社会Ⅱ
2009年度冬学期火1の社会Ⅱ(山脇)の授業ノートを「公共哲学とは何か」「グローカル公共 哲学」の該当部分で補足したものです。とても聞き取りにくい授業だったため抜けている部 分もありますが、ご了承ください。そして、授業で言ってないことも多分入っていますが、
「グローカル公共哲学」からの引用なので無駄にはならないと思います。重要だと思われる 人物を としました。
☆第1回
・公共性とは?…広く社会一般に利害や正義を有する性質(広辞苑) →「正義」という定義は新しい→辞書の定義は時代によって違う 「public」の多義性
①一般の人々にかかわる ②公開の ③政府や国の the public 公衆≠mass 大衆
公論(世論)≠民意
・タコツボ的学問状況
社会の様々な領域…法、経済、教育、政治等
政治哲学が日本にない、経済に哲学・倫理学が殆どない →学問横断的な概念が必要⇒公共哲学
・公私二元論の限界
経済における商品の公共性、教育における私立学校の公共性
→経済や宗教や家庭を私領域にだけ閉じ込めて論じることはできない
・個人と社会とのかかわり
滅私奉公…個人を犠牲にして公に尽くす (例)戦前の日本、会社人間 →自由権とぶつかる
滅公奉私…自分と身内だけの世界に閉じこもる、他者感覚の喪失 (例)ルールを破って汚職、私利私欲
→人間は一人で生きられないため、法に触れずとも問題
⇒活私開公…個人を活かしつつ公共性を開花→公共哲学に託された新しい思考
・公共哲学とは?…諸々の社会的分野のあり方を、個人の関わり方を考慮しつつ、公共性の 概念から統合的に考える学問
☆第2回
・アリストテレス
古代ギリシアの都市国家(ポリス)を前提としている ポリスの政治の究極目的は「幸福の実現」
→徳に即しての自己実現
*徳…アレテー、卓越した能力。習慣づけ(中庸など)や学習(熟慮知、判断能力)によって得 られる
「人間は自然本性的に政治的動物である」(←ロック、ホッブズは否定) ⇒徳は私的領域ではなくポリスという公共の場で身につく
・アリストテレスによる「正義」の定義 広い意味…人間の特性一般
狭い意味…分配的正義(市民のポリスへの貢献度に応じた名誉や財貨の分配など、所得再分配) 矯正[匡正]的正義(市民間の台頭が不当に侵害されたときの修正)
*友愛(フィリア)…互いに好意を抱き、相手の善を願い、しかもそれが相手に知られてい ること
友愛と正義が補完しあう⇒善き共同体(コイノニア)
=アリストテレス的な意味での「公共性」
・六政体論
*人々の善き生活を保障しうる体制(幸福を実現できる体制) 王政…一人の王が法に従って市民全体の利益(=公共益)を追求
優秀なエリート政[優秀者支配]…少数のエリートが市民全体の利益を追求
国政(共和制)…民主政治が優れた指導者のもとでうまく機能して市民全体の利益が追 求される
*人々の善き生活を保障しえない逸脱体制
僭主政[僭主独裁制]…一人の支配者が私利私欲を追求 寡頭政…少数の富裕者たちが私利私欲を追求
衆愚政[衆愚民主制]…貧者の利益ばかりが追求される
・ロック 私のための公
所有権(固有権)(property)=自由・生命・財産、相互契約を結んで政治社会をつくる →信託によって具体的な統治形態を作る(市民政府論)
⇒個人の不可侵な私的所有権に基礎をおく近代リベラリズムの公共哲学
=公私二元論の原型
リバタリアニズム(自由絶対尊重主義)…自然権としての私有財産権に絶対的価値をおき、 政府の干渉をできるだけ排除
・ルソー
私有財産=人間の不平等の源
一般意志…つねに公共の利益のみをめざす共同体の意志
⇔特殊意志…私的な利益を追求、全体意志…特殊意志の総和 人々は「市民」と「臣民」に分けられる
市民…一般意志に参加して法をつくる主体 臣民…一般意志が作った法にしたがう客体 一般意志は常に存在するのか?
→市民的特性が必要
→市民宗教の必要性⇒一般意志の担い手たる市民に社会的義務を磨かせる *ルソー主義者のロベスピエールは一般意志を悪用して恐怖政治を行った
☆第3回
・スコットランド啓蒙 ヒューム
政治社会の正当性を、人々の相互契約ではなく人々が暗黙のうちに与える「黙約」に求め る
黙約は、利害感情に基づく共感に根ざす アダム・スミス
『道徳感情論』
人間の利己的活動をポジティブに評価:人々が自らの利己心に従って行動することで、 幸福になるばかりか、他人をも触発して社会全体が活性化される
←公平な観察者(身内以外の第三者)の共感が必要
『国富論』…富=生活の必需品と便益品(≠金や銀、財産) 分業→富の増大
各自の利益の追求→予測外の公益
国家は司法、軍備、一部の公共事業にのみ介入すべき
⇒「私的経済/民の公共/政府の公」の相互作用
・フランス啓蒙
経済を数量的・科学的に分析、農業重視の重農主義政策を提唱。政府の力で税制を改革す ることによって富を蓄積し、経済政策を推進。
ケネー
『経済表』血液循環になぞらえて考える コンドルセ
確率計算、上からの公共政策、サン=シモンによってエリート主義的に変色・強化 フランス啓蒙とスコットランド啓蒙は対立
★スコットランド啓蒙とフランス啓蒙の対立
・カント
『啓蒙とは何か』『永遠平和のために』
啓蒙=各自が自分の悟性を用いて自立していく精神の成熟化 理性の公共的利用と私的利用を区別
→公共的利用:各自が公共民である限り制限されてはならない。 (例)言論=世界市民として発言する自由
私的利用:各自が組織の一員として制限されても致し方ない
市民的公共性は、国内法・国際法・世界市民権の3つのレベルで実現されるべき 平和を目指して拡大する連邦国家 ←↑ヘーゲルは全批判
世界市民権=人間がどの国に行っても世界市民として厚遇・歓待される権利 自由な各国の公益は世界平和に貢献
⇒コスモポリタニズム
・フィヒテ
「自己-他者-公共世界」論…自己が他者へ理性的な働きかけをすることによって知や制 度が創出される
『ドイツ国民に告ぐ』
ナショナリズム(国民主義)→ナポレオンの帝国主義・覇権主義に対抗
←諸国に分裂しているドイツの諸民族が一つの国民として結合することが必要
・ヘーゲル 『法の哲学』
人倫=人々の自由な精神によって支えられる制度 (例)抽象的な法と家族・市民社会・立憲国家
市民社会…弱肉強食が支配する欲求の体系としての経済社会とその克服をめざす司 法・福祉団体・立憲国家
←自由の真の実現態としての立憲国家が社会の矛盾を克服 立憲国家…人々の自由の意識によって正当性を得る
複雑な社会システムのなか、公共政策の実施は官僚に委ねる
=「民」がお墨付きを与えた「政府(官)」が国家を動かす(官僚重視) =ヘーゲルの公共哲学のコア
・ローレンツ・フォン・シュタイン 行政学の父、憲政政治
☆第4回
・横井小楠
幕末の思想家、朱子学をバックボーンとする
政治の根拠を「他者」との討論を通してなされる「公論」に求める⇒「有徳」の国
「公共の天理」…一国を超えた万民によって承認され、諸国のエゴイスティックな行動を 規制する公正・公平な原理(vs 割拠見)
→各国との付き合い方を決める
→「大義」を世界にもたらす(日本が働きかけるべき)
・植木枝盛
人民主権・基本的人権の尊重・地方自治の尊重を私擬憲法の形で主張 欧米列強に対してアジア連帯論、国家を超えた政治制度の必要を唱える
・中江兆民
孟子の影響を受ける
ルソーの『社会契約説』を翻訳
各自が「リベラル・モラル(道徳的自由)」を内面に打ち立てる⇒民権が成り立つ 自己の内面に基礎をおいた民の自治をもとに「君民共治」を構想(イギリス型立憲政治) 『三酔人経綸問答』
・福沢諭吉
「日本にはただ政府ありて未だ国民あらず」⇒「独立自尊」「一身独立」をうたう 「お上の公」ではなく「民の公共」によって国をつくる(国民が支える国家)
主権国家の仲間入り、脱亜論
・田中正造
足尾銅山鉱毒事件、天皇に直訴
(天皇こそ天地の公道に基づく「民の幸福実現のための為政者」であると信じていた) 「公共協力相思相愛」→町や村の自治のあり方を根本的に考え直す
(国家に回収されない地方町村の自治=民の公共性)
・吉野作造
大正デモクラシーのリーダー、ヘーゲルの影響を受ける 民本主義…政策決定を民の意向に基づかせる
「民の公共」に基づきながらも、複雑な政策の立案は「政府や官」が行う(民に基づく間接民 主制)
辛亥革命は、民本主義の方向に進むかぎり抗日ナショナリズムであっても支持しうる 朝鮮の統治は、日本への同化政策ではなく朝鮮独自の民族性や文化を尊重すべき
・福田徳三
経済や社会政策の焦点を当てた公共哲学 「生存権確保のための戦いとその制度的承認」
・宮崎滔天
東アジア各国の独立運動や革命運動を支援
・南原繁
カント・フィヒテの影響、愛国主義者
教育基本法の起草に関わる
「ナショナル/インターナショナルな公共世界」論、理想主義的現実主義
“戦後日本のファウリングファーザー”、無教会派のクリスチャン
・丸山真男 リベラル左派
歴史や哲学は最後に学ぶべき
「無責任の体系」(=天皇制)が支配するウルトラ国家主義の台頭を診断 「自律した個人」がいかに「民主主義的な日本国」をつくっていくか 学問のタコツボ化を批判、ササラ型の学問体制の必要性を説く
個人主義→①「原子化」「私化」に向かうもの②「自立化」「民主化」に向かうもの ⇒後者を支持
問題提起したものの思想史に行ってしまった…ナショナリズム、自律化に繋がれば評価
☆第5回
・公(=おおやけ、お上)ではなく“公共”
「公共の精神」「公共の福祉」をどう捉えるか?
・松下圭一
『市民自治の憲法理論』
公共の福祉は人々(市民)が作り出すもの 菅直人の師匠
・マックス・ウェーバー
権力=或る社会関係の内部で、相手の抵抗を排してまで自己の意思を貫徹するすべての 可能性
支配=命令に対し服従が得られる可能性
ヨーロッパ社会の変遷:伝統的支配→カリスマ的支配→合法的支配 権力の正統性を実定法に求める
*説得力のある権力政治論だが、人々のコミュニケーションによって創出される公共世 界が政治の究極的正当性を為すという公共哲学的考えは見られず、不十分
・ハーバーマス
戦後ドイツ社会を背景とし、討議デモクラシーを唱える
「公共性」=どこまでも「人々(市民)のコミュニケーション」で創出されるもの 市民社会=公論が形成される場
公共性の担い手は国家や政府ではなく「各個人から成る一般市民」とする規範理論 『公共性の構造転換』…「市民的公共性」という観点から近代のヨーロッパ社会を描いた政
治社会学的な書
18 世紀~19 世紀初期:ヨーロッパ社会で、絶対王朝体制に抗して市民による市民的
公共圏、しかし 19 世紀以降行政権力と貨幣経済により閉塞
・個人と社会
公共的世界=身内以外の他者と共有し得る世界
アーレント…公共世界=唯一性を持った自己と他者がコミュニケーション的活動を通し て共有ないし創出しあうもの
ハーバーマス…コミュニケーション的理性≠戦略的行為(下心があってはいけない)
・チャールズ・テイラー
自己が生きる文化とは違う文化と対話することにより相互理解を深める⇒多文化の承認 異質な他者との共存
「真正な複数の善き生活」が共生・共存し合う「承認政治学」の遂行を提唱
・ウィル・キムリッカ リベラルな多文化主義者
民族・文化的正義、マイノリティの権利
☆第6回
・公共世界…身内以外の第三者とのコミュニケーションによって支えられ、創られる価値 的世界。何らかの価値を媒介としつつ、身内以外の人々とのコミュニケーションによって 支えられ作られる動的な(ダイナミックな)世界
・参加型民主主義、討議民主主義、熟議民主主義
・多数決原理の危険性(数の暴力) 多数者の専制政治 <例>ヒトラー
・少数者の意見の尊重 合意形成論
デューイ「絆をもった生活様式」
・正義、公正
危ういが必要な概念
古代ギリシアのトラシュマコス「正義とは強者(支配者)の利益である」 <例>ブッシュ
・ロールズ
ベンサム、J.S.ミルらは功利主義を主張、最大多数の最大幸福
20 世紀、公共哲学的側面を欠落させた状態で、公共の福祉や公益の名のもと、「最大多数 の最大幸福」という形式的・量的規範が暗黙のうちに意味されるようになる
↑ロールズはこれを「マイノリティの排除」として批判 1971 年『正義論』
「善く秩序づけられた社会=公共社会」創出のために、無知のヴェールに覆われた人々が たどりつく合意↓
①最大限の自由の保障(自由権)
② a.機会均等 b.格差原理(分配的正義) 自由を犠牲にする社会主義や共産主義に抗する
平等を犠牲にする自由放任主義にも抗する、福祉国家でもない 政治的リベラリズム
・リバタリアニズム(自由絶対尊重主義)
ノージック「最小国家」を主張しロールズを批判 自由>平等
・コミュニタリアニズム
アメリカ的、アリストテレスの復活、横の連帯
ベトナム戦争後コミュニティがガタガタになる⇒コミュニティ重視
コミュニティの共通善、市民的特性、責任といった価値理念を公共政策のベースとして主 張する、権利中心主義を批判
政策論が欠ける
・A.セン(アマルティア・セン)
well-being:福祉・よく存在する・暮らしのあり方
所得や効用ではなく、人間の自己実現(潜在能力とその働き、機能) 潜在能力=capabilities が十分に発揮されている生活状態
ロールズの影響を受けつつも批判し、経済的立場から読み替える。 貧困=ケイパビリティーの剥奪、貧困は人々の自己実現を奪う 経済は目的ではなく、自由拡大の手段
・第三の道
ベバリッジ報告に代わる新しい福祉観
ネガティブな福祉観:窮乏・疾病・ホームレス・失業などの排除 ポジティブな福祉観:自律・健康・教育・よき暮らし・進取の創造
→ネガティブな福祉観ではなく、ポジティブな福祉観に基づく社会政策を提唱 →社会投資国家、効率と公正の両立
社会的排除(不平等)、社会的包摂(平等)
☆第7回
・公共性…公開性・公正性・公益性
・ドイツ
19世紀後半ビスマルク…社会国家(レッセフェール[自由主義]とは違う) ワイマール憲法
・イギリス
労働党ウェッブ夫妻、自由党ロイド=ジョージ
1942 年:ベバリッジ報告、戦後ベバリッジ=ケインズ体制
1980 年代:ネオ・リベラル(サッチャー、レーガン) 貧困層の増大(医療・教育×で下層がガタガタ) 1990 年代後半:第三の道(ブレア)
・public(公共の)…複数の場合が多い official(公式の)…ひとつしかない
・平和
ネガティブな平和:戦争がない状態、生存権のみ
ポジティブな平和:構造的暴力(不平等)の排除⇒人権、正義
*ロールズはリベラルな国々と非リベラルだがまともな階層社会との共存を主張、無法 国家や破綻国家と対比
・地球公共財=財(グローバル・パブリック・グッズ) <例>平和、金融の安定
UNDP(国連開発計画)の定義
:ひとつの国家以上に受益され、すべての国家、すべての人々、すべての世代に便益を 与えるという方向がはっきりしているもの
☆第8回
・リップマン
『世論』…自立した理性的個人が環境をコントロールして判断するようなジェファソン型 民主主義時代の終焉⇒政治家がメディアを通して人々をコントロールするような社 会状況の到来
人間=環境と相互作用する主体
人間は、新聞などの報道が作り出す「擬似環境」に翻弄される ステレオタイプ=紋切り型←新聞などが増殖させている
世論はプラトンの言う「洞窟の囚人」のように、影の部分を現実と思いこんだ 人たちの勝手な意見の集合に過ぎなくなった
→この「ある論」に対しどういう「べき論」「できる論」を打ち出すべきか?
『幻の公衆』…規範に適意識を持った公衆がもはや現実として存在しない
→内部事情に精通したエキスパート集団に政治の担い手を託し、一般 市民はその監視役に回るべき
『公共哲学』…「公共道」を失ったため危機に陥っていたアメリカ自由民主主義体制を克服 するための処方箋、自由民主主義体制の哲学
「言論の自由」…真実追求のための手段であって目的ではない 資本主義を制限すべき、資源の公有
・デューイ
『民主主義と教育』…民主主義:絆のある生活様式(連帯的な協働経験の一様式)
学校は民主主義の訓練の場
教育によって公衆 the public を蘇生させるというビジョン
→人間は環境に左右される受動的存在者ではなく、環境に働きかけて変革できる能動的存 在者
大きな社会 great community によって公衆の力が衰え、民主主義制度が危機に瀕して いる
→大きなコミュニティ great community を創出するべき
友愛(万人が参加し、各自の行為に方向付けを与えてくれる結合関係)・自由(各自が独自 の仕方で貢献し結合関係の果実を享受する個人化された自己となる能力 )・平等(コミュ ニティの各メンバーが結合的な行為の帰結において持つ制約なき分け前)が生まれる場と してのコミュニティを創出
→失われた公衆を蘇生
コミュニケーションを通して考えや行動を共有し、有機的に繋がった公衆が「世論」を 形成することによって大衆社会の危機を乗り越えるべきであり、また、できる
*デューイのビジョンは楽観的過ぎた(=「できる論」のレベルでリップマンに敗北) グローカル公共哲学では、「ある論」のレベルでリップマンの洞察を受け入れ、「べき論」 のレベルではデューイの民主主義公衆論に賛同する
・ベラー
「制度化された専門知」を打破するための「公共哲学としての社会科学」
研究成果を絶えず「公共の批判や討議」にさらし、一般の人々との対話をフィードバック すべき
宗教=公共空間
・サンデル
人権は共通善の一つ
善い社会の構想なしに正義・人権は不可能
・ベーコン
人間が技術の介入によって自然を支配し、人類の福祉の王国をつくるというビジョンを 提示
このビジョンは18世紀半ば以降、経済発展=社会進歩思想をして受け継がれ、産業革命 によって現実のものとなった
☆第9回
★ウェーバー・デュルケームの考え、問題提起(専門家時代の古典)
・社会科学方法論
デュルケーム、ウェーバー:実証研究を行う。 社会科学方法論には何ができて何ができないのか?
・デュルケーム(ユダヤ系フランス人) ドイツの歴史学派に学ぶ。
社会心理学の延長ではない新たな分野として、『社会学的方法の基準』を唱える。 社会学=個人の意のままには構成しえず、個人から独立して個人に強い影響を及ぼす社 会事象を「もの chose」のように調査し研究する専門家学
事実(社会的事実、人々の集合表象)と価値判断(道徳的判断)は切り離せない 「自己―道徳的事実」関係を前提として成り立つ社会学的認識
『社会学的方法の基準』:社会的事実をモのように考察する 社会的事実:「正常な事実」と「異常な事実」がある
⇒両方まとめて「道徳的事実」と呼ぶ
『自殺論』:哲学本ではない。春先に自殺が多いとか、カトリックはプロテスタントより自 殺者が少ないとかを実証・分析
『社会分業論』:「分業の発達がそのまま社会の貧富の差に結びつく」というスペンサーら の考えは一面的である。アノミー(無規制)や自殺の増加をもたらす。
→第 2 版序:ではどうしたらよいのか?(prescription 政策提言・規範論) ⇒中間集団を触媒とする人々の有機的連帯(機械的連帯ではなく、人々が自由
に作る連帯、人々はそこでコミュニケーションし、生きがいを探す)
中間団体が切り開く公共性(アノミー・自殺の増加といった状況を打開するには、アト ム化された人々の連帯心や職業倫理の回復が必要であり、それは国家と個人の間に存在す る一連の「中間団体」を媒介として初めて可能となる)
中間団体を人々にとってモラルを回復し新たな連帯心を生む「非国家的な公共世界」とし、 国家を中間団体などを通して人々に影響を及ぼす「恣意の機関」と捉えている
人々の社会生活の中に倫理を見出す⇔社会倫理学:倫理を通して社会を見る まずデータ分析、問題点を発見→政策提言までするのが社会学
社会のち密な実証研究を気反論や政策論と結びつける社会学
⇒「理想的現実主義」「現実的理想主義」
・マックス・ウェーバー
価値自由的理念型、歴史的でグローバルな展望、(理想なき)現実主義 価値自由性(価値判断からの自由)
:社会科学者が自ら抱いている価値観や世界観から自由になって事象の文化価値を捉 えるような社会認識の方法
社会科学は価値認識に関わるという意味で文化科学。自然科学ではない。
価値認識≠価値判断。価値判断(認識対象の良しあし)は社会科学外部の事柄とし て個人の決断や世界観に属し、社会学者が行うことではない。
社会科学者は価値認識への自由を得る。
理念型:現実そのもののコピーでも現実から離れた理想像でもなく、現実構成のために
「間主観的に妥当する」パラダイムないしモデル。人々が考えるときに誰もが行う考え 方。
資本主義的発展をヘーゲル的な価値判断やべき論に結びつけず、歴史社会学的な事実認 識(ある/あった論)に留めた
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』
:カルヴィズムがピューリタンとしてアメリカへ向かったのが資本主義の源
↑これは理念型(事実として認められているもの)、理念型は誰もが認める事実だが、そ れが善悪・信じるか否かは個人の問題
ヨーロッパの近代化:目的合理性・目的合理行為が浸透し、資本主義を支えている。 近代化⇒技術的諸要因の「計算(予測)可能性」増大⇒世界の「脱魔術化」「意味喪失」
職業としての学問…事実がどうであるか認識
『職業としての政治』…政治の本質を「権力」(ある社会関係の内部で、相手の抵抗を排し てまで自己の意思を貫徹する全ての可能性)と「支配」(命令に対し服従が得られ る可能性)とする(公共性は任意)
政治では心情倫理ではなく責任倫理を用いる→権力の帰結に責任を負わなけれ ばならない
べき論についての学問を実質的に放棄した⇒ある/あった論とべき論の断絶
⇒公共哲学の観点から見るとヴェーバーはデュルケームより後退している(but 脱進化主 義)
☆第10回
・公共哲学は、「ある論」・「べき論」・「できる論」の統合を目指す
ある論=現状分析、べき論=規範倫理、できる論=政策論 (あった論=歴史的考察) 現実主義的理想主義ないし理想的現実主義でリンクさせる
*現実追随主義:現実の無批判追随、シニシズム:理想社会への冷笑ないし諦念、 ユートピア主義:現実社会の誤認ないし軽視、理想の実現可能性についての長楽天主
義
公共的理性のみならず公共的想像力が必要
・現象学的社会学
フッサール、メルロ=ポンティ、アルフレッド=シュッツ ハイデガー「世界内存在としての人間」
・サンデルのロールズ批判
自己論がロールズには欠けている
⇒自己がどういうものか分かっていなければ、政治も考えられない
*自己論:<例>東大生で日本人でアジアの一員で地球市民で…な私はそれぞれ連環し ているのか、ということを考える。
⇒個人と社会の関係を考える上で欠かせない。自己を多次元的に考える。
・グローカル…Locality:地域性・現場性、Global:全地球的な
think globally act locall y…NGO の標語、各自が置かれた現場地域に根ざしながら、全 地球的視野をもって
各自が置かれた現場や地域を尊重する必要があり「世界内存在としての人間」という捉え 方は正しい
グローバルな問題を考える時、その人はどこの立場・どういう場所から考えて悟ってい るか、ということが重要になる=グローカル
国民は市民に含まれ、国籍がなくても市民でありうる(市民が全て国民ではないが、国民 は全て市民)
・citizenship
英語では4つぐらいの意味があるが、日本語にどれを当てるかが哲学での論点になってい る
市民権(リベラリストが主張)、市民性(コミュニタリアンが主張)
☆第11回
・1989年東西冷戦終了というエポックメイキング⇒社会が変わる ⇒不安定なグローバル化の時代、トランスナショナルな公共世界が必要 グローバル化:社会現象(現状分析)
グローバリズム:グローバル化を肯定的に捉えるイデオロギー・思考
・「トランスナショナルな公共世界」は可能か?
様々なグローバル化の例:中国の google 問題、アフガン空爆・タリバン・フセイン・イ ラク戦争、リーマンショック *公共哲学を学んだからには、「中国人とは…だ」と考え てはならない。「中国人のどの部分が…と考えていて、どの部分が~だ」と考えること。
・ハンチントン『文明の衝突』
これからの時代にはイスラム・中国・西欧文明がぶつかり合う、とする
*イスラム圏にもヒンドゥー教徒やキリスト教徒がいるにもかかわらずマイノリティを 無視して画一化してい待っており、誤りであるし危険でもある
⇔ハタミ『文明の対話』
・原理主義:自ら信じる宗教原理や経典を超歴史的に絶対化し、他の宗教を絶対的誤謬と みなして排斥する態度・思想
↑宗教的には何を信じても構わないが、このような敵味方の考え方では公共世界を考え られない
・ソフトパワー
文化的な交流→political culture を支える
・メディア、世論調査と世論操作(全体主義で露骨)
・人間の安全保障
近年国連によって打ち出されたアジェンダ 平和構築
消極的平和と積極的平和の双方を含む
*消極的平和:戦争の不在。正義論とリンクせず、生存権と関わるのみ
積極的平和:正義論と人権論とリンクされる。構造的な憎み合い・暴力(構造的暴 力)がない
↑EUが成功しつつある
・正義とは?福祉とは?
・ダボス:世界経済フォーラム(首相らエリートが集まる) ポルトアレグロ:世界社会フォーラム(反体制的)
・グローバル市民社会とは? 政治機関ではない。
NGO・メディア・ローマクラブなど強いインパクトのある委員会、評議会などが含まれ る。
グローバルな市民社会→→グローバルな公共社会
・個人と社会
・複合的視線
・多文化主義
☆第12回
・この講義のアプローチの仕方 知識を詰め込むタイプではない。
issue-oriented approach:論点提起型学問
答えがなく色々な考え方のある問題に対して、自分が一番説得力がある(≠好き嫌い) と思うものを考える。
<授業のまとめ>
・社会Ⅱ:社会思想。個人と社会、公共哲学(本来ディスカッション形式で行うべき学問)
・公共性→幅のある言葉。
⇒個人と社会の関係をベースに公共性を考える。
・アリストテレス:現代の政治思想・哲学へのインパクト大。 善き社会、正義、人間について考えた。 公共=善き社会のための一つのありかた 人は政治的な生き物⇒その活動で自己実現
人の幸福な暮らしを実現する政治が良い政治(政治体制そのものは何 でもよい)
公のための私か、私のための公か、アリストテレスは微妙なところ… 友愛(フィリア)
・社会契約論
ロック[自由]…個人の自由・生命・財産を守る
財産は労働が生み出すから貴重・神聖なもの 私のために公がある。私が公に優先する。
財産がぶつかり合わないために契約を結び、法をつくり、制度をつく る
⇔ルソー[平等]…一般意志、平等、交易 財産は人間を堕落させる
直接民主制の下、私利私欲でない公益を求める話し合いを開く(地 方政治のモデル)
投票の時だけ自由になる議会制民主主義ではダメ、公務員は直接民主主義で選ば れた人がなるべき
公が私に優先する
・カント
国内だけでなく世界レベルでの永遠平和の実現を目指す。
平和を求めて常に前進する連邦制(世界市民体制←他国でも歓待される) 各国は国際法を守る
冷戦体制崩壊以降にカントの理念は復活→EUが目指している
・スコットランド啓蒙思想
新たな商業のありかたとして公共性が論ぜられる。 アダム・スミス:利己的活動を肯定
公平な観察者(身内以外の第三者)が共感するようなフェアな精神 でインフラをつくる
アダム・スミスにとって、害=インフラ
夜警国家(軍備・司法・一部の公共事業)⇒民間が担う公共性
・ヘーゲル
経済と国家についてアダム・スミスと相違点
市場経済を放任すると、公益=福祉をもたらすどころか弱肉強食の世界が生じる ⇒その克服のためには司法・福祉行政・職業団体など市民社会の他の制度・組織が重要 ⇒貧富の差を是正
強くて公平無私な官僚が国の矛盾を克服する
・日本
伊藤仁斎:儒教の影響を受ける 本居宣長:天皇制と結びつける
横井小楠:天地公共の実利、公共の天理(朱子学の公正な考え方)→開国を主張 公論(議論しながら話を進める形)で国家論を描く
*列強の進出を見て、後には国防重視に変わる 由利公正:公論(五カ条の御誓文「広く会議をおこし…」に影響) 私擬憲法:植木枝盛(先進的)、中江兆民など
議会制誕生、明治憲法採択
福沢諭吉:「我が国には未だ政府ありて国民なし」
一身独立→国民一人一人が独立することによって国が成り立つ
文明進歩史観(明治維新は文明の前進→アジア諸国は遅れている→脱亜 論)
田中正造:官僚と戦う政治家モデル(足尾銅山)
大正デモクラシー:吉野作造(三民主義)、アジアとの緊張関係(植民地支配) 戦後民主主義:丸山真男、南原繁
・キーワードが重要:コミュニケーション、公共世界、福祉、平和、正義、徳性、責任、複数性
…
→それについて色々な考え方がある(もし一つしかなかったら全体主義になってしま う)
但し、押さえておくべき重要な思想がある(授業で紹介) <例>ロールズの正義論、コミュニタリアニズム、
アマルティア・セン(福祉の考え方→capability、自己実現。basic income だけで は不十分。経済開発の本当の目的に自己実現、経済開発は手段であり 目的ではない。貧困は人間の自己実現を阻むからダメ)
・日本国憲法の中に4つの「公共の福祉」
・松下圭一:公共の福祉は人々が作るものであって、お上が与えるのではない。
・社会科学方法論(第9回参照)
・ウェーバーとロールズの考えは水と油の関係
←ウェーバー:正義などは社会学に入らない、ロールズ:正義論
・ある論・べき論・できる論の統合…理想と現実の問題。理想と現実は分離せず密接に関 連。
どちらを見る時ももう一方を忘れずに見据 える考え方が必要。
・グローカル:各自の置かれた現場や地域の状況を考えながらも、地球的視野を持つ。
・社会Ⅱは色々な問題を考えるためのヒントを学ぶ講義! テストについて
①次の中から1つ選んで20行以内で答えよ。(40点)
a・b 公共思想史的問題(第4回までの範囲、教科書2・3章。ただし教科書に書いてい
ないことも多いので注意)
②次の中から2つ選んでそれぞれ15行以内で答えよ。(30点×2) a・b・c・d 論点を施行する問題
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正解がない新しい学問ということで本当に難しい教科だと思います…。 大問3つなので、細かい人名などが出る可能性はかなり低いと思われます。
あえて山を張るなら、リップマン vs.デューイとデュルケーム vs.ウェーバーかな…? あと、公共哲学のキーワードとなる概念をおさえておけばいいと思います。