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JAIST Repository: 鉄鋼・金属材料分野における日本の研究開発の国際性の評価

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Academic year: 2021

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JAIST Repository

https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 鉄鋼・金属材料分野における日本の研究開発の国際性 の評価 Author(s) 玉城, わかな; 奥和田, 久美 Citation 年次学術大会講演要旨集, 25: 118-121 Issue Date 2010-10-09

Type Conference Paper Text version publisher

URL http://hdl.handle.net/10119/9258

Rights

本著作物は研究・技術計画学会の許可のもとに掲載す るものです。This material is posted here with permission of the Japan Society for Science Policy and Research Management.

(2)

1E02

鉄鋼・金属材料分野における日本の研究開発の国際性の評価

○玉城 わかな 奥和田 久美(科学技術政策研究所)

1 はじめに

〔図表1 国別粗鋼生産推移〕単位:1,000t 近年、鉱物資源の世界的な需要拡大によ り価格は高騰しているが、それに対応する ように、鉄鋼・金属分野において国を超え ての企業合併が 2000 年以降急速に進み、 一企業が大型化している。例えば、2001 年に鉄鋼業において世界初の多国籍製鉄メ ーカーArcelor が登場したが、わずかその 5 年後にはLMN を買収したインドの Mittal Steel の 敵 対 的 買 収 に よ っ て Arcelor Mittal が誕生した。このような世界的企業 が生まれる中、インドを除くアジア地域で は国ごとに異なる動きを見せている。世界 粗鋼生産量の約半分を占める中国では国内 企業の淘汰・集約が行われており、韓国では国内需要及び価格安定化に向けて自動車メーカーが製鉄所 を持った。一方、日本では2002 年の JFE 誕生以降、高炉メーカー5 社、電炉メーカー36 社でほぼ固定 化され、日本企業によるブラジルの製鉄所買収等小さな変動はあるが、世界企業による日本企業買収も、 国内集約化もあまり進んでいない。このように現在進行形で世界が大きく変動している中で、日本は対 照的に小規模の変動に留まっている。このような産業構造の一方で、研究開発において日本の研究者・ 技術者にはこの分野の技術レベルは依然として世界をリードしているとの自負があり、当該分野におけ る「日本の優位性」を公言している。本稿では、この分野における日本の研究者・技術者が感覚として 保持している「日本の優位性」を客観的に評価するため、世界各国の鉄鋼・金属研究分野のトップクラ スの学会英文誌における研究論文比較を行った。具体的には国内外の論文誌の論文数や論文1 本あたり のCitation 数、Citation における日本人の貢献度などの分析を行った。このような分析が日本の鉄鋼・ 金属分野の研究開発の全てを評価しているわけではないが、これからの研究開発の在り方を議論する1 つのきっかけとなるはずである。

2 分析方法と概況

(1)分析方法 鉄鋼・金属材料分野には世界をまとめるような大きな学協会が存在しない。今回主に分析対象とした 論文誌は、図表2-1で色付けした Acta Materialia、Metallurgical and Materials Transactions A and B、日本の ISIJ International 及び Materials Transaction であり、これらは Acta Materialia の short communications 版である Scripta Materialia を除き、Total Citation 数の上位 4 誌である。これら論

文誌における①論文数及び著者所属国別論文数の推移、②各年Citation 数上位論文における日本人の貢

献度の推移、③Citation 数上位 1%論文の最大引用年まで引用までの平均年数について年次変化を追跡

した。採用したデータベースはScopus 及び ISI で、データベース掲載へのタイムラグ等により実際の

論文数とは若干の誤差がある。 (2)論文誌の概況

日本の論文誌ISIJ International 及び Materials Transaction は、H index 及び論文数において上位

である(図表2-1)。2008 年における会員数あたりの論文数は Acta Materialia(0.007 本/人)、 Metallurgical and Materials Transactions A and B(0.045 本/人)に対し、ISIJ International(0.027

0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009

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〔図表2-2 選択した論文誌を発行している 学会及び会員数〕 〔図表2-1 鉄鋼・金属材料分野における主な論文誌〕

本/人)、Materials Transaction(0.072 本/人)と優位にある。また ISIJ International は鉄鋼専門誌で

あり、Materials Transaction が非鉄金属専門誌であることを鑑み、合計論文数で比較すると、

Metallurgical and Materials Transactions A and B は減少傾向、Acta Materialia は増加傾向、日本の 2 誌の合計値は 2000 年以降ほぼ横ばいで推移している(図表2-3)。以下の分析は、このような論文誌 の概況を踏まえたうえで進めていく。 *発表されている鉄鋼・金属材料分野におけ る英文誌(43 雑誌、6,570 論文、2008 年) 論文数この4 誌(1,848 論文、2008 年)で 28%を占めている。

〔図表2-3 鉄鋼・金属材料分野における論文数(Articles & Reviews)の推移〕

3 分析結果

(1)論文数及び著者所属国別論文数の推移

H index においてトップである Acta Materialia における著者所属国の割合によれば、1990 年頃の日

本は米国に次ぐ 2 位のポジションをドイツと競っていたが、2004 年には論文数で中国に抜かれた(図

表3-1)。粗鋼生産量が 1994 年に逆転されたことを考え合わせると、ちょうど 10 年後に論文数の逆転 が起こったと言える。2009 年の Acta Materialia における日本のシェアはわずか 10%にも満たない。 Metallurgical and Materials Transactions A and B においても、日本は 1995 年の米国(シェア 45%)

に次ぐ2 位のポジション(同 10%)から少しずつシェアを下げ始め、2007 年には中国だけでなく、イ

ンドにも超えられた。一方、日本における論文誌ISIJ International における著者所属国の割合によれ

ば、日本の論文誌であるにもかかわらず、日本のシェアは1998 年以降ほぼ 40%で一定であり、残り 60%

は中国、韓国、欧州諸国、ブラジルなどとなっている(図表3-2)。2000 年から 2002 年かけては韓国

が高く、以降は中国がそのシェアを伸ばした。先の2 誌とも同じように米国がここでもシェアを減らし

Acta Materialia ASM International (members 36,000)  AIME (American Institute of Mining,  Metallurgical, and Petroleum  Engineers) (90,000)  Metallurgical and  Materials Transactions  A and B AIME  ➣ TMS (The Minerals, Metals &    Materials Society) (10,000) 

U.S. , Europe

Japan

ISIJ  International ISIJ (The Iron and Steel Institute of  Japan) (9,875)  For ferrous Materials  Transaction, JIM JIM (The Japan Institute of Metals)  (7,100)  For non‐ferrous 0 100 200 300 400 500 600 700 800 1 989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 9991 2000 2001 2002 2003 0042 2005 2006 2007 2008 2009

Mate.Trans.,JIM+ISIJ  Int. Acta Meta. Mate.  A+B

出版国 論文誌名 H index Total Docs. (2008 ) Total Docs. (3years) Total Cites (3 years) Acta Materialia 117 626 1,719 7,065 Scripta Materialia 79 609 1,754 5,234

Metallurgical and Materials Transactions A 64 357 985 1,561 Metallurgical and Materials Transactions B 33 90 307 267 International Journal of Materials Research 33 189 668 486 Steel Research International 18 135 411 192 Materials Science and Technology 36 219 956 652

Ironmaking and Steelmaking 18 85 232 97

ISIJ International 44 266 806 701

Materials Transactions, JIM 58 509 1,640 1,380 Journal of Iron and Steel Research

International 6 109 425 82

Transactions of Nonferrous Metals Society

of China (English Edition) 13 256 1,000 478

Rare Metals 10 127 486 182

South

Korea Steel and Composite Structures 6 33 91 60 China Netherlands United States Germany United Kingdom Japan *H index とは、物理学者 Jorge E. Hirsch が考案した 指標で、論文数と被引用数か ら研究者の科学的貢献度を 示すものである。例えば、あ る研究者のH index が 30 で あれば、被引用数が30 回以 上の論文が少なくとも30 編 あることを示す。

(4)

〔図表3-3 Acta Materialia における上位 論文のCitation 数と日本人の貢献度〕 〔図表3-4 Acta Materialia における日本人著 者1 人あたりの Citation 数及び日本人を含む著者 1 人あたりCitation 数〕 ている。また日本の非鉄金属専門誌であるMaterials Transaction では、日本のシェアは 1989 年で 88%、 2009 年では 62%と減少しているものの、鉄鋼と比較してまだ日本のシェアは高い。ただし Materials Transaction でも中国・韓国・台湾がシェアを伸ばしてきており、2009 年ではそれぞれ 10%のシェア となっている。 〔図表3-1 Acta Materialia における著者所属国の割合〕 〔図表3-2 ISIJ International における著者所属国の割合(左:日本、右:その他)〕 (2)各年Citation 数上位論文における日本人の貢献度の推移

次にCitation 数の高い上位論文における毎年の日本人の貢献度を調べた。Acta Materialia における

日本人の貢献度は1996 年から 2000 年にかけて 20%を超えていた(図表3-3)。しかし 2001 年以降で

は Citation 数上位論文の中に日本人著者がいない時もあり低迷が続いている。また 1 人あたりの

Citation 数は 1998 年から 2001 年にかけて日本人は著者平均を上回っていた(図表3-4)。

一方、日本の論文誌であるISIJ International においては、上位論文の Citation 数が高い時には日本

人貢献度が低く(1996 年・1999 年で 25%)、低い時には日本人貢献度が高くなる傾向が見られた(図 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 1 990 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 USA JAPAN GERMANY PEOPLES R CHINA 0% 2% 4% 6% 8% 10% 12% 14% 1 990 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 JAPAN GERMANY PEOPLES R CHINA 0% 20% 40% 60% 80% 100% 1 989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 9991 2000 2001 2002 2003 0042 2005 2006 2007 2008 2009 0% 5% 10% 15% 20% 25% PEOPLES R CHINA SOUTH KOREA USA Europe Others たりのCitation 0% 20% 40% 60% 80% 100% 0 2000 4000 6000 8000 10000 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 上位20件のcitaion合計 citaion上位20件のうち日本人の貢献度 0 50 100 150 200 250 300 350 400 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 日本人1人あたりのCitation 著者1人あたりのCitation

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〔図表3-5 ISIJ International における上位 論文のCitation 数と日本人の貢献度〕 〔図表3-6 ISIJ International における日本人著者 1 人あたりの Citation 数及び日本人を含む著者 1 人あ たりCitation 数〕 表3-5)。また日本人著者 1 人あたりの Citation 数と日本人を含む著者 1 人あたりの Citation 数では 1989 年、2001 年以外の多くの年で日本人は世界の平均を下回っていた(図表3-6)。 (3)Citation 数上位 1%論文の最大引用年までの平均年数 この分野の日本人研究者の中には「鉄鋼・金属材料分野における論文は引用されるまでの期間が長い」 という認識がある。これが世界的に見て正しい認識なのかを検討するため、海外の論文誌と日本の論文 誌で平均年数の差があるのかどうかを調べた。具体的には、Citation 数上位 1%論文が発表されてから、 最も引用された年までに要した平均年数について調べた。結果的に日本の論文誌ISIJ International は 平均年数10 年で横ばい、Materials Transaction は同じく平均年数 10 年であるが、平均年数は短縮傾 向にあった。一方、海外の論文誌である Acta Materialia では日本の論文誌より 2 年も短く、

Metallurgical and Materials Transactions A and B は ISIJ International と同様に平均年数 10 年で推 移していた。

4 まとめと考察

鉄鋼・金属材料分野の国内外の論文における日本人研究者の動向を定量的に見ることで、この分野の 研究開発における日本の国際性の一評価をすることができた。本調査では以下の点が明らかになった。 ① 欧州・米国では鉄鋼・非鉄金属の論文誌が合併し発表され、中国では素材によって細分化して論文 誌が刊行されている。この点で日本はどちらの動きでもなく、論文数自体は現状維持で推移している。 ② 海外の論文誌における論文数において、日本は中国およびインドに抜かれており、また日本の論文 誌でも、中国・韓国・台湾が発表数を伸ばしている。 ③ Citation 数上位論文における日本人の貢献度は、海外の論文誌において 1997 年~2001 年までは高 かったが、その後は低迷を続けている。日本の論文誌においてはCitation 数が少ない時に日本人貢献度 が高かった。 ④ 論文数が伸びている海外の論文誌は発表から Citation が最大の年までにかかる年数が短くなって いるが、論文数が横ばい及び減少傾向の日本の論文誌はその年数に変化は見られない。 近年では、日本人研究者の論文数が減少するだけでなく、Citation 数の高い論文も大きく減少してい る。すなわち論文発表という研究開発の側面においては日本人研究者の国際的評価は低下しているとみ られる。また粗鋼生産量が中国に逆転されてから10 年で、研究論文数も逆転されている。2010 年時点 ではインドの粗鋼生産量は日本以下であるが、世界最大の鉄鋼メーカーがArcelor Mittal であることと 対応するように、研究分野においても日本を凌ぐ論文数が発表されている。これらCitations 数の高い 中国やインドの著者の履歴を辿ると、博士課程もしくは研究員として日本や米国で研究をしていた人が 多く、鉄鋼・非鉄金属産業後進国において粗鋼生産増加とともに帰国した人材を用いて研究開発分野に も力を入れている様子がうかがえる。 総じて、本稿では、鉄鋼・非鉄金属材料分野の日本の研究者・技術者が感覚として保持している研究 開発や技術レベルにおいて、以前のような「日本の優位性」を見出すことはできなかった。またこの分 野のアカデミア全体が2000 年頃(10 年前)の認識のままであり、産業構造の変化は認識できても、研 究開発においても世界の状況が変化しつつあるということに気づいていない可能性がある。 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 Total Citation 日本人貢献度 0.00 5.00 10.00 15.00 20.00 25.00 30.00 198 9 199 0 199 1 199 2 199 3 199 4 199 5 199 6 199 7 199 8 199 9 200 0 200 1 200 2 200 3 200 4 200 5 200 6 200 7 200 8 200 9 日本人1人あたりのCitation 著者1人あたりのCitation

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