確定拠出年金加入者の運用商品選択行動 : 加入者継続教育は資産運用状況見直しにどのような影響を与えるのか
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(2) 130 (504). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 4 号(2010 年 12 月). あることが観察された. 」と述べ,継続教育受. スク商品運用割合が多いものについてはアセッ. 講による投資運用知識の習得がリスク資産保有. トクラスや運用スタイルについての理解度の高. 割合を増加させることを検証している.. いものがリスク商品運用割合変更を行う傾向が. 本稿は,DC 制度を導入して 4 年が経過した. あること,等が検証できたことである.. 実際の企業の協力を得て,継続教育が加入者の. 本稿の構成は以下の通りである.Ⅱ.米国に. 資産運用状況見直しの動機付けとなるのかを検. おける 401(k)制度加入者の運用商品選択に関. 証したものである.本稿の新規性は,①金子・. わる先行研究紹介.Ⅲ.日本における DC 制度. 津田(2009)においては継続教育の効果をプラ. 加入者の資産運用状況.Ⅳ.継続教育受講者ア. ン単位によって検証しており,加入者個人単位. ンケートデータを用いた運用商品選択に関わる. での効果については触れていないこと.② 北. 要因分析,及びⅤ.結語,である.. 村・中嶋(2009)においては加入者個人単位で の継続教育の効果を検証しているが,継続教育 に参加した被験者は同一企業に属するのではな. Ⅱ.米国における 401(k)制度加入者の運用商 品選択に関わる先行研究紹介. く主催者側が参加報酬を支払って募った混成グ. 1.401(k)制度における自動加入制度導入. ループであり,また資産運用状況の見直しにつ. 米国 は 1980 年 に 401( k)制度3)を 導入 し,. いては運用資産を「元本確保型」と「株式投信」. 急速に加入者数4)を増加させてきた歴史を持つ. の二つから選択させる簡便形式を採用した仮想. が,制度内容も変遷している.米国の 401(k). のモデルによる実験的検証であるのに対し,本. 制度は本人拠出が主体であり,これに企業が. 研究では同一企業に属し同一の継続教育を受講. マッチング拠出可能であるという制度である.. したリスク商品保有割合の異なる加入者がどの. 日本の DC 制度は企業拠出のみで本人拠出は不. ように資産配分性向を変化させたかを実際の商. 可であるが,デフォルトファンドを元本確保商. 品選択を通じて論じた点にある.この実験研究. 品とするプランが大多数を占めるなど創成期の. から得られた知見は,①プラン単位で考える場. 米国 401(k)制度に倣うところもある.. 合の継続教育の効果としてリスク商品運用割合. 401 (k)制度の大きな転換点は 1998 年である.. 増加を想定することが一般的であるが,加入者. この年,財務省は新規雇用者を対象に自動加入. 個人ベースで見ると継続教育はリスク商品運用. ( Automatic Enrollment)を 認 め5),更 に 2000. 割合の増加と減少の両面に効果をもたらすこと. 年には自動加入の対象を 401 (k)制度に未加入. が検証できたこと.②リスク商品運用割合の少. の既存雇用者にも拡大したのである6).この自. ないものについてはアセットクラスや運用スタ. 動加入政策は,低賃金者や黒人・ヒスパニック. イルについての理解度の高低ではなく,運用割. 等の加入率を高めて老後所得保障の自助努力を. 合見直しのきっかけを与えるだけでリスク商品. 促すことを一義的な目的としたが,現実的には. 運用割合を増加させる可能性があること.③リ . 式への配分を高める効果が考えられる.それがど のような原因によるものか特定することはできな かったが,株式投資の客観的なリスク程度を理解 するためか,老後の準備に対して考え直す機会を 提供したためである可能性がある.」と述べている. 本稿 の 実験研究 で は こ の 北村・中嶋(2009)意見 を参考にして老後準備についても相応の解説をし たことから,より継続教育効果の実効が上がった 可能性がある.. . 3) 制 度 根 拠 は 1978 年 内 国 歳 入 法(Internal Revenue Code of 1978)の 401 (k)条 項 で あ る. 最初の 401 (k)制度は 1980 年に創設された . 4)2008 年末 の プ ラ ン 数 は 54,965,加入者数 は 約 2,400 万人である(出典:EBRI). 5) Inte rna l Rev enue Ser vice 19 98, IRS Revenue Ruling 98─30. 6)ただし自動加入制度の導入はプランスポン サーたる企業の任意であった..
(3) 確定拠出年金加入者の運用商品選択行動(高瀬). (505) 131. 50 45 40 人 数 割 合(%). � � � � � � �. 36.4. 35 30 22.4. 25 20 15. 14.3. 16 10.9. 10 5 0 0. 1�33. 34�66. 67�99. 100. リスク商品保有割合 (%) ������������. � (出 典;EBRI “ 401( k )Plan Asset Allocation, Account Balances, and Loan Activity in 1998”10) p. 23 から筆者作成). 図1 米国における 401(k) 制度加入者のリスク商品保有割合(1996 年時点). 非差別 テ ス ト7)(non-discrimination test)対策. らである.. という面もあった. また自動加入に際して,掛金の拠出率を予め 自ら指定しなかった者については拠出率をデ. 2.1996 年時点における 401(k)制度リスク商 品保有割合. フォル ト 設定(Default Contribution Rate)す. EBRI8) (Employee Benefit Research Institute). る等の制度変更を行ったのである.. は,“ 401( k )Plan Asset Allocation, Account. 本稿において 1998 年の 401 (k)制度への自. Balances, and Loan Activity in 1998” において. 動加入実施の影響を調査するのは 401 (k)制度. 401(k)制度加入者の個人別管理資産残高(1996. においてはオプトアウト(= 本人申出による脱. 年時点)におけるリスク商品保有割合 9)(株式. 退が可能)が認められているものの自動加入制. 投信,バ ラ ン ス 型投信,自社株投信)を 公表. 度の実施により実質強制加入となったと見做す. している.図 1 は 1996 年末時点の米国 401(k). ことができるからである.すなわち現状の日本. 制度 30,102 プ ラ ン の 加入者約 790 万人 に つ い. の DC 制度への加入方法とほぼ同様な仕組みと. てその株式保有割合状況をまとめたものであ. なった時期である.このような加入方法を採っ. る.これによるとリスク商品保有割合 0% のも. た場合,運用商品選択にあたり自発的に運用商. のが全体の 14.3%,全額 100% 保有するものが. 品を決定する加入者と運用商品の決定を先送り して結果的にデフォルトファンドの適用を受け る加入者が混在する状況にあると考えて良いか . 7)高給従業員 に よ る 課税優遇 の 濫用防止 の 見 地により設定され,差別禁止基準を満たさなけれ ばならない.. . 8)EBRI は米国企業労働者の福利厚生に資する 調査研究を行なうことを目的に 1978 年に設立され た NPO 法人である . 9)債券投信は含まず. 10)同一加入者 を 対象 と し た 1998 年末時点 と 1996 年末時点 の リ ス ク 商品保有割合表 か ら 1996 年末時点データを抜出して作成したものである..
(4) 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 4 号(2010 年 12 月). 132 (506). 50 45. 38.5. 40. 人 数 割 合(%( ) ). 35 � � 30 � 25 � 20 % 15. 27.4. 14.8 9.9. 10 5. 4. 5.5. 1�20. 21�40. 0 0. 41�60. 61�80. 81�100. � ��������(%) リスク商品保有割合 (%). � (出 典;EBRI “ 401( k)Plan Asset Allocation, Account Balances, and Loan Activity in 2006” p. 32 から筆者作成). 図 2 米国における 401(k)制度加入者のリスク商品保有割合(2006 年末時点). 16.0% となっている.. トファンドとしてバランス型投信等を選定す. 401 (k)制度 へ の 自動加入 は 1998 年 よ り 開. る「運用の自動化」を導入している.このため. 始されているので図 1 はこれ以前の任意加入者. 若干の期間のダブりはあるが 2006 年末時点で. がどのような運用商品を選択していたのかを示. の運用商品選択状況は,デフォルトファンドを. すものである.リスク商品保有割合に極端な偏. リスク商品に設定しない自動加入制度の最後の. りのないことがわかる.. 年 で あった.図 2 は 2006 年末時点 の 米国 401 (k)制度 53,931 プランの加入者約 2,000 万人に. 3.2006 年時点における 401 (k)制度リスク商 品保有割合. ついてその株式保有割合状況をまとめたもので ある.自動加入後のデフォルトファンド適用者. 1998 年から自動加入制度が導入されたこと. 数を EBRI は公表していないが,株式市場での. によって 401 (k)制度加入者の運用商品選択状. 運用を全く行わないリスク商品 0% 保有者をデ. 況はどのように変化したであろうか.EBRI で. フォルトファンド11)適用者と見做すことにす. は隔年ベースで “401 (k)Plan Asset Allocation,. る.. Account Balances, and Loan Activity”. を発. 株式投資を全く行っていないリスク商品 0%. 行し て い る.前掲データとリスク商品保有割. 保有者の割合は 2006 末時点で 14.8% と 1996 年. 合 の 目盛 り 軸 が 若干異 な る が,“401 (k)Plan. 時点の 14.3% とほとんど変化がない.この 2 期. Asset Allocation, Account Balances, and Loan. 間において調査対象とする加入者数は約 1,210. Activity in 2006” の データ を 紹介 す る.米国. 万人増加しているがデフォルトファンド適用者. は 2006 年年金保護法(Pension Protection Act. の割合にほとんど変化がないというのは特筆に. of 2006)において従業員が非加入を選択しな. 価する.リスク商品保有割合 0% のものを除く. い限り強制的に 401 (k)制度に加入させる「加. と,リ ス ク 商品保有割合 の 増加 と 人数割合 の. 入の自動化」を法制化すると同時に,加入者自 らが運用商品を指定しない場合には,デフォル. . 11)Money Market Fund, GIC 等..
(5) 確定拠出年金加入者の運用商品選択行動(高瀬). (507) 133. 増加は呼応する結果となっている.リスク商. また極端回避行動を次のような実験により検. 品を 60% 以上保有する加入者の割合が約 66%. 証している.ここに 4 つのポートフォリオ,A,. (1996 年時点では,53% +α)を占めているの. B,C,および D があるとする.リスクは A か. は上昇基調にあったダウ平均株価が一気に上昇. ら D に向かって段階的に増加するものとする.. の度合いを高めたことと呼応するという見方が. (a)A,B,C を比較して B より C を選好した. できるだろう.. ものは被験者のうちの 29.2%.(b)B,C を比 較して B より C を選好したものは被験者のう. 4.401 (k)制度におけるデフォルトファンド の適用. ち の 39.0%.(c)B,C,D を 比較 し て B よ り C を選好したものは被験者のうちの 53.8%.こ. デ フォル ト ファン ド を 保有 し て い る 加入者. の結果より,C が extreme choice(=リスク度. の 実態 を 調査 し た も の と し て,Choi, Laibson,. がグループ間で一番高い)の位置付けである. Madrin and Metric(2001a)が あ る.従業員数. (a)と middle choice(リ ス ク 度 が グ ループ 間. 32,000 人 の A 社(装置産業) ,従業員数 30,000. の真ん中)の位置づけである(c)では,B よ. 人の B 社(健康産業)と従業員 18,000 人の C 社. りも C を選好する割合が 24.6% も増加するこ. (食品産業)についてデフォルトファンド適用. とが示されたのである.これは例えばある一定. 状況の調査を行っている.この 3 社とも 401 (k). のルールに従って配列がなされるものがある. 制度が従業員にとって唯一の企業年金制度であ. 場合,人はその中で middle choice(中庸選択). る.A 社 で は 自動加入 3 年後 の 時点 で 加入者. を extreme choice(極端選択)に優先させる,. の 38% がデフォルトファンドの適用を受けて. 換言すると極端回避行動が発生することを検証. い た.同様 に B 社 で は 27 ヵ月後時点 で 39%,. したものであった.. C 社では 3 年後時点で 50% と各社毎にバラツ キはあるものの加入後相当時間が経過してもデ フォルトファンド適用率が高いことを示してい る.. Ⅲ.日本における DC 制度加入者の資産運用状 況 1.個票データ説明 本稿 で は,NPO 確定拠出年金教育協会(以. 5.運用商品選択に関わる加入者の選好と極端 回避行動. 下,401( k)協会 と い う.)が 2008 年 10 月~ 2009 年 1 月に実施したアンケート調査で収集. Benartzi and Thaler(2002)では,運用商品選択. した個票データを用いて分析を行った.このア. に関わる加入者の選好や極端回避(extremeness. ンケート調査は,表 1 に示す 6 社の DC 制度加. aversion)について論じている.彼らは加入者. 入者を対象に,社内または自宅留置による自記. が自ら構築したポートフォリオと当該プラン加. 入アンケート方式によって実施されたものであ. 入者全体の平均的なポートフォリオを比較した. る.合計回収数は 3,825 件12)であった.アンケー. 場合,自らのポートフォリオよりもプラン全体. ト結果分析にあたって,各社毎の回収件数にバ. の平均的なポートフォリオにより魅力を感じる. ラツキがあったため,各社のデータ数が均衡す. ことや,専門家が一人ひとりの加入者向けに作. るように回収件数の多かった C ~ E 社につい. 成したポートフォリオよりもプラン全体の平均. ては等間隔抽出法により調整を行っている.最. 的なポートフォリオの方に魅力を感じるという. 終的に分析に用いたデータ数は,1,798 件(内,. ことを検証した.彼らはこの結果から加入者の 運用商品選択は明確な選好に基づくものではな いと結論づけたのである.. . 12)A 社 278,B 社 259,C 社 558,D 社 501, E 社 832,F 社 1,397 ,合計 3,825..
(6) 134 (508). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 4 号(2010 年 12 月). 女性 268 件)である.なおこの 6 社は,重厚企 業と新興企業,また就業に関する考え方につい. 表1 401 (k)協会実施アンケート調査概容 企業. 業種. 制度導入年月. データ数. A社. 外食. 2002 年 9 月. 274. B社. エネルギー. 2003 年 6 月. 242. 混ざっており現在の日本企業の縮図的なサンプ. C社. 製造業. 2006 年 11 月. 321. リング先であったという説明を受けている.. D社. 倉庫業. 2005 年 4 月. 303. E社. 化学. 2003 年 1 月. 322. F社. 精密機器. 2003 年 1 月. 336. ても人材の流動化にさほど抵抗のない企業と終 身雇用的企業風土が温存されている企業が取り. わ が 国 の DC 制度加入者個人別 の 運用割 合状況 を 集計 し た 資料 は 公表 さ れ て い な い が,企業年金連合会 が 2008 年 3 月 に 公表 し た「確 定 拠 出 年 金 に 関 す る 実 態 調 査(第 2. 保 有 者 19.2%,投 信 100% 保 有 者 24.1%,合 計. 回)報告書」に お い て DC 資産残高 に お け る. 43.3% ),2007 年 度 調 査(元 本 確 保 商 品 100%. リ ス ク 商品保有割合 は 43.2%(残高 ベース:. 保 有 者 24.8%,投 信 100% 保 有 者 23.1%,合 計. 406 社 か ら の 回答 を 集計 し た も の)と 報告 さ. 47.9%)とほぼ同様であり,今回の実態調査対. れ て い る.401 (k)協会 が 実施 し た ア ン ケー. 象企業が特異だったというわけではない.. ト 調査 に お い て も 資産運用状況 を 質問 し て. ところで,この表 2 と前掲の図 2.米国にお. い る が,有効回答 1,283 か ら リ ス ク 商品保有. ける 401(k)制度加入者のリスク商品保有割合. 割合は 44.5% という結果が得られている.両. (2006 年時点)を 比 べ る と,日本 の DC 制度. 者のリスク商品保有割合の乖離はほとんどな. 加入者については Benartzi and Thaler の言う. い こ と か ら 401 (k)協会 データ 集団 は よ り 多. middle choice であるリスク商品保有割合 50%. く の データ を 集積 し た 企業年金連合会 データ. 点でひとつの瘤(154 名,12.0%)があり,い. 13). 集団 と 均質性 が あ る と 看做 し 論 を 進 め る .. わば「三つ瘤」状態となっていることがわかる. この三つ瘤の最初の瘤,すなわちリスク商品. 2.ア ンケート調査における個人別管理資産保 有状況. を全く保有しない者の人数が多いのは,自らの 選択ではなくデフォルトファンドとして元本確. 個票データ全 1,798 件のうち元本確保商品及. 保商品を保有していることが考えられる.アン. び投資信託の保有割合の記載のある 1,283 件に. ケート調査において,「あなたは今までに,確. つ い て 投資信託保有割合 を リ ス ク 商品保有割. 定拠出年金における掛金の運用割合の変更や積. 合として加入者個人別に集計したのが表 2 であ. 立金の預け替え(スイッチング)などの資産配. る.. 分を行ったことがありますか.」という質問に. リスク商品を全く保有せず元本確保商品の. 対して,「実施したことがない」と回答した加. みで運用している加入者は 358 名(27.9%) ,他. 入者を集計したところ,358 名中の 326 名が該. 方,全額リスク商品で運用している加入者は. 当した.. 245 名(19.1%)であり , この合計 603 名(全体. 調査対象者 1,283 名 の 約 25% が デ フォル ト. の 47.0%)で回答者のほぼ半数を占めている.. ファンドでの運用を行っているということであ. この両極端に集中した結果は,401 (k)協会. り,これはわが国 DC 制度運営において対処す. が実施した 2008 年度調査(元本確保商品 100%. べき重要課題であることがわかる.. . 13)企業年金連合会 データ は 企業単位 で あ る ため本稿では個票データを取り扱うことのできる NPO 確定拠出年金教育データを使用するもの.. 二 つ 目 の 瘤,リ ス ク 商品 と 元本確保商品 を 50─50 で運用している中間派についてである が,これは運用商品選択に係わる前述の極端回 避(extremeness aversion)行動として考える.
(7) 確定拠出年金加入者の運用商品選択行動(高瀬). (509) 135. 表 2 リスク商品保有割合状況(含,デフォルトファンド適用者) 人数 358 13 42 92 66 74 161 68 74 55 35 245 1,283. % 27.9 1.0 3.3 7.2 5.1 5.8 12.5 5.3 5.8 4.3 2.7 19.1 100.0. 人 数 割 合(%() ). リスク商品保有 割合(%) 0 1~9 10 ~ 19 20 ~ 29 30 ~ 39 40 ~ 49 50 ~ 59 60 ~ 69 70 ~ 79 80 ~ 89 90 ~ 99 100 合計. %. 50 40 30 20 10 0. (%) リスク商品保有割合(%). 出所)401 (k)協会. (. 35 30 ことができるであろう. 25 20 三つ目の瘤であるリスク商品 100% 保有者の 15 運用商品構成についてもアンケート回答が得 % 10 られており有効回答件数は 245 件中の 2335 件で 0 あった.運用商品構成 は 国内債券,国内株式,. ). 海外債券,海外株式,バランス型,その他にグ ルーピングされている.これらグループのうち. わ る 要因分析」で は,こ う いった リ ス ク 商品 100% 保有者 も 含 め て,継続教育 が 資産運用状 況見直しにどの程度の動機付けとなるのかを検. (%). 討する.. 1. Ⅳ.継続教育受講者アンケートデータを用いた. 2. (%). 運用商品選択に関わる要因分析. の 1 種類で 100% 運用しているものの数をあげ. 1.実験内容. ると,国内債券 7 名(デフォルトファンド適用. ⑴ 実験対象企業の背景. 者を除く全体人数 957 名に対して 0.7%) ,国内. 今回 の 実験 は,前述 の 401(k)協会 が 2008. 株式 24 名(同 2.5%) ,海外債券 8 名(同 0.8%) ,. 年 10 月~ 2009 年 1 月 に 実施 し た ア ン ケート. 海外株式 13 名(同 1.4%) ,バランス型 8 名(同. 調査の対象とした C 社の協力を得て実施した.. 0.8%) , その他 2 名の 60 名(同 6.3%)であった.. C 社の DC 加入者数は約 1,000 名である.C 社. . の DC 制度は適格退職年金を廃止して 2006 年. DC 導入時教育及び継続教育において長期分. より実施されており,同社の現在の年金制度は. 散投資の重要性を説いているが,DC 制度運営. 退職一時金(7 割)と DC 制度(3 割)の 二本. 関係者の間において,そもそも分散投資はリス. 立てとなっている.C 社のこれまでの DC 教育. ク商品のみを対象にすると誤解している加入者. に つ い て 言及 す る と,2006 年 の DC 制度導入. もいると思われるという発言を聞くこともある. 時にほぼ全員が 1 時間半程度の導入時教育を受. ことから,そのような状況を一部反映した結. 講,翌 2007 年 の 継続教育(1 時間半)は 任意. 果であるかもしれない.ただし海外株式 100%. 参加形態で実施され約 400 人が受講している.. 保有者と国内債券 100% 保有者及びバランス型. 2008 年は未実施である.2009 年は限定的に工. 100% 保有者のリスク許容度は異なると考える. 場勤務者を対象とした継続教育(2 時間 15 分). の が 適当 で あ ろ う.次 の「Ⅳ.継続教育受講. を実施し任意参加の約 120 名がこれを受講して. 者アンケートデータを用いた運用商品選択に関. いる.なお,今回の継続教育は任意参加で就業. (%). (%).
(8) 136 (510). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 4 号(2010 年 12 月). 時間中に実施した.. デックスとアクティブ説明及び運用商品のリス. ⑵ 実験の継続教育の内容. クとリターンについての概念図を抜粋しまとめ. 今回 の 実験 は,2010 年 7 月及 び 8 月 に 都合. たものである.. 9 回実施した.参加者数は 152 名である.ここ. 実験の進め方であるがテキストに従って説. で 152 名の属性について説明すると,男性 126. 明 を 始 め る 前 に,受講者 に 性別・婚姻区分等. 名・女性 25 名・未記入 1 名,既婚 92 名・未婚. の加入者属性と「1.現在,あなたは確定拠出. 58 名・未記入 2 名,年齢:10 歳代 2 名・20 歳. 年金をどのように運用していますか?」に対. 代 36 名・30 歳 代 32 名・40 歳 代 36 名・50 歳 代 44 名・未 記 入 2 名,教育経験:0 回 11 名・. する回答数字をアンケート用紙に記入させた (Appendix 2 を参照).. 1 回 106 名・2 回 29 名・3 回 6 名である.教育. 次に,講師が特段の説明を加えることなく資. 時間はアンケート回答も含め 1 時間 45 分,一. 料 1 を読み上げ,「ご自分の運用割合を考えて. 回当たりの受講者数は講師説明に対する受講者. みてください」に対する回答数字をアンケート. の理解度が確かめられる範囲を意識して 20 名. 用紙に記入させた.このとき,運用割合を現状. 前後とした.. と変えない場合でも記入をお願いすると伝えて. 継続教育に用いたテキストは,2006 年の DC. おり,変更しなければならないという心理的な. 制度導入時教育において使用された甲運用関連. プレッシャーがかからないように配慮した.. 運営管理機関作成のものをベースに筆者が作成. なお,通常の運用割合指定書は,商品名を羅. した.なお筆者が作成したテキストは本実験研. 列しただけのものであるが,本実験では加入者. 究前に乙運用関連運営管理機関に内容チェック. が資料 1 を意識して運用割合を再考することを. を依頼し,同社より継続教育を行うにあたって. 促すために,分類Ⅰ(元本確保・国内債券・外. 同社が使用するものと同レベルにあるとの回答. 国債券・国内株式・外国株式・バ ラ ン ス),分. を得ている.. 類Ⅱ(預金・GIC・インデックス・アクティブ). テキストは以下の内容で構成している.. のグルーピングを明示した.また各商品にどの. ①公的年金制度. ようなリスクがあるかということも★印を付加. ② C 社企業年金制度. することによって明示した.. ③老後必要資金説明(老後必要資金を具体的に. ここまでの記入が終わったことを確認してか. イメージさせるために,総務省:国民生活実. ら,「確定拠出年金についてあなたのお考えを. 態調査(2004 年) ,生命保険文化 セ ン ター:. お聞きします」について,講師が質問内容につ. 生活保障に関する調査(2007 年)を使用した). いて補足を加えながらひとつひとつ質問項目を. ④金融商品の特性とリスク・リターン関係. 読み上げ受講者に記入させた.. ⑤運用スタイル説明. この後テキストに従って講師説明を開始し. ⑥年金資産運用に関する留意事項. た.な お「金融商品 の 特性 と リ ス ク・リ ター. このテキストとともに「確定拠出年金加入者. ン関係」に言及した際に DC 運用商品の累積リ. ア ン ケート」 (以下,ア ン ケート 用紙 と い う). ターンを示した確定拠出年金加入者継続教育資. と 確定拠出年金加入者継続教育資料 1(以下,. 料 2(以下,資料 2 と い う.Appendix 3 を 参. 資料 1 という.Appendix 1 を参照)を最初に. 照)を配布した.. 配布 し た.資料 1 は 2006 年 の DC 制度導入時. 最後に再び「この研修を終えて,もう一度,. 教育において使用された「商品の概要」からリ. ご自分の運用割合を考えてみてください」に対. スク説明(価格変動リスク・金利リスク・為替. する回答数字をアンケート用紙に記入させた.. リスク・インフレリスク・信用リスク) ,イン.
(9) 40 30. ( %. 20. ). 10 0. 確定拠出年金加入者の運用商品選択行動(高瀬). (511) 137 (%). 表 3 C 社リスク商品保有割合別加入者人数割合推移. 人 数 割 合(% () ). リスク商品保有 現状人 1 回目 2 回目 現状 1 回目 2 回目 割合(%) 数 人数 人数 人数(%)人数(%)人数(%) 0 47 29 27 30.9 19.1 17.8 1~9 2 1 1 1.3 0.7 0.7 10 ~ 19 11 14 10 7.2 9.2 6.6 20 ~ 29 16 11 16 10.5 7.2 10.5 30 ~ 39 10 15 9 6.6 9.9 5.9 40 ~ 49 6 11 10 3.9 7.2 6.6 50 ~ 59 22 25 26 14.5 16.4 17.1 60 ~ 69 8 7 12 5.3 4.6 7.9 70 ~ 79 6 12 12 3.9 7.9 7.9 80 ~ 89 3 4 7 2.0 2.6 4.6 90 ~ 99 4 5 4 2.6 3.3 2.6 100 17 18 18 11.2 11.8 11.8 合計 152 152 152 100.0 100.0 100.0. %. 35 30 25 20 15 10 5 0. (%) 1 (%) 2 (%). (%). 表 4 C 社リスク商品保有割合に係わる t- 検定(一対の標本による平均の検定) 平均 分散 観測数 自由度 t P(T<=t)両側 t 境界値 両側. リスク商品⑴ リスク商品⑵ 34.875 41.842 1177.448 1098.240 152 152 151 -3.579 0.000 1.976. 平均 分散 観測数 自由度 t P(T<=t)両側 t 境界値 両側. リスク商品⑴ リスク商品⑶ 34.875 44.145 1177.448 1078.072 152 152 151 -4.207 0.000 1.976. 平均 分散 観測数 自由度 t P(T<=t)両側 t 境界値 両側. リスク商品⑵ リスク商品⑶ 41.842 44.145 1098.240 1078.072 152 152 151 -1.779 0.077 1.976. ⑶ 実験結果. 割合をリスク商品⑵,講師説明後運用割合見直. ①継続教育が運用割合指定(元本確保商品・リ. し時点での運用割合をリスク商品⑶とすると,. スク商品)に与える影響分析. リスク商品⑴とリスク商品⑵及びリスク商品⑴. 表 3 は今回の継続教育に参加した 152 名が現. とリスク商品⑶のそれぞれの t 値(両側)は . 状のリスク商品に係わる運用割合をどのように. -3.579,-4.207 で あ り,有意水準 1% の 結果. 変化させたかを示したものである.. となった.リスク商品⑵とリスク商品⑶では,. 講師説明前運用割合見直 し(1 回目見直 し). t 値は -1.779 であり,有意水準は 10% であっ. を行った時点でのリスク商品運用割合を見る. た.これら結果は次の 3 つの要因から考えるこ. と リ ス ク 商品 0% の 割合 が 現状 の 30.9% か ら. とが必要だと思われる.i,前回運用割合決定. 19.1% へと大きく減少していることがわかる.. からの時間の経過が運用割合見直しの動機付け. 次の講師説明後運用割合見直し時点(2 回目見. となった.ii,具体的なアンカリング効果(後述). 直し)ではリスク商品 0% の割合は 17.8% であ. を持つ資料が運用割合見直しの動機付けとなっ. り説明前と説明後の異動は軽微である.. た.iii,講師説明の効果があった,である.. 次にこれを t- 検定(一対の標本による平均. 加入者個人毎にリスク商品運用割合の増減を. の検定)によって分析したものを表 4 に示す.. まとめたのが表 5 である.. 現状のリスク商品に係わる運用割合をリスク商. 現状のリスク商品に関わる運用割合を「現. 品⑴,講師説明前運用割合見直し時点での運用. 状」,講師説明前運用割合見直 し 時点 で の 運用.
(10) 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 4 号(2010 年 12 月). 138 (512). 表 5 リスク商品運用割合の増減者割合. 現状. 1 回目見直し 0 1 ~ 33 34 ~ 66 67 ~ 99 100 0 17.8 3.9 5.9 2.0 1.3 1 ~ 33 0.7 20.4 3.9 0.0 0.7 34 ~ 66 0.0 1.3 18.4 3.9 0.0 67 ~ 99 0.0 1.3 0.0 7.2 0.0 100 0.7 0.0 0.0 0.7 9.9 合計 19.1 27.0 28.3 13.8 11.8 対角線:運用割合変化がレンジ内で変化がなかったもの 73.7% 対角線より上部:運用割合を増加させたもの 21.6% 対角線より下部:運用割合を減少させたもの 4.7%. 1回目見直し. 2 回目見直し 0 1 ~ 33 34 ~ 66 67 ~ 99 100 0 15.8 2.0 1.3 0.0 0.0 1 ~ 33 0.0 19.1 6.6 0.7 0.7 34 ~ 66 1.3 1.3 23.7 2.0 0.0 67 ~ 99 0.0 0.0 1.3 12.5 0.0 100 0.7 0.0 0.0 0.0 11.2 合計 17.8 22.4 32.9 15.1 11.8 対角線:運用割合変化がレンジ内で変化がなかったもの 82.3% 対角線より上部:運用割合を増加させたもの 13.3% 対角線より下部:運用割合を減少させたもの 4.6%. 現状. 2 回目見直し 0 1 ~ 33 34 ~ 66 67 ~ 99 100 0 15.8 3.3 7.9 2.6 2.0 1 ~ 33 0.7 17.1 7.2 0.0 0.7 34 ~ 66 0.0 0.7 17.8 4.6 0.7 67 ~ 99 0.0 1.3 0.0 7.2 0.0 100 1.3 0.0 0.0 0.7 8.6 合計 17.8 22.4 32.9 15.1 11.8 対角線:運用割合変化がレンジ内で変化がなかったもの 66.5% 対角線より上部:運用割合を増加させたもの 29.0% 対角線より下部:運用割合を減少させたもの 4.7%. 合計 30.9 25.7 23.7 8.6 11.2 100.0. 合計 19.1 27.0 28.3 13.8 11.8 100.0. 合計 31.6 25.7 23.7 8.6 10.5 100.0. 割合 を「1 回目見直 し」 ,講師説明後運用割合. 用割合を変更させたものは 51 名(33.6%)で,. 見直し時点での運用割合を「2 回目見直し」と. うち増加させたものは 44 名(29.0%),減少さ. する.継続教育参加者は 152 名であったが,表. せたものは 7 名(4.6%)であった.. 5 のレンジ分けにおいて, 「現状」→「1 回目見. 実験に使用した運用割合指定書には資産クラ. 直し」において,40 名(26.3%)が運用割合を. ス,運用スタイルや商品毎のリスクを明示して. 変更させた.このうちリスク商品運用割合を増. おり,相当数の者が運用割合を変更したのはそ. 加させたものは 33 名(21.6%) ,減少させたも. のような視覚的配慮が運用割合決定に際して効. のは 7 名(4.7%)であった. 「1 回目見直し」→「2. 果的である可能性を示唆している.. 回目見直し」では,27 名(17.8%)が運用割合. 一般に継続教育の効果として期待されるの. を変更させた. 増加させたものは 20 名 (13.3%) ,. は,運用割合変更やスイッチング(残高部分の. 減少させたものは 7 名(4.6%)であった.最終. 商品を売却し他の商品を購入する預替取引)で. 的に「現状」→「2 回目見直し」でみると,運. あり,どちらかと言えばリスク商品運用割合の.
(11) 確定拠出年金加入者の運用商品選択行動(高瀬). (513) 139. 増加をイメージすることが多い14)が,表 5 か. 講師説明前・講師説明後 の 3 時点 で そ れ ぞ れ. ら加入者個人ベースでは運用割合の増加と減少. 並べて表示したものである15).講師説明後に元. の双方についての動機付けとなることがわか. 本確保の運用割合減少幅(9.8%)を上回る率で. る.本実験においてこの継続教育がリスク商品. 国内債券の運用割合が増加(10.6%)する結果. 0% 保有者 と 100% 保有者 の 運用商品見直 し に. となり,t 値(両側)は-6.192 と有意水準 1%. ついてどのような影響を与えたかを見ると,リ. の結果となった.これは「資料 2:累積リター. スク商品 0% 保有者合計 47 名中の 24 名にリス. ン」において国内債券のみがプラスのリターン. ク商品運用割合増加効果をもたらしたのに対. を示していること,またそのリターンが最低の. して,リスク商品 100% 保有者については合計. 「6 ヶ月」に あって も 2.42% と C 社 の 想定利回. 16 名中 の 3 名 に リ ス ク 商品運用割合減少効果. りの 2% を超過していることが大きな要因であ. をもたらすに止まった.. ろうと考えられる.講師説明において直近の国. ②継続教育が運用割合指定(アセットクラス). 債利回り推移が低落傾向にあることを図示した. に与える影響分析. ものの累積リターン実績にひきずられた結果と. 前項①では,運用商品を元本確保とリスク商. なったものと思われる.またこれとは逆に国内. 品の二つに大別して検討を行った.本項では更. 株式・外国株式の累積リターン(特に「3 年」). にこれをアセットクラスにブレークダウンして. の減少幅が大きいことを資料 2 により認識した. 検討を行う.今回継続教育は任意参加としたこ. ために,講師説明前にいったん増加させた国内. とから DC 制度にそれなりに関心のある加入者. 株式・外国株式への運用割合を講師説明後に減. が集まったと考えるのが適切であろう.そうで. 少させたことも認められた.講師説明前と講師. あれば運用割合を決定する際にポイントとなる. 説明後の運用割合の両側 t 検定結果は,国内株. 分類Ⅰ,分類Ⅱ,及び各金融資産に係わるリス. 式 で は t 値 は 2.754 で 有意水準 1%,外国株式. ク項目が明示されれば,積極的に運用割合を考. で は t 値 が 2.247 で 有意水準 5% の 結果 と なっ. え直す行動につながった可能性がある.. た.. 本項では「金融商品の特性とリスク・リター. これを行動ファイナンス的な視点から見ると. ン関係」に言及した際に配布して講師説明を. いわゆるアンカリング(anchoring)16)の状態. 行った DC 運用商品 の 累積 リ ターン を 示 し た. にあると考えられる.この概念は「身近な状況. 「資料 2:累積リターン」の効果について述べ. を出発点にして将来を予測しようと考えるた. る.. め,将来の見通しが直近の状況の影響を強く受. 継続教育における講師は所定のテキストを用. ける現象」のことをいうのであるが,手元にし. いて主観を交えず客観的な事実に基づく説明を. た自分にとって都合の良い事実を是として意思. 行うものであるが,その客観的な事実が加入者. 決定するというものである.また,継続教育で. の運用割合指定にバイアスを生じる可能性があ. は分散投資効果を享受するために資産運用に係. ることを示す.. わる時間軸を設定することを説明するが,想定. 表 6 はアセットクラス別運用割合を,現状・. する投資期間を短期に捉えた加入者については. . 14)本実験 に お い て も,リ ス ク 商品割合 は 37.8% から 45.4% へと増加する結果となった.因み に 企業年金連合会作成「確定拠出年金 投資教育 ハンドブック」 (2008 年 3 月)によれば,掛金ベー スでのリスク商品の組入比率は 49.7% である.. . 15)アセットクラス別運用割合推移の t 検定に ついては Appendix 4 を参照のこと. 16)俊野雅司『第 6 章 行動ファイナンスと年 金政策』 , 「個人レベルの公的年金の給付と負担等 に関する情報を各人に提供する仕組みに関する研 究」平成 17 年度研究報告書..
(12) 140 (514). 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 4 号(2010 年 12 月). 表 6 アセットクラス別運用割合推移 現状(%). 説明前(%). 説明後(%). 元本確保. 65.1. 58.1. 55.3. 国内債券. 3.9. 9.4. 14.5. 外国債券. 2.9. 4.1. 3.3. 国内株式. 10.9. 11.7. 9.7. 外国株式. 3.7. 4.9. 3.2. バランス. 13.2. 11.4. 13.0. 70 60 50 40 30. ��(%) ( ). 20. ���(%). 10. ���(%). 0. リスク回避度が強まる「近視眼的損失回避」を 招く可能性もあると思われる. 以上,継続教育の効果についてはパンフレッ. 仮説 1,仮説 2,仮説 3 を 設 け 重回帰分析 に よ り検証を行った. 【仮説 1】. トのみ,またはセミナー形式に拘わらず使用さ. 継続教育の効果として,分散投資,アセット. れる資料や説明内容が,上述のアンカリング状. クラス及び運用スタイル等の DC 運用理解度17). 態に陥らせるかどうかが重要なポイントになる. が高いものや,現状のリスク商品運用割合が低. ものと思われる.プランスポンサーたる事業主. いものほどリスク商品運用割合を増加させる.. は継続教育を自ら行わず運営管理機関に委託す. すなわちプラスの配分差が大きい.. る場合,事前に資料をチェックして加入者がア. <分析内容及び方法>. ンカリング状態に陥らない内容のものかどうか. 配分差については,加入者の現状の運用割合. をチェックすることが必要である.. を「全体①」,講師説明前運用割合見直 し 時点. ③運用割合に係わる配分差を用いた仮説検定. で の 運用割合 を「全体②」,講師説明後運用割. 現状の運用割合と講師説明前及び講師説明後 の運用割合の変化を配分差と呼ぶ.本項ではリ ス ク 商品 を 0% 以上 50% 未満 の 運用割合 と し たものを元本派,リスク商品を 51% 以上 100% までの運用割合としたものを投信派として 2 分 類し,継続教育が配分差に与える影響について. . 17)本稿 で の DC 運用理解度 と は 加入者 が DC 制度の趣旨に照らして自らの判断において年金資 産運用を行うことを理解していることを意味して お り,そ の 代理変数 と し て 上記 の 分散投資意識, アセットクラス意識およびスタイル意識を使用し ている.
(13) 確定拠出年金加入者の運用商品選択行動(高瀬). (515) 141. 表 7 運用割合に係わる配分差についての重回帰分析結果(全体) . 全体(③-①) 配分差(× 100) Coeff. -0.340 -0.403 現状のリスク商品運用割合 t-stat. -6.076 *** -6.524 *** p-value 0.000 0.000 Coeff. 3.173 -0.097 分散投資意識(1 → 4) t-stat. 1.411 * -0.039 p-value 0.160 0.969 Coeff. 4.518 6.279 アセットクラス意識(1 → 4) t-stat. 1.764 ** 2.216 ** p-value 0.080 0.028 Coeff. 3.030 3.783 スタイル意識(1 → 4) t-stat. 1.319 * 1.489 * p-value 0.189 0.139 自由度修正済決定係数(R-square) 0.193 0.227 サンプル数 150 150 片側検定:有意水準:***は 1%,**は 5%,*は 10% である. 被説明変数. 全体(②-①). 説明変数. 合見直し時点での運用割合を 「全体③」として,. <分析結果>. 「全体(②-①) 」及 び「全体(③-①) 」を 想. 配分差の説明変数として「現状のリスク商品. 定し,この二つについての配分差を被説明変数. 運用割合」は「全体(②-①)」に お い て t 値. とした片側検定を行った.説明変数は, 「現在. -6.076,「全体(③-①)」において t 値 -6.524. のリスク商品運用割合」 , アンケート回答によっ. といずれも有意水準 1% の結果が得られた.偏. て得られた「運用割合を決めるときに,分散投. 回帰係数はマイナスでありリスク商品運用割合. 資を意識して運用割合を選択しましたか. 」 (表. の低いものほどリスク商品運用割合を増加させ. 7 において「分散投資意識」として表記)の 4. るという仮説と整合する結果となった.DC 運. 段階評価, 「運用割合を決めるときの主な目安. 用理解度の代理変数についてはアセットクラス. は, 『元本確保・国内債券・外国債券・外国株. 意識について「全体②-①」において t 値 1.764,. 式・バランス』でしたか. 」 (表 7 において「ア. 「全体③-①」に お い て t 値 2.216 と 有意水準. セットクラス意識」として表記)の 4 段階評価. 5% の結果が得られた.またスタイル意識につ. 及び 「運用割合を決めるときの主な目安は, 『預. いても「全体②-①」においてt値 1.319,「全. 金・GIC・インデックス・アクティブ』でした. 体③-①」において 1.489 と有意水準 10% の結. か. 」 (表 7 において「スタイル意識」として表. 果が得られた.分散投資意識については「全体. 記)とした.. ②-①」においてt値 1.411 と 10% 有意水準の. 運用割合を決めるときに,分散投資を意識し. 結果が得られたが「全体(③-①)」では統計. て運用割合を選択しましたか. 」という質問は,. 的に有意な結果は得られなかった.これにより,. 講師説明前に分散投資についての理解度「1. 全. ①現状のリスク商品運用割合,②分散投資意識,. くあてはまらない.2. あまりあてはまらない.. ③アセットクラス意識,④スタイル意識,はリ. 3. ある程度あてはまる.4. よくあてはまる」を. スク商品運用割合見直しの要因となっているこ. 自己評価したものであり当該加入者の継続教育. とが検証できた.. 受講前の DC 運用理解度の代理変数として採用. 【仮説 2】. するものである.アセットクラス意識,スタイ. 元本派における継続教育の効果として,分散. ル意識についても同様である.. 投資,アセットクラス及び運用スタイル等の.
(14) 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 4 号(2010 年 12 月). 142 (516). 表 8 運用割合に係わる配分差についての重回帰分析結果(元本派) 被説明変数. 元本派(②-①). 説明変数. 元本派(③-①) 配分差(× 100) Coeff. -0.702 -0.603 現状のリスク商品運用割合 t-stat. -3.287 *** -2.563 *** p-value 0.001 0.012 Coeff. 6.122 1.253 分散投資意識(1 → 4) t-stat. 1.690 ** 0.314 p-value 0.095 0.754 Coeff. 1.491 3.764 アセットクラス意識(1 → 4) t-stat. 0.442 1.012 p-value 0.660 0.314 Coeff. 2.995 1.873 スタイル意識(1 → 4) t-stat. 0.929 0.527 p-value 0.356 0.600 自由度修正済決定係数(R-square) 0.096 0.044 サンプル数 90 90 片側検定:有意水準:***は 1%,**は 5%,*は 10% である.. DC 運用理解度が高く,リスク商品運用割合が. 直しのきっかけが与えられると運用割合を変更. 低いものほどリスク商品運用割合をより顕著に. する可能性がある.このことは,アセットクラ. 増加させる. すなわちプラスの配分差が大きい.. スや運用スタイルについての DC 運用理解度と. <分析内容及び方法>. 運用割合見直しの関係性は薄いと考えられると. 仮説 1 同様.. いうことである.. <分析結果>. 【仮説 3】. 仮説 1 と同様に, 配分差の説明変数として 「現. 投信派における継続教育の効果として,現状. 状のリスク商品運用割合」は「元本(②-①) 」. のリスク商品運用割合に関係なく分散投資,ア. において t 値-3.287,「元本(③-①) 」におい. セットクラス及び運用スタイル等の DC 運用理. て t 値-2.563 と い ず れ も 有意水準 1% の 結果. 解度が高いものほど運用割合の配分差が大き. が得られた.偏回帰係数はマイナスでありリス. い.. ク商品運用割合の低いものほどリスク商品運. <分析内容及び方法>. 用割合を増加させるという仮説と整合する結. 仮説 1,2 同様.ただし配分差はプラス・マ. 果となった.しかし DC 運用理解度に関わる被. イナスの双方に表れると予想し両側検定とし. 説明変数 に つ い て「元本(②-①) 」では,分. た.. 散投資意識 は t 値 1.690 と 5% 有意水準 の 結果. <分析結果>. となったもののアセットクラス意識及びスタイ. 仮説で予想した通り現状のリスク商品運用割. ル意識は統計的に有意な結果を得ることができ. 合は説明変数として統計的に有意な結果を得. なかった.また「元本(③-①) 」においては. ることはできなかった.DC 運用理解度の代理. DC 運用理解度の代理変数とした被説明変数の. 変数とした 「アセットクラス認識」について,. いずれについても統計的に有意な結果を得るこ. 「投信派(②-①)」及 び「投信派(③-①)」. とができなかった.. に つ い て の t 値 は そ れ ぞ れ 2.670,2.647 で あ. この事実についてのインプリケーションは以. り有意水準 1% の結果が得られた.また「投信. 下のように考えられる.元本派は自らのリスク. 派(③-①)」に お け る「ス タ イ ル 意識」の t. 商品運用割合を再認識させるような運用商品見. 値についても 2.049 と 5% 有意水準の結果が得.
(15) 確定拠出年金加入者の運用商品選択行動(高瀬). (517) 143. 表 9 運用割合に係わる配分差についての重回帰分析結果(投信派) . 投信派(③-①) 配分差(× 100) Coeff. 0.021 -0.236 現状のリスク商品運用割合 t-stat. 0.103 -1.528 p-value 0.918 0.136 Coeff. 3.577 -0.087 分散投資意識(1 → 4) t-stat. 1.017 -0.544 p-value 0.317 0.590 Coeff. 11.721 0.397 アセットクラス意識(1 → 4) t-stat. 2.670 *** 2.647 *** p-value 0.012 0.012 Coeff. 3.637 0.317 t-stat. 0.979 2.049 ** スタイル意識(1 → 4) p-value 0.335 0.049 自由度修正済決定係数(R-square) 0.183 0.224 サンプル数 38 38 両側検定 :有意水準:***は 1%,**は 5%,*は 10% である. 被説明変数. 投信派(②-①). 説明変数. られた.これは継続教育の効果と考えることが. 商品割合状況と継続教育の効果を考察したもの. できると思われる.投信派の運用割合変更は現. である.. 状のリスク商品運用割合ではなく分散投資,ア. 我が国の DC 制度が開始されてから約 9 年が. セットクラス及び運用スタイル等の DC 運用理. 経過しているが,運用商品の指図を行わないま. 解度が影響するとする仮説と整合する結果と. ま元本確保商品で運用を続けている加入者はま. なった. 「アセットクラス意識」及び「スタイ. だ相当数いるものと思われる.この状況はわが. ル意識」の偏回帰係数はプラスでありこれらを. 国固有の特徴的なものなのだろうか,その答え. 意識して運用割合を決定するものほど運用割合. を求めて米国における先行研究を調査したと. 変更の配分差が大きいという結果である.. ころ,米国が 401(k)制度への自動加入制度を. この事実についてのインプリケーションは以. 導入した 1998 年を境にそれ以前と以降とでは,. 下のように考えられる.投信派は現状のリスク. 加入者数の大幅増加によるデフォルトファンド. 商品運用割合の絶対水準が高いことそれ自体が. 適用者の大幅増加は見られるものの,リスク. 運用割合見直しのトリガーになるのではなく,. 商品 0% 保有者の全体に占める割合については. リスク商品運用割合の高いもののうち DC 運用. 特段の異動は見られなかった.米国が自動加入. 理解度の高いものが継続教育によって得られた. 制度を実施していた 10 年間の状況に比し,わ. 知識や情報を基にして自分で適正だと判断する. が国におけるデフォルトファンド適用者割合は. ポートフォリオのリバランスに関心が向くとい. やはり高いという結論である.また,わが国に. うことである.これは仮説 2 の分析結果とは対. おけるリスク商品保有割合は,リスク商品保有. 照的な結果であり,継続教育を階層別に実施す. 割合 0%,リスク商品保有割合 50%,リスク商. ることがより効果的であることを示唆するもの. 品保有割合 100% の 3 点に集中しておりいわば. である.. 「三つ瘤」状態にあることも特徴的である.本 V.結 語. 稿ではこれらが DC 制度についての無関心,運 用商品選択についての極端回避行動,分散投資. 本稿はわが国でこれまであまり論じられるこ. についての誤解等によってもたらされている可. とのなかった DC 制度加入者個人単位での運用. 能性についても言及した.このような状況のな.
(16) 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 4 号(2010 年 12 月). 144 (518). かで事業主や運営管理機関は継続教育を実施す. 割合指定書にアセットクラス,運用スタイルや. ることにより加入者自らが適正と判断するポー. 商品毎のリスクを明示したものを使用したがそ. トフォリオを構築することを促しているが,本. のような視覚的配慮が運用割合変更の誘引とし. 実験研究の副次的成果として,客観的な「累積. て効果的である可能性を示唆している.. リターン実績表」がアンカリング効果を加入者. 今回 の 継続教育 は 講師説明時間 が 約 1 時間. に及ぼし運用商品割合選択に誘導的な役割を果. 30 分であり,一般企業における継続教育とし. たす可能性があることがわかった.これは継続. ては標準的なものである.年金運用に関わる一. 教育における資料提示のあり方や説明方法につ. 定程度の基礎知識は習得していることを前提と. いては行動ファイナンス的な視点からも考慮が. して説明を行ったものである.教育という観点. 必要であることを示すものである.. からすれば投信派については有効であったが,. 本稿は実際の企業を対象に DC 制度加入者継. 元本派についてはその効果はさほど認められな. 続教育を実施しその効果を分析したことに新規. かったと言えるだろう.. 性がある.. 継続教育を実効あるものにするために,特に. この実験研究で得られた知見は以下の通りであ. リスク商品 0% 保有者について運用資産割合変. る.. 更の動機付けを与えるためには,継続教育受講. ⑴ 継続教育は加入者個人ベースで見るとリス. 者の知識や経験レベルに対応してより細分化し. ク商品運用割合の増加と減少の両面に効果 18). をもたらす .. た対応が必要であると思われる. 北村・中嶋「確定拠出年金における継続投資. ⑵ 仮説 1 よりリスク商品運用割合を増加させ. 教育 の 効果:実験 に よ る 検証」(2009 年 3 月). る要因として,①現状のリスク商品運用割. では,「パンフレットよりもセミナーの方が継. 合,②分散投資意識,③アセットクラス意識,. 続教育の効果が大きいと言える.」としている. ④スタイル意識,が検証できた.. が,本稿ではアンカリング効果のあるパンフ. ⑶ 仮説 2 より元本派においては,運用商品割. レットは運用割合変更の誘引として大きな効果. 合見直しのきっかけを与えるだけでリスク. をもたらすことを確認できた.繰り返しになる. 商品運用割合増加の可能性がある.. が,プランスポンサーたる事業主は継続教育を. ⑷ 仮説 3 より投信派においては,現状保有し. 自ら行わず運営管理機関に委託する場合は,事. ているリスク商品運用割合の大小ではなく. 前に資料をチェックして加入者がアンカリング. DC 運用理解度 の 差異 が 運用商品割合見直. 状態に陥らない内容のものかどうかをチェック. しに影響を与える.. することが必要である.. この継続教育参加者は 152 名であったが継続. 今後の課題として,今回の継続教育による運. 教育後 に 51 名(全体 の 33.6%)が 運用割合 の. 用割合変更の動機付けが実際の運用割合変更と. 19). 変更を行う結果となった .この実験では運用 . 18)津田「確定拠出年金の継続教育に一定の効果」 ( 「企業年金」2009 年 5 月)は「投信比率 や 投信併 用者の投信比率を被説明変数とした回帰分析にお いては継続教育実施の有無は有意な説明変数とは ならなかった.こうしたことから,継続教育は投 信比率の上昇に直結はしないといえよう.」と述べ ている. 19)ただし,表 5 リスク商品運用割合の増減者 割合に示す運用割合レンジ別集計に基づく結果.. いう行動につながっていくのかどうかを追跡調 査する必要があると思われる.また , 今回の実 験研究は一企業のみを対象としており被験者数 も 152 名と限定的であったことから内容の普遍 性について問題なしとはしないため , このよう な実験研究を積み重ねることによって帰納法的 に加入者個人別の運用商品選択行動について考 察を深める必要があると思われる..
(17) ����������� 確定拠出年金加入者の運用商品選択行動(高瀬). (519) 145. Appendix 1. � �. 24.
(18) ���� ������ ������. ���� ����. ����� �����. ���� ������. 146 (520). �. ��������������� ���������������� �������� �������� ������������� ��������� ����������� ���������. ��������� ��������� ��������� ��������� ��������� ��������� ��������� ���������. ����� ����� ����� ����� ����� ���� ����� �����. ����� ����� ������ ����� ���� ���� ����� �����. ������ ������ ������ ������ ������ ����� ������ ������. ����� ������ ������ ������ ������ ���� ����� ������. 横浜国際社会科学研究 第 15 巻第 4 号(2010 年 12 月). Appendix 2 �. � � ���������� ���. ��� ��. ����. ���. ���� ������ ���� ������ ������. ���� ����. ����� �����. ���� ������. �������� ����� ������������� �������������� ��������������� ��������������� ���������������� �������� �������� ������������� ��������� ����������� ���������. ������� ����� ����� ������� ����� ������� � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � ������. �. �. Appendix 3. � ����������������. �������������. ���. ��� ��. ����. ���. ���� ������ ���� ������ ������. ���� ����. ����� �����. ���� ������. �������� ����� ������������� �������������� ��������������� ��������������� ���������������� �������� �������� ������������� ��������� ����������� ���������. ������� ��������� ��������� �������� ��������� ��������� ��������� ��������� ��������� ��������� ��������� ��������� ���������. ������� ���� ����� ����. ���. ���� ����� ����� ����� ����� ����� ���� ����� �����. ��������� �� ��. ��. ���� ����� ����� ������ ����� ���� ���� ����� �����. ���� ����� ������ ������ ������ ������ ���� ����� ������. ���� ������ ������ ������ ������ ������ ����� ������ ������. � � � � ���������� ���. ��� ��. ����. ���. ���� ������ ���� ������ ������. ���� ����. ����� �����. ���� ������. �. �������� ����� ������������� �������������� ��������������� ��������������� ���������������� �������� �������� ������������� ��������� ����������� ���������. ������� ����� ����� ������� ����� ������� � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � � ������. �.
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