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特集 │男 女 共 同 参画 社 会 に おけ る 日 本 の 学 術

天文学 におけ る

女性研 究者 の現状 に ついて

池 内 了

PD・OD問 題 と 女 性 研 究 者

1990年 代 に 入 っ て 、 旧7帝 大 を 中 心 に して 大 学 院 重 点 化 が進 め られ た 。 大 学 の 主 体 が大 学 院 とな り、 学 部 定 員 を上 回 る定 員 を大 学 院 で受 け 入 れ る よ う に な っ たの で あ る 。高 度 学歴 社 会 が到 来 して の 当然 の 成り行 きで は あ るが 、 残 念 な が ら大 学 院 を卒 業 した 人 た ち が企 業 に 大 量 に受 け入 れ られ る事 態 には な っ て い な い 。 その 結 果 、PD ( 2∼3年 程 度 の 任 期 付 き ポ ス トに就 い て い る若 手 の ボ スドク) ・OD( オ ー バ ー ドク タ ー 、博 士 浪 人) が 大 量 に生 じて い る。一 般 に は 、PDに 年 齢35歳 以 下 とい う制 限 がつ い て お り、 お そ ら く、 こ こ数 年 の 間 に 、PD・OD問 題 は 過 去 と比 べ る とい っそ う深 刻 な様 相 を呈 す るの で は な い か と危 惧 して い る。

実 を言 えば 、天 文 学 分 野 で は 、 かつ て は博 士 浪 人 は 珍 しい存 在 で は な か った 。 経 済 成 長 とは 無縁 な天 文 学 へ の 国 家 の投 資 が 非 常 に少 な く、 日本 の 天 文 学 コ ミュニ テ ィー は 、長 い 間 小 さい ま まで推 移 して き た 。 そ の た め 、 天 文 学 の 研 究 を志 す 若 手 研 究 者 は 、 大 学 院 を出 て も無 給 の 時 代 を長 く過 ごす こ と を覚 悟

しな けれ ば な らな か っ た ため で あ る。しか しな が ら、 コ ミュニ テ ィーが小 さか っ た間 は、 「物 好 き だ か ら仕 方 が な い」と され 、社 会 的 な問 題 に もな らな か っ た 。

と こ ろ が 、1970年 代 か ら80年 代 にか け て 、 人 工 衛 星 や ロ ケ ッ トな どの宇 宙 開 発技 術 が 進 展 し、大 型

望 遠 鏡 や 電 波望 遠 鏡 な ど の観 測 装 置 も充 実 して 、思 い が け な い新 発 見 が相 次 い だ 。 同時 に 、物 理 学 の 基 礎 的 な法 則 の 宇 宙 に お け る展 開 とい う新 しい 視 点 が 成 功 して 、 天 文 学 は物 理 科 学 の重 要 な柱 へ と成 長 し た 。 日本 に お い て も、1970年 代 か ら、 物 理 学 科 内 で天 文 学 を専 攻 す る講 座 へ 転 換 した り、電 波 望 遠 鏡 の よ うな 新 しい 観 測 装 置 が建 設 され 、 古 い 天 文 学 か らの脱 皮 が 図 られ た。 また 、理 工 系 ブ ー ムで 大 学 院 も大 き く拡 充 され 、天 文 学 を専 攻 す る大 学 院 生 も増 加して きた 。

そ の結 果 、1980年 前 後 にOD問 題 が深 刻 に な っ た 。 この と き は 、1960年 代 後 半 の 理 工 系 ブ ー ム で 大 学 院 が拡 充 され た が 、 その新 規 ポ ス トは若 手 の研 究 者 が 占 め て し ま った た め 人 事 が停 滞 した こ とが原 因 で あ っ た。 した が っ て 、天 文 学 分 野 だ け で な く理 学 関 係 の 諸 分 野 でOD問 題 が発 生 した の で あ る。 一 般 に 、大 学 院 が拡 充 され て もス タ ッフの 定 員 は大 き く増 加しな い か ら、OD問 題 が や や 時 間 が遅 れ て 発 生 す る。 この 頃 は 、 ボ ス ドク制 度 が ま だ整 備 され て い な い た めPDは 少 な く、 もっ ぱ らOD問 題 と して終 始 した。 や が て 、大 学 院 定 員 の 自 己調 節 な どで 、 い

っ た ん はOD問 題 は終 息 した 。

そ して21世 紀 の初 頭 に 、 再 び 深 刻 なPD・OD問 題 が生 ず るの で は な いか と危 惧 され る よ うに な っ て

い る 。大 学 院重 点 化 に よ っ て院 生 の定 数 が 急 増 した こ とが直 接 の 原 因 だ が 、 も う1つ 問 題 を深 刻 に させ

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て い る要 因 が あ る。 科 学 技 術 基 本 計 画 に則 って 各 省 庁 で は さ ま ざ ま な新規 研 究 事 業 を興 し、任 期 付 きで 若 手 研 究 者 を ポ ス ドク と して雇 用 して い る こ とで あ る。 現 在 は まだ 任 期 途 中 で あ るた め 、若 手 研 究 者 の 失 業 問題 と して は顕 在 化 して い な い が 、層 と して大 量 の 定 職 を も た な いPDが 存 在 して い るの で あ る。

かれ らは 、 い ず れ 年 齢 制 限 に よ っ て臨 時職 す ら見 つ け られ な くな る だ ろ う。80年 代 のOD問 題 に比 べ て 、 該 当 す る若 手 研 究 者 数 が圧 倒 的 に多 く、 その 年 齢 も上 昇 して い る か ら、深 刻 度 が い っそ う大 き い の で あ る 。

な か で も、 天 文 学 に お け るPD・OD問 題 は特 に 深 刻 で あ ろ う と危 惧 して い る。 天 文 学 が新 しい 科 学 の 分 野 と して 拡 大 し、 大 学 院 生 の数 も急増 して きた が、 不 要 不 急 の 分 野 で あ る だ け に 、研 究 者 ポ ス トが それ に見 合 って 急 増 す る とは考 え られ ない た めで あ る。 この10年 余 りを な ん とか凌 げ た の は 、天 文 学 の 魅 力 と学 生 の要 求 を背 景 に して 、講 座 の転 換 が 行 わ れ て き た こ とが あ った 。 そ の お か げで 、 全 国 の さま ざ ま な大 学 に天 文 学 の 講 座 が設 置 され て きた が 、 そ れ も限 界 が 見 え始 め て い る。PD・OD問 題 が 、 天 文 学 に襲 い か か っ て く るの は確 実 で あ る。

上 の よ うな 問題 意 識 を もって 、 日本 天 文 学 会 と天 文研 連 で は 、会 員 の 人 口調 査 を行 っ た 。パ ーマ ネ ン トポ ス ト・任 期 付 きポ ス ト・奨 励 研 究 員 ・OD・ 大 学 院 生 な どの 人 数 や 年 齢 分 布 を洗 い 出 す こ と に よ っ て 、PD・OD問 題 の深 刻 度 を測 ろ う と した の で あ る 。

このPD・OD問 題 に 女 性 研 究 者 が直 面 す る 困 難 は 、 男 性 に比 べ て よ りい っ そ う深 刻 に な る こ とが 予 想 され て い る。就 職 難 に な る と男 性 よ り女 性 に矛 盾

が かぶ さって く る こ とや 、 同 じ程 度 の 業 績 や 経 歴 が あ って も、女 性 が新 規 ポ ス トに就 い た り昇 格 す る割 合 が少 な い こ とが 、統 計 調 査 か ら明 らか に され て い る か らだ 。 そ こで 、 天 文 学 会 の 人 口 調 査 に続 い て 、 女 性 天 文 学 研 究 者 へ の ア ンケ ー ト調 査 を行 い 、研 究 を継 続 す る上 で抱 えて い る 困難 を浮 き彫 りに す る こ

とに した 。

この 調 査 は 、天 文 研 連 幹 事 の加 藤 万 里 子 氏 が 中心 に な っ て行 い 、 日本 学 術 会 議 主 催 公 開講 演 会 「男 女 共 同 参 画 社 会 に お け る 日本 の 学 術 」 に お い て 、 「天 文 学 分 野 に お け る女 性 研 究 者 問題 ア ンケ ー ト結 果 に つ い て」 と題 す る文 章 を配 布 した( 加 藤 万 里 子 氏 と 私 の 連 名) 。 ま た 、 加 藤 万 里 子 氏 は 、 雑 誌 『科 学 』 の2000年4月 号 に 、 「女 性 研 究 者 と若 手OD・PDの 深 刻 な状 況 」と題 して 、 ア ン ケ ー ト結 果 の分 析 を発 表 して い る 。本 稿 は、 これ らの 文 章 の要 旨 を筆 者 な

りに ま と め直 した もの で あ る。

迫り 来 るPD・OD問 題

第1図( 34頁) に 天 文 学 研 究 者 の 年 齢 分 布 と女 性 の 占 め る割 合 を示して い る( 前 記 、 加 藤 氏 の論 文 か

ら引 用 した) 。

顕 著 なの は、40歳 以 上 で は研 究 者 数 は1歳 あ た り 15∼20人 で ほ ぼ 一 定 で あ るの に対 し、35歳 以 下 で は年 齢 が若 くな るに つ れ研 究 者 数 が急 増 して い る こ とで あ る。 そ の原 因 の1つ は 、大 学 院 重 点 化 に伴 っ て の博 士 課 程 の 院 生 数 の 増 加 で 、1学 年 で40∼50人 が 就 学 して い る。 また 、 年 齢 が30∼35歳 の 研 究 者 の ポ ス ト構 成 を見 れ ば わ か る よ うに、1学 年 平 均15 人 弱 が常 勤 ポ ストに就 い て い る が 、 それ に ほぼ 匹 敵

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天文学研究者 の人口分 布と女性 の割合

天 文 学 会 で 行っ た 天 文 学 研 究 者 人 口 調 査 に よ る 。 こ の 調 査 は 全 国 の 天 文 学を研究 す る 修 士 課 程1年 上 の 人を対 象 に 行っ た も の で 、 天 文 学 会 員 以 外 の 人 数も含ま れ て い る 。 女 性 の 割 合は全 体 で は9. 4% 博 士 課 程 以 上で は7. 8% 大 学 院 の 学 生を除 く と6. 1% あ る 。 ( 加 藤 万 里 子、 『科 学 』2000年4月 号257ペ ー ジ より)

す る数 のPD・ODが い る 。現 在 の と こ ろ は年 齢 が 35歳 以 下 な の で 問題 は顕 在 化 して い な い が 、常 勤 ポ ストに就 け な い 予 備 群 が 大 量 に 潜 在 して い るの で あ る。

この デ ー タの 回 答 率 と天 文 学研 究 者 の 年 齢 分 布 か ら推 定 す る と、 常 勤 研 究 職 に 就 い て い る研 究 者 は 1歳 あ た り約15人 で あ る。 これ に対 し博 士 課 程 に は 1学 年 で約80人 が 在 学 して お り、PD・ODと して常 勤 ポ ス トを 目指 して い る者 が約160人 とな っ て い る。 単 純 に言 えば 、1つ の ポ ス トが空 け ば16倍 の競 争 率

に な る。 む ろ ん 、 これ は1999年 時 点 で の 調 査 で あ っ て 、常 勤 職 に就 く人 数 に比 べ て博 士 号 を取 得 す る 院 生 の 数 が 圧 倒 的 に 多 い か ら、1年 ご とに事 態 は よ

り深 刻 化 して い く こ と が予 想され る。35歳 を過 ぎ、 博 士 の 学 位 を もっ て い るが 常 勤 職 が な い 、 とい う博 士 浪 人 が今 後 急 増 す るの で あ る 。

このPD・OD問 題 は 、 天 文 学 分 野 に だ け限 っ た 問題 で は ない 。 大 学 院 重 点 化 が背 景 に あ る か ら、全 分 野 で 共 通 して 進 行 して お り、 日本 の 未 来 の 学 術 体 制 と して ゆゆ しき問 題 で あ る。

女 性 研 究 者 の 増 加

子 ど もた ち の 理 科 離 れ が 問 題 視 され て い る が 、理 系 分 野 へ の 女 性 の進 出 は 増 加して い る。 そ もそ も、 理 科 離 れ を心 配 す る ほ ど女 性 の理 系 分 野 へ の 進 出 が 少 なか った た め だ ろ う。

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特 集

│男 女 共同 参 画 社 会 認に お け る 日 本 の 学 術

天 文 学 分 野 へ の女 性 研 究 者 は急 速 に増 えて お り、 修 士 課 程 の 院 生 で は22%、 博 士 課 程 で15%を 占 め る よ うに な り、 若 い 層 ほ ど女 性 の 割 合が 増 加 して い る こ とが わ か る。 と はい え、 長 い 間 男 性 優 位 が続 い て きた か ら、 常 勤 研 究 職 に就 い て い る女 性 の割 合 は 圧 倒 的 に少 ない 。例 え ば、 女 性 の 教 授 と助 教 授 の総 数 は10人 に満 た ず 、 常 勤 の研 究 職 に就 い て い る総 数 も30人に もな らない 。

も と も と、 天 文 学 は コ ミュニ テ ィー が小 さい か ら 絶 対 数 自体 が 少 ない の だが 、 その 比 率 も他 の理 系 分

野 に比 べ て小 さい 。 天 文観 測 は夜 に行 わ れ るの が 通 例 で あ る こ と、 理 論 研 究 の 比 重 が 比 較 的 小 さ い こ と、 そ して社 会 的 な影 響 を最 も受 け に くい分 野 で あ る こ と、 な どが女 性 の 進 出 が遅 れ た理 由 で あ る。

しか し、大 学 院生 にお け る女 性 の 比 率 が急 増 して い る よ うに 、今 後 ます ます 女性 研 究 者 が増 え る こ と が予 想 され 、 女 性 研 究 者 問 題 を き ち ん と位 置 づ け、 制 度 的 な対 策 を と る こ とが 必 要 な時 代 に な っ て きて い る。 そ こで 、天 文 学会 の 人 口 調査 に回 答 を寄 せ て くれ た博 士 課 程 以 上 の女 性68名 と、 その 対 照 群 と して 任 意 抽 出 した 男 性100名 につ い て 、 研 究 者 と し て の ラ イ フ サ イ クル を中心 と した ア ンケ ー ト調 査 を 行 い 、 今 後 天 文 学 会 や天 文 研 連 が取 り組 むべ き 問題 群 を探 る こ と に した。

女 性 研 究 者 が 抱 え る 問 題 ( 任 期 付 き ポ ス ト)

男 女 共 通 して若 手 研 究 者 が抱 えて い る困 難 は 、28 歳 前 後 で 博 士 号 を と り、 そ の後3年 程 度 の 任 期 付 き ポ ス トを渡 り歩 くキ ャ リア形 成 が常 態 化 しつ つ あ る

現 状 にお い て 、 就 職 ・結 婚 ・子 育 とい う人 生 の重 要 な ステ ップ を不 安 な ま まに過 ご さね ば な らな い 、 と い う点 で あ る。 その た め 、研 究 者 と して の道 を途 中 か ら諦 め る、 あ るい は それ を見 通 して初 め か ら敬 遠 す る、 とい う雰 囲 気 が強 くな っ て い な い か と懸 念 さ れ る。せ っか くの 才 能 が活 か され ず 、実 り多 い年 代

を空 疎 な競 争 の み に浪 費して しま う こ と にな りか ね ない か らだ 。

女 性 の場 合 、 特 に 、結 婚 や 出産 とい う長 期 に わ た る人生 設 計 が で きず 、子 ど も を産 む こ と に よっ て の 研 究 上 の マ イ ナ ス を 強 く意 識 して い る こ とが わ か る。 実 際 、 任 期 付 き ポ ストで は、 産 休 を とっ た り、 育 児 休 暇 を と る こ と は非 常 に 困難 で あ り、 また新 た な ポ ス トへ の応 募 も難 し くな る。 どの よ うな ポ ス ト で あっ て も、産 休 や 育 児 休 暇 を保 証 す る シス テ ム を 考 え る必 要 が あ る。

( 結 婚 ・別 居 ・育 児)

かつ て 、女 性 研 究 者 が生 き残 ろ う と思 えば 、結 婚 を しな い か 、結 婚 して も子 ど も をつ く らな い 、の い ず れ か を選 ば ざ る を得 な か っ た。 む ろ ん 、今 で もそ の よ うな女 性 研 究 者 は多 い が 、結 婚 し子 育 て も した い と望 む研 究 者 も増 えて き た 。 その 場 合 、互 い の 仕 事 内容 が理 解 し合 え る こ と、 保 育 所 な どの 育 児 環 境 が そ れ な りに整 って きた こ と( 自力 で私 設 保 育 所 を 開 設 した人 も多 い が) 、 同 じ環 境 の 女 性 研 究 者 が増 えて きた こ と、 な どの理 由 の ため か 研 究 者 同 士 の カ

ップル が多 い 。

その た め 、初 め か ら別 居状 態 で 結 婚 生 活 を開 始 し た り、 学 会 出席 に 困難 が生 じた り して い る。育 児 施

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設 の充 実 ・学 会 開催 時 の保 育 室 の 開設 ・保 育 者 雇 用 の援 助 な どへ の要 求 が強 い 。

( 別 姓)

結 婚 の 際 に どち らか の改 姓 が強 制 され る国 は先 進 国 で は 日本 だ け な の だ が 、姓 を変 え る こ と は研 究 上 に不 都 合 が多 い 。研 究 上 の キ ャ リア は連 続 して い る の に 、英 語 論 文 や 国際 会 議 で は見 か け上 別 人 とみ な され て し ま うか らで あ る。 そ こで 、 結 婚 して 姓 が変 わ っ て も旧 姓 を使 うこ と に な る。 ア ン ケ ー トに よれ ば 、結 婚 の 際 に戸 籍 名 を変 え るの は女 性 が圧 倒 的 に 多 い が 、 旧 姓 を使 い続 け よ う と さ ま ざ ま な工 夫 を し て い る。

しか し、 戸 籍 名 と異 な る姓 を使 う こ と は一般 に は 認 知 され て お らず 、 特 に国 立 大 学 に お い て 多 くの 困 難 に遭 遇 して い る。 内部 書 類 や名 簿 で の戸 籍 名 の 強 制 、論 文 に記 載 した名 前 と請 求 書 の名 前 の齪 齪 に よ る支 払 い の拒 否 、 研 究 費 の応 募 や学 位 な ど研 究 にか か わ る部 分 で の 名 前 の 使 い分 け な ど、 旧姓 で あ って も問 題 が な い に もか か わ らず 、 事 務 局 が戸 籍 名 に こ だ わ る こ とが 多 い 。 実 に 煩 雑 で あ るば か りで な く、 担 当者 個 人 の 意 向 に よ っ て運 用 が変 わ った りす るの で 、 女 性 研 究 者 を消 耗 させ て い る。 戸 籍 提 出 を必 要 と しない 書 類 に つ い て は、個 人 の 望 む姓 が使 え る よ

う研 究 環 境 を整 備 す る必 要 が あ る。

( セ ク シ ュ ア ル ・ハ ラ ス メ ン ト)

ア ンケ ー トに応 じた女 性 研 究 者 の4割 が セ ク シ ュ ア ル ・ハ ラス メ ン トの被 害 に あ っ た、 と回 答 して い る こ と に驚 異 を もっ た 。一 般 に、理 工 系 分 野 で は夜

遅 く まで実 験 す る こ と が多 く、天 文 観 測 は もっ ぱ ら 夜 に行 わ れ るの で 、 セ ク シ ュ アル ・ハ ラス メ ン トの 機 会 が 多 い た め と思 わ れ る 。 問 題 が 深 刻 で あ る点 は 、被 害 を受 け た女 性 に とっ て は一 生 を左 右 しか ね な い 問題 な の に 、加 害 者 とな っ た男 性 に そ の認 識 が 薄 く、周 辺 の男 性 も何 も しな い こ とに よっ て加 害 者 側 に立 っ て し ま うの で 、 い っ そ う被 害 者 が孤 立 して しま う こ とで あ る。 そ れ に よ って研 究 意 欲 を失 っ て しま うの は 、 まず 個 人 に とっ て 、 そ して学 界 に とっ て も大 い な る学 問 的 損 失 で あ る。

セ ク シ ャル ・ハ ラス メ ン トの 防 止 の た め に は 、 ま ず 研 究 室 の単 位 で 、 何 が セ ク シ ュ アル ・ハ ラス メ ン トに な る か を しっ か り と教 育して 、 そ の よ うな行 為 が あ っ た場 合 、即 座 に厳し く処 断 す る こ とが大 切 で あ る。 ま た、 深 刻 な人 権 侵 害 が生 じた ら、名 前 も含 め実 態 の 公 表 を行う必 要 が あ るだ ろ う。 セ ク シ ャ ル ・ハ ラ ス メ ン トが女 性 研 究 者 の キ ャ リア形 成 に と って 大 きな障 害 とな っ て い る現 状 は 、何 と して で も 改 善 しな け れ ば な らな い 。

今 後 に 向 け て

以 上 の よ う に 、 若 手 研 究 者 が 遭 遇 しつ つ あ る PD・OD問 題 と、 その 中 で 天 文 学 分 野 で 増 加 して い る女 性研 究 者 が抱 え る問 題 を探 っ て きた 。 これ ら は天 文 学 分 野 の み に限 った 問 題 で は な い と考 え られ

る。 そ こで 、 女 性 科 学 者 の環 境 改善 の 推 進 特 別 委 員 会 は 、政 府 ・大 学 ・研 究 機 関 に向 けて 「女 性 科 学 者 の 環 境 改 善 の 具 体 的 措 置 につ い て 」 と題 す る 「要 望 」 を出 す こ とに した 。1994年 の第118回 総 会 にお い て 、 日本 学 術 会 議 は 「女 性 科 学者 の 環境 改 善 の 緊

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特集

│男 女 共 同 参 画 社会 に お ける 日本 の学 術

急 性 につ い て の提 言( 声 明) 」 を出 して い る が 、 事 態 の 改 善 は あ ま り進 ん で い な い 。 で あ れ ば 、 今 回

「要 望 」 を出 して も意 味 が な い とい う意 見 も あ る が 、 で あれ ば こそ 、 い っ そ う具 体 的 な措 置 を提 案 す る こ

とに よ っ て環 境 改 善 の 道 をつ けて い く こ とが大 切 で は な い か と考 えて い る。

この 「要 望 」が採 択 され れ ば 、 次 期 以 降 の学 術 会 議 に お い て 、 それ が どの 程 度 まで 実 行 され て い るか を点 検し、 必 要 な場 合 、 よ り強 い 「勧 告 」を出 して

改善 や 実 行 を迫 る よ う行 動 して い くこ とが 必 要 で あ ろ う。 「勧 告 」や「要 望 」を出 す だ け に留 ま らず 、具 体 的 な措 置 が 実 行 され て い るか ど うか に まで責 任 を

もつ 学 術 会 議 で あ るべ きで は な い か と考 えて い る。

池 内 了( い け うち さ とる 1944年生)

日本 学術会 議 第4部 会 員 、天 文 学研 究 連絡 委 員会委 員 長 、女性 科 学 者 の環境 改善 の推 進特 別委 員会 幹事 、名 古屋 大学 大学 院理学 研

究科教 授

専 門: 理 論 天文 学 、宇宙 論

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