2017/12/7 入門物理学 B
入門物理学 B
第 11 回 (12/7) 原子説 [古代・中世の化学・原子・元素]
・万物の根源、古代原子説、四元素説
・錬金術の時代とその揺らぎ
・ラボアジエと化学革命
・ドルトンの原子説
第 12 回 (12/14) 原子の中へ
・アボガドロと分子 ・メンデレーエフと周期表
・電子の発見と電気素量 ・原子模型
第 15 回 試験日 (1/18) 詳細は次回
法政大学 市ヶ谷リベラルアーツセンター兼任講師 福川 賢治
(https://sites.google.com/site/kfukukawa00/hosei2017)
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参考文献
1. 「科学の発見」S. Weinberg 著、文藝春秋、(2016年、2106円) 1 - 3 章、9章 2. 「化学の歴史 I」W.H. ブロック著、朝倉書店 3, 4, 9 章
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原子説 1. 万物の根源(アルケー)
神話と詩の世界 (ミュトス, mythos)
◎ ホメロス(紀元前 8世紀 ?、詩人の異名を持つ)
・「イーリアス」トロイア戦争 (ギリシャとトロイアの戦争、紀元前 1200 年中期 ?) を記述
・「オデュッセイア」トロイア戦争後のオデュッセウスの貴種漂流譚を記述
◎ ヘシオドス (紀元前 700 年頃) 「神統記」ギリシャ神話的宇宙観の原典
自然哲学
(経験的事実による世界の記述, ロゴス (理性や論証) の尊重)◎ ミレトス学派 (ミレトスはギリシャの対岸にあるトルコの地名)
1. タレス (B.C. 624 頃 ̶ B.C. 546 頃)
万物は単一の基本的物質(アルケー)で構成されているという説を初めて唱えたとされる 「アルケーは水」
2. アナクシマンドロス (B.C. 610 頃 ̶ B.C. 547頃) タレスの弟子 「アルケーは無限(定)なもの」
有限なものは無限なものから生じ、罪の償いを受けて無限のものに帰する 3. アナクシメネス (B.C. 585頃̶ B.C. 525頃) アナクシマンドロスの弟子 「アルケーは空気」
ミレトス (ミレトス学派) は古代ペルシアによって征服され衰退
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◎ ピタゴラス (数学者、宗教家、哲学者, B.C. 570頃 ̶ B.C.496頃) 「万物は数によって秩序づけられる」
2つの音の振動数が簡単な整数比になること
(例えば 1オクターブは振動数が 2:1 の二つの音の比)や、 ピタゴラス(三平方)の定理で有名。
◎ ヘラクレイトス (B.C. 540 頃 ̶ B.C. 480頃)
動的自然観「万物は流転する」火は万物の変化の原因 「万物の根源は火」
◎古代原子説
1. レウキッポス (古代ギリシア 、B.C. 5世紀) ほぼ資料が残存しない
2. デモクリトス (レウキッポスの弟子、古代ギリシア、B.C. 460 頃̶ B.C. 370頃) 無神論 (科学と宗教の分離)、前ソクラテス期の最後の哲学者
倫理学、自然科学、数学、音楽についての断片的資料が現存
「いかなることによっても偶然によっては起こりえない」
「真実存在するのはアトモスと空虚のみ」
アトモス (=a ( できない)+tomos(分割)) ``分割できないもの 原子(atom) の語源 (※) 当時の原子論は科学的な実証 (19世紀以降)によるものではない。
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◎ 四元素説
1. エンペドクレス (B.C. 490頃 ̶ B.C. 430頃、伊シチリア島アグリジェント)
「 水、土、空気、火 」の愛憎 (離合集散)で万物が構成される。
2. プラトン (ソクラテスの弟子、B.C. 427̶ B.C. 347)
元素は正多面体の形をした粒子
[火 (正四面体)、土 (立方体)、空気 (正八面体)、水(正二十面体)]
正十二面体は宇宙を表す
3. アリストテレス (プラトンの弟子 B.C. 384 ̶ B.C. 322)
四元素は 四性質「熱・冷」「湿・乾」 の組み合わせでできている。
火 (熱・乾)、土 (冷・乾)、 空気 (熱・湿) 、水 (冷・湿)
さらに 天空 (月より遠い世界) に円運動をする第五元素 「 エーテル 」がある
この 四元素説が 古代ギリシャ・ローマ、イスラム世界、ヨーロッパでも
原子説の現れる前まで姿を変えながら信じられていた
( 錬金術 や医学と結びつき、中世における支配的な物質観に)
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アリストテレスは中心から 土・水、空気、火の順に
物質が存在しやすいと考えた 画像は Wikipedia より引用
四元素説における元素の関係図
画像は Wikipedia 「四元素」から引用,
Picture by Mhss (Own work), (20th ,November, 2011), CC-BY-3.0 SA ライセンス
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2 錬金術 (Alchemy) 古代・中世における化学
化学的手段を用いて非金属から貴金属 (特に金・銀)を精錬する試み
古代エジプトに起源。Alchemy の 語源は Al-Kimiya 「エジプトの術」 (Kimiya は「エジプト」の意味の Khem の転じたもの)
Al はアラビア語の 定冠詞 (例. Algebla (代数), Alkali (アルカリ)、Algorithm) 四元素説によって、基礎づけを与えられる。
金 (完全な存在) と「熱・冷」「乾・湿」の性質が 全く一致する性質を作れば、金ができるのでは?
→ 実際には「金・銀に似たものができるに過ぎない」 [Albertus Magnus (独, 1193-1280 )「鉱物論」]
アラビアの三原質 「硫黄・水銀・塩」(四元素説の新解釈)
パラケルススの主著「オプス・パラミルム」(1531年)の中で展開) 硫黄 可燃性・腐食性等の能動的役割
四元素説での土・火に対応
水銀 揮発性・可溶性等の受動的役割 四元素説での空気・水に対応
塩 両者の中間にあり、物質を固定化する役割 第五元素エーテルに対応
Paracelsus
(スイス、1497-1541) 医師・化学者・錬金術師 画像は Wikipedia より引用
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錬金術の成果
ジャービル・イブン・ハイヤーン (アラビア、721?- 815?)
イスラム科学の祖であり、中世の錬金術における権威
業績
・蒸留、昇華、溶解、結晶化の技術を開発→ 現在の化学工業の基本的技術
・幾つかの有機化合物 (酢酸、クエン酸、酒石酸)の発見、アルカリの概念
塩酸 (HCl)、硝酸(HNO
3)、硫酸(H
2SO
4)、王水(NOCl)の発見
・王水の生成 HNO
3+ 3HCl → NOCl + Cl
2+ 2H
2O
濃硝酸 + 濃塩酸 → 王水 + 塩素 +水
王水は金を溶かす
Au + NOCl + Cl
2+ HCl → H[AuCl
4] + NO
金 + 王水 + 塩素 + 塩酸→ テトラクロリド金(III)酸 + 一酸化窒素
その他にも、錬金術は火薬の発明(中国)等
主に化学に大きく貢献
中世に描かれた蒸留器画像は Wikipedia より引用
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錬金術の揺らぎから化学革命へ
1. 錬金術の目的は金銀の生成だが、千年以上経っても金銀は作れない
→ 本当に四元素から金銀はできるのだろうか?
ロバート・ボイル
「懐疑的化学者」(1661年)
この本の中で「元素は他のものから作ることができないもの」と定義
四元素よりも、もっと多くの数の元素があって良いはずであり、
これらはさまざまな微粒子からできていると主張
ガリレオ、デカルト等の機械論的自然観 (もっぱら物質の大きさや形、運動などから [主に力学的に]自然現象を説明しようとする立場) からの影響
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熱力学におけるボイルの法則 温度が時間的に変わらない時、 (圧力 P) (体積 V)=(一定)
画像はWikipediaより引用
Sir Robert Boyle (英, 16271691)
「近代化学の祖」
貴族、自然哲学者、化学者、 錬金術師、物理学者、発明家 英王立協会の設立に貢献
(王立協会フェロー)
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3. ラボアジェと化学革命
フロギストン説
ゲオルグ・シュタール (独、1659-1734)
アラビアの三原質説を受け継いで燃焼の理論を作り上げようとした。
三原質中の硫黄が燃えるものには含まれていると考え、それを
フロギストン(Phlogiston、燃素)と呼んだ (1697年,「化学の基礎」)。
例. 金属 → 金属灰+フロギストン 木炭 → 灰+フロギストン
木炭 + 金属灰 → 灰+金属 (木炭からフロギストンをもらい金属になる)
フロギストンが完全に出ると(あるいは空気がフロギストンで飽和すると)
物質は燃えなくなる。
1772 年 ダニエル・ラザフォード (スコットランド、1749-1819)による
フロギストン飽和空気としての窒素 (N
2) の発見
1775 年 ジョセフ・プリーストリー (イギリス、1733-1804)
脱フロギストン空気としての酸素 (O
2) の単離に成功 2HgO → 2Hg+O
2現代の眼で見ると、(フロギストン)=(マイナスの酸素)ということができる。
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ラボアジェと化学革命
アントワーヌ・ラボアジェ (仏17431794 フランス革命にて刑死)
化学者、貴族 (第二身分) 、徴税請負人
「近代化学の父」水素・酸素・窒素の命名、質量保存の法則
妻マリー=アンヌとともに研究を進めた。
質量保存の法則を発見 (1774年)
密閉空間の中で金属を熱すると、
金属の質量は増加するが、空気の質量は減る
「化学反応の前後では質量が変化しない」
「元素=(実験でこれ以上分離できないもの)
は分裂、増加したり消滅することはない」
化学反応は元素の組み合わせの変化
(※) 後に相対論により、厳密には成り立たないことが判明
(しかし、E=mc2に相当する質量は測定限界より普通遥かに小さい) ラボアジェとその妻マリー=アンヌ 画像はWikipediaより引用
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ラボアジェと化学革命 (続き)
酸素との結びつきで燃焼を説明 (1777 年)
金属 + 酸素 → 金属灰
水の成分が水素と酸素であることを証明 (1783 年)
2H
2+O
2→ 2H
2O(水素の命名)
他にも、空気の1/5 (21%) が酸素であり、
残りの 4/5 (78%) が窒素であることを解明した。
代表的著作 「化学命名法」(1787 年)
「化学要論」(1789 年) 33元素をリストアップ
自然界に広くあるもの 光、熱素、酸素(O)、窒素(N)、水素(H) 非金属 硫黄(S)、リン(P)、炭素(C)、塩素(Cl)、
フッ酸基、ホウ酸基
金属 ヒ素(As)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、スズ(Sn)、 鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、水銀(Hg), 銅(Cu), 銀 (Ag),
金(Au)、ニッケル(Ni)、白金 (Pt)、コバルト(Co)、
鉄(Fe)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)
土 酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化バリウム、アルミナ、シリカ
乾燥大気の組成 (体積比) 画像は Wikipedia より
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