中国民事訴訟法の改革方向
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(2) 横浜国擁経済法学第17巻第1号(20es年9月). 事訴訟法の改正の趣旨は,主としてt当事者から指摘されていた「再審申立て が難しい」「執行が難しい」との問題点を解決する点にあるので.改正の中心. は再審手続と執行手続に置かれている。第一審手続,簡易手続第二審手続, 和解制度等の手続制度に閤しては改正を行わず,条件が備わった後に改正作業 を始める予定となっている。.このことは,今回の民事訴訟法の改正は部分的な. 改正にすぎず,改正作業はまだ完成していないのであって.今後なお民事訴訟 法の全顧的な改正が必要であり,より重大な改正作業が待ち受けているという. ことを意味するe中国艮事訴訟法改正の総目標は、市民のための,暖かく且つ 人闘性を反映したt人々が利用し易い民事訴訟制度を実現しド権利が侵害され たり他人との間に紛争が発生した場合に,いかなる人でも公正,迅速妥当か つ低廉な司法救済制度を利用できるようにすることにある’)。このような目標. を達成するためには,民事訴訟法に対して多方面からの改正を加える必要があ. るe本稿においては,全面的な改正過程にある中国民事訴訟法の主要な制度に 関する改革について検討し,2eo7年に公布された再審手続に関する改正につ いて簡単に評価することとする。. 一 審判鍵織の改革 裁判所が国家の審判権を行使する際,法定の審半[S組織によってこれを行使す. る。中国では翼事案件を審理する組織に2種類、即ち,合議制と独審制とがあ る。㊨譲撰とは.三人以上の奇数で構成する裁判員が事案を審理する裁判組織. であるo合議廷の裁判員は裁判官から構成してもよいし.また人民陪審員と共 に構成することもできる。合議‖fljは中国では基本的な審判組織制度であり.適 預墾纏珪比腫菌広く,複雑な事案の一L・.rt;,二審及び再審で適用されるe独審制. とは.裁特官一人が案件を審判する組織制度であるeこれは,事裏が簡単で権 秘義務麗爆が明藏であり当事者間の訴額が低い荊単な・一零民事案件に適用され・ るfi一金議翻と独霧劇暴外に.中国では一種の特麗なi薔判差皿識,即ち審判委貝会.
(3) 中国民事訴訟法の改革方向. が存在する。現行法律規定により,合議制法廷が審理した重大かつ複雑な案件 が,法院の院長から審判委員会に提出され,検討されて結論が下される。即ち,. 案件の判決内容が審判委員会によって決定されることになる。. 1 問題点 中国の実務では,現行審判組織間度に対して,なお幾つかの問題点が指摘さ れる。主として,以下のような点である。 (1)合議制が有名無実化している。一部の案件では合議制をとっているのに,. 案件の審理過程においては,実際には担任裁判官が一人で裁判を行うため,合 議制法廷のその他の構成員はあるべき役割を果たさなくなる。そこで,案件を. 合談する際実質的には担任裁判官が一人で決定している。その結果,合議制 は形式的となって,実質的には担任裁判官一人の独審となってしまっている。 (2)審判委員会が案件の結論を下すことは,「審理と裁判を分離」する現象. を生じさせる。法律の規定によると,審判委員会は重大かつ複雑な案件を決定 することができるとされている。以前は,審判委員会が案件を決定するための 主要な手続は次のとおりであった。①担任裁判官の案件に関する報告を聴取す ること。その報告の内容には,紛争の事実,双方の証拠と理由,合議廷の証拠 と事実に関する認定,適用法律及び処理意見等を含む。②問い合わせと質疑を 提出すること。審判委員会の委員は事実と証拠について担任裁判官に問い合わ せと質問をする。③検討すること。委員から案件の事実,証拠,適用法律等の 問題について個人の意見,見方を述べる。④表決をすること。委員が担任裁判 官の報告に基づいて個人の意見を述べた後に,投票の方式により多数決で結論 を下す。⑤合議廷が審判委員会が投票結果に従って下した結論に基づいて判決 を下すこと・)。審判委員会が案件を検討し決定することは実際には判決権の行. 使となった。しかし,…審判委員会自身は案件に関して審理を行わず,合議廷が. 行ったため,これは審理者が判決を下さないが,判決を下す者が審理しないと いう「審理と裁判の分離」現象を生じさせたのである。民事司法改革の過程に 3.
(4) 横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月)ぞ. おいて,審判委貝会は案件の検討方法も変更していった。1999年に最高人民 法院が公布した「人民法院における5年改革綱要」(1999−2003)では,合議 廷の職責の強化と審理した案件の正確さの確保を前提とした上で.審判委員会 が法院内部の最高審判組織として,次第に,合議廷によって院長を通じて提出 された一部の重大かつ複雑な事案における法律適用問題〔のみ〕を検討すると. いう方向に変更していくことが求められた。2005年に最高人民法院が公布し た「人民法院における第2回目の5年改革綱要」(2004−2008)は.審判委員 会が案件審理における手続と方式を改革し,審判委員会の活動を会議制から審 理制に変更し,審判委員会の表決制を改革し,審判委員会の事務機関を健全に する,即ち,審判委員会の委員は委員または他の裁判官と共に合議法廷を構成 し,重大な事案や複雑な事案を審理すると定めている。. 2 改善法案 審判権行使をめぐる問題に対しては,審判組織制度に関する改革と改善が必 要である。. (1)独審裁判の適用範囲を拡大し,下級法院では原則的に独審制を採用すべ きである。現行「民事訴訟法」によれば,裁判官一人の独任審判の範囲は狭く. て,下級法院及び出張法廷で審理する簡単な民事案件に限定されており,それ 以外は合議法廷によって審判がなされる。1982年の「民事訴訟法(試行)」の 制定時及び1991年の「民事訴訟法(試行)」の改正時には.わが国の裁判官特 に下級法院の裁判官のレベルはあまり高くはなかったため,案件を審理する際 の公平を保証するためには,法律上下級法院では合議制をとることと定める合 理性があったが,現在の事情に鑑みれば,下級法院の裁判官を含む裁判官のレ ベルは全面的に改善されているから,現ll寺点では,下級法院では合議制を原則. とする必要性はなくなっている。また,法律では合議制を原則としているにも かかわらず,実務では独審制をとるのが普通であることに鑑みれば,下級法院 では独審制を適用する範囲を拡大し,一部の複雑な案件でしか合議制をとらな 4.
(5) 中国民事訴訟法の改革方向. いという法制度に改善する必要がある。 (2)現行の審判委員会が案件を検討し,決定をする制度を改革すべきである。. 審判委員会制度を改善改革する必要があると一般に認識されるに至った。学者 と実務家の主な見解は次のようである。①審判委員会を廃止する。②審判委員 会を分解する(即ち,各地の裁判所に幾つかの専門委員会を設立する。専門委 員会は各業務分野の専門知識と豊富な経験を持つ裁判官で構成され,それぞれ が刑事,民事,経済,行政事件申の重大かつ複雑な案件を検討する。院長ある いは副院長はその専門と担当によりそれぞれ各専門委員会に参加し,会議を主. 催する。③審判委員会を当座は維持するが制度自体を改善すべきである3}。 私は,裁判官の素質の向上に伴って,審判委員会が重大かつ複雑な案件を決定 する範囲を縮小し,最終的には法律に定めている審判委員会制度を廃止するの. が適当であると考えており,審判委員会が案件を決定するならば必ず合議廷 を構成して案件の審理に参加しなければならないと考える。. 二 少額訴訟手続の創設 改正前の民事訴訟法の定めによると,入民法院が第一審案件を審理する際に. 適用する手続は普通手続と簡易手続であるe簡易手続は事実が明白で,権利義 務関係が明確,紛争が少額である簡単な民事案件に適用される。簡易手続は当 事者に訴訟の便宜を図って,諸々の裁判所に訴える権利を保障するという重要 な作用を果たす。. 1 問題点. 実務の観点から見ると,簡易手続を利用して少額紛争を審理する場合,柔軟 さと便利さを欠き,少額紛争を諸々の裁判所に訴え出る権利者の権利を保障す ることができない面があるように窺える。具体的には,以下のような点にその ことが表れている。. 5.
(6) 横浜固際経済法学第17巻第1号{2008年9月). (1)少額紛争にとって,審理期間が長すぎる。人民法院が簡易手続を適用し. て事件を審理する場合,提訴日から3か月以内に結審するとしている。この3 か月の結審までの期間は,少額紛争にとって明らかに長すぎる。 (2)審理手続に柔軟さが欠けている。法律と司法解釈により、たとえ少額紛. 争であっても,簡易手続によって審理する場合,公開かつ二審終審制をとり, 判決書には事実や半蓼決理由等を書かなければならないとされている。このよう な手続は普通事件の審理手続と異ならない。. (3)管轄上の不便さがある。管轄に関しては,「原告が被告の住所に従う」. という普通土地管轄原則は,原告が少額訴訟を提起する際には不便である。普 逓管轄でいう「原告が被告の住所に従う」という:普通土地管轄原則上は,原告. が訴訟を提起しようとする際にはt被告の住所地に所在する裁判所に提訴しな ければならないことになる。これでは往々少額訴訟の原告にとって不便である ため,提訴を断念せざるを得なくなる可能性がある。. (4)利用上の不便さがある。法律が,案件の審判時間は夜間や祝日,休日と. すると定めていないため,少額訴訟の当事者が訴訟制度を利用するに際して不 便がある。簡易手続は普通手続を簡略化するものにすぎず,少額紛争を審理す るのに相応しいものになっていない。少額紛争の特殊性に鑑みれば,客観的に は,わが国の民事訴訟法において普通手続,簡易手続とは異なった更なる簡易. 手続.即ち少額訴訟手続の設計が求められていると思われるe日本の学者であ る棚瀬孝雄教授は,簡易化を通じて,普通の国民に手続保障を具備した手続を Fj用できるようにさせるという司法政策は,民事裁判上は少額審判という形式 で表現できると指摘した㌔. 2 改革の基本原理 ’ t. わが国における少額訴訟の手続の設計は下記の基本原理に従わなければなら ない。. ①当事者が平等に訴えることのできる司法上の権利を保障しなければならな 6.
(7) 中国民]」[訴訟法の改革方向 い。. ②手続上の適応原理に従わなければならない。いわゆる手続上の適応原理と は,手続の設計は事案の性質,紛争額,紛争皐項の重要性,複雑さの程度等の 要素に相応しいやり方で,案件を適切に審理することを意味する。. ③効率と公正の間の閲係を調和させなければならない。少額訴訟手続の設計 は,主に訴訟の効率の観点を考慮に入れて.当事者がより司法を利用しやすく. し,比較的少ない時間と費用とで少額紛争を解決することができるようにしな ければならない。当然,それと同時に当事者に効率と公正とを配慮しつつ,手 続上の簡易さを保証することを要し,基本的な手続保障を考慮しなければなら. ない。もしTこの手続が公正を根本的に考慮していない,又は根本的に不公正 であるならばこのような訴訟手続によって紛争を解決したとしても,正当性 があるとは言えないであろう。. 3 改善法案 上述の基本原理の指導の下で,わが国の法律上,少額訴訟手続の適用範囲, 具体的な手続内容,少額訴訟手続とその他の訴訟手続との関係等の問題に関し て,詳細な規定を設けなければならない。. (1)少額訴訟手続の適用範囲 少額訴訟手続は金銭給付,有価証券あるい. はその他の種類物の訴訟にしか適用せず,その上,紛争目的物の価額は入民元. 1000元を上回ってはならず,その他の給付の訴え,確認の訴え及び変更の訴 えには少額訴訟手続は適用されない。紛争目的物の価額が人民元1000元を超 えた金銭給付.有価証券あるいはその他の種類物の訴訟に関しては,本来簡易. 手続を適用すべきであるがもし当事者双方が書面によって少額訴訟手続を適 用する合意をするならぱ当事者の手続に関する選択権を尊重し,訴訟の簡易・ 迅速性に影響を及ぼさない限り,裁判所としても少額訴訟手続を適用すべきで ある。. (2)少額訴訟の管轄 級別管轄から見ると,少額訴訟手続は下級法院でし.
(8) 横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月). か適用されずt中級以上の裁判所は少額訴訟手続を適用して事案を審理するこ. とができない。土地管轄に関していえぱ,少額紛争の権利を侵害された被害 者に便宜を図るため,「原告が被告の住所に従う」という一般土地管轄に関す る原則を適用せずに,「原告の住所に従う」という一般原則によるべきである。. 即ち,少額紛争により生ずる訴訟は,原告の住所地の人民法院の管轄とすべき である。. (3)少額訴訟の提起 少額訴訟を提起するには,普通の訴状の形式によっ. て提起するのではなく,表の形式の訴状を利用して提起できるようにすべきで ある。その訴状には普通手続の訴状のような必要項目を完備する必要はなく, 当事者の基本情況,訴訟上の請求,紛争事実を明らかにすれば十分である。当 事者としても口頭方式で訴えを提起することもできるとすべきである。当事者 が口頭方式で訴えを提起する場合には,裁判所が記録する。 (4)少額訴訟の審理に開する特別規定 当事者の訴訟における便宜を図る. ため,裁判所は,平日の勤務時間に少額訴訟の訴えを受理し事案を審理する以 外に,祝日と休日または夜間にも少額訴訟の訴えを受理したり、審理したりす. べきである。勿論当事者が祝日や休日または夜間の審理が不便だと思うとき には,その他の時聞に審理を行うことができ,裁判所は当事者の意見を尊重す ることを前提にする。少額訴訟を審理する際には,事前に準備する必要はなく, 直接に開廷することができるとすべきである。当事者双方の開廷申立てにより,. 裁判所は当事者が提出した関連書面に基づいて当事者を尋問し,関連証拠を審 査して直接判決を下す。少額訴訟の審理は原則的に公開審理としないし、判決. の宣告も公開では行わない。しかL,当事者が公開審理を求める場合には,公 開審理をしなければならない。. (5)少額訴訟の判決 少額訴訟手続では普通手続のような詳細な判決文を. 作成する必要はなくT表の形式に記入して主文だけを記載し,理由を説明する 必要はないとすべきである。少額訴訟手続の審理期聞は30日とし,当事者の 起訴日から30目以内に判決を下さなければならない。 8.
(9) 中国民事訴訟法の改革方向. 三起訴受理制度の改善 中国「民事訴訟法」第108条の定めによると,起訴の要件には4つがある。 ①原告は必ず案件と直接利害関係を有する公民,法人又はその他の組織でなけ ればならない。②明確な被告がいなければならない。③具体的な訴訟上の請求 や事実及び理由がなければならない。④人民法院の案件受理の範囲に属しなけ ればならず,受理する人民法院の土地管轄に属しなければならない。裁判所は 原告の訴状を受け取った後に審査を行うべきであり、起訴要件を具備すれば受 理するが,起訴要件を具備していなければ,受理しない決定をする。このよう な起訴受理制度は裁判所が正確に案件を受理し,当事者が正しく訴権を行使す ることを保障する上で積極的な役割を果たしてきた。. ] 問題点. しかし,この制度にはいくつかの問題が存在する。 (1)裁判所の職権を強調しすぎる。訴訟係nc s}の一環としてはT当事者の起. 訴は必ずしも訴訟係属の効果を生じさせず,訴訟手続は,裁判所の審査を経て 受理する決定がなされてようやく始まる。換言すれば,訴訟手続が始まるか否 かが,主に裁判所の受理決定にかかっていることになり,当事者は比較的受動 的な地位に置かれる。. (2)法律は,起訴者である原告は正当な当事者でなければならないと厳格に. 要求している。「民事訴訟法」第108条は,原告は必ず本案件と直接的な利害 関係を有する公民,法人またはその他の組織でなければならないと,即ち原告. は正当な当事者でなければならないと要求している。起訴時について言えぱ 法律は,起訴1博の原告が正当な原告であることを求めることはできない。しか. し,現行「民事訴訟法」は起訴時の原告は本案件と直接的な利害関係を有する こと,即ち,正当な当事者であることを要求しているから,それは裁判所が審 査段階において(この時,民事訴訟手続はまだ始まっていない)実体的な審査 9.
(10) 横浜国際経済法学第17巻第1号(2eo8 f・Pt 9月). を行い,原告が実体上の権利を有するか否かを審査し,実体上の権利があれば 正当な当事者であり受理されるが,逆の場合には受理されないということにな る。このことは,訴訟法理と乖離している。. 2 改善法案 現行起訴受理制度を改革する場合には,当事者が裁判を受ける権利を尊重し 保障することを最高理念とし,裁判所が当事者の起訴を受け入れる義務がある という理念を確立すべきである。このために、以下のいくつかの方面から平行 して改革を行うべきである。. (1)現行法律に定めている受理制度を取り消し,訴訟係属は当事者の起訴か ら始まるとすべきである。. (2)起訴を審査する部門を民事案件の登録機関に変更すべきである。. (3)起訴要件を法定手続に従うと改訂すべきである。起訴手続には2つの方 面が含まれる。①起訴が法定手続に従わなければならず,②案件受理費用を支 払わなければならない,という2つである。普通手続においては,原則として,. 起訴時に原告は裁判所に書面すなわち起訴状を提出し,被告の人数に応じた通 数の副本を提出する。起訴状には必須事項と任意事項が含まれている。必須事 項又は必要的記載事項は,①当事者の基本情況,②具体的な訴訟上の請求,③ 請求の根拠となる事実と理由である。. (4)現行法の起訴条件を訴訟要件と修正し,案件を審理する裁判官が審理を. 行うようにすべきである。当事者の起訴が法定要件に合致する場合には,訴訟 係属の効果が生ずる。しかし,裁判所が当事者間の紛争の法律関係について審 判するには,訴訟係属が手続法上の一定の条件を具備し且つ適法であることを 理論的な前提とする。その条件とは訴訟要件である。裁判所の審査によって訴 訟要件を具備しないと三摺断されれば,訴えを却下し,案件の審理を行わない。. 勿論,これは,訴訟要件の具備を確認してから突体而の審理を行うという意昧 ではなく,訴訟要件の審理は実体審理と平行して行うことができると理解して 1⑪.
(11) 中国民事訴訟法の改革方向 よい。. 四 級別管轄制度の改善 中国は行政区画を基礎として四級制の裁判所体制を設けており,行政区画に 応じて上級から下級までの四級の裁判所すなわち最高人民法院,高級人民法院 中級人民法院,下級人民法院という裁判所があり,すべての人民法院は第一審 管轄権を有し,案件の性質や繁簡の程度及び事案の影響する範囲をもって級別 管轄を区分する標準としている。. 民事訴訟法は,中級人民法院,高級人民法院と最高人民法院が管轄する第一 審事案以外の民事案件はすべて下級人民法院の管轄とすると規定する。中級人. 民法院が管轄する第一審案件は3種類ある.①重大渉外案件,②中級法院の管 轄区域内における重大な影響を有する案件,③最高人民法院が中級人民法院の 管轄と指定した案件である。高級入民法院が管轄する第一審案件は,その管轄 区域内において重大な影響を有する案件である。最高人民法院が管轄する第一. 審案件はt全国的な範囲内において重大な影響を有する案件及び最高人民法院 が自己の管轄と判断する案件である。. 1 問題点 このような級別管轄制度にはいくつかの問題が存在する。それは各級裁判所 の機能上の位置づけを十分に考慮しておらず.各級裁判所の機能に混乱を生じ させているeまた,最高人民法院が第一審の事件を受理する場合には,現行の 二審終審制を実行することができなくなる。一般的に言って,下級人民法院の. 機能は事実を認定して法律を正確に適用しt正しい判決を下すことを通じて個 別事件の正義を実現することにある。それは主に私人問の紛争を解決すること を目的とする。中級人民法院の主要な機能は,上訴された第一審案件の処理を 通じて,誤った判決の破棄自判をして個別案件の正義を実現すると同時に,法 11.
(12) 横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月). 律が正確に適用されることを保証する点にあるe最高人民法院の機能は,主と して法律の適用と解釈を統一することにある。それは主に公共の利益を図るこ とを目的としている。. 2 改善法案 このような機能に応じた位置づけをすることにより,わが国は四級の裁判所 の機熊を新たに確定し直さなければならない。下級人民法院と中級人民法院が 第一審の管轄権を行使するとすべきである。そのうち下級人民法院は第一審の 普遍管轄権を有するとし,中級人民法院の管轄に属する案件以外のすべての案 件が下級人民法院の管轄に属する。中級人民法院は比較的重大な案件,たとえ ば,訴額が一定金額以上又はその性質が特殊な案件を管轄する。高級人民法院 は第一審案件を審理せず,上訴法院として位置づけられ,下級人民法院の第二 次上訴案件と中級人民法院の第一次上訴案件を審理する。最高人民法院は第一 審案件を審理せず,第三審として,案件の法律問題を審理し法律の適用と法律 解釈を統一する。. 五 審級制度の改革 中国の現行法律の規定によると,人民法院が二審終審制を行い,一個の事案 は二級の裁判所の審理を経て,判決が確定し既判力を生ずる。当事者は地方人. 民法院の第一審判決に対して不服を有するときはt判決書が送達された日か. ら15日以内に1つ上級の人民法院に上訴することができるe当事者は地方人 民法院の第一審決定に対して不服を有するときは,決定書が送達された日から. 10H以内に1つ上級の人民法院に上訴することができる。第二審人民法院の 判決や決定は,最終的な判決や決定である。中国が二審終審制を規定している. のは,立法当時に次のことを考えていたからである。1つの案件については二 級の裁判所の審理を経れば,普通は合法な審判を下すことができ,さらに上級 12.
(13) 中国民11[訴訟法の改革方向. 裁判所の審理を重ねることは必要でない。また,わが国では土地が広く、多く の地方で交通が発達しないため,多数審級制を規定すると当事者に人力,物力,. 財力,時間,精力等多方面に渡って大きな負担を負わせ,当事者双方の権利義 務関係を長期に渡って不安定な状態に置き,社会の安定にとって不利に働く。 二審終審制を実行すれば,多くの案件は当事者の管轄区域内で解決することが でき,当事者の訴訟に便宜を図りうるし,訴訟を減少させうると同時に,人民 法院による事件の審理にとっても便利である。. 1 問題点 しかしt経済社会の発展に伴って,二審終審制に存在する問題も顕在化して くる。その主要な問題は次のとおりである。 (1)法律適用の統一一性を有効に保障することができない。二審終審制度を行. うために,終審法院の級別は極めて低く、その大半が中級人民法院と,一部の. 終審が高級人民法院となっている。わが国では高級人民法院は31個あり,中 級人民法院も400個ある。このような彪大な数の終審法院と極めて低い審級は、. 法律の適用と解釈の全国的な統一を根本的に保障することができないため,法 制の不統一を招いた。. (2)単一の審級制度は訴訟の公正と訴訟の効率という価値を実現する上で不. 利である。わが国では最高人民法院が第一審かつ終審として審理する案件以外 の全ての案件において二審終審制が行われる。即ち,案件の紛争金額に関わら ず,すべて二審終審制が行われている。二審終審制は大多数の案件にとって適 合するが,少額訴訟案件にとっては手続が複雑で,費用が高くて,効率という 価値を実現するために役立たない。また,複雑な案件,特に重大な法的な争点 に関わる案件にとって.二審終審制では,公正という価値の実現に適さない。. 2 改善法案 わが国の審級制度の改革方向としては,多元的な審級制度の採用に向かうべ. 13.
(14) 横浜国際経清法学第17巻第1号(2eo8年9月). きである。基本的には多数の案件について,なお二審終審制を維持しつつ,一 部の重大な案件については三審終審制を行うべきである。三審終審制で審理す る案件の構造は,次のように説明できる。即ち,当事者の第一次上訴は法定の 訴訟上の権利に属し,上訴理由に制限されず,上訴すると上級裁判所の二審手. 続が始まるe二審裁判所は,上訴請求の範囲内で事実問題と法律問題を合弁審 理し.個別事件についての公正な裁判の実現を保証すると同時に,下級裁判所 が適法に法律を適用しているか否かを審査する。しかし,当事者の第二次上訴 はその箇有な権利ではないため,受理されるのは法定の理由がある場合に制限. される。法定の事由が具備されれば三審が受理される。少額訴訟案件及び当 事者双方の合意によって上訴を放棄した場合にはt一審終審制とする。. 六 再審制度の改善 中国の現行民事訴訟法の規定によると,裁判所の半‖決が確定した後,3つの 方法での再審が認められている。①当事者から再審を申し立てることができる。. ②人民法院は、職権によって再審を提起することができる。具体的には,確定 三判決を下した人現法院の院長が確定判決に誤りがあll ,再審の必要があると判. 断したときにt審判委員会に検討を申し立て,再審と決定される。また,最高 人民法院は再審を開始するか,あるいは地方各級人民法院に再審の開始を指示 することができる。③人民検察院は抗訴を避じて人民法院に確定判決について 再審を開始するように要求することができる。具体的に言えぱ,最高人民検察 続は地方各級人民法院の確定半‖決に対し,上級人民検察院は下級人民法院σ)確. 定判決に対し,誤りがあると判断したときに,審判監督手続に基づいて抗訴す. ることができる。2007年の民事訴訟法の改正は当事者の再キ紅P立手続と検察 院の抗訴手続について改正を加えた。ここでは,再審申立手続に関する改正を 摘単に紹r介する。. 14.
(15) 中国民事訴訟法の改革方向. 1 再審申立手続に関する改正の主要な内容. 2007年の中国民事訴訟法における再審申立手続に関する改正は、次の4点 であるG}。. 第一に,当事者による再審申立事由を細分化した。改正前の民事訴訟法第 179条には5つの再審申立事由を定めていた。即ち、(1)原判決や決定を破棄 するのに十分な新しい証拠があること,(2)原判決や決定が認定した事実に主 要な証拠が不足していること、(3)原判決や決定の法適用に明らかな誤りがあ ること,(4)人民法院が法定の手続に違反し,そのことが案件について正確な 判決や決定を下すのに影響していること,(5)裁判員が案件を審理するに際し. て汚職を犯し,あるいは賄賂を受け,違法な裁判行為を行ったこと,である。. 改正後の再審申立手続は,次の13の再審事由を定めている・即ち・(1)原判 決や決定を破棄するのに十分な新しい証拠があること,(2)原判決や決定が認 定した基本事実に証拠が欠けていること,(3)原判決や決定が認定した事実の 主要な証拠が偽造されたものであること,(4)原判決や決定が認定した事実の 主要な証拠が当事者間で交換されないものであったこと,(5)案件を審理する. のに必要な証拠を当事者が客観的な原因によって自ら収集することができない ために,書面をもって人民法院にその収集を申し立てたにもかかわらず・人民 法院が調査収集しなかったこと,(6)原判決や決定の法適用に確かな誤りがあ ること、(力法律の規定に違反し,管轄を誤ったこと,(8)審判組織の構成が. 法律に従っていないこと,又は,法律に基づいて回避すべき裁判員が回避しな かったこと.(9)訴訟行為無能力:者が法定代理人の代理なしに訴訟をし,又は・. 訴訟に参加すべき当事者が本人もしくはその訴訟の代理人の帰責事由なしに訴 訟に参加しなかったこと,(10)法律の規定に違反し,当事者の弁論権を奪っ たこと,(11)1呼出しの手続を経ないで欠席判決を下したこと,(12)原判決や. 決定が訴訟上の請求を逸脱し,又はこれを超えていること,(13)原判決や決 定を下す際に依拠した法律文書が取り消され又は変更されたこと,である。上. 記の13の再審事由は実際には3つに分類される。即ち,実体面に関わる再審 15.
(16) 横浜国際経済法学第17巻第1号(2008年9月). 事由と手続面に関わる再審事由及び審判組織に関わる再審事由である。このほ か,改正後の民事訴訟法は,法定の手続に違反して,それが案件について正確 な判決や裁判を下すのに影響しているとき,又は、裁判員が事案を審理するに 際して汚職を犯し,あるいは賄賂を受け、違法な裁判行為を行ったときは,人 民法院は再審を行わなければならないと規定している。. 第二に,特別な剥青がある場合に関して,当事者による再審申立ての期間を. 延長した。1991年の民事訴訟法は,当事者による再審申立ては判決や決定が 法律上の効力を生じた後2年以内にしなければならないと規定していた。し かし,実務においては,2年以上後に再審事由を発見することがよくあるので,. 上記のように特別な事情がある場合に関しては,再審申立期聞を延長する必要. がある。そこで,改正された民事訴訟法第184条は,「当事者の再審申立ては 半‖決や決定が法律上の効力を生じた後,2年以内にしなければならない。2年 以上後に,原判決や決定を下す際に依拠した法律文書が取り消され又は変更さ. れた場合,及ぴ裁判員が事案を審理するに際して汚職を犯し,あるいは賄賂 を受け,違法な裁判行為を行ったときは,当事者がそれを知り又は知りうべき 日から3月以内に,しなければならない。」と規定した。. 第三に,当事者は1つ上級の人民法院に再審申立てをすべきことを明確に規 定した。改正前の民事訴訟法は,再審申立ては原審人民法院又は1つ上級の人 民法院にすると規定していたが,実務では,当事者が2つの人民法院に再審申 立てをするという多重申立てや反復申立てをすることがあり,人民法院が重複. 審査する結果となっていた。今回の民事訴訟法の改正では,当事者が1つ上級 の人民法院に再審申立てをすると明確に規定した。このような改正によって、 上記の多重申立てや反復申立てを避けることが可能となり,また,原審人民法 院が自らの下した誤った」岡決を破棄することが困難であることをも回避し.人. 民法院が公平に案件を審理することを保障し,もって当事者が原審人民法院に 対して抱く不信感を克服することができる。. 第四に,当事者による再審申立ての申立手続と審査手続を改善した。改正民 16.
(17) 中国民事訴訟法め改革方向. 事訴訟法第180条によると,当事者が再審を申し立てるには,再審申立書を提 出しなければならない。人民法院は,当該再審申立書を受け取ってから5日以 内に再審申立書の副本を相手方に送達しなければならない。相手方は,当該再. 審申立書の副本を受け取ってから15日以内に書面によって意見を提出しなけ ればならない。書面による意見を提出しないときは,人民法院の審査に影響を 与えることはない。人民法院は申立人と相手方当事者に関連する材料の補充を. 要求し,関連事項の尋問をすることができる。また,改正民事訴訟法第181条 によると,人民法院は当該再審申立書を受け取ってから3か月以内に審査をし、. 同法第179条に規定する情況の1つに該当するときは再審開始の決定をするが, 該当しないときには却下の決定をする。特別な事情によって延長が必要な場合 には、法院の院長の許可を得なければならない。当事者の申立てによって再審 開始とされた案件は,中級人民法院以上の人民法院によって審理される。最高 人民法院や高級人民法院によって再審開始とされた案件は,当該法院が再審理 をし,又は,その他の人民法院もしくは原審人民法院を指定し,再審理を行わ せることができる。. 改正民事訴訟法の規定によると,再審申立ての審査は効力を生じた裁判を下 した法院の1つ上級の人民法院が行うが,判決に不服のある再審案件の審理は. 決して効力を生じた判決を下した法院の1つ上級の人民法院が行うわけではな く,最高人民法院や高級人民法院により再審開始とされた案件は,その他の人 民法院もしくは原審人民法院を指定し,再審理を行わせることができるのであ る。. 2 詳細と展望 今回の民事訴訟法の改正は,再審申立手続について,実施可能性のあるより 具体的な規定を置いた。それは,当事者の再審申立行為を規律しながら,裁判 所の審査行為と審理行為をも規律することができる。今回の民事訴訟法の改正 は,再審申立てを困難とする点を解決し,当事者の再審申立権を保護するため. 17.
(18) 横浜固際経済法学第17巻第1号{2008年9月). に一定の役割を果たすことができると思われる。勿論改正した再審申立手続 をさらに細かく推考するならばより改善されることとなる。改正された再審申 立手続が実施されるならば次にはその他の制度上の改革が必要となる。また, 今回の改正には依然いくつかの問題が残されている。たとえば,「法律の規定. に違反し,管轄を誤ったこと」(改正後の第179条第1項第7号)を一律に再 審申立事由とすることは不合理である。次に,「法律の規定に墓反し,当事者. の弁論権を奪ったこと」(改正後の第179条第1項第10号)を再審事由として いるが,さらに一歩を進めて細分化して解釈する必要がある。また,「法院が 釈明権を行使すべきであるのに行使せずに,当事者の敗訴の結果を招いたこと」. が当事者による再審申立事由となることを明確にしなかったのは問題である。. さらに当事者の再審申立期間(改正後の第184条)の2年は長すぎるから, 短くする必要がある。最後に.再審申立ての受理と審査手続をよりいっそう改 善する必要がある。紙幅の関係上,これらの問題については別稿で論ずること とし,ここでは論点のみを指摘するにとどめ,内容の展開は控えさせていただ く所存である。. * 中国南京師範大学法学院民事訴訟法教授。 ** 中国南京師範大学法学院甜i師。. *** 横浜国立大学大学院国際社会科学研究科教授。. 1)権利を侵害された人が.いかなる人であっても魂判所の公正迅速.妥当かつ廉価な救済 を獲得することができることは,世界各国の民IIP訴訟制度の理想である。1995年9月にイ. タリアで開催された国際訴訟法学会第5期世界大会では,日本の民事訴訟法学者である小 島武司教授は.各国の国別報告後に行われた総合報告である「Legal Families in Procedural. Law revisited」においてt民皐訴訟の理想は紛争の妥当,公正,迅連かつ廉価な解決を実現 することであると指摘した。1目]小畠武司著,陳剛等訳:『訴訟制度の改革における法理論 と裳証』、法律出版社2001年版,231頁参照。. 2)越英偉.曾憲埼著:「裁判委貝会の事案検討における手続に関する考え⊥『現代裁判」1999 年第3号参照。. 3)江必新著1「合議廷の機能強イヒについて⊥r法律適肌2000年第1号参照。 4)1日]棚瀬孝雄著,王亜新訳:「紛争の解決と裁」岡制度』,中国政法大学出版社1994年版,275 18.
(19) 中国民事訴訟法の改革方向 頁参照。. 5)訴訟係属は大陸法の民事訴訟法上の概念である。原告が裁判所に訴状を提出し,特定の当事 者が特定権利又は法律関係に関わる事案について,双方当事者の参加の下で,裁判所の審理 を開始させた状態を,訴訟係属と称する。陳計男著:「民事訴訟法{上)』,三民害局株式有. 限会社1994年版,236頁参照。 6)今回の民事訴訟法の改正における検察院の抗訴手続に関する改正点は主に以下の2点である。 1つは抗訴の法定の理由を明確にし,抗訴理由を当事者からの再審申立事由と同一にしたこ. とであるeもう1つは,検察院よって抗訴が提起された後,人民法院は30日以内に再審決 定をしなければならないと定めたことである。. 19.
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