研究開発人材の確保
研究開発人材の確保
日本の企業は研究開発費を多く支出している
が、その効率性は必ずしも高いとはいえない。 改善の対応策
イノベーションの国際連携を進めることがあ るが、質の高い研究開発ストックを生み出すた めの人材の確保・充実が重要と考えられる。
課題
(
1
)研究開発と雇用
日本において、研究開発人材は不足してい るのだろうか。
①人材が研究開発の実施に際して課題と なっている度合いを確認する。
小規模な企業ほど研究開発人材の確
保が課題
①
商品・サービスの開発に関する課題
を尋ねた内閣府「企業行動に関するアン
ケート調査」を見る。
②中小企業では人材不足があるため、
①のアンケート結果を企業規模別に集計
し、研究開発人材もそうであるのかを見
る。
以上の
2
点について、検討する。
(1) 「市場ニーズの把握」と
「研究開発・企画の人材確保」 が多くなっている。人的資本の 不足が重要な課題であることが 分かる。
(2)
①小規模企業においては
「市場ニーズの把握」との回答 より多くなっており、ニーズを 把握していながら人材不足で商 品が開発できないという企業も 例外ではない可能性がある。 ②大規模企業では、「市場
グラフのまとめ
小規模事業所では中堅研究者を中心
に賃金が下落
人材が不足しており、その確保を図る場合 、賃金を始めとする待遇の改善等により人材 を惹きつけることが基本である。一般に、中 小企業の賃金水準は大企業と比べて低いため 、人材確保については困難が多いが、研究開 発人材も例外ではない。企業規模別研究者の
(1)40 歳代までは年齢とともに上 昇する。この傾向は大企業ほど顕著で あり、賃金カーブが急である。大規模 、中規模の事業所では目立った変化は ない。小規模事業所では、賃金カーブ が中年層を中心に明確な下方シフトを 示している。大規模との差も拡大して おり、中堅研究者の確保にとって不利 な条件である。
(2)
① 大規模事業所では、 2005 年と 201 0 年では年齢ごとの勤続年数のパター ンに大きな違いはない。
②中規模、小規模の事業所では、下 方シフトが観察され、中途での離職者 の増加が示唆される。
研究開発に前向きな企業は雇用も拡
大
研究開発人材の不足は、解決すべき課題で
結果
(1)
①企業の雇用見通しを、国内の 研究開発を「維持」する企業と比べ ると、前者が後者より大きく増加さ
せる見通しとなっている。
②資本金別で分けると、規模の小 さい企業ほど雇用を多く増加させる 見通しとなっている。
③研究開発を「維持」する企業で は、資本金10億円以上では雇用を減
少させる見通しである。
(2) 新商品・サービスの開発強
化に当たり、研究開発人材の確保が 課題となっている企業の雇用見通し を見る。規模の大きい企業では予想 通りの結果だが、規模の小さい企業 はそうではないことが分かる。
(
2
)大学院卒業者の雇用
日本企業は伝統的には新卒採用者を自社で工学系修士の就職率は高水準で
推移
研究開発人材という観点から、工学系修士
注目される点
①工学系修士は、就職率が
8 ~ 9 割と高く、就職率は景 気変動の影響を受ける。 2010 年における工学系修士の就職
率の低下幅が相対的には小さ
く、企業からの根強いニーズ
があることを示唆している。 ②工学系では学部から大学
院への進学率が顕著に高まっ ている。景気低迷による学部
大学院卒業者の初任給は学部卒の
1
割強高い水準で安定
①工業系の卒業者への企業ニーズは高いが 、採用時の処遇に反映されるのか。
②企業の姿勢においても大学院卒の積極的 な採用が確認されるのか。
(1)客観的な指標の一つとして、大学院
(修士)卒と学部卒の初任給のデータを比 べる。
①製造業:この割合は、ほぼ同じであ るが、2010年には、倍率が低下している。 ②非製造業:水準にバラツキがある ③報通信業:倍率が低くなっているが
、2010年においては1割を大きく上回る倍 率は観察されない。
結果
初任給の水準からは、大学院修士卒業 者に一定程度配慮がなされているが、その 度合いは大きく変化していないといえる。 (2)内閣府「企業経営に関する意識調
査」で大学院卒の採用について尋ねている ので、調べてみる。
加工型製造業や素材型製造業では、積 極的な企業がそれぞれ約15%、25%を占める が、非製造業では数%にしかすぎなかった 。
研究開発費割合が高い企業ほど博士
課程卒業者の採用割合を増加
(1) 工学系の博士課程卒業者:
近年では、修士課程から博士課程 に進学する割合が低下しており、 今後の博士課程卒業者数の動向に 注意が必要である。就職率を見る と、リーマンショック後も、高い ため、一過性のものではなく、企 業が専門性を重視した採用方針へ
と転換しつつあることが示唆され ている。
(2) 企業の売上高に占める研究 開発費割合と大学院卒業者に占め る博士課程卒業者の割合との関係
まとめ
検討結果から、日本の企業活動において研 究開発の重要性が低下することは考えにくく 、企業における博士課程卒業者のニーズは、