Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
労りのある口唇裂・口蓋裂手術をめざして
Author(s)
内山, 健志
Journal
歯科学報, 112(4): 534-534
URL
http://hdl.handle.net/10130/2909
Right
口唇裂・口蓋裂は約550人に一人の割合(0.
18%)で発生し,心室中隔欠損などの先天性心臓疾患についで
多い先天異常です。心臓のそれは内臓奇形であるので,外(体)表奇形では口唇裂・口蓋裂が人体の中で最も
多いということになります。人中,Cupid 弓,赤唇の上唇結節,上顎4切歯,同歯槽部,一次口蓋は内側鼻隆
起下方の顎間部から生じますので,周知のごとく上唇と歯と口蓋は発生学的に密接な関係にあります。興味深
いことに,器官形成期の8週までヒトはだれでも母体の中で口唇裂,口蓋裂の状態にあります。口唇裂・口蓋
裂を故高橋庄二郎先生,重松知寛先生から教えていただき,40年間担当させていただきましたが,定年を迎え
(年を経るにつれ),これは歯科大学で扱う重要な疾患であることをより強く認識するようになりました。
口唇裂・口蓋裂の患児は,哺乳障害など多くの障害を持ちながらこの世の生を受けます。口唇裂は生まれな
がらにして顔の正常な美しさが,口蓋裂は正常な鼻咽腔閉鎖機能が損なわれています。したがって初回に行わ
れる口唇裂一次手術(口唇形成術)は患児の一生の顔の審美を,口蓋裂一次手術(口蓋形成術)は一生の言語
機能を左右するといっても過言ではありません。口唇形成術の目的は,手術痕が目立たず,自然に見える左右
対称で機能的な上唇(赤唇と白唇)と外鼻を形成することにつきます。一方,現代の口蓋形成術の目標は,相
反する事象である良好な鼻咽腔閉鎖機能と歯槽弓をあわせもつ口蓋を小児期から形成することが求められてお
ります。本疾患は形態異常ですので,その本質的な治療は手術療法が主体になります。術者には臨床解剖の識
見に裏付けられた精緻な手技の craftsmanship すなわち匠の精神が求められます。くわえて抽象的ではありま
すが,私は負けない手術,さらに労りのある手術を目指しています。
口唇裂・口蓋裂の一次手術の結果は,それをある程度予測できたとしても正しく評価するには二三年先,時
には十年先になるという特殊性があります。とくに口蓋裂一次手術後には,言語訓練,矯正歯科治療や関連す
る二次手術の優先順位など,対策は思春期まで継続します。今後,新たな治療法や手術法が行われても多岐に
わたる障害を取り除き,患児がハンディのない社会生活を営むようになるためには,出生直後から顎発育が終
了するまでの長期間にわたって専門の臨床各科のきめ細かいチーム医療が必要不可欠です。
本講演では,手術やチーム医療の根拠となるエビデンスを得た研究の一端を交えながら臨床例を述べ,チー
ム医療にたずさわり成功に導いていただいた関係各位に謝意を表したいと存じます。
≪プロフィール≫ <履歴および資格・免許など> 1973年 東京歯科大学卒業 口腔外科学第2講座入局 1979年 同大学口腔外科学第2講座講師 1981年 歯学博士の学位受領(東京歯科大学) 1990年 日本口腔外科学会認定制度による口腔外科指導 医(第284号) 1997年 厚生省臨床修練指導歯科医(第247号) 1999年 同大学口腔外科学第二講座主任教授 2000年 更生(育成)医療指定医(東京歯科大学千葉病院) 2005年 同大学口腔外科学講座教授(現職) <主な学会および社会における活動> 1979年 東京都社会保険診療報酬請求書審査委員(1981 年5月まで) 1985年 日本航空機事故(御巣鷹山)による犠牲者の個 人識別の活動に参加 1999年 招待講演第40回中華人民共和国武漢医科大学口 腔科学会(武漢,中華人民共和国) 2002年 日本口蓋裂学会理事および編集委員 2003年 第26回日本口蓋裂学会におけるシンポジスト 「口蓋裂一次手術」について 2003年 The 5thAsian Pacific Cleft Lip & Palate Con-ference シンポジスト(2003,Seoul,大韓民国) 2005年 日本口蓋裂学会学術調査委員長
2005年 Live surgery in 1st International Workshop of the ICPF(チェンナイ,インド)
2006年 Invited speaker of Turkish, the 1st Interna-tional Oral and Maxillofacial Surgery Con-gress において(アンタルヤ,トルコ共和国) 2006年 Invited speaker of Cleft 2006
ICPF(East-bourne,イギリス)
2007年 Invited speaker 中華人民共和国北京 Beijing International Hall にて ICPF2007
2008年 Invited speaker 第4回国際イラン顎顔面外 科学会(テヘラン,イラン)
2009年 Invited speaker of ICPF Cleft 2008(ダラス, アメリカ合衆国)
2010年 第34回日本口蓋裂学会を会長として開催(北 区,東京)
2011年 Invited speaker 第7回アジア太平洋唇顎口蓋 裂大会(Perth,オーストラリア)
2012年 Live surgery and Invited speaker of Cleft 2012 ICPF(Seychelles 共和国)
<賞 罰>
2004年6月 ICPF Award of Merit The 3rd Biennial World Congress of International Cleft Lip and Palate Foundation(Halifax,カナダ) 2005年11月 Ho Chi Minh City 人民委員会委員長より
10年にわたる口唇裂・口蓋裂患者への医療 援助に対する表彰状