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抜いた歯を活用して骨を再生する

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Academic year: 2017

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抜いた歯を活用して骨を再生する

大学院歯学研究科 助教

柏 崎

かしわざき

晴彦

は る ひ こ

(歯学部歯学科)

専門分野 : 口腔外科学,高齢者歯科学

研究のキーワード : 再生医療,歯科,バイオリサイクル

HP アドレス : http://www.den.hokudai.ac.jp/koreisha/index.html

何を目指しているのですか?

私たちは患者本人の不要な歯を「再生医療の資源」と考え、抜去した歯を自己のために 再利用する「歯のバイオリサイクル医療」を実施しています。これは、患者さんの親知ら ずなど不要の歯を顆粒状に粉砕(象牙質顆粒)し、あごの骨を再生する足場として再利用 するシステムです。

歯の主成分である象牙質には骨を作るたんぱく質が含まれ、特殊な加工を施すことで骨 再生に利用可能です。米国では1967年に動物実験で象牙質から骨を再生することが報告さ れました。その後、共同研究者の北海道医療大学・村田らは、膨大な基礎研究を背景に自 家象牙質移植の臨床研究を世界にさきがけて開始し、現在のシステムを確立しました。

従来、外傷や病気などによってあごの骨に欠損や吸収が生じた場合、主として自家骨移 植(自分の健康な骨を骨欠損部に移植)で対応していました。しかし、健全な部位から移 植骨を採取するため侵襲が大きいことが欠点でした。そこで不要な歯を再利用する象牙質 移植技術が開発され、この技術により従来よりも低侵襲に骨を再生させる治療が可能に なったのです。

どんな装置を使ってどんな治療をしているのですか?

当初は不要となった歯を手作業で砕くこ とからスタートしたのですが、道立総合研 究機構(赤澤敏之博士)などとの共同研究 によって歯の自動粉砕加工装置を完成し、 2010年に商品化しました(図1)。これは 世界初の取り組みです。

図2に象牙質顆粒の加工プロセスと実際 の臨床例を示します。ジルコニアという物

出身高校:北海道札幌南高校 最終学歴:北海道大学大学院歯学研究科

医療

図1 歯の自動粉砕加工装置。

生体材料として認可されているジルコニア製の容器のため 強度と耐酸性に優れている。冷却溶媒として液体窒素を使 わず、生理食塩氷を用いて低温状態を維持して粉砕するの で簡易で安全である。容器に歯を入れて約30〜60秒で適切 な顆粒サイズに粉砕可能である。

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質でできた容器に歯と氷を入れ、この自動粉砕加工装置にかけるとわずか30秒で歯は1〜 2ミリ程度に砕かれます。これを約20分、酸で処理をすれば象牙質の顆粒として回収でき ます。これを移植材(骨を再生する足場)として、骨欠損部に移植します。図2のDは、 インプラント(人工歯根)を埋め込むための歯槽骨(足場)が足りない症例です。親知ら ず1本を抜歯し、象牙質顆粒に加工して骨の土台を作る部分に置いた状態です。この4か 月後にインプラントを埋め込み、噛み合わせの回復に成功したという事例です。

次に何を目指しますか?

象牙質顆粒は骨誘導能を有するバイオマテリアルであり、骨を再生する足場として応用 可能であることがわかってきました。一般的には、抜いた親知らずは廃棄することが多い のですが、今後さらに、抜いた歯を再利用するバイオリサイクル医療の普及が望まれます。 海外では、韓国でこの医療の普及が進み、すでに3万を超えるインプラント症例で象牙質 移植が実施されています。さらに最近ではタイ・フィリピン・中国などアジア各地でこの 医療が広まってきています。北海道発世界の技術として日本のみならず世界での普及・推 進に努めている段階です。

参考書

(1) 村田 赤澤敏之 他,『骨と歯の再生医療-生物学的原理・問題点とその指針-』, 97-106,学際企画(2007

図2 自家象牙質顆粒移植術。

A.B.抜去した歯と氷片をジルコニア容器に入れて、自動粉砕加工装置へ。 C.粉砕(60秒)、2%硝酸処理(20分)、生食洗浄後の脱灰象牙質顆粒 D.頬側歯槽骨が欠損した抜歯窩に即時移植した象牙質顆粒

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