ウェブの変形を伴うI形断面材の非弾性
曲げねじれ座屈強度
杉原美好 深沢泰晴
(昭和60年8月31日受理)
Inelastic Flexural-Torsional Buckling Strength
of I-Section Members with Flexible Webs
MiyoshiSUGIHARA YasuharuFUKASAWA Abstract This paper presentS an analysis of inelastic flexural−torsional buckling of I−section members in due consideration of the effects of web distortion. By extending the instability theory formulated by Vlazov for thin−walled members to flexural−torsional buckling of I− section members with flexible web, equations governing the problem are derived. A procedure of numerical evaluation of flexural−torsional buckling strength is demonstrated for the simply supported I−beams with typical patterns of residual stress distribution, loaded by uniform bending into the elasto−plastic range. Numerical results in the form of buckling curves, evaluated by the present method, show that the effects of web distorsion considerably reduce the elasto−plastic buckling strength as well as the elastic buckling strength in cases of the beams with particular cross−sectional proportions.
1.はじめに
圧延1型鋼,溶接1形プレートガーターなどの1形 断面材の曲げねじれ座屈強度は,通常,断面形不変の 仮定のもとに全体座屈として解析され,同時に,特に 薄い板要素に対しては個別に局部座屈についてのチェ ックが行われている。しかしながら,これはあくまで も便宜的な近似解析法であることはいうまでもない。 そこで,解析精度をより向上させるために,断面形不 変の仮定を放棄した取り扱いが種々試みられている。 すなわち,それは断面変形を考慮した解析を行うこと であり,その結果は全体座屈のみならずフランジとウ ェブの連成効果を考慮した局部座屈の評価をも可能に する。 , このような断面変形を考慮した1形断面材の曲げね じれ座屈問題については,その弾性範囲内の挙動に関 するかぎり,すでにいくつかの解析結果が報告されて いる1)∼6)。著者らも,二つの異なった手法によってこの 問題に取り組み,一次元問題どしての簡便な支配方程 式の誘導と,座屈特性の検討を行った7)8)。 これらの研究成果のうち,断面変形を伴う1形断面 ばりの横倒れ弾性座屈の基本的特性としては,次のこ とが知られている。①座屈時の断面変形モードは,図 一1の3種に類別される。モードAは断面形不変の全 体座屈モードに相当する一tものであり,モードBは圧縮 フランジの面内曲げ変形が卓越するタイプである。モ ードCは圧縮フランジのねじれ変形が卓越している が見方を変えれば圧縮フランジとウェブの局部座屈モ モードA *土木工学科,Department of Civil Engineering モードB 図一1座屈変形のモード モードC一ドに対応するものともみなせる。②断面変形の考慮 に伴う曲げねじれ座屈強度の低下は,モードAおよび Bをとる場合には小さいが,モードCの場合には大き な値に達することが多い。③はりのスパンが短いほ ど,ウェブおよびフランジの断面が細長いほど,座屈 変形はモードCに近づき,したがって座屈強度の低下 の度合いも大きくなる。 本研究は,上述のような断面変形を伴う1形断面材 の曲げねじれ弾性座屈の基本特性を踏まえ,その解析 をさらに非弾性域にまで発展させようとするものであ る。ここでの解析は,一次元問題として取り扱ってい る文献8)の基礎理論に基づき,それを非弾性域へ拡張 するかたちで行う。なお,非弾性領域におけるこの種 の問題の研究としては,H型鋼柱を対象に有限帯板法 によって解析したものがある9)1°)。 2. 支配方程式 解析の対象とする二軸対称の1形断面および座標系 とその断面変形を図一2に示す。座標系は次の2組を用 いる。その一つは,図心を原点O,断面の主軸をx,y 軸,母線に平行な軸をz軸とする(O−x,y,9)座標 である。他の一つは,部材の各構成薄板断面材の図心 を原点O、とし,各薄板断面材の弱軸および強軸をそれ ぞれn軸およびs軸とする右手直交座標系(O一n,s, Z)である。 非弾性横座屈の解析を行うにあたって,次のような 仮定を設ける: ①断面変形としてはウェブの変形のみを考える。 ②はりの材料は完全弾塑性体である。 ③降伏状態は部材軸方向の直応力によって決まる。 ②と③の仮定より,応カーひずみ関係は,次のように なる。 n
h
(a)座標系 (b)断面変形 図一2 座標系と断面変形 6z− o㌘::≦:二, r・・−2G…, ・s−Ees (la∼C) ここに,σyは降伏応力,εyは降伏ひずみ,Eはヤン グ係数,Gはせん断弾性係数である。 ウェブの変形を伴う一軸対称の1形断面ばりの弾性 横座屈変形の支配方程式は,座屈変形前の状態で作用 している軸力をN(°),x軸まわりの曲げモーメントを My(°), y軸方向荷重をqッ〈°)とすれば,図心0のx軸方 向変位za,断面全体のねじれ角q,および上,下フラン ジの独自のねじれ角ψ1,ψ2に関して次のように表すこ とができる8)。 El。x za””一{N(°)(u+y、q)’}’+(れ(°)q)”=O EIωωq””−Gノ。q”+EIωωf’iPi””+ EI、,ωf 2 ip、’”’ −G/sf i iPi”−G/sf 2 ip, 「「+ys(N(°)Z∠)’+Mッ(°)U” 一(K(O)q’+K,(°)ψ、’+K,(0)ψ2’y 旬、(°)y、¢=0 Elωωプ1(ψ+ψ1)””−G/sf 1(ψ+ψ1)” +2w”(2ip,+・b2)一{Kl…(・刷γ一・ Elω .f 2(ψ+ψ2)””−G/rsf 2(q−Fψ2)” +2凬ユ(ψ1一ト2ψ2)一{K,(o)(q−←ψ2)ノ}・一・ (2a∼d) ここに,Elw(=Et 3/12)はウェブの単位幅あたりのz 軸まわりの曲げ剛性,Elxx, EIωω, Gノ、はそれぞれ有 効断面のy軸まわりの曲げ剛性,反り剛性,およびSt. Venantのねじり剛性を表す。さらに,上添字fl, f2は それぞれ上,下フランジに関する量であることを表す。 また,ys,y,はそれぞれせん断中心およびσyωの作用 点のy座標である。なお,K(°), K,(°), K,(0)は K(°)=∫A(σ。(°)+σr){(κ一XS)2+(y−ys)2}dA K,(o)=∫Af i(σz(o)一十一σr)(x−xs)2dA (3a∼c) κ,(°)=∫。ノ,(σ。(°)+σ。)(X−X、)2dA ここに,κsはせん断中心のx座標,cr。(°)は座屈変形前 の状態での直応力,σrは部材軸方向の残留応力,Afl, Af2はそれぞれ上,下フランジの断面積である。 式(2)は,ウラゾフによって定式化された薄肉ばりの 3次元不安定問題の理論における断面形不変の仮定を 放棄し,さらに残留応力の影響項を付加することによ って導かれたものである。 以下では具体的な解析として,スパンLで単純支持 され,一定曲げモーメント払が作用する一軸対称1 形断面ばりについて,ウェブの変形を考慮した横座屈 荷重を求める。この場合,次式が成り立っ。 qッ(o)=N(o)=0,ノlfv(o)=ノぼy (4a, b) また,式(3a∼c)の値をそれぞれ次のように書くことに する。 K(o)=K,.κ1(o)=K1, K,(o)=K, (5a∼c) 式(4),(5)を式(2)に代入すると座屈変形の支配方程式が 次のように求められる。 Elxx u””十(Myq)”=O EZωωψ””−G/sq”+ Elωωf ’ ip,”” +Eノ『ωωプ2ψ、””−Gノ、ゾ1ψ1”−Gノ、プ2ψ、” +M,U”一(κψ”+κ1ψ、”+K、ψ、”)=0 EIωωf 1(ψ+ψ1)””−Gノ、ア1(9Z)+ψ1)” +2w〃(2ip・+¢・)−k,(・+・b1)tr−・(6・一・) Elωωf2(ψ+ψ、)””−G/sf2(ψ+ψ、)” +−Z・tlii;(1・’w(・bi+2吻)一瓦(・・+・ip・・)・・一・ (6a∼6d) 境界条件としては,次式が成り立つ場合を考える。
z=0,z=L;u=μ”;ψ=q”
= ψ1 = ψ1” = ψ2= ψ2” =0 (7) このときの座屈形は,C,(i=1,2,3,4)を任意定数と して 〔・・ψ1ψ・〕一〔CIC・C・C・〕・i・竿 (8) と表すことができる。ここに,nはモード次数である。式 (8)を式(6)に代入することによって,次のような固有値 方程式が得られる。〆空y
一庇叫誓y+Gみ
SYM. 0臨・巴y+G㍗+k,
鋼(碧+G躍+瓦+顎㌃‡
0 E・・…vf2i三『y+G賠長
2警(姦y
E・w・ノ・Ory+G九≡+4乎(姦y
=0 (9) 上式を解いて,スパンLの限界値を求めることができ る。なお,残留応力がy軸に関して対称に分布すると すれば,一定曲げモーメントMyのみが作用するとき の応力分布はy軸について対称となる。 3.弾塑性横座屈値の算定 3.1 降伏領域の決定と弾塑性曲げモーメントの算定 弾塑性座屈解析を行う場合,まず最初に降伏領域の 決定が必要となる。本研究では,1形断面を微小要素に 分割し,力の釣り合いからそれぞれの微小要素の直応 力を求め,降伏領域を決定する。 図一3のように1形断面ばりの構成薄板要素をそれ ぞれ2m個の微小要素に分割する。なお,ここでは, 板厚は他の断面寸法に較べ小さいものとして,板厚方 向には分割しないこととする。 微小要素の図心の直応力をσとすれば σ=σφ十σo十σr (10) ここに,σφは断面全体の図心からの距離に比例する応 力,σ。は断面に一様に生ずる応力,σrは残留応力であ る。降伏応力σy,降伏曲率φy,曲率φを用いて式(10) を変形すれば舌一2島+:i+篇 (11)
軸方向に力が作用しないとすれば,力のつり合いより P=∫. odA=ΣoAA=0 (12) ここに,AAは微小要素の断面積である。これより £一丁(Σ −9−∠A σy)−i(鷲崩+習∠A) したがって Σ一q4.4+Σ∠.4=0 (13) E σy P 図一3 構成薄板要素 の分割ここに,Σ,Σはそれぞれ弾性微小要素,塑性微小要 E P 素についての和を表す。式⑬に式(11)を代入すると
;(2島情+:1)aA+:i; aA−・(14)
上式により,与えられた曲率,残留応力に対するσ。を 求めることができる。すなわち,式⑫を満足する応力 分布が求められ,断面の降伏状態を定めることができ る。このときの曲げモーメントは次式により求められ る。 My=∫A oydA=Σ⑳、4A+ΣσyyAA 個 E P 3.2断面定数の計算 2.における仮定より断面の塑性領域は外力に対して 抵抗しないものとすれば,断面定数は弾性領域(有効 断面)に対するものとして定義することができる。ま た,有効断面に対する図心およびせん断中心の位置は 断面の降伏状態により異なることから,それぞれの降 伏状態に応じた図心およびせん断中心を求め,それら に基づいた断面定数の計算を行う。 このとき,断面の降伏による図心の移動量liyはAy一
蝿齬?@ (16)
E また,下フランジの板厚中心線よりせん断中心までの 距離y、’は次式によって求められる11)。 ys’一?ヌ力 (17)
ここに,ム1,ム2はそれぞれ上,下フランジのy軸に関 する断面二次モーメントであり,次式により求められ る。 Ixi=∫AfiX2dA=Σκ2∠A Ef 1 ム2;∫Af 2x2dA=Σx2∠.4 (18a, b) Ef 2 また,式(9)で用いた断面定数は次のように表すこと ができる。ムx=∫AX2dA=Σx2AA
E Iωωf1=ム1(h−y、’)2,1ω、、f2=ム、y’。2 1ωω=1、、ωf 1+1ωωf2=ム、(h一ヅ8)2+1。2y’、2 …’−f・・1(2・・)・・dA一譜∠6 (19・−9) ・・f・−f・f・(2醐一隠∠b ノ、=ノsf 1+ノ、プ2+ノsw一景穿∠6+星害∠6+誌巫
ここに,Σ,Σ,Σはそれぞれ上,下フランジ,ウェ Ef 1 Ef 2 Ew ブの弾性微小要素についての和を表す。また,∠b,∠〃 は次式によって表される。Ab−
?D, Ah−k (2・a,・b)
以上により,式(9)をスパンLについて解けば,与え られた1形断面はりについて弾塑性横座屈曲線を描く ことができる。 4.数値計算結果と考察 4.1 弾性横座屈 文献7),8)では1次モードに対する結果のみを示し たが,モード次数κを変化させた結果の一例を図一4, 5に示す。いずれも,縦軸は式(9)のM.に対応する横座 0.10 0.05 O.02 ξ1岡 0.01 0.005 0.002 0.001 s ぐNNCcNf−i…i\蟻認
’\’」
}断酸形を舗 断面形不変 0.5 1.0 2.0 5.0 10 20 L/b 図一4 弾性横座屈曲線(その1) 50 0.10 O.05 0.02 ξi頃 0・01 0.005 0.002 O.OOI \ 、▽三1\\
、
=}断面麹を鯖 一・一 f面形不変 d 、 \ sべ\一\
ヱL150 オ ん T=3・0 旦=15 ∂ 2 “s−”te・ ” ’N\\
\\
\
0.5 1.0 2.0 5.0 10 20 L/b 図一5 弾性横座屈曲線(その2) 50屈モーメントM。rによる縁応力σ,rとヤング係数E の比σ。r/E,横軸はスパンLとフランジ幅bの比L/b を両対数目盛で示した。 図一4は,圧延H形鋼モデルについて計算を行った ものである。いずれのモードにおいても,座屈応力の 極小値は極大値に対して約68%の低下を示している。 さて,実際の座屈は最小荷重で生ずることから2次以 上の高次モードの座屈を考慮すれば,座屈応力曲線は 結局図中の実線のようになる。この断面の場合には, (L/b)>10では,断面変形を考慮したものと考慮しな いものとの差は極めて小さいが,一方(L/b)<10では L/bの減少とともに両者の差は大きく拡大していくこ とがわかる。 図一5は,溶接1型鋼(1形プレートガーダー)モデル についての計算結果である。各モードにおける座屈応 力の極大値に対する極小値の低下は約7%であり図一4 の場合に較べてはるかに小さい。この断面の場合にも, (L/b)<10において断面変形を考慮したものと考慮 しないものとの差が,L/bの減少とともに非常に大き くなっている。 図一4および図一5において,断面変形を考慮したも のと考慮しないものとの差が顕著となっているL/b の領域(両者に対して(L/b)<10)においては,その 座屈変形モードは,図一1のモードCに相当しており, 圧縮フランジとウェブの連成した局部座屈としての色 彩が濃くなっている。なお,ここで得られた座屈強度 はL/bの広い範囲で鋼材の降伏応力をはるかに上ま わっているので,実用面からは弾塑性解析が必要とな る。 4.2 弾塑性座屈 次に,1形断面ばりに対して図一6のような2種の残 留応力分布モデルを設定し,弾塑性座屈解析を行った。 図一7,8は,それぞれ図一4,5と同じ断面のはりにつ 20 10 5.0 宰,.。
、。八
一断面変形を考慮(弾塑性) O.5 (5単 1生) 一一・一断面形不変(弾塑性) O.2 1.0 2.0 5.0 10 20 50 100 L/b (残留応力分布モデル:圧延1型鋼) 図一7 弾塑性座屈曲線 20 10 5.0 t L ミ逗2.0 1.0 0.5 0.2 1.0 2.0 5.0 10 20 50 100 L/b (残留応力分布モデル:溶接1型鋼) 図一e 弾塑性座屈曲線 σr:降伏応力 σ。。:圧縮残留応力 σ。t:引張残留応力 Orc=0.3σ} σアt=σrc Zl σアc σTt (a) 圧延1型鋼 σrtσrc唾二1
σ。c=0.3a, σTt=σ、 (b) 溶接1型鋼 図一6 残留応力の分布モデル いて弾塑性座屈解析を行ったものである。図一7は圧延 1型鋼(図一6(a)),図一8は溶接1型鋼(図一6(b))の残留 応力分布モデルを用いて解析した。縦軸は横座屈モー メントM、rと塑性モーメントMpとの比M、r/Mp,横 軸はスパンLとフランジ幅bとの比L/ろを両対数目 盛で示した。どちらの1形ばりにおいても,断面変形を 考慮した場合の弾塑性座屈曲線は断面形不変の場合と ほとんど変わらず,L/bの全領域において断面変形の 影響は現れていない。また図中には2次モードの曲線 も示したが,これらの断面の弾塑性座屈解析では1次 モードについてのみ検討すればよいことがわかる。 以上より,断面変形の影響が顕著に現れるL/bの範10 5.0 2.0 ミ』1.・ 0.5 0.2 0.1
涜ヂ 一べ
}断酸形を縮(弾塑性) (弾 性) 断面形不変(弾塑性) 0.5 1.0 2.0 5.0 10 20 50 L/b (残留応力分布モデル:圧延1型鋼) 図一9 弾塑性横座屈への断面変形の影響 10 5.0 2.0 泰1.・ °べぐ∼・\ O.5 0.2 0.1 }断唖形を鴇(弾塑1生) (弾性) 断面形不変(弾塑性) 0.5 1.0 2.0 5.0 10 20 50 、L/b (残留応力分布モデル:溶接1型鋼) 図一10 弾塑性横座屈への断面変形の影響 囲における弾塑性座屈強度がはりの塑性モーメントを 上まわるはりでは,弾塑性座屈解析においては断面変 形の影響はほとんど現れず,また,1次モードについて のみ検討すればよいことがわかる。 次に,断面寸法を変えて,断面変形の影響が,顕著 に現れるL/bの範囲での弾性座屈強度が塑性モーメ ントを下まわるはりについて同様の計算を行った。 図一9は圧延1型鋼(図一6(a))の残留応力分布モデル を用いた場合の計算結果である。図中には1次モード と2次モードの結果を示したが,さらに,高次のモー ドでの座屈も考慮すれば座屈曲線は実線のようにな る。また,L/bの広い範囲にわたって断面変形の影響が みられる。 図一10は図一9と同一の断面に対して溶接1型鋼(図一 6(b))残留応力分布モデルを用いた場合の計算結果で ある。図一9と同様に,L/bの広い範囲にわたって断面 変形の影響が現れることがわかると同時に,図一9との 比較で,圧延形残留応力と溶接形残留応力の違いを読 みとることができる。 以上より,断面変形の影響が顕著に出現するL/bの 範囲における弾性座屈強度が,塑性モーメントを下ま わる場合には,弾塑性座屈においても,断面変形の影 響がみられ,また,2次以上の座屈も考慮しなければな らないことがわかる。 5. ま と め 本研究は,鋼構造物の終局耐力の評価方法の確立の 一環として,断面変形を伴う1形断面材の曲げねじれ 座屈に関する著者らの前研究8)を発展させ,非弾性座 屈問題等の解明を行ったものである。その結果,以下 に記すような諸点を明らかにすることができた。 (1)1形断面材の弾性曲げねじれ座屈曲線(座屈荷 重一L/b関係)において,断面変形を考慮した場合,L/ b(L:部材長,b:フランジ幅)の一定範囲内では2 次以上の高次モードの影響が現れること,断面変形を 考慮しないものとの顕著な差が生ずるのは,座屈モー ドが圧縮フランジとウェブの連成した局部座屈に相当 している場合であること,などが確認された。 (2)断面変形を伴う1形断面材の弾塑性域における 曲げねじれ座屈問題の支配方程式を,一定曲げモーメ ントを受ける場合について導き,残留応力の考慮のも とに数値解析する手順を示した。 (3)圧延1型鋼と溶接1型鋼の代表的なモデルにつ いて,弾塑性曲げねじれ座屈強度の数値解析を断面変 形を考慮して行った結果,座屈曲線において断面変形 の影響が顕著に現れるL/bの範囲での弾性座屈強度 が,塑性モーメント以下の場合には,弾塑性座屈強度 にも断面変形の有意な影響が生じうること,その場合, 2次以上の座屈も考慮する必要があること,などがわ かった。参考文献
1)Rajasekaran, S. and Murry, D.W.:Coupled Local Buckl− ing of Wide−Flange Beam−Column, Journal of the Struc− tural Division, ASCE, Vo1.99, No. ST6, pp.1003∼1023, (June 1973) 2)Johnson, C.P. and Will, K.M.:Beam Buckling of Finite Element Procedure, Journal of the Structural Division, ASCE, Vo1.100, No. ST3, pp.669∼683,(March 1974)3)Hancock, GJ.:Local, Distortional, Lateral Buckling of I −Beams, Journal of the Structural Division, ASCE, VoL 104,No. STII, pp.1787∼1798,(November 1978) 4)Hancock, GJ., Bradford, M.A. and Trahair, N,S.:Web Distortion and Flexural−Torsional Buckling, Journal of the Structural Division, ASCE, Vol.106, No. ST7, pp. 1557∼1571,(July 1980) 5)Bradford, M.A., and Trahair, N,S.:Distortinal Buckling of I−Beams, Journal of the Structural Division, ASCE, VoL 107, No. ST2, pp.355∼377.(February 1981) 6)薄木征三,長谷部薫:二次の変位場理論に基づく薄肉断面ば りの局部および全体座屈解析,土木学会論文報告集,第344 号/1−1,pp. 357 一一 366,(1984年4月) 7)杉原美好,深沢泰晴:ウェブの変形を伴う1形断面材の弾性 曲げねじれ座屈,山梨大学工学部研究報告,第35号,pp.75 ∼84,(1984年12月) 8)深沢泰晴,杉原美好:1形ばりの弾性横座屈に及ぼすウェブ の変形の影響,構造工学論文集,Vol.31A, pp.15∼23,(1985 年3月) 9)吉田 博:H型鋼柱の局部座屈と曲げ座屈の連成座屈強度, 土木学会論文報告集,第243号,pp.19∼32,(1975年11月) 10)Hancock, GJ.:Inelastic Buckling in I−Section Columns, Journal of the Structural Division, ASCE, Vo1.107, No. ST1, pp.166∼179,(January 1981) 11)Bleich, F.: Buckling Strength of Me tal Structures, Mcgrow−hill,(1952)