地方分権と非効率性
地方財政における非効率性の原因
• 規模の経済と範囲の経済
• 税収の(不)安定性
• 政府間外部性
1. 規模と範囲の経済
• 歳入:中央政府が一括して徴収することが有利
– 税の徴収費用には規模の経済が働く(税収 1 単位当りの徴収費用は税 収が増加するにしたがい低くなる)
– 中央政府が全国的統一的な基準を用いて国税を徴収している場合,そ のシステムを用いて地方税も調達すれば,地方政府が独自に徴税する よりも徴税コストは小さい(範囲の経済: Economies of Scope ).
• 歳出:地方政府に有利性
– 公的支出の大部分は人々の生活に密着した公共サービスの費用である
(特に OECD 諸国).
• 垂直的財政不均衡 : Vertical fiscal imbalance
– 効率性の観点からは税の徴収は国に割り当て,歳出は地方に割り当て る.
– その結果,中央の歳入>中央の歳出;地方の歳入<地方の歳出
– このギャップ(垂直的財政不均衡)を埋めるために中央から地方へ財 政移転が行なわれる.
2 地方税収の安定化
• 変動の少ない安定した歳入は計画的な財政運営にとって必要.
• 地域経済規模が小さくなるほど,課税標準の変動が大きくなり
やすく,歳入を予測することが困難(歳入に対する期待効用が
減少).
•
R U(R), E[U(R)],
E[U(R’)]
RL RH
U(R)
E[U(R)]
R’L R’H
E[U(R’)]
3 地方政府間の外部性
• ある地方政府の政策は他の地方政府の政
策に影響を与えることが多い.
• 例 :
– 公共サービス水準の差異による人の移動(他
の地域の人口構成が変わり,当該地域の公共
サービスの費用や課税標準に影響を与える)
– 税率の差異による課税標準の移動.
– 他の地方が特定の公共サービスを提供するこ
とによる,当該サービスへのただ乗り.
外部性1 . 便益の域外漏出
• 域外漏出(スピルオーバー) : ある地方政府が供
給する公共サービスの便益が他の地方の住民に及
ぶこと.
• 域外漏出が存在する場合は,当該公共サービスが
最適な水準と比べて過小になる(外部経済と同じ
ロジック).
• 過小な供給水準を矯正するために,当該公共サー
ビスを提供する地方政府に定率補助金を与え,公
共サービスの水準を最適な水準に近づけることが
できる(外部経済+ピグー補助と同じロジック).
域外スピルオーバー
• 域外スピルオーバー(外部経済)がある
場合は定率補助で効率性を確保。
0
A A
C C
B
B E
F D
D H
g** g
g* 0 g
A A
C C
g* E D
J H
C’ C’
g** K
外部性2 : 移住外部性
(狭義の財政外部性)
• 公共サービスの地域差や賃金の地域差に
応じ住民が自由に地域間を移動する場合
,一国内の人口配分は非効率的になる.
• 財政移転を行うことによって,人口配分
の非効率性が矯正され,各地域の住民は
以前より高い厚生を享受することができ
る(パレート改善が可能).
人口移動と政府間財政移転
• 移住均衡では人口分布が非効率
E0
地域 A の人口 地域 B の人口
地域 A の居住からの効用
地域 B の居住からの効用 E0
移住均衡における 効用の増加 V
E1
地域 B の人口増加=地域 A の人口減少