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〈論説〉建築協定の私法上の意義

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(1)建築協定の私法上の意義. 建築協定の私法上の意義. 長谷川. 義. 1 はじめに 土地の利用や建物の建築は,良好な景観や環境のまちづくりの実現とい う観点から一定の制約を受ける O かかる制約は,都市計画法,建築基準法, 条例等において定められる公法上の基準だけではなく,行政と私人間,私 人間,そして行政主体問において締結される協定において定められる基準 によって実現されることも多い (1)。なかで、も,私人間において締結される 協定は,市町村等だけで決定されてきたまちづくりに住民自らが自主的な 規制によって関与できるとあって,今日では,行政的規制だけでは不十分 と考える住民によって積極的に活用されている (2)。 こうした協定は,法令 よりも厳しく私人の経済的自由を制限するものであるが,法律は,公権力 が行われなければならないところの最大限ではなく,最小限の取り締まり. ( 1 ) 碓井光明『行政契約精義 j (信山社・. 2 0 1 1 )5 2 5 3,1 6 4頁は,行政と私人間の. 協定については,公害防止協定など,私人間の協定については,建築協定(建 築基準法的条以下),緑地協定(都市緑地法 4 5条以下),景観協定(景観法 8 1条 以下)などを典型として挙げ,行政と私人間および行政主体間の協定の多くが 講学上の行政契約にあたるとする 。. ( 2 ) 松本博「建築協定の意義と効力」塩崎・安藤編『新・裁判実務大系 2建築関 係訴訟法〔改訂版J j (青林書院・ 2 0 0 9 )3 3 8頁,秋山靖浩 「不動産入門 1 3不動産 の所有 [ 4]建築協定・地区計画によるまちづくり」法学セミナー ( 2 0 1 0・4) 1 0 2頁。 -8 1-.

(2) 近畿大学法学 第 6 1巻第 2・3号. 基準を定める規範と解されることから,当事者の任意の合意に基づいて協 定に定められた事項が,目的と手段において合理的であり,公序良俗その 他強行法規に違反せず,かっ比例原則および平等原則等の条理上の限界を 超えない範囲であれば,協定の法的効力は肯定される ( 3 ) 。 そこで,土地所 有者等は,建築基準法上の全国一律の必要最低限の基準を超える規制を望 む場合,公法上の基準を上回る規制を建築協定によって定めることができ るω。建築協定には,建築物の敷地,位置,構造,用途,形態,意匠また は建築設備等の建築物に関する基準,協定の目的となっている土地の区域, 協定の有効期間,そして協定違反に対する措置等が一般的な協定事項とし て定められることが建築基準法において規定されるが,このほか,現行法 令ではほとんどカバーされていない敷地の利用に関する規定が盛り込まれ る場合もある (5)。 建築協定において定められた規制は,当該地域の財産的 価値を高めるために機能することもあるが,土地の高度・有効利用をしば しば制限することもある (6)。 ところで,建築協定の運用にあたっては,協定の法的性質,建築確認行 政との連動性,そして協定違反に対する法的拘束力に関して明確性を欠く などの問題も指摘される 問 。 これは,協定の法的性質をどう捉えるかによっ て,協定に違反する建築物に対する行政の役割や協定において定められた. ( 3 ) 山本隆司「行政契約」 法学教室 3 5 7号 ( 20 1 0)1 2 9頁。. ( 4 ) 松本博「建築協定の意義と効力」塩崎・安藤編『新・裁判実務大系 2建築関. 係訴訟法 〔 改訂版)] .( 青林書院・ 2 0 0 9)3 3 8頁は,建築基準法 1条は,建築物に. 関する最低限の基準であるため,この基準を緩和することはできないとする 。 ωJNBL 289号 15 1 6頁。. 日 ( 広瀬良一 ・玉田弘毅ほか「建築協定の実態とその法的性格. ( 6 ) 長谷川貴陽史『都市コミュニティと法一建築協定 ・地区計画による公共空間 の形成. ] (東京大学 出版会・ 2 0 0 5 )5 6頁,広瀬良一・ 玉 田弘毅ほか 「建築協定の. ω J. 実態とその法的性格 NBL 2 8 9号 1 8頁。 げ) 大橋洋一 『都市空間制御の法理論. ]( 有斐閣・ 2 0 0 8)1 1 7頁以下,長谷川貴陽ノ. - 8 2-.

(3) 建築協定の私法上の意義. 措置の強制手段等に違いが生じることに起因する O 建築協定の法的性質に ついては,準条例とする見解,行政契約とする見解,私法上の契約とする 見解などが提起されるが,建築協定を法的にどう位置づけるかによって, 協定違反の建築物についての特定行政庁の行政処分の可否が異なり,また, 協定の実現方法も異なることになる O そこで,多くの研究は,従来,建築 協定の法的性質や行政の役割および協定による法の実現について関心を向 けてきたが,これらの研究では,建築基準法上の建築協定のみが考察の対 象とされ,建築基準法に基づかない建築協定であるいわゆる自主協定につ いては,私法上の契約とするだけで,その法的拘束力についての考察は余 りされてこなかった。 ところが,実際には,建築基準法上の建築協定と同 様に自主協定も社会には多数存在していることに鑑みると,自主協定を建 築基準法上の建築協定と連続性をもつものととらえたうえで,建築基準法 上の建築協定と自主協定とで私法上の効力において差異が生じるのかにつ いて明らかにすることは重要な問題である O こうした問題関心については, 私法上の効力の差異を建築協定が建築基準法に基づくか否かではなく,協 定に関わる当事者の意思に着目して考察することが有用である O そこで, 本稿では,建築協定の法的位置付けに応じて建築確認行政との連動性を整 理したうえで,建築協定を私法上の契約と位置づける場合に,建築協定に おいて協定に関わる当事者が私法上の拘束力に服する法的根拠を明らかに することで,建築協定が私法上どのような意義を持ちうるのかを考察した しiO. 、史『都市コミュニティと法一建築協定・地区計画による公共空間の形成 J( 東京 大学出版会・. 2 0 0 5) , 小 賀 野 晶 一 「建築協定とまちづくり 」判タ 1 2 4 7号 4 2頁. ( 2 0 0 7)など。 8 3.

(4) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. 2 建築協定の法的性質 建築協定は,建築基準法によってつぎのとおり規定される O 建築協定は,建築協定条例が定められた市区町村の一定の区域について. 9条),建築協定区域内の土地の所有権者及び建築物の所有を目的 ( 建基法 6 とする地上権者または賃借権者の全員の合意により建築物に関する基準等 を定めた建築協定書を作成し,その代表者がこれを特定行政庁に提出し, その認可を受けることによって成立する(建基法 7 0条 1項 ySl。建築協定区 域に隣接した土地であっても,建築協定区域の一部とすることにより建築 物の利用の増進及び土地の環境の改善に資するものを「建築協定区域隣接. 0条 2項)。 建築協定の締結は, 地」として定めることもできる(建基法 7 原則として,予定の建築協定区域内の土地の所有者等の全員の合意が必要. 0条 3項 本 文),借地権の目的となっている土地につい であるが(建基法 7 ては,借地権者の合意があれば足り,当該借地権の目的となっている土地. 0条 3項ただし書)。 なお, の所有者の合意は得られなくてもよい ( 建基法 7 予定協定区域内に土地所有者等が一人しかいない場合には,いわゆる一人. 6条 協定として,その一人だけで建築協定を定めることができる(建基法 7 の 3第 1項 ) ω。 また,建築協定書で定めた建築協定区域,建築物に関する. ( 8 ) 松本博 「建築協定の意義と効力」塩崎・安藤編 『新・裁判実務大系 2建築関 青林書院・ 2 0 0 9)3 4 3 3 4 4頁は,認可を私法上の効力を補 係訴訟法 〔 改訂版)J( 完するという意味で行政法上の「認可」にあたるとし,建築協定を認可制にし たのは, I 協定内容が一定地域内の土地について法律,条例によらないで財産権 の制約を行うものであり,また,その制限内容が後から建築協定区域内の土地 の所有者等となった者にも効力が及ぶ という効力を有するものであるから,建 築物及び土地の利用,環境の増進,改善 の目的に比例した妥当な制限であるか どうか公的主体が判断する必要があるためである」とする 。. ( 司 大橋洋一 『都市空間制御の法理論 J( 有斐閣・ 2 0 0 8)1 2 0 頁 は, 一人協定が実ノ. -8 4-.

(5) 建築協定の私法上の意義. 基準,有効期間または協定違反があった場合の措置について変更するには, 土地所有者等の全員の合意により,建築協定を締結する際の手続と同様の 手続きを要する(建基法 7 4条)。建築協定の認可には,特定行政庁が,遅 滞なく建築協定の提出があった旨を公告し,相当の期間,関係人の縦覧に. 1条),公開による意見の聴取の手続を経なければなら 供した後(建基法 7 ない(建基法 7 2条)。なお,特定行政庁は,当該建築協定がその目的となっ ている土地または建築物を不当に制限するものではなく,かつ,建築基準 法6 9条の目的に合致するもので,協定において建築協定区域隣接地を定め る場合には,当該区域の境界が明確に定められていることその他の建築協 定区域隣接地について国土交通省で定める基準に適合するものであるとき は ,. これを認可しなければならず(建基法 7 3条 1項),建築協定を認可し. たときは遅滞なく公告しなければならない(建基法 7 3条 2項前段) ω。また, 建築協定は,有効期間の定めがある場合には,その期間の満了に際して更 新あるいは再締結することができ,有効期間の定めがない場合には,期間 の定めのない契約と解され,有効期間の定めがない建築協定を解消するに は,改めて有効期間を定めて有効期間の満了を待っか,廃止の手続きが必 要とされる ω。なお,建築協定を廃止するには,土地の所有権者等の過半. 、際上は協定の中心となっていることを指摘し,阿部定文・玉田弘毅ほか「建築 協定の実態とその法的性格ωJNBL2 8 9号 2 0頁は,. I 一 団の分譲地につき,あ. らかじめ建築協定を締結する予定で分譲される場合に,購入者が購入後に反対 するとせっかくの建築協定も成立しなくなるおそれがあるので,分譲業者の手 により事前に成立させておけるように配慮したものである 。 …-一分譲マンショ ンの管理規約が,通常,分譲業者により事前に用意されていることと相通じる」 とする 。. ω 碓井光明「行政契約精義 j (信山社 ・2011)468頁は,建築協定の認可申請の 対象たる協定書について土地所有者等の全員の合意がなされているからといっ て自動的に認可されるわけではないが,認可の要件については特定行政庁に裁 量が認められるとする 。. ω 小賀野晶一「建築協定とまちづくり」判タ 1247号48頁 8 5. ( 2 0 0 7 )。.

(6) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号 数 の 合 意 で 足 り る が , こ の 廃 止 に も 特 定 行 政 庁 の 認 可 を 要 し ( 建 基 法7 6条. 1項 ),特定行政庁は, そ の 認 可 を し た と き は , 遅 滞 な く 公 告 し な け れ ば な ら な い ( 建 基 法7 6条 2項 ) ω。 そ し て , 建 築 協 定 は , 当 該 建 築 協 定 区 域 内 において,特定行政庁による認可のあった日以後に効力が生じ,公告の あった日以後は,建築協定の締結時における土地所有者等だけでなく,新 たに土地所有者等になった者に対しても効力が及ぶ,いわゆる対世的効力 が 認 め ら れ ( 建 基 法7 5条 ) , 公 告 以 後 は , 土 地 の 所 有 者 等 と な っ た 者 が 当 該建築協定の存在を知らなかったとしても拘束を受ける 0 3 ) 。なお,一人協 定の場合は,認可の日から起算して. 3年 以 内 に そ の 建 築 協 定 区 域 内 の 土 地. に 2以 上 の 土 地 の 所 有 者 等 が 存 す る こ と に な っ た 時 か ら 一 般 の 建 築 協 定 と 同 ー の 効 力 を 有 す る こ と と な る ( 建 基 法7 6条の 3第 5項〉。 ところで,建築協定の法的性質については,私法上の契約と位置づける 立 場 が 判 例 ・ 通 説 と さ れ る がω ,協定において定められた規制違反を行政. ω 小賀野晶一「建築協定とまちづくり」判タ 1247号 47頁. ( 2 0 0 7 )は , この点に ついて締結時点における全員の合意が必ずしも貫徹されていないと指摘する。 ω 荒秀「建築協定の法的性質 Jr 建築基準法論 ( 1H (ぎょうせい・ 1 9 7 6 )1 9 5 頁,松本博「建築協定の意義と効力」塩崎・安藤編『新・裁判実務大系 2建築 青林書院・ 2 0 0 9 )3 4 6頁。なお,神戸地姫路支判平成 6 関係訴訟法〔改訂版H ( 年 1月3 1日判時 1 5 2 3号 1 3 4頁・判タ 8 6 2号 2 9 8頁は, 3階以上の建物の建築を禁止 階建て建物が建築された場合に,建築協定の存 する建築協定の規定に反して, 3 在を知らなかったこと,建築主事が建築確認の再建築協定の存在を指摘しなかっ たこと,及び建築による実害がないこと,の事情があっても,建築協定に違反 する 3階部分の撤去請求は権利の濫用には当たらないとした。 松山雅昭『建築基準法解説 j (第一法規 ・1 9 7 7)2 6 2頁,島田信次=関哲夫 9 8 5)5 3 2頁,兼子仁『行政 『建築基準法体系〔第 5次全訂新版 )J (酒井書房 ・1 9 9 7 )3 0 1頁,安達和志「行政上の契約・協定の法的性質」 法学 j (岩波書庖 ・1 芝池義一・小早川光郎・宇賀克也編『ジュリスト増刊行政法の争点〔第 3版)J 3 7頁,芝池義一「行政法における要綱および協定」芦部信喜ほか編「基本法学 ( 4 )契約 J(岩波書庖・ 1 9 8 3 )2 9 4頁など参照。なお,松本博「建築協定の意義と 改訂版 HC 青林書ノ 効力」塩崎・安藤編『新・裁判実務大系 2建築関係訴訟法 〔. ω. 8 6.

(7) 建築協定の私法上の意義. 処分の対象としうるのか,また,協定違反についてどのような法的責任を 追及することができるのかという観点から見解が対立する 民 これは,建 築協定の法的性質を準条例ととらえるか,行政契約の特殊類型ととらえる か,私法上の契約ととらえるか,または,自治規範ととらえるかによって, 建築基準法 6条に基づく協定違反の建築物に対する建築主事等による建築 確認や建築基準法 9条に基づく建築行為に対する特定行政庁による是正命 令の可否に違いが生じ,また,協定違反に対する責任追及の法的枠組みが 異なるからである O そこで,上記の観点から,建築協定について考えてみ ると,その法的性質のとらえ方に応じてつぎのような相違を見出すことが できる O まず,準条例ととらえる見解は,協定において定められた規制事 項は建築基準法が定める規制事項と本来的には同種のものであるから,協 定は,市町村内の一定の区域における実情に即した建築規制を実現する建. 0条・ 4 1条に基づく条例を補完する機能をもっ 築基準法ないし建築基準法 4 。 そのため, 準条例的な性格及び公共組合的性質を有するものととらえる加). 、院・ 2 0 0 9)3 4 7頁は,建築協定の法的性質について直接論じた判例はないとし,. 6年 5月 2 0日判タ 4 4 9号 7 5頁において建設省住宅局指導課長編「建 大阪高判昭和 5 築基準法・建築士法事項別早わかり J8 8頁の行政解釈を前提に建築協定の解釈・ 運用について判断されたに過ぎないとする 。. ω 玉田弘毅ほか. 「 建築協定の実態とその法的性格同 JNBL2 8 9 号1 3頁。 Q 6 ) 荒秀「建築協定の法的性質 Jr 建築基準法論(ぎょうせい・ 1 9 7 1 )J1 6 1頁以下 は,建築に関する規制の沿革をみると,まず私法自治の原理に基づく相隣関係 にまかされていたのが,漸次公法的規制にとりこまざるをえなくなり,その公 法的規制を一律化することの妥当でないことから法律・条例が建築協定に〔規 制を〕委ねたのであるから,. この建築協定を単なる私法上の契約とみることは. とうていできないとする 。 また,亀田健二「建築協定の法的問題一私人間合意 と行政との関係についての一考察」産大法学 1 7巻 1・2号 1 4 1 5頁(19 8 3 )は , 建築協定は, i 同一 目的を目指すという点で合同行為の性格をもち,協定の当事 者間においては権利・義務関係の性格をもち, さらに,準条例的性格を有して. r. いる」とする 。ほかに,金谷重樹「建築基準法上の建築協定について J 建築関 係法令の研究 1 0 J (日本建築学会・ 1 9 81 )4 04 1頁以下参照。. - 8 7-.

(8) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. 協定違反については,建築主事等による建築確認や特定行政庁による是正 命令の対象となるとともに,協定当事者は,違反者に対して協定で合意し た内容の不履行について公法上の当事者訴訟を提起することもできる O つ ぎに,行政契約の特殊類型ととらえる見解は,協定の目的が協定当事者の 私的利益ではなく公共の利益の実現にある点に着目し,協定は,地方公共 団体あるいは特定行政庁が行政上の手法たる建築協定条例の制定および認 可という行為によってー当事者として参加することで締結される行政契約 の特殊類型ととらえるへそのため,建築協定は公法上の権利義務を形成 し,地方公共団体あるいは特定行政庁は協定内容を遵守する債務を負担す るので,協定違反については,違反の是正を要求する権利を有する地方公 共団体あるいは特定行政庁が違反者に対して協定上の義務の履行を求めて 8 ) 。 そして,私 公法上の当事者訴訟または民事訴訟を提起することになる Q. 法上の契約ととらえる見解は,協定は,土地所有者等が私的自治の原則に 基づいて対等な当事者として協定の内容に合意することで締結される私法 上の契約の一種ととらえる ω ) 。そのため,建築協定において定められた規. 仰. 森田寛二「行政契約・協定方式の問題点」成田頼明編ジュリスト増刊行政法 の争点〔新版 J(有斐閣)8 5頁,森田寛二「建築協定論,そして公法上の契約論 ーその建立的基礎についての素描(1)(到」自治研究 6 6巻 1号 3頁 , 6 6巻 2号 5 2頁。 なお,大橋洋一『都市空間制御の法理論 J(有斐閣・ 2 0 0 8 )1 3 3頁は,契約締結 手続における市民参加と契約が締結された後における公表などの透明性確保の. 2点が民事の協定と異なるとする。 Q 8 ) 田中二郎『行政法総論J(有斐閣・ 1 9 5 7 )2 4 9 2 5 3頁は,行政事件訴訟法に定 める「公法上の法律関係に関する訴訟」が適用されるとする O 棲井敬子 二橋本. 0 0 7 )1 2 7頁 。 博之『行政法 J(弘文堂・ 2. ω 秋山靖浩「不動産入門 13不 動 産 の 所 有 [4]建築協定・地区計画によるまち づくり」法学セミナ一 ( 2 0 1 0・4)1 0 2 1 0 3頁,石井昇「建築協定・緑化協定の 性質J成田頼明編・ジュリ増刊『行政法の争点(新版 ) J2 8 9頁,松本博「建築 協定の意義と効力 J塩崎・安藤編『新・裁判実務大系 2建築関係訴訟法〔改訂 版J J(青林書院・ 2 0 0 9 )3 4 7 3 4 9頁,市川清文 =広瀬良一「建築協定一横浜市にノ. 8 8.

(9) 建築協定の私法上の意義. 制は自主的な規制に過ぎないため,協定違反については,建築主事等によ る建築確認や特定行政庁による是正命令の対象とはならず,協定には民法 の関係規定が適用され,協定当事者は違反者に対して民事訴訟を提起する などの私法上の措置によってのみ義務の履行を求めることができる O そし て,自治規範ととらえる見解は,建築協定は,地域に居住・生活するとい う事実関係に基礎をおいて地域の共同体あるいは住民集団によって形成さ れる総合的な自治規範であり,地域住民の意思の合致という私的要素と認 可に関する一定の手続きという公的要素の双方が融合したものであるとと らえて法律による画一的規制の機能を重視する ω。 この見解では,建築協 定の法的効力は私法上の契約ととらえる立場に含まれるとし,協定違反に ついては,協定当事者は私法上の措置によって違反者に協定で合意した内 容の履行を求めることができるとする O このように建築協定の法的性質のとらえ方によって,協定に違反する建 築物に対する行政の役割や協定違反者に対する協定で合意した内容の履行 の強制手段等に違いが生じるわけであるが,建築協定の法的性質について, 規制対象,締結当事者,そして締結に際する当事者の意思の方向という観 点から考えてみると,建築協定については,つぎの特徴を指摘することが できる O まず,協定の規制対象については,対人的な建築権行使に対する 、おける経緯と実態」ジュリ 4 8 1号(19 7 1 )5 2頁,尾辻静昭「建築協定について. r. (その 2 )J 法令解説資料総覧 J( 19 8 7 )7 0号 8 8頁,阿部定文・玉田弘毅ほか. 8 9号 2 0頁,長谷川貴陽史『都市コ 「 建築協定の実態とその法的性格同 JNBL 2 ミュニティと法一建築協定・地区計画による公共空間の形成 J(東京大学出版 会・ 2 0 0 5 )5 4頁など参照。 もっとも,伊藤高義=中舎寛樹『自治体法学全集 3 自治体私法 J (学陽書房 ・1 9 9 0)2 3 1頁以下は,協定の違反によっても特定の者 に特定の損害が発生するわけではなく,地域環境という共通の利益が害される だけであるため,建築協定は通常の私法上の契約にみられるような対価的構造 がないとする 。. ω 小賀野晶一. 「建築協定とまちづくり」判タ 1 2 4 7号 4 2頁 ( 2 0 0 7 )4 3頁 ( 伊 藤 =. 中舎4 7頁・ 2 3 2頁〉。. 8 9.

(10) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. 規制であるということができる建築協定は,対物的な建築規制を対象とす る条例とは規制の対象を異にすること ω ,つぎに,協定の締結当事者につ いては,建築協定は,私人間の合意によって締結されるもので,条例の制 定および認可の手続きの中で協定に関与するに過ぎない地方公共団体ある , そして,協定締 いは特定行政庁は協定の締結当事者とはいえないこと ω 結に際する当事者の意思の方向については,協定の目的が良好な環境のま ちづくりという公共の利益の実現にあることから,合同行為たる「同一方 向に向けられた意思の合致」があるに過ぎないとの見解も提出されるがω , 協定の法的効力は土地所有者等全員の合意を要件に承認されるのであるか ら,協定の締結に際して当事者に「契約」 を認識する基準としての「反対 方向の意思の合致」があるということができること,などである O そうで あれば,対人的な建築権行使を規制対象とする建築協定は準条例ととらえ ることはできず,また,当事者に「契約」 を認識する基準としての「反対 方向の意思の合致」があるということもできるのであるから,協定内容の 履行の強制は当事者の合意によって裏付けられる契約の一種ととらえるべ きであろう O また,締結当事者の観点から考えれば,特定行政庁の認可に 関する一定の手続きは協定への合意にはあたらず,特定行政庁を協定の締. ω 玉田弘毅ほか「建築協定の実態とその法的性格的 JNBL292号 32頁は,建築 協定は対人的な建築規制であり,対物的な建築規制をする建築基準法とは大き な差異があるとして,建築協定を準条例とみる説には疑問があるとし,むしろ 「純然たる民間レベルでの建築権行使制限契約 Jと異ならないとしつつ,. I 具体. の建築協定を直接に基礎づける条例中に」協定違反に対する是正措置や罰則を 定めることができるとする 。. ω 碓井光明『行政契約精義J(信山社・ 2011) 54頁. ω 碓井光明『行政契約精義J(信山社・ 2011)54頁は,当事者に「契約」を認識 する基準としての「反対方向の意思の合致」があるとは L、えず,. I 同一方向に向. けられた意思の合致」があるに過ぎないので合同行為として位置づけるのが自 然であるから,契約というより合同行為とする方が妥当であると指摘する 。. 9 0.

(11) 建築協定の私法上の意義. 結当事者ととらえることには無理があり,協定の締結当事者はあくまでも 土地所有者等であることに鑑みれば,建築協定は,行政契約ではなく,私 法上の契約ととらえるべきであろう O そのため,建築協定に違反する行為 があったとしても,建築主事等は協定違反を理由に建築基準関係規定に適 合しない旨の処分をすることや特定行政庁は協定違反の建築行為に対して 工事の施行の停止や建築物の除去等の違反是正措置を命ずることはできず, せいぜい協定を遵守するよう建築主に行政指導することができるにとどま るω。. もっとも,建築協定を私法上の契約ととらえる立場に対しては,建築協 定の内容は,協定締結時の土地所有者等の意思のみによって形成され,協 定成立後の新たな土地所有者等の意思は,協定の附帯した土地を購入する か否かの意思に過ぎず,協定自体についての意思ではなく,協定の形成に ついて協定成立後の新たな土地所有者等の意思が欠知しているということ ができるから,建築協定を純粋な私法上の契約ととらえることには無理が あるとの指摘がなされる 旬 。 そこで,建築協定を私法上の契約と位置づけ. ( 却. 秋山靖浩「不動産入門 1 3不 動 産 の 所 有 [4]建築協定・地区計画によるまち. 2 0 1 0・4)1 0 3頁は,神戸地姫路支判平成 6年 1月3 1日 づくり j 法学セミナ一 ( 判時 1 5 2 3号 1 3 4頁・判タ 8 6 2号 2 9 8頁が,建築協定は建築主事等が審査対象とする 建築基準関係規定には含まれないとする行政解釈の立場に依拠するとする 。. ω 亀田健二「建築協定の法的問題一私人間合意と行政との関係についての 一考 7巻 1・2号 1頁(19 8 3 )1 1頁は, 察」産大法学 1 にあげ,. この点について一人協定を例. I 一人協定では,宅地や住宅の分譲業者によって作成された建築協定. は,建築協定っきの宅地等の分譲を受ける者が現れることによって対世的効力 を生じることになり,その後に分譲を受けたい者は,理論的には当該建築協定 には対世効が生じていることになるので,. 当該建築協定に従わざるをえなくな. る。 こうした点で, 一人協定の場合には,当該宅地等の分譲を受ける者は,建 築協定の付帯した分譲を受けるか否かという限度で自由意思は有するが,協定 の内容について分譲を受ける者の自由意思は反映されないことになるとして, 一人協定を契約として構成することには無理がある」とする 。. 9 1.

(12) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. る場合,協定が協定成立後の新たな土地所有者等を対世的効力によって拘 束する私法上の根拠を明らかにする必要がある O 建築協定の対世的効力に ついては,地役権者等が第三者をも拘束することに鑑みれば,私法秩序の 中でとらえることも可能であるとの見解ω も提出されるが,その私法上の 根拠は,第三者のためにする契約に求める方がよいように思う O 建築協定 には契約当事者の私的利益ではなく公共の利益を実現するという目的があ るのだから,協定締結時の土地所有者等の意思には協定の締結当事者以外 の第三者たる新たな土地所有者等にも協定による受益と負担を受けさせる という意思が含まれており,これに対して新たな土地所有者等が協定の附 帯した土地を購入する意思をもって第三者の受益の意思を表示したととら えれば,協定締結時の土地所有者等 の間で締結された協定が新たな土地所 有者等との関係では第三者のためにする契約にあたると解することができ るからである 的 。 そうであれば,協定成立後の新たな土地所有者等が,協 定締結時の土地所有者等間で形成された建築協定の基準に拘束されたり, 協定を援用することは肯定されよう ω。. 。 。. 秋山靖浩「不動産入門 1 3不動産の所有 [ 4]建築協定・地区計画によるまち. づくり 」法学セミナー ( 2 0 1 0・4)1 0 2 1 0 3頁。 的. 1日 公害防止協定に関する事例ではあるが,東京地八王子支判平成 8年 2月2 は,公害防止協定を私法上の契約であるとしたうえで,契約当事者である自治 会の構成員でない住民との関係では,第三者のためにする契約であるとした。 もっとも,伊達火力発電訴訟(札幌地判昭 5 5年 1 0月1 4日判時 9 8 8号頁)は,行政 と企業との聞の公害防止協定を協定当事者以外の第三者たる住民が援用できる かについては,住民は公害防止協定に基づいて地方公共団体が有する権利を自 ら代位行使しうる地位にはなく,公害防止協定を第三者のためにする契約と解 する余地はないとした。. ( 2 8 ) 碓井光明『行政契約精義 J(信山社・ 2 0 11 )4 8 9頁は, 協定内容を妨げるよう. な開発許可や建築確認などの行政処分の取消し等を求める訴訟については,建 築協定については直接に土地所有者等が協定上の法的地位を根拠として争う原 告適格を肯定すべきとする。. - 9 2-.

(13) 建築協定の私法上の意義. 3 建築協定の私法的効果 建築基準法は,建築協定に対世的効力を肯定するが,協定で定められた 規制に違反する建築行為に対する措置については,明確な規定を設けては いな~ i。そこで,建築協定を私法上の契約ととらえる立場に依拠すれば,. 協定違反行為については,協定当事者が違反者に対して協定中に定められ た違反に対する措置(建基法 7 0条 1項)の範囲で協定で合意された内容の 履行を求めたり,損害賠償や差止めの民事訴訟を提起することになる ω 。 実際には,協定違反行為があった場合には,協定当事者によって協定の運 営機関として組織された運営委員会の委員長が,委員会の決定に基づいて, 違反者に対して建築工事施行停止を請求し,かっ文書をもって相当の猶予 期間を付して,違反を是正するために必要な措置を講じるべきことを求め, 違反者がこれらの請求に従わないときには,委員長は,委員会の決定に基 づ L、て,工事停止あるいは建築物の除去の強制履行または違反者の費用を もって第三者にこれをさせることを裁判所に請求できる,と定められるこ とが多いといわれる ω 。なお,協定違反者に対する民事上の提訴は,運営 委員長のみに認められると規定される場合が多 L16 0 0 もっとも,協定違反. ω 松山雅昭『建築基準法解説~ 制御の法理論~ (有斐閣・. (第一法規・ 1 9 7 7 )2 6 2頁,大橋洋一「都市空間 2 0 0 8 )1 1 9頁以下,松本博「建築協定の意義と効力」. 塩崎・安藤編『新・裁判実務大系 2 建築関係訴訟法〔改訂版J~ (青林書院・. 2 0 0 9 )349 頁,長谷川貴陽史『都市コミュニティと法~ (東京大学出版会・ 2 0 0 5 ) 2 4 7号 4 3 5 2頁以下など参照。 なお,小賀野晶一「建築協定とまちづくり」判タ 1 頁 ( 2 0 0 7 ) は,建築協定の条項の解釈は,文言が重視されるとする O 側. 長谷川貴陽史『都市コミュニティと法建築協定・地区計画による公共空間 の形成~ (東京大学出版会・. 2 0 0 5 )1 0 8頁以下は,すぐに役立つ「建築協定」の. 運営とまちづくり 1 0 3頁を例示する O. ω 大阪高判昭和 56年 5月20日判タ 449号 75頁は,分譲地の分譲業者によって形成ノ 9 3.

(14) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号 に対する実際の運用においては,私的自治の原則に基づく自主的な規制で あるとの考えのもと,民事訴訟にまで発展することは少なく,多くは話し 合 い に よ っ て 解 決 さ れ て い る ω。 ところで,建築協定は,市町村による建築協定条例の存在すること,協 定書の公告・縦覧,関係人からの公開による意見聴取,特定行政庁の認可 等の協定締結手続をふむこと,書面によること,等の建築基準法上の要件 , これらの要件を満たさなく を 満 た す 場 合 に 対 世 的 効 力 が 肯 定 さ れ る がω ても,土地利用や建築に対する公法上の規制基準をこえる制限についての 土地所有者等の合意自体は,公序良俗に反しない限り,私的契約の自由の 原則から有効となる へ. そのため,良好な景観や環境の形成を望む土地所. 、された建築協定につき,分譲後,協定締結者のなかから運営委員長が選任され て運営されていた場合に,協定違反を是正するために必要な措置の強制履行を 求めて裁判所へ出訴することができるのは,運営委員長のみであって,各協定 者個人は協定違反を理由に違反行為の差止めを求める訴えを提起する権限を有 しないと解すべきとした。 なお,協定違反によって損害を受けた者は,単独で 損害賠償請求の訴えを提起できるが ( 松本博 「 建築協定の意義と効力」塩崎・ 改訂版 安藤編 『 新・裁判実務大系 2建築関係訴訟法 〔. H(青林書院・ 2009)348. 頁),協定中に運営委員会の出訴権を約定したような場合,協定違反の措置は, 運営委員会に 一任されているとの趣旨に解されることが多いとされる ( 松岡勝 博・玉田弘毅ほか「建築協定の実態とその法的性格伺 JNBL 2 9 2号 2 7頁) 。. ω 秋山靖浩「不動産入門 13不動産の所有. [4]建築協定・地区計画によるまち. づくり」法学セミナー ( 2 0 1 0・4)1 0 6頁,長谷川貴陽史 『都市コミュニティと 東京大学 出版会・ 2 0 0 5)1 0 8 法一建築協定・地区計画による公共空間の形成 J( 頁以下。. ω 大橋洋一『都市空間制御の法理論J(有斐閣・ 2008)119頁は,民事の契約と 比べて, こうした点に特色があると指摘する 。. ω 松本博. 「 建築協定の意義と効力」塩崎・安藤編『新・裁判実務大系 2建築関. 係訴訟法 〔 改訂版J J(青林書院・ 2 0 0 9 )3 5 0頁。宅地分譲会社と買主との建築制 限特約につき有効な契約と認めて債権的効力を肯定した裁判例として,神戸地 伊丹支判昭和 4 5年 2月 5日判タ 2 4 3号 1 7 2頁は,宅地分譲会社と分譲地の買主と の聞における建築制限の特約に違反 した建築に対する宅地分譲会社の建築差止 請求について「かような特約に基づく土地所有権内容の制限は,対世的効力すノ. - 9 4-.

(15) 建築協定の私法上の意義. 有者等は,条例の存在や建築基準法の協定事項にとらわれることなく,よ り広範な事項を制限する合意をいわゆる自主協定として締結することがで きる ω 。建築基準法に依拠するものではない自主協定は,当事者の合意の 8 0 みによって建築権行使を制限する一般の私法上の契約と解されてきた 6. 建築基準法上の建築協定を私法上の契約ととらえる立場に依拠すれば,建 築基準法上の建築協定においても協定違反に対する建築主事等による建築 確認や特定行政庁による是正命令は否定されるので,建築基準法上の建築 協定と自主協定には,協定当事者と協定を認可した特定行政庁との関係に おいては差異はないといえるが, 当事者関係においては差異がある的。建 築基準法上の建築協定では,協定締結者間のみならず,協定締結者以外の. 、なわち物権的な効力を有するものでないことは,物権法的主義(民法 1 7 5条)か らみて,当然の帰結ではあるけれども,. このような売買当事者聞における合意. といえども,その内容が法令ないし公序良俗に違反し,違反無効とならないか ぎり,. その内容に従った効果すなわち債権的効力の生ずるものであることは,. いうまでもない Jとし,名古屋高決昭和 5 5年 6月1 2日判時 9 8 5号 9 1頁は,買主の 分譲会社に対する「宅地上に二階建て建物を建築してはならない旨」の不作為 義務を肯定する 。 ほかに,福岡地判平成 8年 5月2 8日判タ 9 4 9号 1 4 5頁参照。 (3~. 松本博「建築協定の意義と効力」塩崎・安藤編『新・裁判実務大系 2建築関 係訴訟法 〔 改訂版 J J(青林書院・ 2009) 350頁は,建築基準法上の建築協定は, 条例で定められたーの市町村の区域に限定され,二以上の市町村の区域にまた がって建築協定を一個の協定として締結することについては消極に解されるが, 自主協定は,条例の制定の有無や区域にとらわれないで,二以上の市町村の区 域にまたがって合意を形成することも可能であるとする。松山雅昭「建築基準. 9 7 7 )2 5 6頁参照。 法解説 J(第一法規・ 1 (3~. 亀田健二 「 建築協定の法的問題. 私人間合意と行政との関係についての一考. 察」産大法学 1 7巻 1・2号 1頁 ( 1 9 8 3 )1 2 1 3頁,高島平蔵「土地分譲会社と分 譲地の買主との聞における建築制限の特約に基づき土地分譲会社が右特約の建 築の差止請求をすることの可否」判例時報 1 0 0 7号 1 7 6頁(判例評論 2 7 1号 3 0頁)。. BL292号 32-33頁は, 玉田弘毅ほか「建築協定の実態とその法的性格肘 JN. I 建. 築協定は純然たる民間レベルでの建築権行使制限契約と異なるものではないと いわざるをえない」とする。 的. 王国弘毅ほか「建築協定の実態とその法的性格伯 JN BL2 8 9号 1 2 1 3頁 。. 9 5.

(16) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. 第三者に対しても対世的効力が肯定されるに対して, 自主協定では,協定 締結者間でだけ私法的効力が認められるだけで,第三者に対する対世的効 力が認められないとされるからである O そのため,自主協定では,協定締 結者間で合意された規制内容は,債権的な効力しか生じず,協定締結者の 範囲を超えた協定成立後の新たな土地所有者等に対しては強制できないと される B80 もっとも,建築基準法上の建築協定を私法上の契約ととらえ,協定締結 時の土地所有者等と協定成立後の新たな土地所有者等との関係では第三者 のためにする契約ととらえるならば,第三者たる新たな土地所有者等に対 する協定の法的効力は,建築基準法上の建築協定に限定される必要はなく, 自主協定においても肯定される余地はあるのではな~ , かω。 建築基準法に. よる対世的効力が認められない自主協定においても,協定締結者以外の新 たな土地所有者等が一方的意思表示によって後に協定に加わることは可能 であり,自主協定の拘束力に服することは法的に許容されるべきだからで ある ω。そうであれば,建築基準法上の建築協定において肯定される対世. 側. 松本博「建築協定の意義と効力」塩崎・安藤編『新・裁判実務大系 2建築関 係訴訟法 〔 改訂版 J J(青林書院・ 2009) 339頁。. C 3 ) 9 大橋洋一『都市空間制御の法理論 J(有斐閣・. 2 0 0 8 )1 1 9頁は,. r このような理. 解のもとでは…・・ 協定締結手続に都市計画策定手続と類似した手続が採られ ていることや,協定締結の前提として協定条例制定が要求されている点は必ず しも重視されていない」として,建築協定を私人間の協定に第三者効を付与す る点に重点をおいた制度であり,. r. 行政の関与が僅かな法的仕組みであるとすれ ば , …・ー締結手続きや条例は必ずしも不可欠ではないという見解も成り立つ」 とする 。 側. 協定区域内の土地の所有者等の全員の合意により締結された建築協定に区域 の境界が明確に定められた建築協定区域隣接地(建基法 7 3条 1項 3号)が新た に加入するには,協定書に定められたこの隣接地域内の土地の所有者等が特定 行政庁に対して書面にて一方的に意思表示することによって当該建築協定に加 入することができる(建基法 7 5条の 2第 2項)。. 9 6.

(17) 建築協定の私法上の意義. 的効力は自主協定では及ばないにしても,新たな土地所有者等が自主協定 の存在を知り,建築権行使制限を受容したと考えられる場合には,これを 新たな土地所有者等の協定内容についての受益の意思表示とみなして,協 定締結者間で合意した規制内容について新たな土地所有者等との関係でも 私法上の効力を一部認めてもよいように思う 刷 。 つまり,協定違反の建物 の建築に対する損害賠償や差止めの民事訴訟においては,建築協定の存在 は住民の人格権または財産権の侵害に対する建物の建築者の違法性を判断 する重要な要素となるところ,新たな土地所有者等が協定内容を受容した と考えられる場合には,建築基準法上の建築協定と自主協定とで違法性の 判断に違いを生じさせるべきではないだろう ぺ. ω 松本博「建築協定の意義と効力」塩崎・安藤編『新・裁判実務大系 2建築関 J(青林書院・ 2009)344頁は,建築協定の認可の公告と同協 係訴訟法〔改訂版 J 定書の縦覧は,その後に建築協定区域内の土地の所有者等となった者に対して, 建築協定区域を広く一般に知らしめるためとされるが,かかる手続きのみでは, 広 く一般に周知させるには不十分ではないかと指摘し,大橋洋一 『 都市空間制 有斐閣・ 2 0 0 8)1 1 9頁は,協定締結の事実を不動産登記簿等 に記 御の法理論 J( 入することを規定した方がはるかに有用であったようにも解されるとする 。 な お,宅地建物取引業法 3 5条 l項 2号 (同法施行法 3条 1項) は,建築基準法 7 5 条・ 7 5条の 2第 5項・ 7 6条の 3第 5項を宅地建物取引業者が説明すべき重要事 項に該当するとする 。 ほかに ,市川清文=広瀬良一 「 建築協定一横浜市におけ る経緯と実態」 ジュリ 4 8 1号 5 1頁(19 71)参照。. ω 加藤一郎. 『公害法の生成と展開 J( 岩波書庖・ 1 9 6 8年) 3 8 7頁。 最判昭和 4 7年 6月2 7日民集 2 6巻 5号 1 0 6 7頁は, I 権利者の行為が社会的妥当性を欠き,これに. よって生じた損害が, 社会生活上一般的に被害者において受容するを相 当 とす る程度を越えたと認められるときは,その権利の行使は,社会観念上妥当な範 囲を逸脱したものというべく,. いわゆる権利の濫用にあたるものであって違法. 性を帯び,不法行為の責任を生ぜしめる」とする 。 なお,平野裕之 『民法総合. 6不法行為法〔第 2版 J J(信山社・ 2 0 0 9)1 3 6頁は,建築基準法による規制があ る場合,建物については行政法規が基本的に基準となるとする 。. 9 7.

(18) 近畿大学法学 第6 1巻第 2・3号. 4 むすび. 建築協定の法的性質と法的拘束力についてのこれまでの考察を整理する と,建築協定は,協定締結時の土地所有者等における関係では私法上の契 約,協定成立後の土地所有者等との関係では第三者のためにする契約とと らえることができ,協定締結時の土地所有者等も協定成立後の土地所有者 等もいずれも協定の私法上の拘束力に服すべきという点に私法上の意義が あることが明らかとなった。建築協定に関するこうした理解は,つぎのよ うな論理的帰結を導く. O. つまり,協定内容について協定締結時の土地所有. 者等による合意が形成され,協定成立後の新たな土地所有者等 による受益 の意思が表示されていれば,建築基準法上の建築協定であっても自主協定 であっても,建築基準法による対世的効力は別にして,協定当事者は協定 違反者に対して協定内容の履行を請求することができ,また,民事訴訟に おける協定違反行為の違法性の判断では,協定に定められた基準が重要な 要素として扱われるべきということ,そして,建築協定は,私法的規制で あるため,協定違反に対して民事訴訟を提起するか否かは協定当事者の任 意に委ねられ,協定違反行為があっても,協定当事者は,より柔軟な対話 による解決を選択しやすいという利点をもたらすということである ω。 もっとも,建築協定の私法上の意義をかように理解したとしても,建築 協定は,包括的な行政的規制ではないため,協定違反行為を建築主事等の 建築確認や特定行政庁による是正命令の対象とすることはできず,協定違. 働. 長谷川貴陽史 『 都市コミュニティと法建築協定・地区計画による公共空間 の形成 J( 東京大学出版会・ 2 0 0 5)5 6 5 7頁は,契約という法形式によって,私 人にルールを策定し運用する機能が与えられる結果,法実現のプロセスで複数 の選択が可能となると指摘する 。 9 8.

(19) 建築協定の私法上の意義. 反の発見と是正が十分に実現されないという事態も生じるさせる O そこで, 多くの地方自治体や特定行政庁では,協定事項についても実態的に行政指 導の形で連動させて,法令の基準とほぼ同列に取り扱い,一般住民も法律 上はそうなっていると考えているといわれる 忙. しかし,建築協定に違反. する行為について不服審査請求や行政訴訟となった場合には,行政指導を 義務づける訴訟は行政事件訴訟法には用意されておらず,協定事項に関す る部分は切り捨てられ,協定に定められた措置の範囲で民事訴訟によって 解決するしか方法はなくなる 民 そこで, この問題を解決するために,. I 特定行政庁の認可を受けた建築. 協定は,その区域においてはこの法律による規定とみなす」旨を建築基準 法で規定したり,さらに,建築協定を直接に基礎づける条例中に協定違反 者に対する罰則規定を定めることで,協定違反に対する行政による行為を 肯定して建築協定と建築主事等の建築確認や特定行政庁による是正命令と を連動させることが必要との見解が提出される 倒 。 これは,建築協定上の 建築協定と自主協定とで,協定違反に対する是正措置について,法律上. 幽. 松本博「建築協定の意義と効力」塩崎・安藤編 『新 ・裁判実務大系 2建築関 係訴訟法 〔 改訂版J J (青林書院・ 2 0 0 9 )3 4 8頁は,. r 横浜市では,行政指導とし. て,建築協定の建築制限を建築確認及び完了検査の審査基準として扱うことと し,協定違反があっ た場合には協定運営委員会 と連携を図りつつその是正に努 めている」と指摘する O 広瀬良一 ・玉田 弘毅ほか 「 建築協定の実態とその法的. 8 9号 1 6頁,碓井光明『行政契約精義 J(信 山社・ 2 0 1 1)4 7 3頁。 性格( 1 )JNBL 2 師. 8 9号 1 6 広瀬良一 ・玉田弘毅 ほか 「 建築協定の実態とその法的性格帥JNBL 2 頁。. 帥. 8 9号 1 6 広瀬良一 ・玉田 弘毅ほか「建築協定の実態とその法的性格(1)JNBL 2 1 7頁,玉田弘毅ほか「建築協定の実態とその法的性格的 JNBL2 9 2号 3 2 3 3頁 , 市川清文 =広瀬良一「建築協定一横浜市における経緯と実態」ジュリ 4 8 1号 5 2 頁 , 大 橋洋一 『 都 市 空 間 制 御 の 法 理 論 J(有斐 閣・ 2 0 0 8)1 2 5 1 2 6頁, 石 井 昇 行政法の争点〔新版 J J(有斐閣 ・1 9 9 0 )2 8 9頁 , 「建築協定 ・緑化協定の性質 Jr 石井昇『行政法と私法J(ぎょうせい・ 1 9 9 8 )2 2 1頁など。神戸地姫路支判平成 6年 1月3 1日判タ 8 6 2号 2 9 8頁参照。 - 9 9-.

(20) 近 畿 大 学 法 学 第6 1巻第 2・3号. まったく差異がないというのはまことに奇妙であり,建築基準法 7 6条の 3 第 2項の「協定違反があった場合の措置」が損害賠償とか差止めという私. 法的措置を意味することは何ら疑問の余地はないにしても,私法的措置し か許さないとする趣旨ではないとの理解に依拠する 的 。 すでに整理したよ うに,建築基準法上の建築協定と自主協定とは,対世的効力を除けば,私 法的効果に差異がないことは明らかで‘あり,建築基準法上の建築協定に固 有の意義を求めるのならば,協定違反行為に対する行政の行為を認容する 規定を建築基準法や条例に定めることも許容されるべきであろう O なお, 建築協定に強力な効果を付与する場合,協定締結における全員合意要件の もとでは却って建築協定の締結が困難となるかもしれないから,協定成立 の要件を全員合意制から多数決制に変えるべきとの示唆がある ω 。しかし, 建築基準法上の建築協定と自主協定とで私法的効果に差異がないところ, 建築基準法上の建築協定に自主協定には認められない行政法上の効果を付 与するのであるから,建築基準法上の建築協定成立の要件は,自主協定成 立の要件よりもよりも厳しく設定されるべきである O まして,少数ながら も建築協定に反対する者が存在する場合には,特定行政庁が反対者の区画 に協定の法的拘束力が及ばないことを条件に協定を認可するという実態が あること ω,協定による土地所有者等の建築権行使の制限は土地所有者等. 仰. 玉田弘毅ほか「建築協定の実態とその法的性格的 JNBL 2 9 2号 3 2 3 3頁。. ω 秋山靖浩「不動産入門 13不 動 産 の 所 有 [4]建築協定・地区計画によるまち づくり 」法学セミナー ( 2 0 1 0・4 )1 0 7頁,小賀野晶一「建築協定とまちづく. 2 4 7号 4 7頁 ( 2 0 0 7 ),大橋洋一『都市空間制御の法理論 J(有斐閣 ・ り」判タ 1 2 0 0 8 )1 2 2 1 2 4頁。 ω 大塚直 『環境法 〔第 2版)J(有斐閣・ 2006)81頁。 もっとも,長谷川貴陽史 『都市 コミュニティと法 建築協定・地区計画による公共空間の形成 J(東京大 学出版会・ 2 0 0 5 )5 6 5 7頁は,規制を免れたいわゆる穴抜け区画のために協定を 遵守するインセンティブが失われると指摘する 。.

(21) 建築協定の私法上の意義. 全員の自主的な合意に支えられて初めて有効に機能するとの理解倒 に立て ば,協定の締結に反対する少数者の利益を損ねてまで協定成立の要件を緩 和する実益は余りないように思う O. 〔付記〕 広島大学大学院にて大学院生として私を受け入れてくださった広島大学名誉教授. 0 1 2年 4月に古稀を迎えられ, 2 0 1 3年 3月末をもって関東学院大 富井利安先生は, 2 学法学部をご退職なさいました。先生の古稀を心から慶賀すると共に,先生から賜っ た薫陶と学恩に衷心より感謝申し上げ,本稿を献呈申し上げたく存じます。 先生が 今後ともご息災に過ごされることを祈念いたします。. 側. 松本博「建築協定の意義と効力」塩崎・安藤編『新・裁判実務大系 2建築関. 係訴訟法 〔 改訂版) J( 青林書院 ・2 0 0 9)3 5 1頁。.

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参照

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