-3 発現を増加させ、その発現は NP、AF、CEP すべ てにみられ異化作用が椎間板全体に及んでいると考えられた。トロンビンは椎間板のプロテオグリカン 含有量を減少させることから、トロンビンによって誘導されたマクロファージやMMP-3 が椎間板変性 の一因となること考えられた。これは本研究が椎間板変性におけるトロンビンの役割の一部を示したも のと考えられ、椎間板変性におけるトロンビンのメカニズムを解明することは椎間板変性治療の一端を 担っていくものと考える。 (結論) 我々はトロンビンが椎間板に発現するPAR1 受容体を介して MCP-1 および MMP-3 発現を誘導してい ることを示した。誘導されたMCP-1 はマクロファージの遊走能を有していた。トロンビンによる椎間 板変性誘導は、PAR1 を介する MCP-1 および MMP-3 発現増強を貴院とする可能性が示唆された。本研 究はトロンビンによる椎間板変性のメカニズムを示す初めての報告である。