大蔵流狂言資料に見られる平仮名用字法の諸相
は 。じ め に 平仮名の用字法が時代の違い、資料の異り、また、社会集団の異り等 において多様性を見せることはよく知られているところである。しか し、個々の用字法が具体的に如何様であったかという点についての研究 は定家仮名遣等一部を除いてそれほど多くのものを見得ない。また、用 字法の広がり或は複数の用字法が社会的にどのように併存していたか等 にっいても未詳の部分か多い。 中世末から近世初期にかけての平仮名資料のうち、書写者を確定で き、また複数の資料相互の関係においてもかなりの緊密さを持っている ものに大蔵流古狂言資料がある。今、虎清本︵大蔵清虎筆 正保三年写 現存八番︶と、虎明本︵大蔵虎明筆寛永一九年写虎清本と共通する八番の用 字法で代表させる︶との二種の狂言台本と、伝書﹁わらんべ草﹂に大蔵虎 明筆 萬洽三年写 全八九段のうち、一段、三九段、八〇段の三段の用字法で代 表させる︶とを資料としてそれぞれの用字法を帰納し、三者の比較によ ってそれぞれの間における共通点と相違点とを検討していく。 右のうち、狂言台本については従来部分的な研究等がなされている。 虎清本と虎明本との間において同意同文の場合のア行・八行・ワ行の仮 名遣で両者異なる部分については林田明氏の御研究がある。また、佐々 木峻氏以両者同義同文の場合において、ア行、八行、ワ行の仮名遣全 ︸○一父菅
文学部国語学国文学研究室︶ 原 範 夫般、四つ仮名、開合表記等について詳しく検討され、結論的に﹁虎明の
仮名遣は、当時の発音に則った表音式のものでもなく、歴史的仮名遣で
もなく、いわば、伜殊な︵あるいは誤れる︶復古仮名遣とでも呼び得る
規範意識をもって書写し、虎清は、和語に関しては表音式、漢語に関し
ては、虎明と同様の規範意識を。もって書写したのではないかと考えられ
る﹂と両者の性格付けをされた。これら、いわゆる仮名遣を扱ったもの
に続いて、拙稿においては開音節のツと入声音・促音とを別の仮名によ
つて書き分けてい’るとい今、同一音節として区別なく用いていたとされ
ていた仮名の間に用法の違いかなることを指摘し心07︶更に虎明本におい
てハの仮名の﹁ハ﹂と﹁者﹂等の間にも用法の違いか認められるのでは
ないかという指摘が安田章氏によってなされている。
本稿は、これら従来の研究で明らかになっているところをふまえ、更
にそこから要請される仮名一宇毎の用字法を明らかにするという観点に
立ち平仮名用字法を比較しようとするものである。
一、虎清本の平仮名用字法
先ず、虎清本の用字法から検討を始める。現存八番﹁猿座頭﹂ ﹁禁
野﹂﹁泣尼﹂﹁鏡男﹂﹁文荷﹂﹁蟹山伏﹂﹁薬水﹂﹁鈍根草﹂における
使用仮名を、歴史的仮名遣の配列によって整理してみると次表の如くな
一〇二 高知大学学術研究報告 第二十八巻 人文科学 第一表 虎清本狂言 仮名表 ︵凡例︶ 〃字体については表示した形を︼字と認めた。 に、ラの﹁ら﹂ ﹁1は﹁ら﹂に統一した。 ﹁コト﹂ の﹁ど﹂は ・印刷の都合上原本とは少しく異った字体を用いる場合かある。 ・各欄の数字は用例数︵一回の調査︶である。 ﹁こ﹂ ︵以下同︶ ﹁と﹂ に、マの 区 ﹃匈﹄は﹁は﹂に、 ユの ¬ ゆ ¬ 吻 は ¬ ゆ ナ 斟 な タ 羞 た さ サ さ カ. ろ アヽ あ ≒ 1 104 78 2 102 1 80 1 54 2 42 1 89 104 19 67 1 50 83 35 92 23 76 35 71 5 38 60 39 84 143 80 67 43 61 26 70 70 144 195 119 119 126 76 129 162 39 99 48 ` 40 ・47゛ 25 ぃ 82. 54 猿゜座,頭 ,禁 野 泣 尼 鏡 男 文 ` 荷 蟹 山 伏 ‘薬 水 鈍 根 草 − 一 二 に ふ 1 チ じ ち シ ぢ ま,し キ ’ き イ ,、 ゐ ひ い 44 23 12 1 48 15 12 47 20 7 34 24 7 33 29 4 28 25 2` 43 30 5 57 31 5 22 14 18 24 9 12 15 20 19 17 3 8 27 59 10 22 1 17 73 32 153 1 25 80 18 45 30 82 11 39 24 58 75 72 33 55 44 28 16 45 35 28 1 3 106 ` ・,1163 3 118 ’2 93 , 127 `’2 64 1 145 `2 125 猿 座 頭 禁 野 泣 尼 鐙 男 文 荷 ぺ蟹 山 伏 薬 水 鈍 根’草 ヌ ぬ ツ lt゛1!) ス モ す ク く こウ ふ う 「 13 42 7 12 17 ● 2 5 12 14 33 19 10 30 20 1 33 12 18 32 18 2 22 6 4 13 6 4 32 14 7 35 17 /1 32 2 45 34 19 2 21 16 11 24 2 47 29 31 74 34 22 23 50 46 . 37. 92 3 35 15 135 \15 93 8・ 88 j 7 62 ゛゜19 156 ,7 174 猿.座頭 禁 野 泣 ・尼 鏡、 男 丈 荷 聾 山 伏 '薬 水 鈍 根 草 ネ μ(1 テ て セ せ
ケ
々け
.工 , ゑ へ え ゝ 1 3 4 2 5 1 3 2 3 1 3 104 172 107 99 73 52 125 131 18 22 65 21 15 9 30 39 1 1 1 1 0 6 9 6 0 2 2 3 r ・9 13 ゛6 1 1 4 2 1 3 1・ 2 ・1‥・ 4 ’2 猿 座 頭 禁 野 泣丿 尼 鏡 男 文 荷 !蟹 山 伏、 薬 水 鈍 根 草 ノ 比 の ト と ソ そ コ & こ `’ォ’・ `を`お 1 ・ 56 3 118 1 95 62 62 47 80 78 111 119 94 115 ・85 47 166 129 65 87 86 51 57 32 60 48 58 .70 1 41 63 44 19 110 73 ヽ4 45` レ29 、6 58 2 ` 』、54 14 ’2 105 ,レ51 ‘猿 座 頭 禁・ 野 泣 丿 尼 鏡・ 男 文 荷 蟹 山 伏 薬 水 鈍 根 草ン ん ワ ハ わ i? − フ ら ヤ 迦 や
降 ま
i ハ t
28 58 72 32 23 28 45 82 .19 16 1 11 1 25 12 ● 4 19 1 20 55 66 67 66 47 10 58 79 3 85 3 102 8 17 1 1S 12 73 6 47 8 107 6 98 7 2 8 2 5 6 10 14 0 6 1 2 1 6 5 4 5 56 53 9 63 43 9 33 48 1 35 36 4 43 34 3 27 37 7 45 46 12 59 43 ヰ いリ
1 り
ミ 忿 t ヒ 斗 い ひ 15 6 17 3 3 0 22 21 18 28 20 36 2 33 10 33 8 27 14 25 12 36 12 41 1 25 3 34 13 38 19 5 13 4 14 32 1 6 17 1 6 9 ‘ 1 41 2 10 10 16 1 5 4 15 11 24ル
i
ユ ゆ ム む フ う ふ 83 74 43 38 60 33 64 92 9 15 24 ・ 12 10 4 6 7 5 4 8 1 2 6 3 4 4 16 24 24 1 36 31 27 1 23 8 25 ヱ ヘ 凡レ
t れ
メ めへ
ゑ ・ へ
1 1 3 1 1 6 3 9 7 6 4 1 2 1 7 8 25 24 11 17 18 10 21 18 1 1 6 9 3 9 2 1 2 ヲ お 践 を □ ろ ヨ よモ
1 i
ホ ぉ 蹟 を 4 乎 8 3 35 9 10 64 8 47 32 7 48 4 2 39 3 3 18 1 4 35 17 5 53 9 31 10 7 5 8 7 11 48 26 26 32 28 7 15 19 63 58 65 69 1 88 14 57 67 2 18 1 2 20 3 48 (う4)25 2 1 23 1 12 2 3 31 1 35虎清本全体を通じては大きく二つの観点かある。一、各音節毎の用字
法について 田一音節一仮名のもの ア、カ、牛、ク、サ等 朗一音節
二仮名以上のもの ケ、コ、ス、夕等 二、ア行︵アを除く︶ ・八行・
ワ行の各行に関わるもの がそれである。それぞれを具体的に検討す
る。
一、各音節毎の用字法について
田 一音節一仮名のもの
一音節に一つの仮名しか用いていないものであって、さほど問題とす
ることはないかどの仮名か用いられているかについては注目しておくベ
ー○三 大蔵流狂言資料に見られる平仮名用字法の諸相︵菅原︶
きである。誤記を除くと虎清本では次の仮名が用いられている。
アーあ イーい ウーう エーえ カーろ 牛Iき クーく サーさ
セーせ ソーそ チーち テーて トーと ヌーぬ ヒーひ フーふ
ムーむ メーめ ユーゆ ヨーよ ラーら ルーー ローろ
音節数は二十三を数える。これだけ多くの音節において一仮名しか用い
られていないということは、文献全体を通じて統一的に仮名を用いると
いう基本的性格が認められる。また、この場合にはその音節を示すとい
う表音的な用法においても統一されていると考えられる。 ‘
㈲ 一音節二仮名以上のもの
一〇四 高知大学学術研究報告 第二十八巻 人文科学 aヶ○け︵語頭語中語尾全体に使用、以下同じ︶ 々 なければ1︵﹁猿座頭﹂︶ けふ1︵﹁禁野﹂︶ ほり ければ1︵﹁泣尼﹂︶ たうとかりける1︵﹁蟹山伏﹂︶ コ○こ ふ こたう︵五道︶1︵﹁泣尼﹂︶ ナ○か ふ りこんな1 ︵﹁猿座頭﹂︶ はな1 ?かな1 ︵﹁泣 ド 尼﹂︶おんな‘1︵﹁鏡男﹂︶﹃ なかにな/わうI︵﹁文 荷﹂︶ あるよなふI すいさんな1.︵﹁蟹山伏﹂︶ ないな1︵﹁薬水﹂︶
ノ○の
比 お心ざしの日︱︵﹁泣尼﹂︶等
モ○S
g ・:とももたれず1︵﹁文荷﹂︶
レ○れ
! れうじ1 めされい1 どれ︵﹁禁野﹂︶ ころいてく
れうか1︵﹁蟹山伏﹂︶
これらのものは、一方の用例か他方に比して極端に少いものである。一
例のみのものは用法を特定できない。﹁&﹂は同音節が連続するので変
宇法かと考えられる。複数の用例を持つものは、﹁々﹂は﹁?けれ﹂
﹁?ける﹂に、﹁ふ﹂は語尾に、﹁比﹂は連休格助詞に、﹁を﹂は語中語
尾に多用または専用されている様子が窺われる。しかし、その用法はい
ずれも他方の仮名かほとんどの場合用いられているものである。つま
り、これらは例外的に用いられるか、また数例の用法が特定できたとし
てもすべて他方の仮名の用法に覆われてしまうものである。
同様に一方が他方に比べてかなり用例が少ないものでありながら、用
法が少しく異なるものかある。
bス○す︵語頭語中語尾全体に使用、以下同じ︶
を みへずI︵﹁猿座頭﹂︶ むすめ1 すむ1︵﹁禁野﹂︶
ゆさんをすれ1 たすかり1 ︵﹁文荷﹂︶ くすりH
︵﹁薬水﹂︶ わする2︵﹁鈍根草﹂︶
マ○ま
は まこと1 まことに4 みども/まかせ はままつ1
︵﹁猿座頭﹂︶ ︵他略︶
スの場合、﹁を﹂は用例か少ないながら﹁薬水﹂では十一例全部﹁くす
り﹂に用いられ、﹁鈍根草﹂では﹁わする﹂ に二例とも用いられてい
る。マの場合も、﹁は﹂が語頭にある場合には﹁まこと﹂ ﹁まことに﹂
1 −等に集中し、語中語尾にある場合には﹁さま﹂﹁さま﹂等上接仮名に偏
りが認められる。一方の﹁す﹂ ﹁ま﹂は語頭語中語尾にほとんど偏りな
く用いられてぃるにもかかわらず﹁くすり﹂ ﹁まこと・まことに﹂等に
は用いられていない。一方の仮名が他方に比べてかなり用例が少い点で
はaの類と共通するか、少用例の仮名の用字が他方に覆われない部分を
持つ点においてaの類とは異るものである。
一方、一音節に二仮名以上が用いられており、しかもそれぞれがある
程度の用例数を持っているものかある。シ、タ、ツ、ニ、ネ、ハ、へ、
ヤ、リ、ヲである。これらにおける用字法は如何なるものであろうか。
具体的用例を虎清本では最初に位置する﹁猿座頭﹂にとって検討する。
cシ ゑ 語頭14︵動詞﹁す﹂連用形なし︶
語中3︵くるしう そうくしう くんじゅ︶
し 語頭3︵しゃく2 してばしら︿割書▽1︶
語中語尾62︵サ変動詞﹁し︵十て︶﹂10 助詞﹁して﹂
助動詞﹁しむ﹂等13他︶
タ さ 語頭2︵たっっいっ たて︶
語中語尾65︵助動詞﹁た﹂6﹁たり﹂9︶
た 語頭9 語中語尾10︵助動詞﹁た﹂6﹁たり﹂1︶ ツ つ 語頭4 語中語尾in︵﹁づ﹂H 入声音I︶ 咤 語頭9 語中語尾4︵行頭2︶ 円 促音22 ﹁一り﹂ ﹁二円﹂等H − 1 ふ こ
ネ
絲
(1 t n ヘ ヘ /9 ヤ や 息 リ り 1助詞﹁に﹂H なに1
にし山I
助詞﹁に﹂13 まことに・にぎやかに等5 なに2 と
にかくに1
語頭4
助詞﹁に﹂30 ﹁にて﹂1 みごとに・とにかくに等5
助動詞﹁なり﹂連用形4
語頭6 語中語尾5︵八番合計︶
語中語尾16︵八番合計︶
語頭34 語中﹁いはく﹂Iヘバ18︵助詞﹁は﹂12︶
助詞﹁は﹂43
語尾12︵﹁わらは﹂5、八行四段動詞未然形活用語尾
6︶ バー
助詞﹁へ﹂18 語中語尾3
べ3
語頭語中語尾85
語頭3
語中語尾28
語頭1
一〇五 大蔵流狂言資料に見られる平仮名用字法の諸相︵菅原︶語中語尾17︵ヤ行の仮名に上接15、行頭2︶
これらを見ると、やはりそれぞれの仮名の間に何らかの使い分けかなさ
れていることか窺われる。﹁ゑ﹂と﹁し﹂とについて見れば、﹁ゑ﹂は
語頭中心に﹁し﹂は語中語尾を中心に用いられている。ただし、﹁ゑ﹂
には語中の用例が、﹁し﹂には語頭の用例がそれぞれ若干認められ、そ
の部分では互いに用法か重なりあっている。重なり合う部分を持っては
いるかその部分にあたる用例は少く、﹁ゑ﹂ ﹁し﹂共に中心となる用法
は今述べた如く認められる。同様のものは、夕の﹁た﹂−語頭、﹁さ﹂
︱語中語尾 ネの﹁絲﹂j語頭 ﹁&﹂︱語中語尾等がある。ニの場
合は仮名か三種あり対応のしかたか少しく異なる。﹁︱﹂と﹁ふ﹂との
間ではほとんど差異がなく、語中語尾中心の用法であり、他に﹁に﹂が
語頭の用法を持つところに他との差異かある。これはひとつの仮名の用
法に他の仮名の用法が包摂されるものである。他にヤの﹁や﹂−語頭語
中語尾、﹁倉﹂−語頭とヲの﹁を﹂−語頭語中語尾︵ア行・八行の場合
に用いられたものを含む︶、﹁斌﹂−助詞﹁を﹂とがある。これら音韻
上の差異を考えなくともよいものの一方で、音韻上の差異をも考えなく
てはならないものかある。ツの場合には、促音の表記は﹁司﹂に限られ
る。﹁同﹂は他に漢数字の下に用いられて﹁一つ﹂ ﹁二つ﹂等と数量を
表わす場合にのみ用いられているので、他の﹁咤﹂﹁つ﹂という仮名と
は異った音韻の表記に用いられていると考えられる。﹁哩﹂と﹁つ﹂と
の間ではシ等と同様﹁4卜一が語頭中心、﹁つ﹂が語中語尾中心に用いら
れている。﹁猿座頭﹂ではヅの表記に﹁つ﹂が専用されているように見
られるが、他の曲番では必ずしもそうではなく濁音が語中語尾に集中し
たための偏りと考えられる。従ってこの場合は音韻に基づく用法の差で
はないであろう。ハの場合にも音韻上での用法差が認められる。﹁t﹂
は語頭中心であるが、音韻としてはハの場合である。﹁猿座頭﹂以外の
曲番で語中等においてもハの音韻の場合に﹁t﹂を用いている。濁音の
一〇六 高知大学学術研究報告 第二十八巻 人文科学 場合にも﹁t﹂を専用する。﹁n﹂は音韻はワでありながら仮名遣とし てハであるべき箇所に用いられている。語中語尾であってもハと発音す る場合には用いない。への﹁4﹂は濁音の場合にはほぼ専用され、語頭 の用法もある。﹁へ﹂は語中語尾に用いられるのでこの場合には音韻的 用法と位置に基づく用法とか重っている。リの場合も同様であって、 ﹃?﹄﹂は語頭、或はヤ行の仮名に連続して拗音に発音されたと考えられ る位置に専用される。﹁り﹂が語坤の拗音を除いた場合と語尾とに用い &一 ■ Jられており音韻的な用法と位置に基づく用法との重な名も。の’である。c の類については﹁猿座頭﹂﹃の用例を中心にして見たのであるか、他の曲 番においても同様の傾向であり、ここで認められた用字法は虎清本全体 の傾向と考えられる。 二、ア行︵アを除く︶ ・︷行・ワ行の各行に関連するもの さて、一音節内で考察すべきものは以上として、次に歴史的仮名遣で は異なるが当時の発音上では同音である音を持つア行︵アを除く︶ ・八 行・ワ行の各行に関連するものを検討する。歴史的仮名遣から見れば誤 記を含むか次表が歴史的仮名遣に沿って関連するものをまとめたもので ある。 これらの表から看取される最も顕著な事柄は、八行動詞の表記であ る。表a?dに至るまで、発音とは関りなく各活用語尾を歴史的仮名遣 のまま八行の仮名で表記している。ウ音便のものも八行の仮名で表記し ている。これは発音はア行音ワ行音であっても八行の仮名を用いるとい う八行動詞活用語尾における歴史的仮名遣の表記規則に添って統一的に 表記したものと考えられる。一方で、動詞イ音便がすべて﹁い﹂で表記 され、また、歴史的仮名遣に合致しない例の﹁そう︵添︶﹂がすべて ﹁う﹂で表記されていることと対照的であり、これらかほとんど例外を 持たないことを考えると明らかに統一の意識か働いていることが分るの である。ただし、﹁そう︵添︶﹂を始として﹁よう︵酔︶﹂﹁ゆきかう 第二表
歴史的仮名遣(以下同じ)
a
ワ . /ゝ \ 。ヽば ,一一、 犬 ’い, 語 ・ ・ は・ 18 頭 ,、犬` ’く ● ●I. ノゝ \/- 1 ゛’ 35 − t 用 い ら れ て い る 仮 名 八以 下 同 じ 心 妥鉛毒仁ャ`行励肩 け¬は・は・,ま う れは は・ た ば.`一一1 5’ は・ 43`・・ 2 4 1 ・.. ハ し r、 ゆ語 つ頭 く わ・18 い `J 1 いま いい ・−わ・わ・まきわ ぬうわ・あし 。つたま 舞てりす ,・ 1 1 1 1l
ヰ ヒ イ b い・ま る い・ る 4 11│八行名詞
は う ま
い た い
入 い
2 3
朧M
註゛で
ド
W
い おおお とびか なたし しゝひ・ ひ・しこ ほひ・と ど人 ひ 八行動詞 連用形 r ̄X 語 頭す しうおい・ ま ひたもひピ ひ ?ひひ? ? ? 7 2 1 1 2 4 い わ 非 1 や ゐ・ く ゐフ ウ C ゆよそ きうう か͡͡ う酔添 ヽヽ・こ 1 1 2 あ。形。。 う そ 容語語 − う・詞中頭 感 て ウ 勣 音48 27 詞 1 便−`J ゛’゛ 助 16勁1 ’詞 う 27 − つ
ふ
八行動詞 終止・連体形 / ̄X 語詔
八行動詞 ウ音便(15; 感動詞 頭う い ● た ふ ブ ふ 8 2 6 `-j 詞 ¬ うまいお あな う たふ・ふ・も ふ・ふ・ t_ ふ・ててふ・ て ● て 3 8 4 ● た た 2 2 3 な 2 ふ ぐ 6 ヱ へ 工 d ち え・つ
え・
見
え・
2
凡│八行動詞│初
さ 見 ゝ へ 6 3へ
aμjかおい ¬ へ・しへ・へ てへ・ば に て 18 1 1 1 m べ 3 J ■ ゑ・ ん 1 ゑ ’ 一〇七 大蔵流狂言資料に見られる平仮名用字法の諸相︵菅原︶︵行交︶﹂等は八行の仮名を用いていない。また、名詞は﹁まい︵舞︶﹂
﹁うたい︵謡︶﹂等と﹁い﹂で表記している。これらの事象からする
と、八行動詞の活用語尾を八行の仮名で書くという表記は、語彙的には
用例を多く持つ﹁いふ﹂﹁おもふ﹂等を中心としたものに集中している
こと、また、活用するものに限定しての表記であること等が認められ
る。文法的な観点からの規範であることが多分に窺えるのである。同
様にその規範か文法的性格を強く持っていると考えられるものに助詞
﹁は﹂ ﹁へ﹂ ﹁を﹂の表記が認められる。
また、感動詞の表記も顕著な偏りを見せる。長音に発音する場合には
﹁ふ﹂を用い、イと発音する場合には﹁ゐ﹂を用いる。
例外的表記もまま認められる。形容詞イ音便の﹁ひ﹂表記、八行動詞
未然形活用語尾の﹁忿﹂表記等がそれであるか、それらは完全に徹し切
れなかった部分に他の仮名での表記か混入したものと考えられるもので
ある。
他の規範としては位置による書き分けが認められる。ア行ワ行に関わ
らず、﹁お﹂は語頭に専ら用いられ、﹁ゑ﹂は語頭に﹁え﹂は語中語尾
一〇八 高知大学学術研究報告 第二十八巻 人文科学 に用いられる。 1 更に特定語詞における固定表記を窺わせるものもある。﹁さyへ﹂ ﹁ま川る︵参︶﹂﹁則る︵居︶﹂等がそれである。﹁ゆゑ﹂を﹁ゆへ﹂ と表記することは夙くから認められるところであるか、ここに掲げたも のもそれに類する表記法であろうかと考えられる。ア行八行ワ行以外で は、四つ仮名のジ・﹃ヂに関するものかある。発音上の背景かあることは 十分考えられざ侭。であるが、’助動詞﹁ぢや﹂かすべて﹁じゃ﹂と表記さ れるので附加しておきたい。‘ 。︲ ≒ ヽ < 以上、便宜的にまとめて述べた箇所もあるか、︲﹁猿座頭﹂を中心とし て虎清本の平仮名用宇佐を具体的。に検討してきた。特に触れることのな ¨かった他の曲番に’おいても、ほぽこの用字法に含まれるものである。・こ れを整理して虎清本の平仮名用字法としてまとめると次の如くなる。 △大蔵流狂言合本虎清本の平仮名用字法▽ 一、各音節における用字法 1、一音節一仮名のもの︵誤記を除く︶ ﹁あ﹂ ﹁い﹂ ﹁う﹂ ﹁え﹂ ﹁ろ﹂ ﹁き﹂ ﹁く﹂ ﹁さ﹂ ﹁せ﹂ ﹁そ﹂ ﹁ち﹂ ﹁て﹂ ﹁と﹂ ﹁ぬ﹂ ﹁ひ﹂ ﹁ふ﹂ ﹁む﹂ ﹁め﹂ ﹁ゆ﹂ ﹁よ﹂ ﹁ら﹂ ﹁n>﹂ ﹁ろ﹂ ︵どの仮名を用いるかについても重要︶ 2、一音節二仮名以上のもの 倒 一方の仮名はそれ自体限定的用法を持つが、それは他方の仮名 の用法に包摂される。︵用法の多い仮名か上側︶ a、一方か他方より極端に用例が少いもの ﹁け﹂と﹁々﹂ ﹁な﹂と﹁ふ﹂ ﹁の﹂と﹁比﹂ ﹁″ダ﹂と ﹁叫﹂ ﹁れ﹂と﹁色﹂ b、互いにある程度の用例を持つもの ﹁に﹂と﹁ふ﹂ ﹁ふ﹂ ﹁や﹂と﹁忿﹂ ﹁を﹂と﹁斌﹂ ㈲ 互い・に独自の用法を持つもの︵用例数の多い仮名が上側︶ a、一方が他方より極端に用例が少いもの ﹁す﹂と﹁を﹂ ﹁ま﹂と﹁は﹂ ﹁t﹂と﹁ゐI ︵特定の表 記に集中する場合かある。︶ b、互いにある程度の用例を持つもの ﹁し﹂と﹁ゑ﹂’ ﹁さ﹂と﹁た﹂ ︵﹁友﹂は用法未特定︶ ` ﹁つ﹂と﹁咤﹂ ﹁&﹂と﹁総﹂ ﹁へ﹂と﹁1﹂。︵以上、 。 主として位置犯よる使い分け︶ご∼’ ∼ へ ’。 ﹁岡﹂と﹁つ・腱﹂j﹁n﹂と﹁t﹂ ︵以上、音韻か異心るも 。yのの使。い分け︶一 ﹄・ ダ ”︲ ’・ 、ブ㈲“互いの仮名の間に用法差を特定できない秘の︵用例多数の仮名 一一− 1 ″ 一 が上側︶ a、一方が他方より極端に用例が少いもの 。 ﹁こ﹂と﹁あ﹂ ﹃t’﹄と﹁y﹂ 二、ア行︵アを除く︶ ・八行・ワ行各行に関わる用字法 1、歴史的仮名遣で八行に活用する動詞は、ウ音便も含めて八行の仮 名を用いる。︵語彙的には用例を多く持つ語に集中する。また、名 詞は﹁い﹂で表記する。形容詞のウ音便、動詞・形容詞のイ音便は ア行の仮名で表記する。︶ 2、助詞﹁は﹂ ﹁へ﹂ ﹁を﹂は歴史的仮名遣のまま表記する。 3、感動詞は、ウは﹁ふ﹂で、イは﹁ゐ﹂で表記する。 4、語頭のオは﹁お﹂、エは﹁ゑ﹂で表記する。 5、特定語詞で表記の固定しているもの I − − ﹁さNへ﹂ ﹁まいる﹂ ﹁いる︵居︶﹂ 三、四つ仮名 助動詞﹁ぢや﹂はすべて﹁じゃ﹂と表記する。 虎清本狂言台本はこのI、二、及び三からなる平仮名用字法を以て表記
されているものと考えられる。更に右の項目は語頭に用いるか語中語尾
に用いるかという位置による用字の違いということが基本的原則とでも
呼び得る形で存在しているのである。
二、虎明本の平仮名用字法
、続いて虎明本狂言台本に目を向ける。虎清本と共通する八番で虎明本 を代表させて考えを進めて行くことにする。八番では虎明本狂言の一部 にしかすぎないか、これらの曲番は﹁脇狂言之類﹂ ﹁大名狂言類﹂ ﹁聳 類・山伏類﹂ ﹁鬼類・小名類﹂ ﹁女狂言類﹂ ﹁出家座頭類﹂等と虎明本 狂言でのいろいろな類別に平均して分散しており、相互の間にも用字上 の差異が認められないことによりほぽこの八番で虎明本の平均的用字法 は把握できると考えられるからである。以下、﹁虎明本﹂と総称する場 合には直接にはこの八番を指すことにする。整理のしかたは虎清本と同 様である。次頁の表が八番の仮名表である。 この表から先ず看取されることは、虎清本に比べて仮名数が多いとい ・うことである。一音節三字以上のものは虎清本では歴史的仮名遣では誤 記のものを除くとターツーニの三音節でしかなかった。虎明本では牛・ ケーターツーナーニーノーハーホーミールと十一音節も認められる。仮 名数の上で両本は先ず大きく異なる傾向を持つと言えよう。 さて、右の特徴をふまえて虎清本で検討した順序に従って虎明本も検 討を進めていく。 先ず、各音節における用字法から見ていく。 1、一音節一仮名のもの ここで注目せられることは、虎明本で一音節T仮名のみのものは虎清 本のそれと比べて約半数であるということである。﹁う﹂﹁え﹂ ﹁く﹂ ﹁せ﹂ ﹁ち﹂ ﹁と﹂ ﹁ぬ﹂ ﹁へ﹂ ﹁む﹂ ﹁ゆ﹂ ﹁よ﹂ ﹁ら﹂﹁ゐ﹂﹁ゑ﹂ 一〇九 大蔵流狂言資料に見られる平仮名用字法の諸相︵菅原︶がそれである。多くは虎清本でもT音節一仮名であったものであり、使
用仮名も一致する。 ブ
2、一音節二仮名以上のもの
虎清本では一音節三仮名以上のものがターツーニのわずか三音節であ
り、また、各仮名それぞれの用例もある程度見ることができた。虎明本
では三仮名以上のものか十三音節も見られ各仮名の用例数もまちまちで
ある。整理の都合上二仮名のものと三仮名のものとに分けて考えてい
(1) a ス○を ︵語頭語中語尾全体に用いる。以下同じ︶ す すじ きかします のまする︿割書▽︵﹁禁野﹂︶ ?する︿割書▽︵﹁猿座頭﹂︶ メ○め 免 またしめ/︵﹁禁野﹂︶ めでたひ︵﹁薬水﹂︶ モ◎’y“ l>^ いつも︵﹁鈍根草﹂︶ みやげももとめて︵﹁鏡男﹂︶ 口○ろ ︵語中︶ 伍 おそろしひ︵﹁鈍根草﹂︶ 非常に限られた用例しか持たない﹁す﹂ ﹁免﹂ ﹁い声一 ﹁孫﹂は用法を特 定できない。﹁す﹂の二例は割書の中に用いられていること、﹁t﹂の 一例は上接の﹁t﹂に対する変字用法と考えられることの二点が特徴で ある。虎清本では﹁す﹂を全体的に用い﹁を﹂を限定的に用いたに対 し、虎明本では用例数が逆となっていることは常用する仮名の選択にお いて注目される。 b、両者ある程度の用例を持つもの この類には虎清本で一仮名しか用いられていないものがかなり見られ一音節二仮名のもの
.一方の仮名が極端に少いもの
ス○を ︵語頭語中語尾全体に
す すじ きかします の
・ べ -一〇 高知大学学術研究報告 第二十八き 人文科学 第三表 虎明本狂言 仮名表 ︵凡例は第一表に準ずる︶
ナ
助かな
タ
泰たき
サ さ カ か ろ . ア j ’ ヽ 陥 あ 3 44 41 1 33 54 29 28 1 66 29 1 30 20 1 45 33 7 14 20 2 32 31 5 32 58 1 34 47 4 19 79 5 17 61 6 16 57 3 26 60 5 23 1 5 46 88 9 62 2 55 33 44 L 43 24 3 73 14 133 21 98 11 111 18 85 11 100 8 67 12 51 7 68 10 28 14 24 2 35. ’3 23 −. 25 ヽ4 14 2 19 ` 14 鈍 根 草 藁 水 文 荷 鏡 男 禁 野 遊 尼 蟹 山 伏 猿 座 頭 − − に ふ 1 チ jこ じ ち シ ぢ 瓦 しキ
1t犯き
こ ィ 犬 ゐ ひ、伊い ♂ 1 92 2,4 75 1 65 2 1 54 1 46 2 60 3 45 4 55 14 19 4 25 29 20 13 4 11 13 1 12 ‘29 1 4 4 1 2 19 4 31 39 1 25 50 16 70 9 42 17 56 1 14 48 9 28 17 42 1 2 19 6 3 15 2 14 19 1 1 39 4 28 1 1 25 6 17 56 8 62 ‘50 13 67’ 56 6 48‘ 1 32 21 3 54 レ26 1 26. 犬19 2 38 22 41 /鈍 根 草 薬 水 一文 荷 鏡 男 禁 野 泣 尼 蟹 山 伏 猿 座 頭 ヌ ぬ ツ ぼ り つ ス ぞ す ク く ,ウ `‘励・ふ う 15 5 17 14 14 3 2 16 8 39 6 14 24 3 9 28 2 14 36 8 10 25 2 4 31 3 6 14 11 24 5 3 3 3 1 1 8 5 6 1 60 39 22 29 24 45 19 15 ,1 44 , 8‘7 1・ 25・101 1 13 . 49 / 1 64 -'5 34 ‘14 72 7 26 `・ 25 45 鈍 根 草 薬 水 文 荷 I鏡 男 ・禁 野 .・泣 ・ 尼 蟹 山 伏 ,.猿 座 頭 ネ μ(1 テ `て て セ せ ケ 岑 を 々 け 一 エ ・ j ゑ へ え i 2 1 1 3 2 2 3 2 5 2 39 90 羽 剱 15 55 31 64 23 55 18 57 14 33 17 57 33 26 11 23 17 28 7 13 4 4 7 1 2 7 1 3 6 1 1 12 1 6 11 6 8 3 10 1 1 7 4`’ ‘ 2 、2 2. 2 ヶ 1 2 .,2 2 バ 2 3 5 鈍 根 草 薬 水 こ'文 荷 鏡 男 禁 野 泣゛ 尼 蟹 山 伏 猿 座 頭 ノ 乃 比 の ト とッ
趣 5 そ
コ 、t、こ ・,ォ・ . 漱’お ¶ 1 72 4 7 60 2 51 3 7 49 2 1 62 5 5 60 3 3 39 1 1 32 110 86 64 68 55 63 45 65 38 50 47 3 28 1 37 29 32 1 28 6 56 2 45 1 38 2 23 34 1 19 2 16 35 l j45 十万 7 1S 1 27 '1 15 7 22「 1 ●12 .・1 32 鈍 根 草 葉 水 文 荷 ’鏡 男 禁 野 泣 尼 蟹 山 伏 ’猿 座 頭る。
ッ
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i? を ハ は t
1 63 1 35 16 22 31 45 17 8 11 7 13 10 13 7 4 2 11 3 1 11 79 66 53 ・ .67 40 33 11 44 5 92 6 101 20 70 1 65 2 51 2 46 2 27 2 63 3 62 1 53 3 39 27 2 22 3 29 1 26 ・36 1 1 99 22 1 72 34 67 16 2 61 18 64 1 12 48 1 18 3 28 1 22 ●52 11 ヰ ひ い ゐリ
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ヒ ゐ い む ひ 16 15 2 5 1 1 2 3 7 11 12 37 4 30 1 n 4 30 8 28 5 37 3 27 13 22 1 26 4 5 1 12 1 2 42 1 1 21 14 2 4 9 18 1 4 23 , 2 10 7 1 3 19 3 3 13 2 11 2 13 10 1 2 16ぷぱ、iる
ユ ゆ ム む フ う 鵡 ふ 68 14 2 47 13 40 14 35 9 1 10 10 1 31・ 9 32 34 11 7 6 9 14 7 12 3 15 3 2 1 2 3 7 7 1 2 26 4 18 1 2 47 1 10 25 1 13 2 20 12 ヱ ヘ え ゑレ
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メ 老 め へ 凡 へ 1 2 3 1 23 ・52 34 28 14 22 18 24 12 32 15 20 9 15 16 13 16 1 19 17 16 1 13 11 8 9 28 11 18 11 1 11 1 33 13 20 ヲ お 玖 を □ 低 ろ ヨ よちも
ホ 以 を お ほ 4 や 14 33 2 33 3 20 1 8 33 2 1 33 1 30 2 3 11 1 10 15 1 7 3 5 1 4 13 6 8 5 20 17 26 27 17 16 5 23 1 59 41 76 1 43 33 40 11 42 1 3 14 1 2 1 17 1 13 2 2 (う) 11 1 1 14 1 2 7 2 2 23 1 9 1 5いくつかを掲げる。﹁猿座頭﹂から用例を引くと次の様である。
サ さ 語頭46 語中語尾27
4 さるざとう さNへ さらば
-一 一 大蔵流狂言資料に見られる平仮名用字法の諸相シ し 語頭4︵してばしら、し︵為︶て3︶
語中語尾29 助動詞﹁しむ﹂6
ゑ 語頭13
︵菅原︶-一二 高知大学学術研究報告 第二十八巻 人文科学 語中語尾4︵くんじゆ ふしん等︶ テ て 語頭1 語中語尾8 助詞﹁て﹂ ﹁で﹂等48 て 助詞﹁て﹂ ﹁で﹂のみ17︵促音十て6︶ リ り 語中語尾22 ?﹄語頭1 語中語尾12︵おりやる6 わごりよ4 おとをりやれ1 花ざか/りI︶ これらを見ると二種のものか認められる。一つはサーテである。先ず、 サの﹁≪>Jは語頭にのみ用いられるかそれは﹁さ﹂’の覆うところであ る。テの﹁で﹂は助詞類にのみ用いられるかそれも﹁て﹂の覆うところ である。わずかに促音に後接する場合に集中することに特徴か認められ る程度である。即ち、一方は限定された用法を持つがそれは他方の用法 に包摂されるものである。この様なものはサーテの他に次の如くかなり 多く認められる。︵上側に全体的用法を持つもの、下側に限定された用 法を持つか他方に包摂されてしまう用法であるものを配置する。︶ ア︹あ・拓︺ イ︹い・伊︺ オ︹お・収︺ ヒ︹ひ・七︺ フ ︹ふ・4︺ マ ︹ま・は︺ ヤ ︹や・倉︺ レ ︹色・れ︺ ワ ︹g・わ︺ ヲ︹を・斌︺ このうち﹁5﹂の如く語頭に限定されるものは、拓・伊・靫・七・4・ 忿・わであり乙の類か最も多い。﹁て﹂の如く語尾の助詞に限定される ものは≒残﹂である。﹁は﹂は語中語尾であり、上接仮名か﹁さ﹂﹁す﹂ ﹁さ﹂。等の場合か多い。﹁れ﹂は﹁を﹂とほとんど差異はないが、語頭 に﹁を﹂が用いられる場合かあるということでこの類に分類した。接続 する仮名の差異は﹁は﹂ほど限定されるものではないが、﹁n﹂が下接 する場合は﹁れ﹂か多い。 さて、いま一つはシとりとである。シの場合、﹁し﹂と﹁ゑ﹂とは重 なる用法も持つか数量的に中心となるのは﹁し﹂−語中語尾、﹁ゑ﹂−
語頭である。また、リの場合、﹁り﹂−語中語尾、﹁?‘﹂−語頭及び語
中でヤ行音に続く場合である。この両者に見られる用法の相違は虎清本
でも同様に認められたものである。これらに類するものは比較的少く、
ネーー語中語尾 駱ー語頭︺程度である。ゝヵは少しく変型である。
﹁6﹂は語頭語中語尾に用いられるか、用例は助詞﹁か﹂ ﹁が﹂を含め
て語中語尾に偏る。一方﹁か﹂は助詞を除く語中語尾にも用いられる
が、語頭の用法が中心である。しかし、﹁か﹂の語頭の用例数は﹁6﹂
た さき︵先︶6 ︵﹁猿座頭﹂︶
﹁猿座頭﹂では二仮名が用いられており、﹁き﹂は語頭語中語尾にそれ
ぞれ多用、﹁知﹂は﹁さき︵先︶﹂にのみ用いられるという用法の差異
か認められる。他の曲番を合せ見ると、﹁き﹂は全体に亘ってこの通り
の用法を持つ。﹁知﹂は用いられる語詞に広がりはあるけれども語中語
尾にしか用いられていない。他には﹁猿座頭﹂では見られなかった﹁t﹂
とf"-V<!とがある。このうち﹁t﹂は専ら語頭に用いられる。﹁ざ’﹂は
一例のみで用法は特定できない。これは虎清本の整理に照らし合せると
一2bの変型的なものと考えられる。これに類するものは以下の如くで
ある。
ニ ー 語頭語中語尾全体に用いる。
に 語中語尾に限定される。
ふ 語中語尾に限定される。
ノ の 語頭語中語尾全体に用いる。
比 語中語尾に限定される。
乃 語中語尾に限定される。
ミ t 語頭語中語尾全体に用いる。
み 語頭に限定される。
<v語頭に限定される。
次にこれらとは少しく異ったものについて述べる。ツについては虎清本
では音韻上の差異を表わしていた。虎明本でもほぽ同様のことが言え
る。
ツ 哺 語頭語中語尾全体に用いる。
つ 語中語尾に用いられ、中には促音表記に用いられるものも
ある。
川 入声音促音の表記に主として用いられ、若干開音節の語中
語尾に用いられる。
一 一三 大蔵流狂言資料に見られる平仮名用字法の諸相︵菅原︶ 虎清本が例外をほとんど持っていなかったのに比べて虎明本では少しく 例外が認められる。ハについても同様である。虎明本では﹁″X﹂’は語頭 中心に用いられるが、語中語尾にも用いられ、その中には八行転呼音の ワを表記しているものもある。﹁ハ﹂は助詞等を中心に専らワと発音さ れるものを表記する。濁音は専用の仮名を持たず﹁″X﹂﹁n﹂共に用い られる。また、﹁n﹂を一音節感動詞の表記に用いているものか﹁薬 水﹂に見られるが、ハ音を表わすものとすれば例外的用法となる。他に ﹁に&こ ﹁は﹂等がI?二例語中語尾の表記に見られ、変字法的な用法も そこには認められる。虎清本と比べて主に用いられる仮名において例外 的要素を多く含むことはツの場合と同様である。他には タ さ 用例最多、全体的に用いられるが語中語尾の用法が多い。 た 語頭と語中語尾との用例にあまり差がない。 瓜 用例少、助動詞﹁たり﹂等に多用される。 ナ 蔵 全体的に用いられるが語頭の用法か多い。助動詞﹁なり﹂ はこの仮名か多い。 を 全体的に用いられるか、語頭と語中語尾とはあまり差がな い。 破 語中語尾の用法しか持たない。 等の如くそれほど明確な用法差を持たないものもある。また、ケの ﹁け﹂ ﹁々﹂ ﹁S`﹂のに如くほとんど用法の差がないものもある。﹁る﹂ ﹁f≫Jも同様である。これらの音節には他にケ﹁孝﹂や^ ri2j r(4j の如く極めて用例の少いものも用いられているが、いずれも語中語尾の 用法である。 さて、各音節毎の仮名の用法は以上で終り、ア行︵アを除く︶。・八行 ・ワ行に関わる用字法に目を転じる’次表が﹁猿座頭﹂を資料として整 理したものである。一 一四 高知大学学術研究報告 第二十八巻 人文科学 第四表︵凡例等は第二表に準ずる︶ ワ ノゝ
a
͡・し。 いて語 は・ば・頭 ぬし ら 9 ‥ 1 `-J ``゛1i
1 | ,一一、ゎ劫劫 末ハ ら屑屑 然行 は・−1¬ 形勣 るばは 屑, に1− 3 3 11 35 ハ 心 全 用 一例 心 1 ’ ゝi!
ヰ ヒ イ b、 い・ま る い・ る 3 8 ま ’ら 怒㈲
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い ・--ヽ͡ ノゝ 語 行 頭 勁 ・ 詞 ヒ 迪 ・ 用 ビ 形 6 10 ヽ一・● み.、、r、. たし形勣 ひ・ゆ容詞 つ詞ィ 1 く ィ音 わ音便 ひ・便・ 1 乙17 3 ひす
ま
ゐ・
1
ゐ ・ Q フ ウ C ・--ヽ・-ヽ͡ 形勅語 容勣頭 詞同語 ウ¬中 音う語 便゛一尾 4 833 一八一ヽ-● − つ ͡͡ノゝ 語 行 頭 勁 ・ 詞 フ 終 ・ 止 ブ 連 体 形 10 4 ・--ヽ͡− 感助勣 勣勁屑 屑詞ウ お¬音 ふ・う便 等゛ 4 16 4 −−ヽ一ふ
へ 工 d つ え・ み 凡` 9 凡 いr、r、I―C へ・ハ 助べ ど行詞 も勣¬1 詞へ`-’ 1 活 に 用 14 語 ¬ 尾 さ 3 `-‘ `-j、1 さ ゝ へ・ 3へ
ゑ ん 2 ゑ オ ,ホ ヲe
2 u口 頭 10 W r ̄X 語 頭 31 w お ・ か 』 お・ も ひ そ め 刃我
回
頭
ポ
と
/ tヽ 詔 §J お と を り や れ 1を
詔
回
践虎明本でも特徴的に認められることは歴史的仮名遣で八行に活用する動
詞の表記である。ウ音便を含めて八行動詞の活用語尾は八行の仮名で表
記している。しかし、形容詞ウ音便はウの仮名で表記している。動詞・
形容詞・助動詞のイ音便はほとんど﹁ひ﹂﹃で表記している。この点、虎
清本と大きく異なる点である。同様に語中語尾のイであるか字音続みの
ものはほとんど﹁い﹂で表記している。このことから、これらの表記に
は文法的・語彙的区別が存在したと考えられる。文法に関連させると助
詞﹁は﹂﹁へ﹂﹁を﹂の表記は虎清本と同じく歴史的仮名遣に一致する。
語頭に﹁お︵れ︶﹂﹁ゑ﹂を用いること、﹁さゝへ﹂等特定語詞の固定
表記も同様である。感動詞語尾の﹁ウ﹂に﹁ふ﹂を用いることは虎清本
と等しいが、﹁イ﹂は﹁ゐ﹂を用いないこと、また、助動詞の﹁う﹂に
﹁ふ﹂を多用することは虎清本と異なる、四つ仮名の誤記は助動詞﹁ぢ
や﹂を﹁じゃ﹂とするものかほとんどである。
他の曲番においてもこの﹁猿座頭﹂とほぼ同様の用字法が認められ る。以上のことをまとめると虎明本の平仮名用字法は次の如ぺなる。 △大蔵流狂言合本虎明本の平仮名用字法▽ 一、各音節における用字法 。・ I、一音節一仮名のもの︵誤記を除く︶ ・ ﹁う﹂ ﹁え﹂ ﹁く﹂ ﹁せ﹂ ﹁ち﹂ ﹁と﹂ ﹁ぬ﹂ ﹁へ﹂ ﹁む﹂ ﹁ゆ﹂ ﹁よ﹂ ﹁ら﹂ ﹁ゐ﹂ ﹁ゑ﹂ 2、一音節二仮名以上のもの ‘ 倒 一方の仮名はそれ自体限定的用1 を持つか、
それは他方の仮名
の用法に包摂される。︵用法の多い仮名か上側︶ 4、一方が他方より極端に用例が少いもの ﹁そ﹂と﹁塾﹂ ︵﹁∼﹂は用法未特定︶ ﹁4こと ﹁4﹂ ︵﹁ほ﹂は用法未特定︶ / b、互いにある程度の用例を持つもの︵︵ ︶で包んだものは用 法差が不明確なもの︶ ﹁あ﹂と﹁価﹂ ﹁い﹂と﹁伊﹂ ﹁お﹂と﹁紗 ︵﹁6﹂ と﹁か﹂︶ ﹁さ﹂と﹁i﹂ ﹁て﹂と﹁て﹂ ﹁ひ﹂と﹁七﹂ ﹁ふ﹂と﹁助﹂ ﹁ま﹂と﹁は﹂ ﹁や﹂と﹁忿﹂ ﹁色﹂と ヽ ﹁れ﹂ ﹁︱﹂と﹁わ﹂ ﹁を﹂と﹁斌﹂ 匂‘互いに独自の用法を持つもの︵用例数の多い仮名か上側︶ a、一方か他方より極端に用例が少いもの ナシ b、互いにある程度の用例を持つもの︵︵ ︶で包んだものは用 法差が不明確なもの︶ ﹁し﹂と﹁ゑ﹂ ﹃1’﹄と﹁絲﹂ ﹁り﹂と﹁1﹂ ﹁き﹂と ﹁晋﹂と﹁鞄﹂ ﹁T’﹂は用法未特定︶ ︵﹁さ﹂と﹁だ﹂と﹁ム﹂︶ ︵﹁な﹂と﹁を﹂と﹁豹﹂︶ 一 一五 大蔵流狂言資料に見られる平仮名用字法の諸相︵菅原︶ ﹁︱﹂と﹁に﹂と﹁ふ﹂ ﹁の﹂と﹁比﹂と﹁乃﹂ ﹁/A/Jと ﹁み﹂と﹁応一 ︵以上主として位置による使い分け︶ ﹁咤﹂と﹁つ﹂と﹁岡﹂ ﹁tJ﹂と﹁n﹂ こぞ﹂ ﹁は﹂は用 法未特定︶ ︵以上主として音韻が異なるものの使い分け︶ 朗 互いの仮名の間に用法差を特定できないもの︵用例多数の仮名 が上側︶ a、一方か他方より極端に用例か少いもの ﹁を﹂と﹁す﹂ ﹁め﹂と﹁*^j r><>jと﹁t﹂ ﹁ろ﹂と ﹁弧﹂・ b、互いにある程度の用例を持つもの ﹁こ﹂と﹁あ﹂ ﹁け﹂と﹁々﹂と﹁`Z﹂ ︵﹁布﹂は用法未特 定−﹁る﹂と﹁i﹂と﹁Sと﹁ぶ﹂ 二、ア行︵アを除く︶ ・八行・ワ行各行に関わる用字法 1、歴史的仮名遣で八行に活用する動詞はイ音便・ウ音便も含めて八 行の仮名を用いる。 2、形容詞・助動詞はイ音便の場合化は﹁ひ﹂の仮名を用いる。へ形 容詞ウ音便は ﹁う﹂、また字音続みの ﹁イ﹂は、﹁い﹂ で表記す る。︶ − 3、助詞﹁は﹂ ﹁へ﹂ ﹁を﹂は歴史的仮名遣を用いる。 4、感動詞語尾の﹁ウ﹂には﹁ふ﹂を用いる。助動詞﹁う﹂も﹁ふ﹂ を用いる場合か多い。 5、語頭のオーエはア行ワ行に関わらず﹁お・ね﹂ ﹁ゑ﹂を用いる。 − j 6、﹁まいる﹂﹁さゝへ﹂等の表記は固定している 三、四つ仮名 助動詞﹁ぢや﹂はすべて﹁じゃ﹂と表記する。 虎明本の用字法はほぽ右の様にまとめることができようかと考える。 これを虎清本の用字法と比較すると一致点と不一致点とが明確に指摘で一 一六 高知大学学術研究報告 第二十八巻 人文科学 きる。不一致点から見ると、本節の最初に触れた如く仮名数か 増加したことか大きな違いとなっている。この中には牛ぞと、 ケ﹁︱﹂、ソ﹁弓﹂、ハ﹁は﹂ ﹁︰‘一て﹂、メ﹁t﹂、口﹁伍﹂等 に見られる様に、ヽ用例数の極めて少いものかかなりの数見られ る。これらはいずれも用法を特定できないものであり、用宇法 を不明確にする亡
三、﹁わらんべ草﹂の平仮名用字法
さて、前節までは狂言台本の用字法について見た。それでは
これらの用字法は大蔵清虎のまた虎明の日常用いているもので
第五表 わらんべ草 仮名表 ︵凡例は第一表に準ずる︶ナ
a々&か刄
タ 老ゐ た きサ
1ちさ
゛カ・j j、削ら 八ア 4 あ 1 2 191 4 2 9 63 4 1 1 2 73 1 19 33 10 24 4 27 7 53 9 16 22.104 11 23 85 10 25 3 67 ‘,5 59 ‘2 15 1 段 ’39 段 80 段 − 可 に ふ λ 必 チ じ ち シ ぢ し ゑキ 、/
t弛き
イ ひ ゐ い 14 48 24 37 20 7 15 9 13 56 2 11 9 6 32 1 18 16 6 1 142 19 90 30 70 14 12 74 1 4 69 3 12.・ 1 75 ・5 1 35 17 1 段 39 段 80 段 ヌ 原ぬ ツ ぼ lそ ゜1 ゛ニ) ス 巨 そ す ク ヽ . ● く ウ ヘ,ふ う 2 9 ・ 15 2 8 1 1 4 45 2 2 4 40 11 14 26 25 6 5 51 4 1 18 72 ■ 46 10 4 ,35 2 31 1 、n 1 段 39 段 80段’ ネ ・ね & μ 41てセ
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ケ ●・ 多を々け ご工 l゛j,゛り1 へ ゑ え 1 10 4 5 1 3 3 10 81 7 16 73 2 4 26 7 7 7 1 10 4 1 ‘42 2 1・ 1 25・ 3 1 22 3 5 1 段 39 段 80 段禽75
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1 31 7 78 1 27 19 60 1 16 8 16 2 150 1 95 3 53 18 13 1 10 16 4 3 .・4 64‘ ・ 1 22 9 , 4 ,20 1 2 20 ‘「1、4 1 段 39 段 80 段あったのであろうか。比較資料として虎明自著自筆の﹁わらん べ草﹂を取り上げる。ただ、﹁わらんべ草﹂は先の狂言台本と 異なり漢字を多用している。このことによって平仮名を用いる 場か制限を受けているわけである。また、用語も文語体であ り、狂言で見た如き諸条件がすべては揃わないことは予め考慮 に入れておく必要がある。資料とするものは部分的であるが一 段・三十九段・八十段の三段を取り上げ傾向を把握することに する。第五表がその仮名表である。以下﹁わらんべ草﹂という 場合には直接にはこの三段を指す。 具体的検討の最初として一音節一仮名のものを見る。誤記を 除くと次のものがある。 イ﹁い﹂ ヴ﹁う﹂ エ﹁え﹂ ク﹁く﹂ チ﹁ち﹂ ヒ﹁ひ﹂ ム﹁む﹂ ヨ﹁よ﹂ ヰ﹁ゐ﹂ ヱ﹁ゑ﹂ イ。・と等では虎明本に比べて仮名数が減少しており、両者必ず しも共通しない。 次に一音節二仮名以上のものを検討する。一’方の仮名か極端 に少いものには次の如きものがある。 ケ け 語頭語中語尾全体に用いる ゆ I︱ 々 申侍ける I かりけり 苓 あたゝめけり こしぬけて︵三十九段︶ ホ ■≫c- 語頭語中語尾全体に用いる ン ん ワ i? わ ラ 圧 ら ヤ か や
y-J(≪ま
ノゝ i?ゎii ^ '^ t 39 7 4 10 1 28 4 53 1 66 47 1 45 25 14 1 11 29 6 19 2 6 4 2 1 78 48 1 1 1 107 22 2 39 15 ヰ ひ い ゐま1り
ミ
み芯t
ヒ . ゐ い ひ 2 1 2 6 1 1 3 4 3 108 10 66 5 41 8 2 4 2い 11 1 2 1 39 2 19 1 11 ぶ、ぱ、るをゅ
ム むa J11ふ
に 78 1 1 99 1 41 11 11 1 8 9 5 1 2 19 32 3 30 1 3 ヱ ヘ ゑ廸tれ
メ 老 め へ ■ へ 5 2 4 1 6 1 48 14 2 41 10 33 10 3 14 15 5 2 68 1 49 29ヲ
お・ぉ掻を
□ 低 ろ ヨ よモ
1g
ホ 政・1 7f・ 9 84 1 2 12 84 20 28 8 9 2 11 1 41 31 11 13 71 5 51 18 1 1 16 1 20 1。a ほめられ ︵三十九段︶
一方の仮名の用例が極端に少いものはそれほど多くない。ヶの場合には
﹁け﹂が全体に亘って用いられているか、﹁々﹂﹁包1 ﹁︱﹂の三種は
語中語尾にしか用いられず、しかも用例は少い。少数用例のものは限定
された用法でしかもそれは多数用例の仮名の用法に包摂される。これに
一 一七 大蔵流狂言資料に見られる平仮名用字法の諸相︵菅原︶
類するものはコ︹あI語頭、こI全体︺ ト︹tI語中語尾、とI全
体︺ メ︹免I語中語尾、めL全体︺がある。一方ホの場合、﹁V−Jは
全体に用いられるが﹁蒔﹂は他に一段で語中語尾に用いられており用法
を特定できない。これに類するものにラがある。 。
一 一八 高知大学学術研究報告 第二十八ぎ 人文科学 互いにある程度の用例を持つものはかなりの音節にのぽる。二?三例 示する。 ア あ 語頭語中語尾 拓 あきらかに あたゝめ。あつき あり︵蟻︶ あた ワ わ 語頭のみ・ 忿 ぐわほう ”' f。J。 語頭語中語尾 ︷ 。止 ” ’ み∵みだ力に いみじき 、。 ‘’ ム ∼ 乙みだりに ’︵以上三十九段︶ \ ‘ アは’﹁あ 1が全体に用いられているのに対し、﹁拓﹂は語頭にのみ用い ・ られる。﹁拓﹂に限定的用法があり、ヽ﹁あ﹂。はその用法を包摂する。こ れに類するものが最も多い。︵︵ ︶で包んだものは用法差が不明確な ものである︶ キ[きI全体、鞄・鳶I語中語尾に限定︵以下同じ︶︺ ︵セ︵せ、 芭︶ テ︹てIてぷ包 二 ︹に、刄・︱・t£ ノ︻の、比・乃 ・φ`︼ ハで、n・そ・は︺ モ︹∼、色︺ レ︹を、れよ孜 口 ︹ろ、伍︺ ヲ︹を、斌︺ ︵カ︹心I全体、かI語頭中心︵﹁凧﹂用法未特定︶︶ ︵ス︹すI 全体、をI語中語尾か多いja−語中語尾、助動詞﹁ず﹂に集中︺︶ ︵タ︹さI全体、たI語頭中心﹁たる﹂ に集中、St・友︵用法未特 定︶︶ フ︹ふI全体、あ11語頭、︵﹁4﹂は用法未特定︶ ︵以下同じ︶︺ ︵サ︹さ、6︺︶、へ︹へ、必︺ ツ[つ1全体、健−語頭、り・ぽI語中語尾︵以下同じ︶︺ ナ︹f¥、 を、豹︺ ワの場合には、﹁わ﹂は語頭に限定され、﹁忿﹂は語中語尾の用法か 主と考えられる。これに類するものには次のものがある。シ︹ゑI語頭 中心、しI語中語尾中心︵以下同じ︶︺ ネ︹S?'n<≪!> ︵﹁ね﹂は用法未 特定︶︺ ミの場合には、rz-vfjが全体に亘って用いられている。他に﹁み﹂ ﹁`をがあるがこれらも用例は少いながら語頭語中語尾に分散しており 用法は全体に及ぶ。互いの間に用法差が認められないものである。これ に類するものはオ、ソ、ヌ、マ、リ等がある。 。ア行・’八行・ワ行に関のもの’についてみると、ほぼ歴史的仮名遣に合︲ 致する。合致しないものは次のものである。 上︲ ‘ F、字音語語中の﹁イ﹂は﹁ひ﹂で表記する。 J ご2、ウ音便を﹁ふ﹂で表記したものかあ&。 j I S “ 一 ’3、語頭のエ、々はア行ワ行に関わらず﹁﹁お・巻ブ﹁£﹂で表記する。 4、特定語詞に固定表記が認められる。 。。 。 − j − − ﹁こころへ ︵心得︶﹂ ﹁くわし︵委︶﹂ ﹁すまゐ︵住︶﹂ ﹁つゐに I − − ︵終︶﹂ ﹁まいる︵参︶﹂ ﹁いもり︵井守︶﹂ ﹁いのこ ︵亥︶﹂ − − − ﹁もちひ︵用︶﹂﹁ゆへ︵故︶﹂ ﹁すへ︵据︶﹂ 右のことをまとめると﹁わらんべ草﹂の平仮名用字法は次の如くな る。 △﹁わらんべ草﹂の平仮名用字法▽ 一、各音節における用字法 1、一音節一仮名のもの︵誤記を除く︶ ﹁い﹂ ﹁う﹂ ﹁え﹂ ﹁く﹂ ﹁ち﹂ ﹁ひ﹂ ﹁む﹂ ﹁よ﹂ ﹁ゐ﹂ ﹁ゑ﹂ 2、一音節二仮名以上のもの 田 一方の仮名はそれ自体限定的用法を持つが、それは他方の仮名 の用法に包摂される。︵用法の多い仮名が上側︶ a、一方が他方より極端に用例が少いもの ﹁け﹂と﹁々﹂﹁jSUj fw-﹂ ﹁こ﹂’と﹁あ﹂ ﹁と﹂と﹁t﹂ ﹁め﹂と﹁悒﹂
b、互いにある程度の用例を持つもの︵︵ ︶で包んだものは用法 差が不明確なもの︶ ﹁あ﹂と﹁拓﹂ ︵﹁6﹂ど﹁か﹂ ︵﹁H5Jは用法未特定﹂︶ ﹁き﹂と兎﹂ [蔚r ︵﹁さ﹂と﹁Jり﹂︶ ︵﹁す﹂と﹁を﹂ ﹁収﹂︶ ︵﹁せ﹂と﹁包﹂︶ ︵﹁さ﹂と﹁た﹂︵Jt一 ﹁£﹂は用法未特定︶ ︵﹁つ﹂と﹁咤﹂ ﹁り﹂ ﹁ほ﹂︶ ﹁て﹂と﹁で﹂f7 ﹁奪﹂と7r﹂﹁箭﹂ ﹁に﹂と﹃4﹄ 。 ﹁︱﹂ ﹁fl ﹁の﹂ と ﹁比﹂︲ ﹁乃﹂ ・﹁︰t一 ﹁ふ﹂と﹁かI ︵﹁4﹂は用法未特定︶ ﹁︰i﹂と﹁n﹂ ﹁︰`″y﹂ ﹁は﹂ ﹁へ﹂と﹁4﹂ ヽ ・ 圓 互いに独自の用法を持つもの︵用例数の多い仮名か上側︶ a、一方が他方より極端に用例か少いもの ナシ ・b、互いにある程度の用例を持つもの ﹁し﹂。と﹁ゑ﹂ 7厚﹂と・﹁絲﹂ ︵﹁ね﹂は用法未特定︶ ﹁わ﹂と﹁g﹂ ㈲ 互いの仮名の間に用法差を特定できないもの︵用例多数の仮名 が上側︶ a、一方が他方より極端に用例が少いもの フャ﹂と﹁蒔﹂ ﹁ら﹂と﹁圧﹂ b、互いにある程度の用例を持つもの ﹁お﹂と﹁我﹂ ﹁そ﹂と﹁5﹂と﹁塾﹂﹁ぬ﹂と﹁原﹂ ド ﹁ま﹂と﹁は﹂と﹁tこ ﹁ヽt﹂と﹁み﹂と﹁& `﹁り﹂と ﹁1﹂と一手﹂ 二、ア行︵アを除く︶ ・八行・ワ行各行に関わる用字法 1、活用表記等歴史的仮名遣にほぽ一致する。 2、字音語語中の・﹁イ﹂は﹁ひ﹂で表記する。 一 一九 大蔵流狂言資料に見られる平仮名用字法の諸相︵菅原︶