『往生要集』引用文から見た『宝物集』について(三): 一巻本および七巻本(吉川本)巻三相当部分対照表とその言語面の検討
9
0
0
全文
(2) 22. 夫レ 盛 ナ ルハ. 二. 青. そ れ さ かり な るは. ﹃往生要集﹄引用文から見た﹃宝物集﹄について︵三︶ 古田恵美子. 浄. さかりあるものはかならずおとろう(「う」ママ). ペー ジ 、行 、 凡 例 から 復 元し た 底 本本 文. (必ズ)(最明寺本によって補)衰スルコト有リ. 『 往 生 要 集 』 淨 福 寺 本 、 上 ( 本 )、 中 ( 末 ) 二 巻 の 巻 、『 浄福 寺 本 栄. 合 會ス ル ハ別 離 有 り. 淨 仮名書き『往生要集』影印・翻刻・解説 』(西田直樹・西田直敏一. 青. あ ふ も のは わ か れは な るる こ と あ り. (月本 直子、 月本 雅幸 、汲古 書院. こ の部分 は『 往生要 集』が 『涅 槃経 』の偈 を引 用した部分 が元にな. あ ひ あ ふも の は わか れ あ り、 こ れ を愛 別 離 苦と い ふ. ワレト モ愛別苦ト 申ヘシ. か なら す お とろ ふ る こと あ り。. 九 九 四 )本 文 影 印中 の 所 在、 本 文 (振 り 仮 名は 一 部省 略 ). 浄. あ ふも の は 離別 あ り. 『 栄 花 物語 』 梅 沢本 、 旧日 本 古 典 文学 大 系 ( 上 下 )の 巻 、. 一 『宝物集』宮内庁書陵部蔵一巻本、 『宮内 庁 書陵 部 本 宝物 集 総 索引 』 栄. 栄. 一九 九三 )影印で の所在、本文. 會者 ハワカ レア リ(一 七オ一 一生 アルモ ノの 前)コレモ サマハカ. 『 宝 物 集』 吉 川 本、 新 日 本古 典 文 学大 系 本 での ペ ージ 、 行 、. 吉. 一. 吉 凡例 か ら復 元 し た 底本 本 文. 二 、『宝物集』『往生要集』諸本対照表および検討. ってい る。 青蓮院 本が 一字一 句を 忠実に 訓読し てい るのは当然であ る. が、浄福寺本もひらがな表記ではあるが 、訓読のままである。また、 『栄. 花 物 語 』 は 藤 原 道 長 の 仏 道 修 行 につ い て ま と め て 述 べ て い る 巻 一 五 の. 人道. 一切 ノ 諸ノ 世 間 ニ 生セ ル 者ハ 皆 死 ニ帰 ス. 「 うたが ひ」の 巻で 、地 の文は 基本 的に語 りの文 体つまり 和文なので. 『 往 生 要集 』 大 文一 ー 五. 上 三 三ウ 3. 一 切 のも ろ も ろの 世 間に 生 す る も の はみ な 死 に帰 す. あるが、ここでは『往生要集 』の訓読文をほぼそのまま引用している 。. 『 宝 物 集 』巻 三. 青 上七 〇 ウ 1. い さ いせ け ん に しや う ある 物 は みな 滅 す. 「寿命」が浄福寺本では「いのち」になっているのに対し、『栄花』で. 比 較 箇所 ⑲ 淨 上 4 57 ぺ 5. 生 アル モ ノ ハカ ナ ラス 滅 ア リ. は「ずみやう 」になっているとおり 、 『往生要集』仮名書き本よりも『栄. クヰ. 栄 一七 オ 一 一. 生 あ る もの は 滅 あり 、. シ. 一 一 三 一 ペ8. シヤウ. 吉. 寿 命 無 量 ナ リ ト雖 ( モ )要 必 ス. 稿一九九一参照。(注1 )). 『往生要集』の訓読を音で聞いているためであろうと考えられる。(拙. 花 物語』 の方 が漢語 的で さえあ る。 これは 『栄 花』が一 一世紀初頭の 青. い のち 無 量な り と い へと も 、か な ら すつ い に つく る こ とあ り. 終 尽 スル コ ト有 リ. 浄. ず み や うむ り や うな り とい へ ど も かな ら ずつ く る ごあ り. 十 三 世 紀 初 頭 の 『 宝 物 集 』 は 「 一 切 」「諸 」「世 間 」「終 尽 」「 必ズ 」 な. (か なら). 栄. 初 アル モ ノ ハヲ ワ リ アリ. どの漢語や漢文訓読語をすっぱりと切り捨て、「生す」という漢語サ変. ム リヤ ウ. 一. は じ め ある も の はを は りあ り 、. 十一 世紀 初頭の 和文 作品で ある 『栄花 』に 対して 、十二世紀 末から. 吉. 動詞を 和文 で使わ れる「 生あ る」に 換えて 、見 事に和 文による要約 に.
(3) 21. た形と なって おり、 書写 に際し ても 『往生 要集 』を見て いない。吉川. 本が「愛別苦」吉川本が「愛別離苦」となっている。ここの部分では、. ま た 、『 往 生 要 集 』 が 「 別 離 」、『 栄 花 』 が 「 離 別 」、『 宝 物 集 』 一 巻. 西. 青. 吉. 一. 浄. お ろかな る人 は、つ ねに歓 楽す ること. く 人 は つね に た のし ひ てく わ う を ん殿 の こと し. 愚 人は 常 ニ歓 楽 ス ル コト. 智 者は 窂 獄の 中 に こ もる が ごと し 。. 智 者 ハ ナケ ク コト 地 獄 ノ中 ニ ア ルカ コ ト シ. 智者 はつ ねにう れへ をいた くこ と獄の なか にこもれ る人ににたり. 成 功 して い る 。. 本は元になった一巻本に近い原本は見ていたと思われるが 、『往生要集 』 浄. (なし). 一巻 本は「 申ス ベシ」 と結ん でい ると おり、 聞き 書きをその まま書い. は見ていないか 、要約を優先したものと思われる 。但し 、 「合会 」を「あ. 一. 愚 者は 光 音 天に む ま れた る が ごと し. ここ も『往 生要集 』が 『正法 念経 』を引 用し ており、 諸本により異. と は と くな り. な をし、 光音天のことし. 光 音 天ノ 如 シ 。. ひあ ふも の」と し、 一巻本 よりも 『往 生要集 』の 本文に近い 所が右と. 吉. 尚、 この部 分は偈 であ り平安 期に は歌と して 音読され ていたと推測. 文のあるところではあるが、『宝物集』は 、『正法念経』はおろか 、『往. 猶. 矛盾す るが 、多分 「あひ あふ 」とい う語が 表現 語彙と してあり、七 音. される。(拙稿一九九一、一九九二、等(注3 ))ところが、『宝物集』. 生要集 』も 、少な くと も一巻 本の 方は参 照して いな いと思われる。 一. 五 音と し て 調子 が よ いの で 、 覚え て い て書 い た もの と 思わ れ る 。. では要 約し ており 、偈 (いわ ば漢 文の歌 )とし て使 っているわけで は. 青 十二の3. 上三 六 オ 6. かるかゆへに正法念経乃偈にいはく、. る 。もし くは元 にし た『 往生要 集』 が読み 下し文 、あるい は聞き書き. 三. で あ っ た 可 能 性 も あ る 。『 往 生 要 集 』『 正 法 念 経 』 本 文と は 文 が 一 致 し. 天道. ないこと、「とくなり」という伝聞表現からして明らかである。. 『 往 生要 集 』 大文 一 ー 六. 第 六 に 天道 明 サハ 三 ツ 有リ. ( 一行 略 ). 『 宝 物集 』 巻 三 上 三六 ウ 1. 大 六ニ 天 たう を あ か さは 三 あり. ( 一 行 略). 比 較 箇所 ㉑ 青. 八の10. 第 六 に 天道 を あ かさ は 、三 あ り. (一 行 略 ) 西. 7 4オ 6. さ れ ば、 正 法念 経 に は、. は参照せず、『往生要集』は参照したが、簡単に要約したものと思われ. 巻本は覚えていた内容を書き、吉川本の方は書くにあたり、 『正法 念 経 』. 『 往生 要 集』 大 文 一ー 七 惣 結. なく、意味内容を伝えるために使っている。. 『 宝物 集 』巻 三. 西 上 79 オ 2. ココ ロ ヲ モテ. 比較 箇 所 ⑳. 浄 二 二 ウ 12. 故ニ正法念経ノ偈ニ云(ハク). 一 一 四〇 ペ 14. か るか ゆ へ にし や う ほう 念 経 の下 に いは く. 吉. 浄. コメ. 獄ノ 中 ニ囚 ラ レ タル ニ 似 タリ 。. 智 者ハ 常 ニ 憂ヲ 懐 ク コト 如. 天上. ナヲ. 青. 二三オ5. 天 上 を申 さ ば 、. 一. 一 四二 ペ 1 1. ちさ はつね にうれ へを いたく こと 五くの なか にとらへら れたるか. 吉. 西. こと し. ﹃往生要集﹄引用文から見た﹃宝物集﹄について︵三︶ 古田恵美子.
(4) 20. ﹃往生要集﹄引用文から見た﹃宝物集﹄について︵三︶ 古田恵美子. ネカ. ス. 五ハ 本 居 ヲ楽 ( ハ )不. 四ハ. ク. 青. 四 は ふ たつ の めま た た く. 数 眴. 西. 四に はふた つの めしは しはま しろ く. シハシハマツロ. 彼ノ忉利天ノ如キハ快楽極リ無シト雖、 浄. 両 ノ目. 青 か のた う り天 の こ と きは た のし ひ き わま り な しと い へ とん 一. 飛 行こ こ ろに ま か せ ぬな り. 飛 行 自 在タ ヘ テ. 四. ね か はす. 五にはもとの ゐところをは. い つ つは も と のゐ と ころ を ね か はす. 西 か の 忉 利天 の こ とき は 、快 楽 き は まり な しと い へ とも 遊 戯 し 給こ と 忉利 天 女 の快 楽 を うけ て. ク ヱ ラク. 浄 下 四六 ペ 1 吉. ワ キノ シ タヨ リ ア セ イツ. 栄 化 楽无 数 ナリ ト イ ヘ トモ. 是ノ 相現ス ル時 ニ天女 眷属皆 悉ク 遠離シ テ之 ヲ棄ルコト 草ノ如シ. 事く さのことし. 青. 一. 命 終ノ 時 ニ 臨テ 五 衰 ノ相. クヱンソク. こ の さ う け ん す る と き に 天 上 源 そ くみ な と を さ か る こ れ を す つ る. 快 楽 無 数也 と い へど も 、. 青 い の ち をら む と する と き に五 す い のさ う け んす. こ の 相 あら は る る 時 に 、 天 女 眷 属 み なこ と こ と くと ほ くは な れ て ヒ ト リハ ヤ シノ 間 ニ フセ リ. これ をす つるこ とくさのことし. ひと り 林の 間 に す てら れ て、 天 女 けん ぞ く とぶ ら ふ 事な し. 浄. 西. 吉. 西 い の ちお は ると き に のそ む て 、五 衰 の 相あ ら はる. 現 ス。. 浄 ツイ ニ ハ. 一. 悲 想 (マ テ ニ )阿 鼻 ヲハ 免 レ 不. 天女 眷 属 ニス テ ラレ テ 吉. 上三 六 オ 7. ひさ う 天ま て に あ ひを ま のか れ す. タル. 一 つ ゐ に五 衰 をま ぬ か るる 事 な し 一ハ. 青. 十 一 の6. 悲 想 も阿 鼻 を はま ぬ かれ す 。. 五衰. 吉 青 一に は か うへ の う への は な かつ ら しほ む. 西. 上七 八 オ 1. 非 相 モ阿 鼻 ヲ マ ヌカ レ ス. ツイニ 地獄 ニヲチテト コシナヘニ大苦 悩ヲ. ス. 西. 一 に はか う へ のう へ のは な か つ らた ち まち に し ほむ. 浄. 悲 之涙サ カリ ナリ. 忽ニ萎ム. 浄 花カ ツ ラ シロ ミ. 一. ( 二 五オ 4 ) 三ハ. 頭 ノ 上 ノ花 鬘. 一. 五 す い とい ふ は、 は な のか づ ら しぼ み 、. ウク 天衣 塵 垢ニ 著 セ 所ル 。. 三 は わき の し たよ り あ せい つ. か な ら ず大 ぢ ごく に お ちて 、 む りや う の くげ ん をう く. 二ハ. 天 衣あ か つ き けか る. 吉. 吉. アセ. 青 二は. 腋 ノ下 ヨ リ汗 出 ツ 。. 西. 二 に は 天衣 ち り あか に けか る 。 三 には わ きの し た より あ せ いつ. 果ては地獄に落ちることを述べている 。『宝物集』では、緩やかな要約. ラ. 浄. 天 衣ア カ ツ キケ カ ラ ハシ. に なっ て い る。. 天界についての記述で天人もまた輪廻を免れず 、天界での死が訪れ 、. 一. わ き の 下よ り あ せい で たり 。 ま な こま じ ろぎ 、 天 衣あ か つ き、. フ タツ ノ マナ コ マ シロ キ. 吉. 同じ箇 所を 次の比 較箇 所㉒と とも に『栄 花物 語』巻一 六の法成寺阿.
(5) 19. の娘 である 皇太后 姸子 とその 女房 たち の現世 での 華やかな生活 につい. 弥 陀堂経 供養 の際の 講師 (永昭 )の 願文と して 見いだせ る。藤原道長 一. 浄. 青. あ び 大 城に は す みに く かり け り. 地 獄之 鐵 城ハ ス ミ ニ クカ リ ケリ. 上 三 五 オ7. 一六 オ1. カ. 八に 阿鼻 地獄ト 者、 大焦熱 之下 欲界ノ最 底之処(ニ). ての形容として使われている 。当時の貴族の生活の中で男女を問わず、 吉. なっ て いる 。 比 較的 本 文 の近 い 天 道の 部 分だ け 対 比さ せ て みる 。. 以下 天道 と地獄 を対比 させ ている が、 内容は 『往 生要集』と 合わなく. 八に は 阿 鼻地 獄 と いは 、 大 焦熱 の した に あ り 。. 『往 生要集 』の 読み下 し文や 内容 に触 れるこ とが あったこと が推定で きる と ころ で ある 。 さて、一巻本は「快楽 」 (日本漢字音では呉音で「クヱラク 」)が「化 楽」 (同じく「クヱラク 」)となっており 、聞き書きなど音を介した『往 を「天 上源 そく」 として いる ことに も言え 、同 じく音 を介する『往 生. 浄. 青. 上 七 六 オ5. 上 三五 ウ 4. 劫波樹の. 劫 婆樹 の も との. 劫 波 樹 ノ下 ノ. モト. 要集 』享受であったことを示している。)すなわち、書くに当たり 、 『往. 栄. 劫 樹 之本 ハ スミ ヨ カ リシ カ ト モ. コフ. 生要 集 』 本文 を 参照 し て いな い と 思わ れ る 。. 一. 劫 婆 樹 のも と は すず し か りし か ども. 生要集 』享受を示唆している。 (これと同じ事が西南院本が「天女眷属 」. また、一巻本も吉川本も五衰の順序が『往生要集』とは異なるので 、. 吉. また、 飛行 のこと につ いては 『往 生要集 』大文 十章 を通じて記 述が無. 浄. 青. 上七 六 オ 2. 上 三 五ウ 3. 衆車 苑 之車 ハ ノ リ ヨカ リ シカ ト モ. 衆 車 苑の う ち をは. 衆車 苑 ノ中 ニ ハ 復. また よ く み るこ と なく. 能 ク 見ル コ ト 無ケ ム. コツハシユ. (比較箇所㉒参照 )『往生要集』を参照していないか、参照したとして. い ので、 他の典 拠が ある 可能性 が高 い。こ のこと について は次の比較. 一. 衆 車 苑の く る まは の りよ か り し かど も. も 正 確 な 引 用 を 目 指 さ ず 、 順 序 に も こ だ わ ら なか っ た と 考 え ら れ る 。. 箇所 ㉒ で 検討 す る 。. 吉. 帝 釈 ノ 宝座. シ. 上 三五 ウ 1. 朝謁 ス ル ニ由 無 シ. 青. 帝釈 の 宝 座に は 朝 謁す る に よし な し. 帝 尺 之 宝座 ニ ハヰ ヨ カ リシ カ ド モ. 上 七 五 ウ5 一. 帝 釈の 宝 座は ゐ よ か りし か ども. 浄. 善 見 宮 城ハ 今 ヨリ ハ 将 ニ絶 ナ ム トス. 吉. 天道. 上 三五 ウ 1. 善見宮城は[於 ]、いまよりはまさにたえなんとす、. 上 三 五 ウ5. 『 往 生要 集 』 大文 一 ー六. 青 上 七 五 ウ4. 善 見 城 ハス ミ ヨ カリ シ カト モ 青. 上 七六 オ6し ろきた まの 、やは らかな るい しには 、さらにゐる と. 『 宝 物集 』 巻 三. 浄 二 三オ 9. 喜 見城 は すみ よ か り しか ど も、. 浄. 比較 箇 所 ㉒. 一. 一 四 三 ペ1. 喜 見 の 宮殿 に け うず る にも ま さ る. 白 玉ノ 軟 石ニ ハ 更 ニ 坐ス ル 時無 シ. 吉. 下 四六 2. 五. 栄. ﹃往生要集﹄引用文から見た﹃宝物集﹄について︵三︶ 古田恵美子.
(6) 18. 一. 栄. 飛 行の 天 衆は あ そ び よか り しか ど も 、. 飛 行 天 衆ハ ア ソヒ ヨ カ リシ カ ト モ. 三十 三 天 の微 玅 の 天女 に ひ とし う おぼ さ る ゝ. ﹃往生要集﹄引用文から見た﹃宝物集﹄について︵三︶ 古田恵美子. 白玉 耎 石 に 座 し 吉. き なく、 栄 皇 耎 石 ハナ ツ カシ カ リ シカ ト モ. ワウ ナ ム. 一. 集』『栄花物語』での内容で対応するものを挙げてみる。. 六. ここで 、上に 『往 生要 集』に おけ る内容 を順番 に挙げ、 下に『宝物. 白 玉の 軟 石は な つ か しか り しか ど も シ. 吉 ニ. 曼 陀枳 尼 ノ殊 勝 池 ノ 水ハ 沐 浴セ ム ニ 由無 シ. キ. 上 三 五 ウ5. マン タ. 青. 『栄花 物 語 』. 『往生 要 集 』. 『 宝物 集 』. 曼 陀 枳 尼の 殊 勝 池の み つ、 あ み むと よ し なし. 2 、 喜見. 上 七六 ウ 1. 1, 善 見 宮城. 浄. 1 ,善 見 宮 城. 4 , 帝釈 の 宝座. 曼 陀枳 尼 の 殊勝 の い けに 沐 浴 し. 2, 帝 釈の 宝 座. 下 四 六 ペ2 珠 勝 地 之水 ハ アミ ヨ カ リシ カ ト モ. 3 ,殊 勝 殿. 栄 一 殊 勝池 の 水 はあ み よ かり し かと も. 5 , 衆車 苑. 3, 衆 車 苑. 吉 四 種 ノ甘 露 ハ 卒 ニ 食 セ ム コト 得 難 シ. 6, 麁 渋 苑の 甲 冑. 4, 釈 天 の宝 象 上三 五 ウ6. 四 種 の 甘露 は た ちま ち に くふ こ とえ か た し 、. エ. 青 上 七 六オ 7. タ チマチ. 浄 十の 1. 1,. 4. 8, 歓 喜 苑. 5 ,白 玉 軟石 3 ,. 6 ,曼 陀 枳尼 の 殊 勝 池. 5,. 四種 の 甘露 を な め. 7 , 雑林 苑. 西 下 四 六ペ 2. の か むろ は た ちま ち に しき す る こと え かた し. 栄. 2 ,劫 波 樹の 下 1 0 ,曼 陀 枳 尼の 殊 勝 池. 7 , 四 種の 甘 露. (『栄花 』劫波樹の白玉の軟石) 11 , 四 種 の甘 露. 6,. 9 , 劫波 樹 の 下の 白 玉 軟石. 五 妙 ノ 音楽 ハ 頓 ニ 聴 聞ヲ 断 ツ. 8 ,五 妙 の 音楽. 四 種 ノ甘 露 ハ アマ カ リシ カ ト モ. 青. 五 玅の 音 楽は に は か にき く こと を た つ. 1 2 , 五妙 の 音楽. 一. 浄. 五 め う のを ん かく は に わか に き くこ と を たち つ. 要集 』よりも『栄花物語 』なのかもしれない 。先述したように 、 『栄花 』. あるいはこの部分で『宝物集』作者がより参考にしているのは、『往生. 『宝物集 』のトピックの選択は 、 『栄花 』のトピックに似通っている 。. (『栄花』三十三天の微玅の天女). 7,. 四種 の 甘露 は あ ま かり し かど も. 西. 五 玅の 音 楽を き く に 、. 9 , 飛行 天 衆. 吉. 栄. 五 妙 之 音楽 ハ 身 ニシ ミ シカ ト モ. ニハ カ. 一. 五 妙の 音 楽 は心 す み しか ど も 、 (『往生要集』には対応する句無し). 吉 青・ 浄.
(7) 17. 巻 十六で のこ の描写 は、 現世の 中宮 の女房 たち の優雅な 生活の描写で. わ かる。 書物 に書か れた 文字で はな く、こ うし た絵を見 て、飛天のイ. こ こを も つて 、 正 法念 経 に は ス. 心 生大 苦 悩. 十 六 に して 、 一に お よ はす 。. す. 心に大くな うをな. 地 獄 ノ 衆ノ 苦 毒ハ 十 六 ニシ テ 一 ニモ 及 ハ 不。. 天 上 欲 退時. 地 こく の もろ も ろ の く. 心 生 大 苦悩 青. 地 獄 の もろ も ろ の苦 毒 を. 天 上欲 退 時. 西. 十 六 不 及一. ス. 天 上よ り 退せ ん と す ると き 、心 に 大 苦悩 を 生 す。. 天 上よ りたい せん とする ときに は. 天 上 ヨ リ退 セ ムト 欲 ル 時ニ ハ 心 ニ大 苦 悩 ヲ生 ス 。. 天道. メー ジ が 広 がっ て いっ た こ とも 想 像 され る 。. 比較 箇 所 ㉓ 『宝 物 集 』巻 三. 上 七 七 オ4. しや う ほ う念 経 の 下に い はく 浄. ( 対 応箇 所 無し ). 浄. 『往 生 要集 』 大 文一 ー 六. あり 、文脈 として は全 く逆で ある のだ が。先 に拙 稿二〇〇五で 述べた ように、一巻本の作者は『栄花物語』は確実に見ており 、『栄花』から 『往 生要集 』を 見てい た可能 性も 高い 。但し この 部分は『栄 花』には. 上 三 六 オ2. ない 「 帝釈 の 宝座 」 衆 「 車苑 」 があ る の で 、他 に も典 拠 が あり そ う であ るが、それは『往生要集』ではない可能性が高い 。『往生要集』を見て 書いたのならば 、事柄の順番や 、また前に書いてある事柄が『宝物集 』. 青. 十の. 故 ニ正 法 念 経ノ 偈ニ 云( ハ ク ). に 無い 点 が 説明 で き ない か ら であ る 。. 西. 花』 『宝物集』吉川本では「喜見」となっているが 、 『倶舎 論 頌 疏十 一 』. 一. 尚 、帝釈天の居城として、 『往生 』 『宝物集 』一巻本では「善見 」、 『栄 亦 名 喜 見 城 也 )」 とあ り 、 織 田 得 能. 一四 三 ぺ1 4 青. うかぶ」とあり 、『倶舎論』などが年若い僧に読まれ、尼たちも知って. 一. かるかゆへに正法念経乃偈にいはく、. に 「 於 山 頂 中 有 宮 名 善 見 。( 割 注. 吉. の 相 違 の み 。」 と し て い る 。『 栄 花 』 の 巻十 八 「 た ま の う て な 」 で は 藤. 西. 阿含経』など六経の名を挙げ総て「善見城」となっており 、「是れ翻訳 原道長 の建 てた法 成寺 を尼た ちが 見て回 る描写 の中 に小堂の中 で「お. い たらし いこと が見 える 。巻十 五に も「倶 舎論 」という 言葉が道長の. 吉. か しげな る小法 師七 八人 ばかり こゑ をあは せて倶 舎をずし 、唯識論を. 仏道 修行の 中に出 てき ており 、当 時の 俗家の 貴族た ちにも耳慣 れたも のであったことがわかる。『宝物集』の作者もまた『倶舎論』などを耳 また、 『栄花』の「三十三天」は喜見城の天の事であり、 『往 生要 集 』. 浄. 地 獄衆 苦 毒. 十 六不 及 一 [ ( ] 吉 川 本は 脱 字、 他 本 によ り 補 ). にする機会があり 、「喜見」の語を知っていたのだろう。 には 無いが 、他 の経と 合わせ ての 辻褄 は合っ てい る。また、 同じ巻の. 一. 地 獄 衆 苦毒. 七. 十 六ふ ん に して ひ と つに も お よは す 。. 中で、 阿弥陀 堂の 扉絵や 堂内の 絵、 迎講に つい ての記 述があり、来迎. 吉. ﹃往生要集﹄引用文から見た﹃宝物集﹄について︵三︶ 古田恵美子. 楽」は輪廻を離れた世界である 。)の様子を描いたものであったことが. や極楽(「天道」ではない 。「天道」は六道の輪廻の中の世界だが、「極. 二三 ウ 7. 『 佛 教 大 辞 典 』 で は 『 智 度 論 』 は 「 喜 見 」、『 起 世 経 』、『 賢 愚 経 』『 長. 10.
(8) 16. ﹃往生要集﹄引用文から見た﹃宝物集﹄について︵三︶ 古田恵美子. 八. で きる部 分は あと巻 4の 二箇所 を残 すのみ とな った。最 終的なもので. 1, 『宝物集 』作者がこれ(主に一巻本)を著すに際し、参考にした『往. 『 正 法 念 経』 の 偈の 部 分で あ る 。 読 され ている と見ら れる 。偈の 部分 はすべ て漢 文表記で あり、振り仮. 生要集』『栄花物語』はどのような形だったのか。. はな い が 、 今考 え たい の は 次の 二 点 であ る 。. 名な ども音 にな ってい る。こ こで も、 一巻本 ・吉 川本ともに 漢文表記. 2,『宝物集』の中の『往生要集』引用文を『往生要集』の十三世紀初. 比較 箇所 ⑲でも 触れ たが、 少な くとも 『栄花 物語 』の中では偈は 音. になっ ており 、底本 には 振り仮 名が ない。 前後 の文は書 き下して要約. 1につ いては 、拙 稿二 〇〇五 で触 れたが 、よ り聞き書 きの要素があ. 頭 の訓 読 文 とし て 位 置付 け られ る の か 。. から 、ひとまとまりの歌であったと見るのが妥当であろうと考える。(一. され てい るのに 、この 部分 だけ、 典拠 のまま 漢文 表記されて いるのだ 巻本 の翻 字(月 本直 子氏担 当)で はこ の部分 を音 読みと推定 されてい. るもの、より要約的なものであったように思われる 。 比 ( 較箇 所 ㉑ な ど ) 2につ いて は、確 かに 要約さ れ、 ダイジ ェス ト版のよ うな形で流布. に必ず 音が 存在し てい る。従 って、 漢文 表記の ところ は音読みであ ろ. 一 巻本は 先に も触れ たとお り、 聞き 書き的 性質 が見えてお り、背後. ての 分析 はしに くい 。ただ し、 他の典 拠の当 時の 姿を考え ながら、そ. 『往生 要集 』を見 てい た確証 のある とこ ろも少 ないた め、訓読文と し. して いた とは思 われ るが、 要約の 度が 大きく 、ま た、書く にあたって. る 。). う。 吉川 本の系 統は 必ずし もす べて音 読され たと は限らな いが、もと. れぞれ の言 語の性 格、 言語生 活の 中での 享受の され 方を明らかにし な. 高科書 店. 「『栄花物語』中に引用された『往生要集』訓読. もと釈 迦堂 での論 議と いう設 定で あり、 一巻本 から 徐々に増補され な. 拙 稿一 九 九 一. が ら 取り 組 んで い き た い。. 注1. が ら 、そ の 語る 言 葉 を 引き 継 いで い る 。 先の比較箇所⑲⑳も偈であったが 、『宝物集』の方で、要約などをし て おり、 歌とし ての 扱い をして いな かった 。しか し、この 箇所につい ては 一 フ レー ズ の 歌と し て扱 っ て い ると 思 われ る 。. 文 の位 相に就 いて 」山中 裕編 『栄花 物語研 究』 第三集 一 九九 一 年 五月. 尚 、『往生要集』の青蓮院本・浄福寺本は『宝物集』や『栄花』とち がい 、「読む」本である。訓読する、あるいは漢字仮名混じりで書き下. 花山 信勝. 一九三七年 初版、. 汲 古 書院. 「『往 生 要 集 』 の 諸 本 に就 い て 」『 築島 裕 博 士 古. 往 生要 集』. 譯文篇』、築島裕・坂詰力治・後藤剛編. 山 喜房 仏 書 林 『最 明 寺 本往 生 要 集. 一 九 七六 年 二版. 『 原 本 校 註 漢 和対 照. 尚、『往生要集』の典拠は左の書に詳しい。. 一 九 九 五年 一 〇 月. 希 記 念国 語 学論 集 』 築 島 裕 博士 古 希 記念 会 編. 拙 稿一九 九五. 注2. し 文を書 くと いうこ とは 漢文を 翻訳 、注釈 する という役 割も負ってい るの で あ る 。 三 、 まと め 以 上 、『 宝 物 集 』 の 中 の 『 往 生 要 集 』『 栄花 物 語 』 か ら 引 用 、 要 約 さ れたと思われる文を 、当時の『宝物集』作者が享受した『往生要集 』 『栄 花物語 』に 近いと 推定さ れる ものの 文と比 較し てきた 。一巻本と比 較.
(9) 15. 注3. 汲 古 書院. 一 九九 二 年、 一 九 九 二年 、 二〇 〇 三 年刊. この 最明寺 本に は、 十一世 紀後 半の朱 点と十 二世紀中 後期の墨点 が 見ら れる。 今回 この比 較に 使った もの は、な るべく『宝 物集』 の成 立年代 に近 いも のを比 較す る方が よいの で、右 譯文篇の朱点. 同 文脈に 於け る語彙 の位 相―『 往生要集』訓点. を中心 にした 訳文 から、 墨点 を中 心にし た訳文 を復元した もので ある。 拙稿一 九九 二 巻. 号. 本と仮名書き本の語 彙の訳し 分けについ て― 『国 語 と国 文 学 』 11. ﹃往生要集﹄引用文から見た﹃宝物集﹄について︵三︶ 古田恵美子. 69. 九.
(10)
関連したドキュメント
長尾氏は『通俗三国志』の訳文について、俗語をどのように訳しているか
長尾氏は『通俗三国志』の訳文について、俗語をどのように訳しているか
ことで商店の経営は何とか維持されていた。つ まり、飯塚地区の中心商店街に本格的な冬の時 代が訪れるのは、石炭六法が失効し、大店法が
であり、 今日 までの日 本の 民族精神 の形 成におい て大
注1) 本は再版にあたって新たに写本を参照してはいないが、
[r]
彼らの九十パーセントが日本で生まれ育った二世三世であるということである︒このように長期間にわたって外国に
ぎり︑第三文の効力について疑問を唱えるものは見当たらないのは︑実質的には右のような理由によるものと思われ