Doctor Faustusに就いて
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(2) 大. 2. 郷. 一. 雄. としては珍らしいものでは.ない。 独逸はこのFaust伝説の列に世界文学の至宝であるGoetheの■Faustを有している。. これは詩人が二十四・五歳の頃筆を朝1o ,途次度々の中絶があり各部分の創作)TB序は現 今の形とは不同であるが,八十三歳の高齢で廻するその前年に脱稿したもので,そQ)'申 に詩人の人間,思想,哲学,人生経験が滞然として融合された一大完成芸術品であるo これを殆ど素材とも言うべきMarloweのFaustusと比較論攻するのは?,その芸術的 価値の距i)の故に必ずしも当を得て仏名とは思わないが,こQ)二作は決して無縁ではな いので,. MarloweのFaustusを一層よく理解せんが為に,二三の興味ある点につい. てその異同を考察するのは強ち答めらるべきでないであろうo GoetheのFaustは先ず「献詞」. (Vorspiel. (Zueigung)と「劇場前の前戯」. dem. im. Himmel)で始まっているが, ・この中最後のも Herr)とMephistophelesが登 のがMarloweのChorusに相当する・。即ち主(Der. Theater)と「天上の序曲」. (Prolog. auf. 場して,後者は人間の愚かさを聯弄した揚句.若し主が賭をするならばFaustを必ず 堕落させてみせる,と挑む。主は「やって見るがよい。併し結局お前の負で,善い人間 挿暗い衝動に腰られても・人間の正しい道は忘れないものだo」と答えるが,. Mephist・. はあの旨名な蛇の様に吃度塵あくたを食わせて見せると誓うo. この賭の結束は明らかである・。何故ならば永劫を見透し得る全矢口全能の神に赦し得る 者はないからである.即ちFaustの救済は劇の冒頭に於いて既に予定されて居り,輿 味はMephist.が如何なる好計術策を弄してFaustの魂を奪患うとするか,文Faust は如何にして一度は墜ち込むかも知れぬ堕落から,彼の胸中に覚醒する真実Qjl声忙導か. れて,自らを高め浄めMephist.の魔手から逃れて行くかにか」っている。 このFaustの救済は伝説のFaustにはないが,. Goethe. Q)噸創によるものではな. く,嘗て自らも_Faust劇を作ろうとして果さなかったLessingの着想細るLと言わ れているo之に反してMarloweのFaustusはその破滅が決定的であって,鵠度か呼. びかける慈悲深い救の声を如何に振'o切一_l・'て,どの様な悲惨なる結末に陥入るかと云う 過程と終局の怖ろしい姿に関心が注がれるのである。 こ」に両者の根本的な差異が存し,劇Qj語調も自ら等しからず,これらの劇に対する 読者観客の心的態度も相違してくるo即ち前者に於いては晴れやかな光明と,限りない. 神の恩寵を期待し,たとえ個々の場面で涙に咽ぶとしても全休として暢びやか対敵配の 情が胸奥から離れないo後者にあっては,或は抱腹咲笑する場面があっても,不可避な る暗い絶望と戦陳すべき破局を予想して緊迫せる悲壮感を懐いて物語の進行を凝視する のであるo以下劇の中心をなしている筋を速い乍ら考察したい。 先ず我々はFaustusをその書斎に見出す。専攻する学問の悲奥を究め且つ一切の学. 問の究極を探求しようと云う飽くことを知らぬ知識欲に磨られて,今は老学究となって. いる彼ほ机辺の学術書を次々と播いては失望する。嘗ては彼を魅了し去った分析学も文 論理学,医学,法学,神学も今は索然空疎たるものtで,その心を捉えることが出来ないo 結局.
(3) Doctor. These. Faustus. of Magicians,. Metaphisickes. And. 3. に就いて. bookes. Negromantike. beauenly:. are. 1.77-78. こ」でheauenlyなる語を用いて. と思い到って魔術師の秘法, いる′が,. excellentの義で度々Shakespeareにも使われている。併しOED. Supremely. のdefinitions. に与えられる. _Q^L.f'ftlに心を惹かれるo heaven. の各項に記してある如く,元来. の属性として考えられるもの. Faustusほ後になって魔法は神と反対の方向にある. adjectiveであるo. と感ずるが,少くともこの場合汚らわしい,忌むべき悪魔的なものだと考えていなかっ た。貴も高く最も奥深く実在して,世界を支配するものを究明せんとする純粋に知的な 動機から魔法に傾いたのである。かくて彼は叫ぶo O. a. what. world. of honor,. Of. power,. ls. promised. to. things. that. All. Shalbe. at. my. the. Nor. can. But. his dominion. they. that. farre. Magician Faustus. Heere. as. is. the. quiet. Emperours. or. the. rend. exceedes. in this,. doth. minde. the. mighty. god:. braines. to. trie thy. Kings. prouinces:. wirlde,. a. poles. and. seuerall. the. raise. as. sound. betweene. in their. obeyd. Stretcbeth. Artizan?. studious. commaund,. but. delight,. and. of omnipotence. IⅥ00ue. Are. A. of profit. of. cloudes:. galne. man.. a. deitie. l.81ff.. かくて魔法を学ぼうと弟子のWagnerに二人の魔術師を呼びにやっ七独坐していると the. good. Angellとtheノeuill. Angellが現われて,書き霊は魔法の書を退けて神の怒. を招かぬように聖書を読めと勧める.これはFaustusが初めて魔法は神に背く邪道で あるの・V7:気付く事を意味する。併し悪しき霊は, Go. Wherein Be. Faustus. in that. famous. all natures. treasury. lS. forward. thou. Lord. on. and. earth. Zoue. as. commaunder. COntaind. is in the. of these. art, :. skie,. Elements. 1. 102ff.. minds=. と云って彼の長所でもあり且つWeaknessでもある"aspyring. る。彼はこの誘惑に陶酔して, How. a血l. Shall. l make. Re畠olue Performe. glutted. me. with. spirits fetch. conceit me. of this? what. l please,. of all a-mbiguities, what. desperate. enterprlSe. I will?. を唆i)立て.
(4) 4. 大. 郷. 雄. 一. 1.106ff.. と言いながら魔法に可能なる.世界,耳目を聾動せしめる如き大業を心に措いて楽しい空 想に耽抄るo. Faustusは押Ol'如き権能を有し,自らを神の地位に高め,森羅万象を支配して,究極 の実在を実感せんとしたq)である。魔法はあらゆる疑惑(ambiguities)から彼を解放 してくれると信じたのであっ袴。彼が現存の諸学に失望幻滅を感じて之を棄てたのは頁. 理探求に魅力を失った 放ではなくして,それ等が彼の無限な知識欲,天地宇宙の秘奥に 到達し,究極なる項実を明らか・にせんとする意欲を充たし得なかった為であるo魔法や 垂術は之等の学問に代って彼の欲求を満足せしめるだろうと考えてその手段として択ば. れたものであるo彼が魔法に趨った動機は以上の如く思われる。. Renaissanceの波涛が. 欧州の一角英国の岸も洗い,人間の再発見と学問の復活は当時の時代精神であったが,, 人智の範囲を神の領域迄押し進めようとするFaustusの姿は他に類例がなく,自ら地 上の神たらんとしたのは同じくMarloweのTamburlaineに類型を見出すのみである。 Goethe. Faust. も学術,典籍の与える知識に魅力を失い,自然の理法を究め,辛 Faustus 宙の頁随に徹し,生命の神秘に触れようとした点拓於いて, と軌を等しくす るo. の. Faustはその第一独白に於いて, DaB lm. ich. erkenne,. Innersten. Schau'alle. was. die. Welt. zusammenhalt, Wirkenskraft. Samen,. und. Z.382ff.. 深奥にあって世界を結合しているもの,全ての活動力と種子を見舞いと云って宇宙の本 源に対する知識欲を現わしている。唯Faustは「夜(Nacht)の場」に於て,自らを 神と同列に置いた慢心が霊(Geist)によって粉砕せられ,極度の劣等感に捉えられる。 そして偶々釆た弟子Wagnerに世の常の,単に駈駁して生命のない知識の蒐標に汲々. たる,所轟世俗学究の姿を認めて益々索然たる気持になり,自己疎意を感じ,地上にあ って学究たるを続けるよわは,魂の髄枠経験によって未知の世界の神秘を窺い知ろうと する.即ち彼は Ein. Feuerwagen. An. mich. Auf Zu. heran! Bahn. neuen neuen. schwebt,. Spharen. Ich den. auf. fiihle Ather. leichten. bereit,. mich zu. Schwingen,. durchdringen,. Tatigkeit・. reiner. Z.702ff.. 死の来迎を感じ新しい世界へ改正つ心構えが出来ているのを覚えて,将に毒杯を仰ごう とすると,折しも響く復活祭の鐘の音と,主の復活を讃える天使達の合唱の歌声とを聞 いて自殺を思い止まる。. 併し彼が地上に引き留あられたのは決して敬慶なる宗教的情操によるのではない。 Die. Botschaft. h6r'ich. wohl,. allein. mir. fehlt der Glaube;.
(5) Doctor. Das Zu. Wunder. ist des Sph畠ren. jenen. Woher Und Ruft. die. Glaubens. Nachricht. diesen. an. jetzt. auch. 'ich. wag. holde. doch, er. Faustusに就いて. 5. liebstes. Kind,. zu. nicht. streben,. tらnt;. Klang. Jugend. auf. in das. Leben.. Yon. ziiriick mich. gewi5hnt,. Z.765ff.. 天からの使の声,恵み深き声を聞き乍らも,信仰心がない故抱,天界-行E-うとは思. わず,鐘の音が幼年時代の懐かしい追憶を呼び起される。多年把亘る寒巌枯木,死灰の 如き学究生活に於いて忘れられていた人間的な生活,温い血潮の泳打つ豊かな情感の世 界に対する追慕が彼をして生の杵を断ち切らしめなかったQ),であった.永劫の境に生き ようとし潅決意が,地上に-於ける生命の享受,人間生活-の執着にLよって翻さたのであ る。彼は心誘われて市門の列-散策vc)行き麗らかな春光を浴びて行楽する人々の姿を見 て,自分も多彩な生活を経験したいという意欲に駆られるo再び書斎に於いて青春の泉 が果敢なくも滴れたのを嘆じ,その渇に悩んでいるFaustの傍把旧:,尤犬に変身した. Mephistophelesがい為が,漸て正体を現わし,言辞巧みに彼の心を牢獄の如き書斎か ら甘美な人間生活-誘って契約を結ばしめる。 Goethe. の. Faustは失われた人間的生活-の思慕招腰られて魔法-接近したのは,. 「書斎の場」を詳しく読むと明らかであるが,伺こ」で彼が悪魔と契約を結んだ後に洩 らした述懐を引用して見よう。 Der. groL主e Geist. Vor. mir. mir. verschm畠ht, die Natur.. verschlie上主t sich. Des. Denkens. Mir. ekelt. Faden lange. La上i in den Uns. hat. vor. Tie fen. glhhende. ist zerrissep・, allen der. Wissen.. Sinnlichkeit. Leidenschaften. stillen ! Z.. 1746ff.. 彼は最早一切を知悉せんとする意欲を失い,知識には唱吐さえ催させられ,ひたすら に官能の淵に沈んで燃え上る欲情の満足を願うようになる。一般にFaustは限わなき. 知識欲ru'為魔法に赴いたと■言われている様であるが,以上述べた事よ中この点について 疑義がある。これは魔法知音ものを以って宇宙の佃秘,世界の根元が解明せられるペき ものとしない偉大なGoethe. の深い思慮と周到な用意よi)出でたものとも考えられよ. う。何れにせよ,魔法を修めた動機に閲しMarlowtのFaustusとの間に明確に相異 点が認みられる。 次にFaustusの知識欲について一言しよう。 と. The. Jeu'of. MoltaとDoctor. Marloweを語る時屡々. Tamburlaine ・1. Faustusの主題は沃々飽くなき征服欲,財欲,知. 識欲であると言うo而してこれは誤ではないo併しTamburlaineは承初学なる感服欲 に腰られてAsiaを席巻し来港ったが,第二幕第五場に於て王冠が象徴するrものを悟る.
(6) 6. 大. 郷. 雄. 一. 早,自己の真の欲望vt眼覚め,王冠に伴う権力を行使することによって自己のalmighti・ nessを泌々実感せんとしたの■である。篇雛L]彼は必ずしも本来残虐無道,鬼畜の如き人. 間ではなく,温情も理非も弁えた英雄として描かれているにも拘らず,捕虜とした Turk王Bejazeth. をfoot-stoolにし,鑑≡に閉じ込め,遂に自ら鉄格子に脳天を打ち. つけで慎死する一昭到らしめ7E:o又征服した王達を馬代'oにして戦車を牽かしめる暴挙を 放て行い,或はDamascus. を攻略してその住民を竪殺したのも,彼の意志と権力に屈. せぎる者に対しては,自.己のOmnipotenceを実証L,自ら之を実感せんとし7t為であ る。又The. Jeu) of MaltaのBarabasが総督Farnezeに全財産を没収せられ,その 邸宅を僧院にされると娘を尼僧にして邸宅に、隠匿せる金を奪還し,復讐の鬼と化し自己. に不利簸る者達を次々と金力で篭絡したi)或は殺害する。罪が発覚して取調べられると Malta Turk軍に通.じて 劇薬を用い死を装うて逃亡L,折から来襲せる の陥落を早 を殺してその軍を掌. め,功牢よって総督に任ぜられるo然るにTurkの将Calymath. 垣せんとし,自ら作っ発端穿である大鍋に転落して死ぬ。彼も嘩なる財欲の権化ではな. くし七omipotenc_eに魅惑され之を得んとする野望の犠牲に庖-たのであるoこの点 に於いて彼はShylockとは叩か趣を異にする。 Faustusの知識欲もヌ同じ欲求の現わ れであって,富がそo・・蓄盛に終る.ならば富の力を兵に享楽し得ない如く,彼の知識も全 能に通じるものでなければならなかった。これは既に引用した彼の言葉よ;:JF月らかであ るo以上三作に描かれている欲望は矧浪大を求める三種の異れる欲望ではなくて,その 根底に於いては全く等のい.ものゝ形を変えて発現された姿と見るべきであるo我々はこ ゝにMarloweの人と思想の特異性を感ぜずには居れない。之に反してGoethe を仰ごうとする迄の. Faust. a)毒杯. は純粋な求知精神にのみ燃えていたのである。 Jehovahの名. 扱魔法を修めたFaustusは夜半暗き森に入-!),大地に魔法円を描き,. Mephi・. を誌し,異教の邪神聖者を諭名し,星宿を象る記号を認ため。呪文を唱えると. 我が魔力の効験と思って早速意の如く腰任しようとする. stophilisが忽然と現われるo. Mephist.は,自分はLuciferの僕であるからその許可を. がそれは彼の誤解であっ夜。. 得なけれはならないoそれに自分の.自由意志で来たのJだ,涜神の〉言を吐いた;)魂が地獄. に堕ちる様な皐をすると飛んで来るのだ,だから意魔を呼ぶ近道はTrinityを棄てる Faustus. ことだ,と答える。既に自分が魔道に入ったと信じている. は「俺には魔王. Belzebub以外chiefはな いo地獄に堕ちるのは少しも怖ろしV,と思わぬ。地獄もElizium も同じ事だ。俺の魂は哲学者と共にあるのだ。だがそのLuciferとは何者か。」と訊く と,. Mephist:Qj:,轍慢と野望の散に天国を追われ,今は全てのSpiritsの支配者であって,. 自分も彼等と運命を伐にして地獄で責苦を受けてV,るのだ,と答える. 何にして地獄から出られたかと看ねると, Why. this. Thi.nkst And Am. thou. tasted not. is hel, that the. tormented. am. nor. I who. eternal with. l out saw. of it: the. io車esof ten. face. of God,. heauen,. thousand. hels,. Faustusは,如.
(7) Doctor. In o. being. depriv'd. Faustus,. which. strike. a. blisse?. of euerlasting. 1eaue. friuolous. these terror. 7. Faustusに就いて. to. my. demaunds,. fainting. soule・ 1.312ff.. と思わず弱気を示すのを見て,彼を叱柁し「俺の如く剛毅な心を持って,永遠に得られ Lucifer. ぬ天の書びは軽蔑せよo俺は神に反い如ゝら永劫の破滅を受けることになった。. 潜前. が二十四年間vol.uptuousnessに耽けなせてくれるなら魂をやると言ってくれo Mephist・描承知して退去す. は俺6C)際として絶対服従する許可を得て来いo」と言うo るo. Faustusは魔力によって世界の\王となり,動く大気に椿を架して軍隊をして大洋を. 渡らせ,欧州とアフ.)カを連結して諸壬に貢扮を納めさせよう等と回天の大業を空想す るo. Faustusこの「剛毅」その雄大な志は最終場面に(於ける絶望し苦悶する彼の哀れVZ:. も弱くなる心と著しい対照をなす様に描かれている。 Faustusは「自分の魂は こゝで-二の問題を取上げて前述Q)hr事柄を裏付けて見よう。 Danteの神曲に於いても哲学者は直ちに天国 哲学者と共招在るのrrだo」と言っているが, Marloweも哲学者は地獄に堕ちると考えている。宇宙の へ行くのを許されなかった。 本体を知申,神の本質を探ろうとするのは,人間に許される可からぎる不堪な罪である. と考えられていたQ)であろう。然るにFaustusの究極を知らんとする意欲は地獄に㌔下 るの7も辞しない程俄烈であ¢. ,何物も之を阻み得なVIQy'を証明しているo彼が魔法に赴. いた動機はこの言葉にも端的に示されていると言い得よう。 次にVOluptuousnessを求めているが,それに続く楽しい空想の′独白で語っているの. は,絶対的な力-の憧燥であって単にSenSuOuS はない。このvOluptuousnessはgratification modes. of life and. 彼の行動(Sc. vii-Sc. Pleasureに耽溺するのを求めたので of all. desires. or. of、 all. appetites,. conductsの意に解す可きである。これは又希望が容れられた後の xii)を見ても半陀。従って彼の求めたのは実はomnipotenceで. あっ:たと考えてよい。 Mephistophilisに豪語を放ったFaustusが再び書斎-帰ると,不安懐疑矛盾に苦め. られる.魔法を続抄るのは神から心が離れる事であり,その必然的な結果は地獄-堕ち. るのに外ならない。そして信仰d道から卵Lプと為救われ得ないならば,寧ろ決醜悪魔を 信じて蹟を返す空いo. ひたすら自己の求むる所に随って行こうと決意するo. Marlowe. は心理描写を強く印象的和行って,同時に主人公の性格を明確に浮彫して示すo. Faustusの耳に声あって「魔法を棄てゝ神に返れ。」とたしなめると,翻然決意を変え ようとする。次の隣問にほ,自分はもう神の愛を失っで了ったのだ,自分の奉仕する神 は自分自身のapPetiteなのだ,と自己に忠実たらんとしてその,進む可き道を凝視するo. 神の愛の代りにBelsabubの煙が注がれている醐だと思って,この魔王咋神殿を建立し て寄進し嬰児の生温い血を捧げよう,と独語する.そこへGood. AngelとEvil. Angel. が再び現われて前者は「悔恨と祈南と俄悔によって救われる。」と光明を投げ細るo 後者は「その様なものは人間の妄想だ。狂気から生れるものだ。栄馨と富を考えよo」と.
(8) 8. 大. 誘うo. 郷. 雄. 一. Faustusは遂に後者に従って仕舞う。. 劇中屡々これ等二種のAngelが出現してFaustusの心を動揺せしめる。これは Faustusの互いに矛盾する二つの面の闘いを描く為に用いたMarloweの技巧である. が,独白によって表改するr場合生ずる単調さよゎこの劇を救い,素朴な観客把は深い感 銘を与え・T劇効果を増し,且つactionを豊かにして劇に生彩を与えるので,. Faustus. 劇に於いては成功している技法と云い得るoその象徴する所は夫々Faustusの良心と 欲望,聖なる神性と弱き人性の葛藤相割と解L得ようo-更に突き進んで伝統批信仰心. と理性的な求知新申,人間尊重四精神との闘争即ち中世的屈成宗教に対する文芸復興精 神の反逆とも考え得られる・o. Faustusが常にEvil. Angelの誘惑に屈するのは,彼が. 破滅の一路を辿ると云うこの悲劇の構成上当然であるが,之等対立せる精神の中前者の 敗北を意味するとも思われるo. Marloweの時代は宗教攻草-の過渡期であゎ,彼自身 既成宗教に対しで慎疑と冒漬の言辞を弄し,若し彼の横死がなかったならば,不敬罪に て処刑せられたであろうと目せられ,その死は天罰と風評された事を思V,併せて見るな らば,之等二転のAngelは表面的招朋托して作者の心中に於いては他の意味を有し ているのではなかろうかと云う臆測が生じて来るのであるo. 塊て深夜になりMephist・が来てFaustusに,魂を売るならば一生の間奉仕しよう と条件を提起するo彼ぬは彼の魂がLuciferに何に役立っか解らない。. Mephist.は. 「Luciferの王国を拡張する為だoJと告げて,彼の伽識欲を刺戟する帝を弄して血の証 文を書かしめようとするo. Faustusは誘惑に負けて,腕を刺すが血は凝固して流れな. いので「証文を書くのを血は厭がっているのかo」と自問する。. Mephist.が火を持って. 来ると叉血が流れて漸く認め終えるが, が現われるo. B;LE・にはHomo fuge (人よ逃げよ)と云う文字 Faustusほ神の許-は行けないし何処-逃げたらよいのかと煩悶すると,. Mephist・は・心楽しくなる所-連れて行ってやろう,魔法には不可能な事がないと云 って,. Fanstusの全能を欲する心を撹き立て・遂に証文を手交させて契約が成立する。. 証文にはMarloweの絶対服従と,二十四年経た時, 切与えろと規定してV,為o. Faustusは霊魂も肉体・も其他一. Marloweはこの場面に於いてもFaustusの碍緒遼巡する心. 軌血と文字に具象して,畏怖と戦陳の劇的効果を巧みに挙げている。. Faustusは当初か. ら心に潜中「地獄とは如何なるものか。」という不安な疑念を孔明しようとする. Fau・ Tel. First. me・. Me.. where Vnder. Fau. Me・. Hell ln And. I, but. we. one. bath. are. where the. that. place. about. nor. of these. and. we. for. euer.. circumscrib,d. for where. hell is, must. elements,. remaine. is. we euer. hell,. call. hell?. men. about? bowels. tortur'd. place,. thee. with. heauens.. limits,. no. selfe where. is the the. Within. Where. will I、question. are. be:. is hell,.
(9) Doctor. And. to. And. euery. All. places. Fau.. Me・. conclude,. when. creature. Shall. Come, I・ thinke. Faustusに就いて. be. world. shalbe. purified,. hell that. is not. I thinke so. all the. hell's. 9. a. dissolues,. heauen.. fable.. still, till experience. change. thy. minde. 1.547ff.. 併しFaustusには地獄町堕ちるなどは考らえれない。まして霊魂のみでなく地上で滅. びる肉体も地獄に「Fって苛童を受けると云うのは,彼の理知を以っては到底信ぜられな いo. Mephist・によると彼は地獄に堕ちて,今地獄vz=いるのだと言う。この世の申で普. 通人と変らぬ言動をしていても備地獄にいる事になるならば隣るるに足らないと安心感 を覚えるoこのMephist・の地獄観は興味深く注目に.値するので,以fこの間題に触れ て見よう。 希臆神話では, 洞穴であるo. 01ympusの神々と争った巨人族が閉じ込められたのはEtna山下の. Erosの失に射られたPlutoがDemeter. 。か娘Persephoneを恋し,之 を捜し去って北部SicilyのKuaneaiに偽る川の畔-来て矛で大地を叩くと,これが. 開き冥界-降bて行く。又Eros. ctr).恋人PsycheがAphroditeの席題によわ冥府-箱. を携えて行く話がある。洞穴を通って行くと三頭犬Cerberusや冥土の渡し守Charon がいる。. Heraclesが地獄の番犬を連れて来る条bもある。又PerseusがGorgon退. 治に行く時身隠れ甲を欲しい思い,. Atlasに・. Gorgonの頭を見せて彼を石に化しその. 永劫の苦しみから救うと云う約束で,彼の鳩vcj甲を取って釆て貰う。何れもその所在は 明催でないが,冥府は下界,大地の底と考えられ,死者の国であって執政に於抄る罪科. の報いを受けべき所謂地獄とは異るo 北欧神話に於ても同様で,神々に愛せられたBaldrがLokiの裏切咋はって,やど ・;)木の矢を射られ死人の世界-去ったのをHermodcusが連れ戻しに府くo冥府把は高 い門があわ,怪馬に乗って跳び超えて中-入ると,冥府の女王は世界中の人々が皆Baldr の為涙を流したら帰してやろうと約する話がある。ここでも夜見の国の概念に止まって いる。. HomerのOdysseyは妖女Circeに勧められて冥界佑住む占師を訪ねる.其処-到 達するには北風に乗って極洋(Oceanus)の流についてそれを下ったとあるoこの奈落 Vdは潰苦を受抄ている者も然らざるものもいて,完全に懲罰の場所としての地獄は考え られていない. VirgilのAneidでは,. Troyの勇将Aeneasが父に会うため死者の国-行く。. Vesuvius山の近くにある洞穴を入口として通が下界に通じているo近くの大地が割れ 硫黄の噴煙が立ち上カ,又毒気を吐いている湖がある.この道を通って下¢て行くと復 響,憩軌. 飢餓,窮乏等のもの遅から成る群集が居わ,漸て黒い河Cocytusに出て. Charonが守っている。. Cerberusも見られる.大勢の死者が居て,. Troyの勇士達も 交っているo侍進んで行くと道が二叉になわ,1一つはElysiumへ他は地獄へと通じて.
(10) 10. 郷. 大. 雄. 一. いる.地獄の入口に堅固な門があって,傍の鉄塔吟復讐の女神がいる。門円から罪業に・ 対して責苦を受ける死者遷の苦悶の叫び声が聞えて来る。これは大体Danteの神曲に 描かれてある地獄に近似しているo Luciferoが. Danteは,敢初天地が出来た時は北半球が海で南半球ほ陸であったが,. 天国から落ちる時陸地は彼を換れて北半球に逃けざ,海が南半球の大部分を占め,彼が落 ち込んだ地球の土も彼を嫌って逃げ,高く聾えて頂上ぬ楽園を有する浄罪山とLなi),他 Luciferoがその主になったと考えるo. 方地球の内部の空所が地獄となり,. 地獄は倒置. せる円錐形をなし地獄圏外を加えて十圏将分れ,罪科の種類に/3:って色々な拷問苛責を 受けるのである。 MiltonはParadise. Lostに於いてIieaven. 地球の極よ:v)天迄の距離の三倍の所に地獄があ1o. or. the. Empyrean. と地球があって,. ,地球と地獄の間に-はchaosがある. と考えている。 以上述べた事よi)古代人や中世人には,幽界及び地獄は地下か或は大洋の涯の深測 か,何れにせよ大地に接続する地域にあると想像せられたものであり,速か後世に倣っ. てMiltonは宏大なる宇宙の空間中招存するとした。又これを懲罰の観念と結び付けた ものは,地獄の中に.懲罰を加える者と之を受くる者とが対照並存せしめざるを得なかっ たo所が近代人の中には現世に天国も地獄も存する′と思惟するものがある.即ち現実の. 人間社会に於いて貧困や飢餓や病疾等種々の人生苦に曝ぎ坤吟する人間の姿を以て地獄 と観じ,富貴や栄誉や健康等を以て天国とするのである。この考え方はMarloweの時. 代把も,主知的,理性的にして自由思想を持ち伝統的中世基督教の世界観に共鳴し得な Sherborneの牧師Francis. い進歩的なる人々の間に偲懐かれていたo. Scarlettが偶々. -靴屋からかくの如き見解を有する人達がいると聞いたが,それは当時当局から警戒の Waiter RaleghとそのCircleを指すものであるの 限をもって監視せられていたSir は,この資料を所載している The. School. Philip. Henderson. の. ChristsPher. of Nightを一読するならば容易に推察し得るであろう。. Marlou)e. の一章. Marloweもこの. circleに関係してV,たが彼がMephist.をして語らしめている地獄観は如何なるもので あるか。. Mephist.が「地獄には限界がない。区劃されていないo我々のいる所は地獄である。.」 と述べているのは,′地底にも,深淵にも,宇宙天空の一角にも地獄として境界線を有す る一定の地域がないという事であi). ,人間の苦息のある所,魂の■・ある所にのみ存在する. 換言すれば,地獄は人間の心の申にあって主観の問題であるというに等しい。然もそれ. は又貧困,飢餓,病疾等の外的条件によって決定されるものでもない。人は同じ状態境 遇にあっても皆その心は同じであi)得ないo盃動し悲嘆し歓喜する人間の婆を見ても, 眺める人によっては悲劇とも喜劇とも観ずるであろう。飢餓や病苦に坤吟する人の中に は自ら地獄にあ:v)と思うものもあるかも知れない。それは一理ある事であるo併し人間. にも更に深刻なる苦悶がある筈だo 神の名を目潰したi). ,. Mephist.が地獄に堕ちる条件として挙げたのは,. Trinityを棄てる事であったo而して彼は神の存在を否定しない.
(11) Doctor. ll. Faustusに就いて. 彼は. 計わか自分Qj仕えるLuciferを天国よ.i)追放したその強大なる力を酔っているo 神の罰によって天の嘗びを失った由を思うと弱くも心が挫け恐怖の念にさえ磨られるo 然も反抗せずにいられぬが故に無力な反抗を続けているのでああるo神に報復するには. 神に背く魂を一つでも多く獲得するとV,う消極的手段以列はないo人間に最も深刻なる. 苦問を与えるものは罪の意識であるoそしてこの意識の最大怒るもの雌神に背反した日寺 に覚える罪悪感でなければならない. こそ,自らを地獄にあると言うのである。. Mephist.自身この限¢なき苦悶を嘗めていれば Mel二)hist・の地獄観の中心思想は神-の信仰. を失った状憩にある心が地獄であると要約し得るのであろうo従ってFaustusも神か ら離れた瞬間に地獄-堕ちる事VZ:なり,神に背いた魂を-ヴごも多く得るとそれ丈 Luciferの王国が拡張せられると云う考えがこQ:1様に解釈すると真意が判る。併し人間 の魂が悔恨と俄悔を通して噂発することによって罪悪感から解放され,地獄から逃れ得. るのをFallStuSは悟らない。ここに彼の悲劇の必然性が生れてくるo要するに人間生活 の悲惨なる外的状態を地獄の要因と見倒す思想が社会的観方であるとすれぼMephist・ の地獄観は人間中心的であるo我々はMephist.に悪魔よi)も寧ろ人間をより多く感じ る所以はここに存する。. GoetheのMephistopheles. も極めて人間的であって詩人の. 一面を代表しているが,中世伝説の悪魔にかくも豊かな人間的属性を与えた功は先ず Marloweに帰さねぼなるまい。佃同じ事が天国に関する彼の考につV.ても言い得る。. 第六場Qj冒頭に於いて,契約よi)数年経た或る白Faustusは天を仰いで悔恨の情に打 たれていると,. 天は. Mephist.は「天をその様に光栄あるものと思っているのですかo. 貴方の半分程も,否地上に生活しているどの人間d半分程も美しくないのですよ.」と 言う。. Faustusは理由を乱すと「天は人間の為に造られたものです。だから人間の万. が盛れているのは当然ですo」と答える言葉の人間中心的な意味を省察するならば容易 に首肯し得るであろうo. 当代の新思潮は衆知の如く人間の再発見であり人間性の解放であるo中世に於Vlて宗 教ql奴隷として抑圧された人間の魂の解縛である。希隠文化は現世的であi) あ-o. ,人間的で. ,人間美の表現が芸術に於いて至高の目的とされた。それ-の復帰がMarloweの the. 時代の精神である。進歩的な先覚者にして, fully しめit:. incarnated. the. spirit 6f the. ltalian. one. English. poet. in. whom. was. RenaissanceとHendersonをして称えせ. Marloweが,この新運動の核心をなしている人間性の覚醒に深く共感したのは. 察するに余力カミある。希暇人は神々に人間の感情を賦与し7E:が,. Marloweは悪魔に人. 間の思想をinspireした。而して彼がMephist.をして語らしめた地獄観は希臓文芸 の投影糾可等受けてV'ないもo,1であわ,類例を見ぎる独創性を有し,特色ある人生哲学 世界観を成して居i). ,彼が神と人に就v'て如何に深い思索をしたかを示しているo GoetheのFaustに於いては地獄の観念は朋らかでない。劇中これ.VC言及せる部分. がないからである。併し最初Mephistophelesが主の許を訪れて親しく相語少賭をする. 場面よわ推して,彼は神に反逆している対立的な存在ではなく,神は一切を包撤する絶 対至高なるものとされ,. Mephist.はFaustを高めようする神意を実現する為の一手段.
(12) 12. 大. 郷. 雄. 一. になっているかの感を懐かしめられる。そして全知全能なる神の特性よゎこれは当然な 事で.bわ,. Goetheの考え方ほ正しい。. 次に悪魔との契約について一言する。 生活-復帰し, あるo. GoetheのFaustが死の魅勧ゝら逃れて人間. Mephist.が言辞巧みに人間的な歓びQj世界-誘ったのは前述の通わで. Mephist;は「あなたが死んだら私の奴隷になるという条件で,生きている間は. 私があなたの奴隷になって・どんな快楽でも事業でもさせるから契約をしないかo」.と 説きつけるo. Faustは若しある矧司に向って「一寸待て,患前は実に美しいからo」と. 言ったら鎖で縛られて死んでもよい,と・言って契約を結ぶ。 U□d Werd'ich. zum. Verweile. doch!. Dann Dan□. Schlag. Augenblicke du. magst. du. will. ich germ. bist. auf sagen. so. zugrunde. !. :. sch6n!. in Fesseln. mich. Schlag. schlagen, gehen! Z.. 1698ff.. FaustはMephist・の与える快楽等には心を奪われることはないと,私かに確信し, 文責にかくの如き瞬間があるならば,この世の至楽を享けたのだから,生D)目的を達し た事にな-o,死も本望であると思うのであるo 授二つの契約を比較して見ると,. Marloweに於いては契約そのものがFaus亡usの悲. 惨な最後の運命を決定して了う。何故ならばそれは単に時の問題になったカゝらである。 従って希駄の悲壮劇に幾分接近し,人力を以っては如何ともすべからぎる激流に押流さ. れて,破局-の一路を辿るのIである。併し希臓劇と異る点は,屡々神の声,良心の噴き を聞き乍らも′,救済の可能性を自ら否定しfE,.r褒疑的な精神,又は自己の他の一面の欲望 に忠実ならんとする自我尊重心,及び一度は心性んで契約を破棄せんと傾くがMephist. の脅迫によって敢えて為し得ない心,即ち雀卓の性格がこO.悲劇の深奥に潜む静大の原因 となっているo彼の怖るべき破滅を不可抗力なる軌道にのせたのは,人間の意志と力を超. 絶する運命ではなく,実は彼自身であT)彼の性格であった。希晩悲壮劇の庄人公達は超 人間的な運命の翻弄に遇い,限;)ある人力を以て之と戦い空しく屈して行くが,. Faustus. は自ら運命を作わ矛盾撞着する複雑な性格を懐いて之と争い敗北し続けて行くのであ るo彼の運命と、の争Fj:,自己との闘いであり,自己と闘って敗れたのである。. Marlowe. はこの闘争の経過をその巧妙なる心理描写によって展開してくれる。この意味に於いて MarloweのFaustusほ著しく近代性を有し,この種の劇の先駆となったのであるb GoetheのFaus=こ於いて株Faustの性格が幾つかの事件を契機に変貌して行くo. 毒杯を仰いで自ら命を断とうとする迄の彼は知識欲に燃えていた。復活祭の鐘の音を聞 いて地上の生活に引戻された彼は人間的享楽を人生の目的としているかの如く見える。. 更にMargarete に遜超するや真実の愛把眼覚め,その死によって我が心の求むるの琴 快楽でないのを悟る。. Heleneを得て奔放なる生活を清算し,彼女の死後美しき国土建. 設を畢生の大業とする高遠なる理想の牝身となる。主知主義よわ浪浸主義,古典主義,.
(13) Doctor. Faustusに就いて. 13. 理想主義と変化の過程を辿る。併しそれは単なる変化でなくて,転機毎に収穫が総和さ. れ,成長し発展して行く。所がFaustusは唯懐疑と苦悶の.申に反転を続けるのみであ るoそこに文彼の悲劇性が存する。このI両者共通に漁らぬものあるとすれぼ詰に最高と :殴大に求める心であるo 契約後の FaustusはMephist.を伴って各地を巡歴し魔法の/)jを発揮して人}-,を驚 博させLj#は讃嘆せしめるo Rome. に赴き. ParisやRheinの河畔を通わNaplesやVeniceを訪れ,. Popeの私室で客人を饗応する食卓からLu海d珍味を奪い取って大騒ぎ. を苧せた-o (Sc・ vii),葡萄酒商人を誠かして杯を隠して悪戯をし(Sc. bruck. の皇帝Karl. ix),独逸はInns-. Vの宮廷で冥府よわAlexander大王とその妃を呼び出したり,. Faustusに反感を持つ1一騎士の穎に魔の角を生やして懲しめた-o. (Sc. x),藁で拾えた. 馬を伯楽に売却し,員手は禁を犯して河に乗Iy)入れた為溺死しそうになり!怒って代金 を取返しVZ:釆て眠っている. Faustus. の足を引くと,それが抜け落ちたり(Sc. xi),. Vanholt侯邸で真冬に常夏の固から一瞬呼して葡萄を取寄せて夫人の所望を叶えたわ する(sc.xii)。この間Sc・. iiiではFaustusの魔法書を盗み出した宿屋の馬方が茶番. 劇をやったわする。. 一体Faustusに挿入されているfarce・的要素は厳粛なる劇のテ-マにそぐわないとの 非難もあわ得るが,この様な戦懐的な又強烈な悲劇にあっては,極度に緊張せる場面が連 続しては観客読者は精神的圧迫把堪え得られない。従って上述の各場ほ, の. Faust. C. F. Gounod. vz:於いて円舞曲が歌曲全体の緊迫せる気分を超和するため挿入せられたのと. 同じ役割を果していると考えてよV,。又Elizabeth朝の演劇は一般公衆の観客を予想 する場合カミ多い故,種々な観客層に娯楽を与えようとする点が作劇に当って考慮せら れたのを思うならば,一概に非難し去るのは避けたV,。更に又之等の各場面に於いて Faustusが全能を十分に享受したのを示すMarloweの作意とも解釈出.来るのである。 唯テ←マに比較的関係の薄い上述の場が劇全体の場数の三分の∵を占め,然も連続して 劇の中間に置かれ,感情の高潮部分を全く欠いているのは劇構成の技巧上多少問題を残 すG妹でないかと考えられる。 兎角する中に二十余年の歳月が過ぎ,. Sc・ Ⅹiiiでは今や弟子Wagnerが登場して. Faustusが彼に所持品を悉く与え,教子達に酒宴を開V,てくれるのは,死期が迫って いる為だろうと独白して,劇のCataStrOPheの近き事が暗示される。. Faustusが学生. 達を連れて釆て一同世界一の美女について談じ合うが希臆のHelenの右に出ずる者な しと云う結論拝なって,是非彼女を幽界から招き出して欲しいと積むo 年の交誼に報V,る為この厳を容れるo. Faustusは′多. 奏楽と共に現われたHelenんの艶麗崇高なる婆を. 見て一座の者達控その実に打御L感を久しうするのみであるo. (伝説のFaustでは隣人の医師)が登場し,. ⅠⅠelenが消えると-老人. Faustusを神の道に引戻そうとするが,. 彼は自分の魂の救済を絶望してい√るので空しく帰る。併し激しい悔恨に襲われていると. Mephist・が釆て,その様な気持になるのは裏切心を起したからだ,身体を八つ裂きにして やると脅かし改めてLucifes招背かないと云う誓を血を以て立てさせるoかくてFaustus.
(14) 大. 14. 郷. 雄. 一. は救わるべき最後の機会を逸する。彼は今生の偲い出に最後の願としてHelenをparaMephist.は早速叶えてやる. moljrにしてくれと積むと, 故で-一言したいのは,さきにFatlStuSが契約を結んだ直後独逸-の美少女を嚢にし. てくれ,と輯むとMephist.は若いて「何ですってo奏ですって。結婚なん七玩具の様 な儀式ですよ。その代りセenelopeの憾な貞女でもSabaの様な賢女でも臥床に侍らせ ましよう。」と言いながらも,伺言葉巧みに彼の心を知識欲とomnipotenceを求める. 心を刺戟して二 結婚を忘れさせて了ったのである. (D心. これ疲結婚に、よって結ぼれた二つの魂,その中から生じる至純な愛はFau`stus を浄めて,悪魔の道から神の道-引き戻すの倒布れて,ひたすらに官能的快楽に濁れせ しめて邪道を歩ませようとLしたものと解釈したい。尤も之と反対の推論も成立する。即. ちMarloweはMephist.の[jを磨りて結婚を噸弄し否定したのだ,とo併しTamburlaineに於いて夫と同じく畦の■鉄格子に儲天を打ちつけてその後を追ったZabina,夫に. 殉じようと先ず我が子を火中に投じた後,将に自決せんとするのを敵将に捕えられ,その 口説に会い,不死身の霊薬を興えると称しその実験として自分由咽喉に塗i),相手拓突 かしめて貞潔を全うした01ympia,又Zenocrateと深く愛し合っていなぉら,被女ゎ Tamburaineの結婚に対する態 父の承諾と臣下の承認を得る迄待って之を王妃とした 皮,又Zenocrateの死に遇うや狂乱せる如き激しい切々たる慕情,之等は全て最も美. しい夫婦愛讃美の物語であるo以上より推して,後者の推測は正鵠を得ているとは召し 難く,. Marlowe. は夫と妻との愛が,両性関係に於ける最高の姿であ:v),そこよわ人間. の魂を浄める力が湧き出ずると考えていた,こO,様に推論する万が真実に近いのではな かろうか。今やFaustusがHelenを求めたのはwifeとしでごはなくてParamOur としてであったo故にその望が許されたのである。若しwifeとして要求したならば無 論拒否されたに違いない。何故ならばFaustusの魂が救われる契機を作るからである。 これは冒頭のChorusに述べられているこの劇のplotに反する事になる。兎も角我}-, はこの二語Q)I.使い分けにMarloweの結婚観を覗う緒口を掴みたい。. Goetheがこの間題を如何に観たかを考える前に悪魔と契約した後のFaust動静を眺 める事にしようo先ず彼はMephistophelesにLeipzigのAuerbachの賓-導かれる が酒乱痴戯による感覚の麻樺は彼の心を惹き得ない。次Vz:魔女の厨に伴われて行き秘褒 にはって青春を蘇らせられるo. この厨ば居る動物達は彼が官能的快楽の.生活を続けるの. を表わす。得でMargareteに遇うと忽ちその美しさに捉えられ,最初は官能の陶酔を 求めて彼女に近付くが,漸て可憐拓して清純無垢な少女の愛に浄められて真実の愛に根 覚める。妹の素行VZ:i'関し兎角の風評を耳にした一徹な軍人である彼女の兄は. Faustと. 闘って殺されると,法の追求を逃れようとMephist.はFaustを敵って町を去少Harz の山中-赴くo'Walpurgisnachtの場であるo深山幽谷に大勢の悪魔魔女遵が淫蕩な歌 と踊に興じている。. Mephist.は背く美しい妖女によってFaustを低劣醜悪な逸楽に誘. 惑しようとするが,彼は遂にこれに負けず, る。. Gretchenに対する思纂に堪えられなくな. Mephist.を促して再び町-帰って見ると彼女は母親役し嬰児殺しの・大罪で牢獄に.
(15) Doctor. 15. Faustusに就いて. Faustは深い愛情よi)湧く言葉を連ね脱獄を勧. あって明日処刑される身になっている。. め,彼女は之招応じるかの如くになるが,最後に思い返し死を以って罪を噴い,神の 裁きを受ける決心をするo. 今ほ己むなく"Heinlich,甘einlich・"と別れを惜む声を後. に去って行く。このJ・時Mephist.は「遼,れは処刑だo」と言うとFaustは「救いだ。」 と云い返す。天上にも声があって「救いだ。Jと叫ぶo. Mephist・は噴罪と救済にiよって. Gretchcn. Faust. の魂が永遠の生を得るのも理解しないし又. Q)'魂は彼女の魂と堅く強 Mephist・. く結ばれて肉体的享楽を超絶した境地にあったものも察知し得ないのである。. はFaustを女色の虜にせんとして自ら敗因を作ったのを悟らない0 Faust. の第二部では対社会,対国家の問題を澱扱い,個人的苦悩からの解脱と社会. 理想顕現に向って彼の心意が如何に発展して行くかの過程を示している。冒頭の場で Faust. そして新Lい生命の力を感じ. は美しい自然の懐の中で傷いた心を癒しているo. 高い理想に燃える。次いで魔法の遍歴を行って衆人を驚倒させるが,第二部を美しく彩 Pfalz皇帝に謡わるゝまゝにその豪華荘麗な広 っているのはHeleneとの交渉であtるo 間に彼女を現出させる.こ(D希隠実の典型に打たれたFaust械今迄に見た美女達は実 其後弟子Wagr:erの人造小人. の泡沫に過ぎない様咋感ぜられて,憧慣に胸を焦がすo. に導かれて彼女と再会し,生活を倶にし一子を挙げるが,この子Euphorionが-一日天空 Heleneも我がf-の後を追って去る.. に舞い上らんとして墜死すると,. GoetheはHelene. によって希臓の古典芙を象徴せしめ,彼自身の古典芸術遍歴及びその収穫を示すもQ:jで Gretchen把より真実の「愛」を知らたFaust. あろうが,暫く作者を離れて語るならば,. はHeleneによって完成せる「美」に開眼されるのである。而して不蘭奔放な生活と訣 別し,典雅沈静にして調和と均斉,法則と秩序を重んずる生活VC・入ったもので,次の高 き世界に上る一つOl階梯を経る占. Faustは既拓理財によって一国の窮乏を救わんとした-oしてその関心は国家社会に向 Helene. けられて釆たが,. を失った悲しみの中から次第に事業欲が燃え上って,自己の. 進むべき道を悟り,彼に残された回天の大業をなそうする力の湧くのを感ずる。 dieser Gewahrt. noch. Raum. zu. Erstaunenswiirdiges Ich. fiihle. Kraft. Erdenkreis Taten.. grolミen. soll geraten, zu. kiihnem. Fleil主. Z.. 10181庁.. この欲望が限りなく強まTo,この力の意欲が益々高潮すると一切を自己の掌中に収め, 一切を自己の力で成就しようとするo事業が全で亡あIq)些hたる名声は願るに値しなく なる。 HerrsChaft Die. Tat. gewinn'ich, is alles, nichts. Eigentum der. !. Ruhm. Z. 10187-88. Herrschaftと言い,. Eigentumと言い彼の求むる所は,. MarloweのFaustusの.
(16) 16. 大. 郷. 雄. 一. omnipotence把接近して行くo併しFaustは眉己の快楽の為にこれを欲するのではな. い。彼は快楽は人間を卑しくする2=JI苦る境地に到達しているのである。 ‥‥‥GenieL3en. macht. gemein. Z.. 10259. その必然たる結果は万人の為に理想的なる国家を建設する事であるo彼は魔法の力で 借主の軍を蹟滅した勲功が報いられて潜られた領土に眉己の理想を実現しようと決意し 一切の快楽を断って大業に精進努力を続けて行くo -E]今では盲目となったFaustが 自分の宮殿の入口に立って将来の国土建設を夢想していると,その心眼に人民が悉く平 和に生を享受し得る地上の楽園がまぎまぎと映ずる。彼は胸中に幸福感が迫わ思わず禁 断の言葉を発して倒れる。 要魔との契約から見ると一見Faustの敗北に終っ糊口くであるが,この「美しい瞬 間」はMephist・にlよって与えられたのではなくて,彼自身の高貴な魂が創造したので あった。かくて賭の勝利は主に帰する。. Mephist・は約束に従って彼の魂を得ようとす. るが,天使達が守って運び去わ,噴罪したGretchenの霊に導れて天国に昇って行くo Faust劇は「永遠招女性なるjもの(das う詞で終っているが,永遠の攻性によって. Ewig-weibliche)我等を引いて行くo」と云 Symbolizeされた. Gret亡henの清らかに. して深V,愛はFaustに真実の愛を知らしめたが,漸て彼の愛は人類愛に迄成長して行. った。愛に;は自己しかその対象としないもの,自分の家族や友人に注がれるもの,ある 団体や郷土に対するも又世界人類全体に向けられるもの等種々あるがその愛の大きさは その抱擁するもの」大きさに比例する。. Faustの人類愛は-少女の恋人に対する愛よわ. も遠かに宏大な筈であるo然るにGretchenの愛はFaustを天国に導くに値したのは. 何故であるかo項罪せる彼女は嘗てFaustに愛せられたGretchenではなかったのであ る。彼女の愛も亦成長発展していた。兵実と持浄を求め神の恩寵を知i) にまで高められていたのであるb. ,神に対する愛 Goethe自身は常に永遠の女性を求めて之を得たかと. 思うとその都度幻滅を繰返し続けた詩人である。若しGretchen し,. にlして脱獄を敢行 Heleneに代ってFaustと生活を営んだとしたならば,そしてそれに終ったならば. Goethe抽彼女を永遠の女性と呼ばなかったであろう。 表徴である。 するo. Heleneほ希隠芙及び古典芸術の. FaustがGretchenとHeleneに求めて得たものは,自らその本質を異に. GretchenはFaustに愛を与え,Heleneは芙を与えたのである。そしてGoethe. 自身は長い愛情の巡礼の後にGretchenに永遠の女性を発見した.彼が結婚と云う形式 に関しては劇中何等言及していないが,清純VCJして真実なる深い愛は人間の魂を高貴に するとの思想は期せずしてMarloweの結婚観と・一脈通じ,然も結婚形式の有無によっ て愛を区分した後者の一見解との間に相違点が見出され,一人は多くし過ぎた結賠に失望 し一人は遂に要るに到らずして結婚をidealizeしたのを思うと輿深い。. GoetheのFaus=こては神とMephistophelesとの賭は予期通り神の憐となったが, MarloweのFaustusは如何なる運命を辿るであろうかo最後のsCeneに思いて今や 約束の期限が刻々と迫り,. Faustusは友人達に別れを告げて書斉に入るo彼は限わない.
(17) Doctor. FausttlSに就いて. 17. 悔恨と恐怖と絶望に襲われて苦悶の叫びを上げる。 Ah. Faustus,. NoⅥr bast. thou. but. A□d. thou. must. then. Stand. stil you time. Faire. Nature占eie,. A. That O. The. See. Yet. see. drop. rend wil. and. noctis. come,. to. Christs. where. saue. would not. I call. my on. God:. and. saue. eq14i. :. my. day,. his. heart. for naming. him:. oh占pare. clocke be. must. pulls. me. wil. st〔ike,. damnd. downe?. in■the丘rmament.. streames. soule,. soule,. the. runs,. who. blood. make. but. naturall. Faustus. and my. and be. a. stil, time. mooue. vp. neuerlpcome:. houre. a weeke,. curite. wil. of heauen,. midnight. repent,. liue,. perpetually: Spheres. let this. or. may. starres. Iie leape. damnd. to. rise, tise agalne,. moneth,. Faustus. diuel. O. Ah. a. lento, lente. That. One. cease,. may. day,. yeere,. be. bower. euer皿00ーulng. That. Perpetuall. bare. one. halfe. a. of my me. drop,. ah. my. Christ.. Christ,. Luclfer! 1. 1419ff.. このsceneに於いてMarloweはその詩人としての本領を発揮するo る詩句よわ高潮する緊迫感に重圧せられ,. Faustus. 我々は荘重な. の苦悶を我事の如く覚え,彼の. heroicspiritがかくも弱々しくなるのをすら怪しもうとはしない。永劫の地獄から逃れ ようとしで悔恨陳悔しようと思っても最早残された「時」′がそれを許さないo「ま油,顔 るやかに,速やかVZ:腰けよ,夜の駒よ。」と絶叫しても時の進行を止め得ないのを知って. いる。天空に流れるキ')ストの血一滴でも半満でもがこの魂を救い得るのに,と思って 聖き名を酔夢する哀れにも惨めな姿。彼は必死になって最後の足寄きを続ける。千万年 地獄にt堕ちていようと厨後には救っでFさる様に神に祈i)ながら,すぐその後で一旦地. 獄に沈んだら救われ得ないと絶望する。霊魂輪廻鮎ミ正しいなら,この'魂が身体から抜 け出で何か獣把なる万がましだ。何故なら獣が死ぬとfour. elementsの申に消えるか. らだと云って,自分を生んだ親を呪う。嘗ては地上の神たらんとしたのに今や禽獣を義 望するにさえ到るのであるo Faustusは地獄の門に一歩;q々接近していると感じているのである。. DanteAの神曲. を研いた者は,その地獄の門に話されている「この門に入る者は一切の希望を嚢七よ。」 と云う恐ろしい文句を忘れ得なt,だろう。. Faustusは門に入らずして-如の希望を棄. てていたのである。否棄てる可き希望は魔法に入-iた時,叩ephist.と契 約を結んだ時, 失',て了った。彼は自らそれとは識らずして地獄内にあったと言い得よう。坂は虚た 地獄に在ってそあ苛茸を受けながら,地獄の爵VZ:怯えていたのである-o. 地獄はiEしく.
(18) 18. 大. Faustusの心の中にあった。. 郷. 一. 雄. Luciferの王国が拡けpられ,. Mephist.の地獄観が真実で. あるのが証明された。. 勝て十二時が響き渡って雷鳴が轟き,稲妻が閃くと悪魔達が登場して彼を捜し去る。 かくてFaustusの魂は悪魔の奪う所となわ,その肉体は地上から滅ぶのである。 Faustus. に親密感を覚えて実在人物であるかの如き錯覚を持ち,彼の魂はその後救. われたであろうか,今備地獄の苛責を受抄ているであろうかと懸念する人があったなら ば,それば判らない,作者は何も言っていないから,と答えるよ_-q)列ない。唯一つ明ら かなのは,彼の究極と絶対を探求し,全能を希求した精神は長く人類の宿命の中に生き て釆たと云う事であるb、換言するならばMarloweは人間性の永遠なる一面を描いたの. であった。人間の真理探求の熱情は特に近代科学の発達把よって着々と結実して,研究 の対象は極大よ亘)極小に亘申,生命の神秘すら究明せんと努める。全能を求める心は第 Faustusの夢. 二の太陽を創造せるQ)rみならず,悠久なる運行を続ける星辰に椿を架け, 想を実現しようとする。併し人類がその楽土を建設する為にこの精神を生かさずして, 徒らに. fellow. men. を自己に隷属せしめようとする支配欲の虜囚になるならば,魂を. 悪魔に売る結果を招くであろう。我々が神の恩寵を得る拓低如何にすればよいかはこの 二つのFaust物語から学ぶことが出来る。若し読者観客がそこに二つの作品が郷モに 対して有する意義を感じ,. moralを見出すならば,そそは芸術的価値とは何等関係が ないことではあるが,少しも差支えがないo何故ならばそれは彼等に許された自由であ 1o,特権であるからである。優れた芸術拭必ずしも自らその意図を有せずして,人間の. 心をpurifyしelevateし,又その求むるものを与えるものである。 MarloweのFaustusは「すくやかに伸びたかも知れぬ枝が勇i)取られ,一時は学. 者に成長したApolloの月桂樹が焼かれた運命は,賢い人達に梯不正な事は唯恐喫する に止め,実行せぬ様にと教えるo併し正しからぎる事は根深くして,不敵な文子に神の 御許しにならぬものをせよと誘うものだo」というChorusで終っている。これは一見 教訓的ではあるが,この劇は決して単なる教訓物語でも勧善懲悪の苦でもない(,人は径. 々にして互いに矛盾する思想感情を懐いているものセあるが,詩人は屡々意識的に或い は無識肘VZ:,自己に内荏し又は潜在している思想感情を,作中の種々なる人物に語らし b.て,自己表現の芸術的満足を得るものであるo potenceに倒する憧慣に.. Marloweの情熱を感じ,. に彼の思想の一端を競って米た。又Good. Faustusの無限なる知識欲,. omni-. Mephistophilisの地獄観や結婚観. AngelとEvil. Angelの争,. Faustusの懐. 疑と恐怖,苦悶と絶望に"atheist''Marloweの僻らざる姿を想像し得る。彼は自由思 想家であって必ずしも無神論者ではなかった.日常生活に於いて宗教や神を否認し,柿 聖なるものを冒涜する不敬の辞を弄したと伝えられるが,これは伝統的既成宗教の教義. 及び信者の軽信盲信に対する理性と科学精神の排戦とも考えられよう。彼はその作品に 於いては常に神の存在と霊魂の不滅を肯定している。併し理知をもってこれを実証し得. ぎるが故に懐疑し苦悶したのである.. Fantus劇はMarloweの内心の告白書であ_I.). 魂の苦悩の記録であると言っても過言であるまい。又ElizaDeth朝時代の進歩的な自. ,.
(19) Faustns. Doctor. 19. に就いて. 由思想家達が内面生活に於いて発した真実の叫びの木魂が響いていると言っても大きな 過誤でなかろう。最後に我々はFaustusの考え方及び行為の全てを是認し得ずその運 命に畏怖を感ずるとしても,彼に対して嫌忌を覚えず却てSympathyを禁じ得ないの. は,綬がそして作者が一切の濁陣と束縛から脱して精F申の自由を求めん与する普遍的な 人間性をその楓亘に酎ノているが為であると解釈せずには居れない。 附. 記. 原文の引用は下記の版に拠ったo但しFaustusのsCeneSの区分はBrooke版に ほないので便宜上一般に行われている方法に従った. ′rhe Works. of Christopber. Marlowe. ed・ by Oxford. Faust. Der. Tragi5die. Yon. C・ F・ Tucker Clarendon. Brooke Press. 1929. Goethe. Verlag. von. Philipp. Reclam. Leipzlg. )un・. Marloweの伝記に閲し最も重宝であったのは Christopher. Marlowe. by. Philip. Longman, Goethe. Green. の伝記及び評論に閲し主として参照したのは. ゲヨェテ研究 で-ある。. Henderson. 茅野諸々(第一書房). and. Co. London,. 1952.
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