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E in SM02 最近の更新履歴 物理学ノート

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Academic year: 2017

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(1)

統計力学演習 No.2 (October 24, 2013) 7

2 量子論と状態数

2.1

エネルギー固有状態と状態数

量子系のハミルトニアンHˆについての固有値方程式

ϕ = Eϕ (2.1)

を時間に依存しないシュレーディンガー方程式という。また,その解ϕ ̸= 0をエネルギー固有状態,その固有 値をエネルギー固有値または固有エネルギーと呼ぶ。

今,ある量子系のエネルギー固有値問題が完全に解けたとする。すなわち ˆ

Hϕi= Eiϕi (2.2)

を満たす全てのϕiEiが得られた事になる。ここでi = 1, 2, · · · は,エネルギーの低い順序に定める:

0 ≤ E1≤ E2≤ . . . . (2.3)

最左辺の0は基底状態のエネルギーを表す*7。このとき,エネルギーがE以下であるエネルギー固有状態の 総数を状態数Ω(E)という。状態数は

Ω(E) :=

0≤Ei≤E

1 (2.4)

のように階段的に1ずつ増加する関数であり*8Eの増加関数である。

例題1. 1次元空間中を運動する1個の自由粒子からなる系。長さLの箱(0 ≤ x ≤ L)に閉じ込められ,その 中を自由に運動する質量mの自由粒子を考える。この系のシュレーディンガー方程式は

2

2m d2

dx2ϕ(x) = Eϕ(x). (2.5)

境界条件はϕ(0) = ϕ(L) = 0なので,規格化されたエネルギー固有状態(波動関数)は ϕn(x) =√ 2

Lsin (

L x

) (2.6)

となる。この波動関数の波数kは,kn=

L なので,そのエネルギー固有値は En=

2k2

2m = π22 2mL2n

2= E

0n2, (n = 1, 2, . . . ) (2.7) E0:= π

22

2mL2 (2.8)

である。従って状態数Ω(E)

Ω(E) = (En≤ Eを満たす自然数nの総数) = (n2 E E0

を満たす 〃 )

=(n ≤√ E E0

満たす 〃

)=(√ E E0

を超えない最大の自然数

) (2.9)

となる*9。よって不等式

√ E

E0 − 1 < Ω(E) ≤√ EE

0

(2.10)

*7

基底状態とは,エネルギーが最低の状態のこと。つまり,基底状態のエネルギーを0と選んだのである。

*8エネルギー固有値に縮退があれば,その縮退度diだけまとめて増える。

*9

実数xに対してxを超えない最大の整数を与える関数を床関数といい,⌊x⌋または[x]と書く。後者はガウス記号とも呼ばれる。

(2)

8 2 量子論と状態数 が成り立つ。特にマクロの系ではE ≫ E0なので

Ω(E) ≃√ E E0

=

√2m πℏ LE

1

2 (2.11)

とエネルギーEの滑らかな関数となる。また状態数は系の大きさLに比例する。 問題5. 3次元空間中を運動する1個の自由粒子からなる系の状態数を求める。

5-1.3次元空間中の一辺L,体積V = L

3

の立方体中の領域(0 ≤ x, y, z ≤ L, )だけを運動する1個の自由 粒子に対して,そのエネルギー固有状態とエネルギー固有値を求めよ。

5-2.この系の状態数Ω(E)を求めよ。系のマクロ性に対する近似(E ≫ E0)を用いてよい。

例題2. 3次元空間中の一辺L,体積V = L3の立方体中の領域(0 ≤ x, y, z ≤ L)だけを運動するN個の自 由粒子からなる系について,系のエネルギー固有状態とエネルギー固有値,状態数Ω(E)を求めよ。

自習2. 2次元空間中の一辺Lの箱(0 ≤ x, y ≤ L)の中だけを自由に運動する質量mの自由粒子に対して, エネルギー固有状態とエネルギー固有値を求めよ。また状態数Ω(E)

Ω(E) = m 2πℏ2L

2E (2.12)

となることを確かめよ。系のマクロ性に対する近似(E ≫ E0)を用いてよい。

自習3. 問題5で,周期的境界条件ϕ(x + L, y, z) = ϕ(x, y + L, z) = ϕ(x, y, z + L) = ϕ(x, y, z)を課した場 合,系のエネルギー固有状態とエネルギー固有値,状態数Ω(E)を求めよ。境界条件を変えても状態数Ω(E) が変化しないことを確かめよ。

自習4. 角振動数がωで,互いに独立なN 個の量子力学的な調和振動子からなる系の状態数Ω(E)が Ω(E) = 1

N ! ( E

ω )N

(2.13)

となることを確かめよ。公式(2.35)を用いる。

2.2

マクロな系における基底エネルギーと状態数

体積V,粒子数N の系の基底エネルギーをEGSとする。(粒子)数密度ρ = N

V > 0を任意の値に保ってV

Nを大きくしたとき,基底エネルギー密度に極限 ε0= lim

V →∞

EGS(V, N )

V (2.14)

が存在する。また,数密度ρとエネルギー密度ε =

E

V > ε0を一定に保ってV Nを大きくしたとき,

σ(ε, ρ) := lim

V →∞

1

V log ΩV,N(E) (2.15)

なる極限が存在する。これより状態数V,N(E)

V,N(E) ∼ exp[V σ(ε, ρ)] (2.16)

と書かれる。関数σ(ε, ρ)εの増加関数であり,ε, ρに関して上に凸である。またσ > 0である: σ(ε, ρ) > 0, ∂σ(ε, ρ)

∂ε > 0,

2σ(ε, ρ)

∂ε2 < 0,

2σ(ε, ρ)

∂ρ2 < 0. (2.17) 通常の熱力学的な系では以上が成り立つ*10。以後,これらの性質が成り立つ系を熱力学的に正常な系と呼び,

状態数は(2.16)式のように書けると考える。

*10これらは,温度と比熱が正であるための条件や正常なゆらぎが定義できるための条件と関係する。2番目の条件が成り立たない場 合に負の温度が生じることを二準位系で考察する。

(3)

2.3 数学公式 9

2.3

数学公式

自習5. ガウス積分と関連する以下の積分公式を証明せよ。ただしa > 0nは自然数とする。

−∞

e−x2dx =π, (2.18)

−∞

exp [

x

2

2a ]

dx =2πa, (2.19)

−∞

xnexp [

x

2

2a ]

dx = (n − 1) a

−∞

xn−2exp [

x

2

2a ]

, (2.20)

−∞

xnexp [

x

2

2a ]

dx =

{(n − 1)!! an22πa nが偶数のとき,

0 nが奇数のとき. (2.21)

ここで二重階乗(一つおきの階乗)は m!! :=

{m × (m − 1) × (m − 4) × · · · × 4 × 2 mが偶数のとき,

m × (m − 1) × (m − 4) × · · · × 3 × 1 mが奇数のとき (2.22)

である。(2.18)式では左辺の2乗を2次元極座標系で計算してから平方根をとる。(2.19)式では変数変換を,

(2.20)式では部分積分を用いる。(2.21)式では部分積分をくり返す。

自習6. ν 次元のガウス積分Iν が Iν :=

−∞

e−(x21+···+x2ν)dx1. . . dxν= πν2 (2.23)

であることを証明せよ。この式で

−∞は,x1, . . . xν全ての積分範囲が−∞から+∞であることを表す。

自習7. 正の実数xについて

Γ(x) :=

0

e−ttx−1dt (2.24)

Γ関数と定義する*11。以下の式を確認せよ。 Γ(1) =

0

e−tdt = 1, (2.25)

Γ( 1 2

)

=

0

e−tt12dt =

0

2e−s2ds =π, (2.26)

Γ(x + 1) =

0

e−ttxdt =

0 (−e

−t) tx

dt = −

0

de−t dt t

xdt = xΓ(x), (2.27)

正の整数nについて

Γ(n + 1) = nΓ(n) = n(n − 1)Γ(n − 1) = · · · = n!, (2.28) Γ

( n +1

2 )

= (

n − 12 )

Γ (

n −12 )

= (

n −12 ) (

n −32 )

Γ (

n −32 )

= . . .

= (

n − 12 ) (

n −32 ) (

n −52 )

. . .1 2Γ

( 1 2

)

=(2n − 1)!! 2n

√π. (2.29)

*11Γ関数は特殊関数の1つで,一般には複素数に対して定義される。(2.24)の定義は,実部が正である複素数にzに対してそのまま 拡張できる。

(4)

10 2 量子論と状態数 (2.27), (2.28)式から分かるように,Γ(x + 1)は階乗を正の実数に拡張したx!だと考えることができる。

自習8. 半径rν次元球の体積は

Vν(r) :=

x21+···+x2ν≤r

dx1. . . dxν (2.30)

と定義される。

8-1.ν 次元単位球の体積Vν(1)を単にVνと記す。yi= xi/rと変数変換し

Vν(r) = Vν(1)rν (2.31)

となることを示せ。

8-2.r ≥ 0で定義される任意の関数f (r)に対して

−∞

f (√

x21+ · · · + x2ν

)

dx1. . . dxν=

0

νVνrν−1f (r)dr (2.32)

が成り立つことを示せ。

8-3.前問の結果を用いて(2.23)の左辺を計算し

Iν=

−∞

e−(x21+···+x2ν)dx1. . . dxν=

0

νVνrν−1e−r2dr = Vνν

2

0

t(ν−2)/2e−tdt

= Vν

ν 2Γ

(ν 2

)= VνΓ(ν 2 + 1

) (2.33)

となることを確かめよ。

8-4.ν 次元単位球の体積Vν

Vν= π

ν 2

Γ(ν2+ 1) (2.34)

となることを示せ。

自習9. (x1, . . . , xν)ν 次元空間の直交座標とする。i = 1, . . . , νについてxi ≥ 0かつνi=1xi≤ Rで指

定されるν次元三角錐の体積Cν(R)

Cν(R) = R

ν

ν! (2.35)

となることを示せ。

問題6. 例題2を古典的に考えてみる。古典論における状態数は,3N 次元の相空間空間)における積分 Ω(E) := 1

h3NN !

H ≤Eˆ

dΓ (2.36)

で与えられる。ここで積分測度は,N 個の自由粒子の一般化座標qiと一般化運動量pi (i = 1, 2, . . . 3N ) に関する積分を意味する:

dΓ := dq1dq2. . . dq3Ndp1dp2 . . . dp3N =: dq dp . (2.37)

この系のエネルギーがHˆ=3N

i=1 p2i

2mである事と演習7の結果を用いて状態数を計算せよ。

自習10.角振動数がωで互いに独立なN個の調和振動子からなる系を古典的に扱い,状態数Ω(E)を求めよ。

参照

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