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Title
ダウン症候群における骨髄性白血病と造血微小環境
Author(s)
宮内, 潤
Journal
歯科学報, 116(5): 381-381
URL
http://hdl.handle.net/10130/4138
Right
Description
381 歯科学報 Vol.116,No.5(2016)
講 演 抄 録
特 別 講 演 1
ダウン症候群における骨髄性白血病と造血微小環境
東京歯科大学市川総合病院臨床検査科教授宮内
潤
白血病細胞の遺伝子変異を指標とした一卵性双胎患児の研究などから,小児の白血病の多くは胎児期に始ま ることが証明されている。造血は胎芽期の卵黄嚢に始まり,胎児期の肝臓を経て生後は骨髄に移行するため, 胎児期に発生した白血病の発症・進展そして一部の白血病ではその自然治癒に,子宮内から生後にいたる造血 微小環境の変動が深く関わると考えられる。 ダウン症候群は白血病を高率で発症する先天異常であり,年少児では通常稀なタイプの急性巨核芽球性白血 病 acute megakaryoblastic leukemia(AMKL)が多くみられる。また新生児期には AMKL と区別できない血 液異常を示すも無治療で自然に治癒する病態があり,一過性骨髄造血異常 transient abnormal myelopoiesis (TAM)あるいは一過性白血病 transient leukemia などと呼ばれる。AMKL と TAM にて増殖する芽球はと もに GATA1 遺伝子の変異を有し,この変異は胎児期に起こることや,AMKL の多くが TAM 患児の自然治 癒後に起こることなどから,ダウン症における骨髄性白血病では以下の多段階発がん仮説が提唱されている。 すなわちダウン症(21トリソミー)にもとづく21番染色体上遺伝子の過剰発現に,子宮内で後天的な GATA1 変異が2nd hit として加わることで,胎児期から新生児期に TAM が発症し,生後に付加的な遺伝子異常が3 rd hit として起こることで AMKL に進展する。TAM の芽球増殖が骨髄ではなく胎児期の主たる造血臓器で ある肝臓の微小環境に依存しているとすれば,生後に造血の場が骨髄に移行することで,TAM 芽球の至適な 造血微小環境が失われ,TAM が自然に治癒する可能性が考えられる。本講演では,ダウン症児における TAM と AMKL の病理組織学的な差異や,胎児造血微小環境構成細胞と TAM 芽球の共培養実験結果などを紹介 し,TAM から AMKL に至るダウン症候群関連骨髄性白血病のユニークな自然経過と造血微小環境との関連 について,最近の知見を含めて概説する。 がんの自然治癒は TAM や神経芽腫をはじめとする小児がんにしばしば見られる現象であるが,小児に限ら れた現象ではなく,成人の腫瘍でも稀に経験される。がんの自然治癒機構の解明は,新たながんの治療戦略を 開発するための重要な研究テーマといえる。 ≪プロフィール≫ 平成16年6月 東京歯科大学市川総合病院臨床検査科教 授 現在に至る <学 会> 日本病理学会評議員,専門医, Pathology International 編集委員 日本血液学会評議員 日本小児血液・がん学会評議員 日本小児病理研究会幹事 <略 歴> 日本がん学会会員昭和52年3月 慶応義塾大学医学部卒業 American Society of Hematology( Corresponding
mem-昭和56年3月 慶応義塾大学大学院医学研究科博士課程 ber)
(病理学専攻)修了
昭和56年4月 慶応義塾大学医学部病理学教室助手 <学 外>
昭和60年9月 カナダ・トロントの Ontario Cancer In- 慶応義塾大学医学部非常勤講師
stitute に留学(2年2ヶ月間) 東京女子医科大学非常勤講師 昭和63年11月 国立小児病院研究検査科医員 防衛医科大学校非常勤講師 平成6年4月 国立小児病院研究検査科長 平成14年3月 国立成育医療センター臨床検査部病理検 査室医長 ― 37 ―