• 検索結果がありません。

看護学実習に求められる看護学生のコンピテンシー形成のプロセス

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "看護学実習に求められる看護学生のコンピテンシー形成のプロセス"

Copied!
9
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

The Process of Nursing Studentsʼ Obtaining The Competency Required for Nursing Practice

Sachiko K

URIMOTO1 )

, Naoko T

AKAYAMA1 )

, Kyoko M

ATSUO1 )

, Sachiko K

UBO1 )

and Sayuri D

OI2 )

ABSTRACT

Purpose : The purpose of this study was to clarify the process of obtaining competency that is required for nursing practice by surveying the actual conditions of nursing students.

Methods: The authors analyzed the questionnaire results of 380 nursing students at University A. 54 questionnaire items were used about basic competency as a nursing student, basic social competency, communication skills and stress coping skills.

Results: The ʻbasic competency as a nursing studentʼ and the ʻbasic social competencyʼ showed higher values for each grade and were the factors that contributed to obtaining competency. ʻCommunication skillsʼ and ʻstress coping skillsʼ showed little difference between the grades and depended largely on the individualities of students.

KEYWORDS: Nursing practice, Competency, Core competency, Basic competency as a nursing student,

basic social competency

看護学実習に求められる看護学生のコンピテンシー形成のプロセス

栗本佐知子

1 )

・高山直子

1 )

・松尾恭子

1 )

・久保幸子

1 )

・土井さゆり

2 ) Ⅰ.緒言  看護の臨床では,医療の高度化・複雑化に伴い, 高齢者のニーズの多様化などの影響を受け,専門的 な知識や多様な技術が求められている。看護専門職 において,看護の専門的知識や技術だけではなく, 複雑な場面での対応力が必要とされる。その育成に おいて根幹となす看護学教育の基盤が作成された。 平成29年に「看護学教育モデル・コア・カリキュラ ム」1 )が文部科学省より提示され,日本看護系大学 協議会では,平成30年に「看護学士課程の卒業時到 達目標としての看護実践能力であるコアコンピテン シー」2 )が示された。看護学士課程教育におけるコ アコンピテンシーは,「Ⅰ群 対象となる人を全人 的に捉える基本能力」,「Ⅱ群 ヒューマンケアの基 本に関する実践能力」,「Ⅲ群 根拠に基づき看護を 計画的に実践する能力」,「Ⅳ群 特定の健康問題に 対応する実践能力」,「Ⅴ群 多様なケア環境とチー ム体制に関する実践能力」,「Ⅵ群 専門職として研 鑽し続ける基本能力」の ₆ 群の看護実践能力が示さ れており,その能力の育成には看護学実習が大きな 役割を担っている。  看護学生の実習は,看護学生としての基礎力や社 会人基礎力などが求められており,学生自身が持つ コンピテンシーをもとに看護教育による学修と,臨 床における対象者や家族との相互行為の展開を通し て統合することで,実践可能なコアコンピテンシー へと育成されていくと考える。しかし,その能力は 様々な基礎的な能力の複合体であり,知識や技術を 学習する能力や活用する能力,そして,対人関係に おいては,コミュニケーション力だけでなく態度や マナーを含めた能力も必要である。  看護教育において,看護学生が 4 年間の教育によ り看護の専門職としてのコアコンピテンシーを獲得 できるよう,各学年の看護実践能力の段階に合わせ た教育をカリキュラムに沿って実践している。しか し,段階に合わせた教育により,大学に入学するま でに培っていたコンピテンシーを 4 年間の看護学教

(2)

育を受けることによって,どのように変化し,コア コンピテンシーとして発揮されていくのか,その形 成のプロセスは明らかにされていない。看護学実習 で必要なコンピテンシーとは何か, 1 年次から 4 年 次までの学年別の推移をみることでコアコンピテン シーの形成のプロセスが明らかになるのではないか と考えた。そして,看護指導教員や臨地実習指導者 が,学生のコンピテンシーを把握することにより, 適切な指導を行う一助となり意義があると考える。 Ⅱ.目的  本研究は,看護学実習に求められる看護学士課程 における 1 年次から 4 年次の看護学生のコンピテン シーの実態を調査し,学年別に分析しコンピテン シー形成のプロセスを明らかにすることを目的とし た。 Ⅲ.用語の操作的定義  「看護学生としての基礎力」は,看護学生が実習 時に求められる学習能力・実践能力をいう。  「社会人基礎力」は,本学で掲げている自立した 社会人を目指すための態度やマナーなど人間関係を 形成する能力をいう。  「コミュニケーション力」は,話すことや聞くこと, 共感して話を聞き,他者を尊重する能力をいう。  「ストレスコーピング力」は,ストレスに対処す る能力をいう。  「コンピテンシー」は,単なる知識や技能だけで なく,技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリ ソースを活用して,特定の文脈の中で複雑な課題に 対応することができる力₃ )であり,調査内容の看 護学生としての基礎力・社会人基礎力・コミュニケー ション力・ストレスコーピング力をいう。  「コアコンピテンシー」は,単なる知識や技能だ けでなく,様々な資源を活用して特定の状況の中で 複雑な課題に対応できるための核となる能力2 ) いう。 Ⅳ.方法   1 .研究対象及び調査期間    対象者は,A 大学看護学生380人で,調査期間 は2018年 ₈ 月から ₉ 月であった。   2 .調査内容及び方法    調査内容は,「看護学生としての基礎力」15項目, 「社会人基礎力」15項目,「コミュニケーション力」 10項目,「ストレスコーピング力」14項目の 4 カ テゴリー 54項目を調査した。自作の自記式質問 紙調査票を作成し,「非常にあてはまる」を ₅ 点, 「まったくあてはまらない」を 1 点とし,リッカー ト尺度 ₅ 件法でコンピテンシーレベルを測定し た。調査票を配布後,回収箱にて回収した。   3 .分析方法    欠損値を除外し,基本属性は記述統計を算出し, 4 カテゴリーの「看護学生としての基礎力」,「社 会人基礎力」,「コミュニケーション力」,「ストレ スコーピング力」をそれぞれ学年別にコンピテ ンシーレベルの平均値と標準偏差(SD)を求め た。学年間の比較では,一元配置分散分析を実施 し Tukey(T)にて多重比較を用い,有意水準 ₅ % 未満を有意差ありとした。分析には,IBM SPSS Basic Ver.25を用いた。 Ⅴ.倫理的配慮  調査は,任意性を保障し成績評価に影響を及ぼさ ないことを文書と口頭で説明し,学生の負担の少な い時間や場所を考慮して協力依頼を行った。調査は, 自記式無記名質問紙調査法であり,データの処理お よび分析の際には,コード化し匿名性を図り,個人 が特定できない配慮をすること,研究結果を学会や 学術雑誌で公表すること等を文書と口頭で説明し同 意を得た。調査結果は研究者以外に共有されること はなく厳重に保管・管理し, ₅ 年間保管した後,責 任をもって破棄することを明記した。本研究は,四 国大学研究倫理審査専門委員会の承認を得て(承認

(3)

番号30021)実施した。 Ⅵ.結果   1 .対象者の属性    回収数は345人(回収率90.8%)であった。そ のうち,すべての質問に回答したものを有効回 答とし,342人を分析対象とした。54項目の内的 整合性は,クロンバックα係数,0.971であった。 対象者の属性は, 1 年次生107人(男性11人), 2 年次生98人(男性11人),₃ 年次生70人(男性 ₃ 人), 4 年次生67人(男性 ₉ 人)で, 1 年次生が最も多 かった。   2 .看護学生としての基礎力    対象者の学年別でみた看護学生としての基礎力 は,表 1 に示した。 1 年次から 4 年次間で有意差 を認めた主なコンピテンシー要因のうち, 4 年次 生が一番高い項目は,「対象者と良い関係を築け るよう配慮できる」F(3,336)=9.145,p<.001で あった。続いて「援助の最中でも看護師・教員の 指摘には学修者として真剣に耳を傾けることがで きる」F(3,336)=6.738,p<.001と「対象者の都 合に合わせ,援助を開始できるよう状況を観察 表 1 .学年別  看護学生としての基礎力 n=342 質問項目 1 年次平均値(SD) 2 年次平均値(SD) ₃ 年次平均値(SD) 4 年次平均値(SD) F 値 (Tukey T)多重比較 1 講義・演習・実習で学んだことを対象者との関わりに活かすことができる 3.53(.948) 3.34(.896) 3.89(.826) 3.86(.782) 7.602 1<3*,2<3***,2<4** 2 病棟や対象者の情報を 1 日の行動計画の立案に活かすことができる 3.09(.971) 3.32(3.267) 3.91(.812) 3.89(.767) 3.945 1<3*,1<4* ₃ 対象者の問題の解決方法を見出すために些細な情報にも注意を払うことができる 3.25(.914) 3.20(.849) 3.61(.878) 3.67(.829) 6.121 2<3*,2<4**1<3*,1<4*, 4 対象者の苦痛を少しでもやわらげるために援助方法を工夫することができる 3.42(1.26) 3.31(.854) 3.94(.883) 3.86(.721) 8.504 2<3***,2<4**1<3**,1<4*, ₅ 対象者の都合に合わせ,援助を開始できるよう状況を観察することができる 3.29(.938) 3.33(.928) 3.99(.752) 4.03(.764) 17.855 1<3***,1<4***,2<3***,2<4*** ₆ 他の学生への助言であっても自分のこととして耳を傾けることができる 3.75(.934) 3.79(.790) 4.19(.728) 4.08(.686) 5.607 1<3**,2<3* ₇ 手際よく落ち着いて技術を提供する看護師や教員を手本にすることができる 3.51(1.071) 3.48(1.007) 3.83(.890) 3.79(.851) 2.799 ₈ 優れた援助を提供する学生の技術を自分の中に取り入れることができる 3.49(.949) 3.54(.875) 3.73(.850) 3.49(.831) 1.199 ₉ 援助の最中でも看護師・教員の指摘には学修者として真剣に耳を傾けることができる 3.75(1.003) 3.84(.893) 4.20(.809) 4.26(.730) 6.738 1<3**,1<4**,2<3*,2<4* 1₀ いつでも援助できるよう看護師・教員の技術を注意深く観察できる 3.53(.968) 3.55(.826) 4.11(.713) 3.94(.802) 9.587 1<3***,1<4*,2<3***,2<4* 11 自分ではどうすることもできない問題の解決方法を誰かに相談することができる 3.57(1.024) 3.58(.962) 4.13(.797) 4.05(.812) 8.545 1<3**,1<4**,2<3**,2<4** 12 援助提供中に生じた解決困難な問題に対し,そばにいる看護師・教員に支援を求めることができる 3.94(3.095) 3.60(.917) 4.01(.807) 3.98(.886) 0.940 1₃ 対象者と良い関係を築けるよう配慮できる 3.65(.936) 3.74(.829) 4.06(.814) 4.27(.755) 9.145 1<3*,1<4***,2<4** 14 グループの学生の学修活動や看護師の仕事を妨げないように周囲の状況に注意を払うことができる 4.00(4.142) 3.72(.784) 3.99(.752) 4.08(.791) 0.364 15 自らの失敗に誠実に対応し対象者や教員・看護師との関係維持に努めることができる 3.61(.952) 3.69(.817) 3.86(.785) 3.98(.774) 3.110 1<4* *p<.05 **p<.01 ***p<.001

(4)

することができる」F(3,336)=17.855,p<.001で あった。     ₃ 年次生が一番高い項目は,「自分ではどうす ることもできない問題の解決方法を誰かに相談す ることができる」F(3,336)=8.545,p<.001と「い つでも援助できるよう看護師・教員の技術を注 意深く観察できる」F(3,336)=9.587,p<.001で あった。続いて「対象者の苦痛を少しでもやわら げるために援助方法を工夫することができる」F (3,336)=8.504,p<.001と「講義・演習・実習で 学んだことを対象者との関わりに活かすことがで きる」F(3,336)=7.602,p<.001であった。 1 年 次生と 2 年次生の差はなかったが, 2 年次生から ₃ 年次生,もしくは 4 年次生にかけて,平均値の 数値が高くなっていた。   3 .社会人基礎力    対象者の学年別でみた社会人基礎力は,表 2 に 示した。 1 年次から 4 年次間で有意差を認めた 主なコンピテンシー要因のうち, 4 年次生が一 番高い項目は,「身だしなみ,第一印象,大学生 らしさについて考えることができる」F(3,336)= 15.524,p<.001であった。続いて「対象者と家族 を尊重した態度や言葉づかいで応接することが 表 2 .学年別  社会人基礎力 n=342 質問項目 1 年次平均値(SD) 2 年次平均値(SD) ₃ 年次平均値(SD) 4 年次平均値(SD) F 値 (Tukey T)多重比較 1 情報の活用方法として情報リテラシーを身につけることができる 3.35(.905) 3.47(.925) 3.70(.928) 3.58(.786) 2.293 2 情報社会に必要な情報モラルを身につけることができる 3.46(.907) 3.63(.878) 3.80(.827) 3.65(.832) 2.204 ₃ 与えられた課題について疑問がある時は,質問して理解しようとすることができる 3.23(.983) 3.29(.919) 3.74(.912) 3.70(.841) 6.955 1<3**,1<4**,2<3**,2<4* 4 自分の課題について計画を立てて実行することができる 3.32(.931) 3.43(.897) 3.73(.867) 3.82(.783) 5.966 1<3*,1<4**,2<4* ₅ 看護専門職を目指していることの自覚を持つことができる 3.53(.988) 3.76(.838) 3.91(.864) 3.98(.813) 4.520 1<3*,1<4** ₆ 周囲の人を動かして,目標を達成するリーダーシップを持って働きかけることができる 3.08(.987) 2.80(.986) 3.19(1.107) 3.30(1.007) 3.679 2<4* ₇ 対象者に,協力することの必然性(意義,理由,内容など)を伝えることができる 3.63(4.188) 3.34(.888) 3.60(.841) 3.73(.851) 0.398 ₈ 自分にできること,他人にできることを的確に判断して行動することができる 3.66(3.216) 3.38(.879) 3.66(.832) 3.67(.791) 0.503 ₉ 上手くいかないことはその原因や方法について調べて判断することができる 3.66(3.113) 3.42(.811) 3.60(.891) 3.71(.696) 0.422 1₀ 現状を正しく認識するための情報収集や分析ができる 3.20(.899) 3.44(.826) 4.17(3.722) 3.79(.734) 4.389 1<3** 11 身だしなみ,第一印象,大学生らしさについて考えることができる 3.65(1.005) 4.07(.888) 4.36(.703) 4.44(.611) 15.524 1<2**,1<3***,1<4***,2<4* 12 社会人としてふさわしい挨拶と礼儀とマナーを身につけることができる 3.59(.954) 4.39(4.222) 4.20(.809) 4.38(.718) 2.415 1₃ 社会人として信頼関係をつくるための表情,姿勢,態度,話し方の大切さを理解することができる 4.08(3.068) 4.21(2.072) 4.66(3.623) 4.36(.694) 0.708 14 社会人として身につけておきたい敬語や言葉づかいを理解することができる 3.62(.990) 3.99(.793) 4.21(.720) 4.21(.755) 9.872 1<2**,1<3***,1<4*** 15 対象者と家族を尊重した態度や言葉づかいで応接することができる 3.58(1.013) 3.98(.799) 4.24(.731) 4.36(.624) 15.018 1<2**,1<3***,1<4***,2<4* *p<.05 **p<.01 ***p<.001

(5)

できる」F(3,336)=15.018,p<.001と「自分の課 題について計画を立てて実行することができる」 F(3,336)=5.966,p<.001であった。     ₃ 年次生が一番高い項目は,「社会人として身 につけておきたい敬語や言葉づかいを理解するこ とができる」F(3,336)=9.872,p<.001と「与え られた課題について疑問がある時は,質問して理 解しようとすることができる」F(3,336)=6.955, p<.001であった。おおむね,低学年から高学年 に向かって,平均値の数値が高くなっていた。   4 .コミュニケーション力    対象者の学年別でみたコミュニケーション力 は,表 ₃ に示した。 1 年次から 4 年次間で有意差 を認めた主なコンピテンシー要因のうち, 4 年次 生が一番高い項目は,「対象者の反応に気を配りな がら話すことができる」F(3,336)=8.249,p<.001, 「対象者の意見や立場を尊重して話すことができ る」F(3,336)=5.069,p<.01であり, ₃ 年次生が 一番高い項目は,「対象者の話を相槌を打ちなが ら聞くことができる」F(3,336)=6.589,p<.001で あった。 1 年次生と 2 年次生の差はなかったが, 2 年次生から ₃ 年次生,もしくは 4 年次生にかけ て,平均値の数値がやや高くなっていた。   5 .ストレスコーピング力    対象者の学年別でみたストレスコーピング力は, 表 4 に示した。 1 年次から 4 年次間で有意差を認 めた主なコンピテンシー要因のうち, 4 年次生が 一番高い項目は,「現在の状況を変えるよう努力す る」F(3,336)=6.352,p<.001であり, ₃ 年次生が 一番高い項目は,「今の経験はためになると思うこ とにする」F(3,336)=4.858,p<.01,「自分のおか れた状況を人に聞いてもらう」F(3,336)=3.991, p<.01であった。低学年から高学年にかけて少し 高くなっているが,ほとんど差がなかった。 表 3 .学年別  コミュニケーション力 n=342 質問項目 1 年次平均値(SD) 2 年次平均値(SD) ₃ 年次平均値(SD) 4 年次平均値(SD) F 値 (Tukey T)多重比較 1 対象者の話を相槌を打ちながら聞くことができる 4.17(.878) 4.28(.784) 4.63(.641) 4.53(.638) 6.589 1<3**,1<4*,2<3* 2 対象者の意見や立場に共感して聞くことができる 4.07(.876) 4.08(.742) 4.40(.689) 4.35(.690) 4.260 1<3*,2<3* ₃ 対象者の考えを聞き読み取ることができる 3.71(.985) 3.70(.802) 3.89(.910) 4.03(.764) 2.509 4 対立する意見があるときはいつも両方の言い分を聞くことができる 3.66(.945) 3.77(.847) 3.86(.967) 3.98(.794) 1.939 ₅ 自らの考えを言葉でうまく話すことができる 3.25(1.043) 3.10(.902) 3.30(1.026) 3.61(.926) 3.550 2<4** ₆ 対象者の意見や立場を尊重して話すことができる 3.62(.845) 3.82(.804) 3.94(.849) 4.09(.701) 5.069 1<4** ₇ 対象者の反応に気を配りながら話すことができる 3.70(.886) 3.82(.765) 4.11(.753) 4.23(.656) 8.249 1<3**,1<4***,2<4** ₈ 対象者に納得してもらうよう話すことができる 3.42(.985) 3.70(3.215) 3.77(.860) 3.71(.765) 0.628 ₉ 自らの主張を論理的に筋道を立てて説明することができる 3.44(3.144) 3.10(.867) 3.26(1.112) 3.46(.831) 0.703 10 たくさんの意見を,うまくまとめることができる 3.02(1.051) 2.98(.946) 3.03(1.167) 3.20(.971) 0.647 *p<.05 **p<.01 ***p<.001

(6)

Ⅶ.考察   1 .看護学生としての基礎力    学生が高学年になるに従い,コンピテンシーレ ベルが高くなっており,特に 2 年次以降に顕著と なっている。これは,基礎的な学問から専門性を 高めるための学問へとカリキュラムが体系的に作 成されているからだと考える。実習においては, 1 年次はフィールド体験実習・基礎看護学実習Ⅰ で初めての対象者や指導者とのコミュニケーショ ンや対人関係を経験し, 2 年次は基礎看護学実習 Ⅱで看護過程の展開に際し,対象者との関係性を 深めることや指導者からの指導を受け,問題解決 能力を高めていくことを学修する。 ₃ 年次は各領 域実習( ₈ 科目)で多様な発達段階の対象者や, 施設・在宅など療養環境に応じた看護の実践を行 い, 4 年次は総合実習で対象者を統合的に捉え, 自己の実習課題の達成に向けて看護学生としての 経験が蓄積する。どちらも能動的に参加する演習 や実習での経験は,講義では学べない実践的な能 力が培われる環境が整っているからだと考える。 中村4 )は,経験が真の経験になるための条件と の 1 つとして,「他者からの働きかけを受け止め ながら振る舞うこと」を挙げており,「援助の最 中でも看護師・教員の指摘には学修者として真剣 に耳を傾けることができる」や「対象者の都合に 表 4 .学年別  ストレスコーピング力 n=342 質問項目 1 年次平均値(SD) 2 年次平均値(SD) ₃ 年次平均値(SD) 4 年次平均値(SD) F 値 (Tukey T)多重比較 1 現在の状況を変えるよう努力する 3.46(.853) 3.45(.910) 3.83(.851) 3.91(.799) 6.352 1<3*,1<4**,2<3*,2<4** 2 先のことをあまり考えないようにする 3.03(1.037) 2.63(1.039) 2.93(1.448) 2.95(1.208) 2.170 ₃ 自分で自分を励ます 3.26(1.017) 3.26(1.096) 3.53(1.213) 4.67(6.357) 3.755 4 なるようになれと思う 3.19(1.048) 3.54(1.057) 3.64(1.240) 3.63(1.223) 3.307 1<3* ₅ 物事の明るい面を見ようとする 3.39(.972) 3.51(1.067) 3.70(1.102) 3.55(1.126) 1.209 ₆ 時の過ぎるのにまかせる 3.22(1.060) 3.32(1.071) 3.46(1.259) 3.35(1.271) 0.630 ₇ 人に問題解決に協力してくれるよう頼む 3.19(.967) 3.27(1.001) 3.21(1.102) 3.32(1.125) 0.245 ₈ たいした問題ではないと考える 3.03(1.099) 2.93(1.124) 2.93(1.289) 2.92(1.232) 0.180 ₉ 問題の原因を見つけようとする 3.47(.988) 3.54(.814) 3.57(1.064) 3.80(.948) 1.731 1₀ 何らかの対応ができるようになるのを待つ 3.27(.983) 3.29(.924) 3.41(1.042) 3.20(1.070) 0.574 11 自分のおかれた状況を人に聞いてもらう 3.34(.955) 3.37(.967) 3.79(.961) 3.64(1.032) 3.991 1<3*,2<3* 12 今回の問題に関連した情報を集める 3.75(4.154) 3.41(.972) 3.90(2.262) 3.68(.807) 0.518 1₃ こんな事もあると思ってあきらめる 3.14(1.116) 3.05(1.049) 3.31(1.161) 3.24(1.203) 0.864 14 今の経験はためになると思うことにする 3.73(.952) 3.78(.819) 4.47(2.619) 4.15(.899) 4.858 1<3**,2<3* *p<.05 **p<.01 ***p<.001

(7)

合わせ,援助を開始できるよう状況を観察するこ とができる」が高い結果となっているのは,学生 にとって段階的に効果的な学修としてコンピテン シーが形成されているからではないかと考える。   2 .社会人基礎力    本研究では,本学で掲げている自立した社会人 を目指すための態度やマナーなど人間関係を形成 する能力を社会人基礎力とした。奥田₅ )の研究で は,社会人基礎力は 2 年次に一度低下すると述べ ており,それは, 2 年次の実習で様々な状況に直 面し,自身の知識・技術の不足や未熟さに不安や 心配を感じたためと論じている。しかし,本研究 では,低下することなく,「身だしなみ,第一印象, 大学生らしさについて考えることができる」や「対 象者と家族を尊重した態度や言葉づかいで応接 することができる」などが右肩上がりに高まって いる。社会人基礎力は看護専門職になるための前 段階の能力であるが,すでに看護学生としてより 対人関係を重視したコンピテンシーの力が形成さ れていると考える。本学では,学士力に加え,看 護学実習を経験することで社会人としてだけでな く,看護専門職として対象者との関係性を学び実 践する能力へと発展させていくことができ,経年 的にコンピテンシーレベルが高まったと考える。   3 .コミュニケーション力    山本₆ )の研究では,看護学実習後は,コミュ ニケーション力の上昇がみられたが,社会人基 礎力との相関は認められず,鷹野₇ )の報告では, 発達障害の症状と酷似するコミュニケーション力 に問題がある学生への対応について具体的な対策 が講じられていない現状が提起されている。本研 究でも,コミュニケーション力は実習においてコ ンピテンシーレベルは緩やかな曲線を描き,コン ピテンシー要因に大きく関与されているとは言え ないと考える。鷹野の報告にみられるような事例 もあり,実習において,コミュニケーション力は 重要なスキルであることと様々な手法や多様性が あることは学習したが,うまく活用するまでには 至らないためではないかと考える。アクティブ ラーニングによるシミュレーション教育などを取 り入れ,学生が自主的に実践できる状況を提供す る必要があると考える。   4 .ストレスコーピング力    ストレスコーピング力は,ほとんど差がなく 1 年次から 4 年次の間に対処能力を身につけるもの ではなくコンピテンシー形成のプロセスに関与し ていないと考える。松中₈ )は,「人に問題解決に 協力してくれるように頼む」のコーピング得点が 最も低く,回避・逃避型ストレスコーピングを取 る学生は実習において,記録を間に合わせるため 睡眠時間の短縮により,ストレスを強く感じてい ると述べている。本研究でも,低い項目は,「先 のことはあまり考えないようにする」「たいした 問題ではないと考える」「人に問題解決に協力し てくれるように頼む」であり,実習において,学 生には,先送りにできないほど,問題は深刻であ り,自分で解決しようとする傾向が強い傾向にあ る。松中₈ )の指摘しているように問題焦点型や 情動焦点型のストレスコーピングを用いられるよ う指導が必要である。実習では,常に何らかのス トレスにさらされる状況下であることは予測でき る。そのため,具体的なストレスコーピングの方 法を取り入れたシミュレーション教育などが効果 的にカリキュラムの中に含まれていることが求め られる。各学年の実習に即した対人関係力やスト レスコーピング力を高めるための教育システムが 必要ではないかと考える。 Ⅷ.研究の限界と課題  今回の研究は, 1 年次から 4 年次までの横断的調 査であり,コンピテンシー形成要因のプロセスを明 らかにするためには,同一集団での縦断的調査が必 要であると考える。さらに,看護専門職として欠か せない,コミュニケーション力やストレスコーピング 力の停滞要因についての調査を今後の課題としたい。

(8)

Ⅸ.結論  「看護学生としての基礎力」や「社会人基礎力」は, 学年毎に数値が高くなっており,コンピテンシー形 成に関与する要因である。  「コミュニケーション力」や「ストレスコーピン グ力」は,学年差が少なく,学生の個別性によると ころが大きい。 1 )四国大学看護学部看護学科 2 )元四国大学看護学部看護学科 文献 1 )大学における看護系人材養成の在り方に関する 検討会,看護学教育モデル・コア・カリキュラム ~「学士課程においてコアとなる看護実践能力」の 修得を目指した学修目標~,https://www.mext.go.jp/ b_menu/shingi/chousa/koutou/078/gaiyou/__icsFiles/ afieldfile/2017/10/31/1397885_1.pdf.(2020 年 4 月 1 日 アクセス) 2 )看護学士課程教育におけるコアコンピテンシーと卒 業時到達目標,一般社団法人日本看護系大学協議会, https://www.janpu.or.jp/file/corecompetency.pdf.  (2019年 ₃ 月10日アクセス) ₃ )独立行政法人大学改革支援・学位授与機構,2016. 高等教育に関する質保証関係用語集第 4 版,54. 4 )中村雄二郎,1992.臨床の知とは何か,岩波書店, 東京.

₅ )Okuda Reiko,and Fukada Mika,2019. The Differences in Basic Social Competency and Relevant Factors Based on Years of Study Amongst University Nursing Students, Yonago Acta Medica, 62(2): 211-220. ₆ )山本幸子,田中マキ子,2019.看護学臨地実習が社 会人基礎力に影響を及ぼす要因,日本看護学会論文集, 看護教育,49,67-70. ₇ )鷹野朋実,2017.看護学実習における"学生のコ ミュケーション"に焦点をあてた文献を対象とした文 献検討を行って,日本精神科看護学術集会誌,60(2), 119-123. ₈ )松中枝理子,島崎梓,後藤智子,石山さゆり,苑田 裕樹,永松美雪,大重育美,2017.看護学生の講義期 間と実習期間における睡眠とストレスコーピングの関 連,日本赤十字九州国際看護大学紀要,16,15-23. ₉ )平野加代,2010. 臨地実習場面における看護教員の コンピテンシー,日本看護学教育学会誌,20,(1), 25-35. 10)本村美和,川口孝康,2013.中規模病院の看護管理 者におけるコンピテンシー測定尺度の開発,日本看護 研究学会雑誌,36,(1),61-70. 11)川添恵理子,安部博史,三国久美,山田律子,石角 鈴華,2018.医療系総合大学の多職種連携コンピテン シーに及ぼす効果,北海道医療大学看護福祉学部学会 誌第14(1). 12)中山登志子,学習活動自己評価尺度-看護学実習 用-,舟島なをみ監修,2015.看護実践・教育のため の測定用具ファイル第 3 版,医学書院,274-283. 13)堀洋通監修,吉田冨二男・宮本聡介編,2011.心理 測定尺度集Ⅴ-個人から社会へ<自己・対人関係・価 値観>-,初版第 2 刷,サイエンス社,東京,272-277. 14)四国大学スタンダード(大学編),2018.自己教育 力ガイド第 1 部,4-5. 15)尾関友佳子,2012.ストレスコーピング尺度,心理 測定尺度Ⅲ~心の健康をはかる(適応・臨床)サイエ ンス社,初版第12刷,東京 . 16)松谷美和子,三浦友理子,平林優子他,2010.看護 実践能力概念,構造,および評価,聖路加看護学会誌, 14(2),18-28.

(9)

抄   録  本研究は,看護学実習に求められる看護学士課程における 1 年次から 4 年次の看護学生のコンピテンシー の実態を調査し,学年別に分析しコンピテンシーの形成のプロセスを明らかにすることを目的とした。  A 大学看護学生380人を対象として,自記式無記名質問紙調査法を行った。調査内容は,「看護学生とし ての基礎力」15項目,「社会人基礎力」15項目,「コミュニケーション力」10項目,「ストレスコーピング力」 14項目の 4 カテゴリー 54項目を調査した。  「看護学生としての基礎力」や「社会人基礎力」は,学年毎に数値が高くなっており,コンピテンシー形 成に関与する要因である。しかし,「コミュニケーション力」や「ストレスコーピング力」は,学年差が少 なく,学生の個別性によるところが大きく,看護学実習での具体的なコミュニケーション方法やストレスコー ピング方法が実践できるシミュレーション教育について示唆を得た。 キーワード:看護学実習,コンピテンシー,コアコンピテンシー,看護学生としての基礎力,社会人基礎力

参照

関連したドキュメント

自体も新鮮だったし、そこから別の意見も生まれてきて、様々な方向に考えが

Nursing care is the basis of human relationship, is supported by how to face patients and to philosophize about care as a

 少子高齢化,地球温暖化,医療技術の進歩,AI

向老期に分けられる。成人看護学では第二次性徴の出現がみられる思春期を含めず 18 歳前後から

54. The items with the highest average values   were:  understanding  of  the  patient's  values,  and  decision-making  support  for  the  place  of 

2.認定看護管理者教育課程サードレベル修了者以外の受験者について、看護系大学院の修士課程

向上を図ることが出来ました。看護職員養成奨学金制度の利用者は、26 年度 2 名、27 年度 2 名、28 年 度は

向上を図ることが出来ました。看護職員養成奨学金制度の利用者は、27 年度 2 名、28 年度 1 名、29 年