Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№29:骨細胞のLamin A は骨リモデリングを制御する
Author(s)
奥平, 貴人; 中村, 貴; 齋藤, 暁子; 山口, 朗; 髙野,
正行; 柴原, 孝彦; 東, 俊文
Journal
歯科学報, 120(2): 216-216
URL
http://hdl.handle.net/10130/5171
Right
Description
目的:Capnocytophaga ochracea はデンタルプラー ク中に認められる菌で,滑走能を有する。近年,C. gingivalisは,Fusobacterium nucleatum などの非運 動性菌を「貨物車」の様に運び,これには,IX 型 分泌機構(T9SS)により分泌される滑走運動関連 タンパク質 SprB が関与するとされている。Capno-cytophaga 属は,これにより歯周病原性バイオフィ ルムの形成範囲を広げる可能性があるが,この動き が C. ochracea でみられるかは不明である。本研究 は C. ochracea に他の口腔内細菌を付着させた際の 動きを確認すること,それが混合バイオフィルム形 成に与える影響を検討することを目的とした。 方法:C. ochracea ATCC 27872株(野生株),T9 SS 関 連 タ ン パ ク 質 コ ー ド 遺 伝 子 gldK 欠 失 株 (ΔgldK 株),sprB 欠失株(ΔsprB 株)のガラス平面 上での動きを暗視野顕微鏡で観察した。3株それぞ れと F. nucleatum との共凝集,野生株と F. nuclea-tumの動きは各株を DAPI,Calcein を用いて蛍光 染色し,共焦点レーザー顕微鏡で観察した。混合バ イオフィルム形成への影響は,3株それぞれと F. nucleatumとの混合液を96 well プレートに播種し, 37℃,嫌気下で48時間培養し,クリスタルバイオ レット染色で定量することで確認した。 結果および考察:1視野内の大部分の野生株の動き は,顕微鏡上の温度を37℃に保つことで観察でき た。そ の 条 件 下 でΔgldK 株,ΔsprB 株は滑走能を 失っていた。3株とも F. nucleatum との共凝集能を 認 め た。C. ochracea と F. nucleatum の 動 き は 観 察 中の蛍光色素の光退色により確認できなかった。混 合バイオフィルム形 成 量 は 野 生 株 と 比 較 し て, ΔgldK 株で約76%の有意な減少を認め,ΔsprB 株で は有意な減少は認めなかった。以上の結果より,共 凝集,混合バイオフィルムの形成には SprB 以外の タ ン パ ク 質 も 関 与 す る こ と が 示 唆 さ れ た。C. ochraceaと菌表層に付着する細菌による動きは今 後,C. ochracea と Parvimonas micra の組合せを暗 視野顕微鏡で観察することで確認する予定である。 目的:核膜裏打ちタンパク質であるラミンは核膜の 内側に核ラミナと呼ばれる構造を形成し,遺伝子発 現制御などの様々な核機能に関与すると考えられて いる。LMNA 遺伝子変異に起因する疾患群はラミ ノパチーと総称され,代表的なラミノパチーである HutchinsonGilford Progeria syndrome(HGPS) は重度の骨粗鬆症を呈する。また,全身性 Lamin A ノックアウトマウスでも低骨代謝回転型の骨粗 鬆症を示すことが報告されている。しかしながら, 骨組織を構成する細胞種毎の Lamin A 機能は未解 明である。そこで本研究では,Cre/loxP システム を用いて骨細胞特異的 Lamin A 遺伝子ノックアウ ト(OcyLmna KO)マウスの作成を行い,骨細胞 における Lamin A の高次機能の解明を試みた。 方法:骨細胞特異的 Cre リコンビナーゼ発現マウ スである Dmp1−T2ACre マウスと,Cre リコ ンビナーゼ依存的に Lamin A 遺伝子の破壊が可能 な floxed Lamin A マ ウ ス を 交 配 し,OcyLmna KO マウスを作出した。マイクロ CT を用いた骨構 造解析,骨組織切片の観察のほか,qPCR 法を用い た骨代謝マーカー遺伝子群の発現解析を行った。 結果および考察:全身性 Lamin A KO マウスは成 長遅延が報告されているのに対し,OcyLmna KO マウスは外観上は正常に発育した。8週齢マウスの 骨密度を測定した結果,OcyLmna KO マウスで 有意な低下が観察された。遺伝子発現解析の結果, 骨細胞マーカーの発現に差は認められなかったもの の,OcyLmna KO マウスにおいて破骨細胞と骨 芽細胞両者の分化が促進されており,骨吸収・骨形 成ともに亢進した高回転型の骨代謝が行われている ことが明らかとなった。さらに,破骨細胞分化誘導 因子である RANKL と骨芽細胞分化への関与が報 告されているギャップ結合形成タンパク質・Cx43 の発現亢進が観察された。以上の結果は,骨細胞の Lamin A が RANKL,Cx43の発現制御を介して骨 リモデリングのバランスを制御することを示唆して いる。