14Seika2-1 生化学Ⅱ 第1回小テスト
2014.5.20 問題1.
左の図は「オレイン酸」と 呼ばれる脂肪酸である。この 脂肪酸は炭素18個,二重結
合を9番目と10番目の炭素の間に1カ所持つ。この様な構造上の特徴を持つオレイン酸 を略語表記すると「18:1, Δ9」と書ける。以上の説明を参考にして,下の設問に答えなさい。 i. パルミチン酸(16:0),ステアリン酸(18:0),リノレンリノール酸(18:2, Δ9, Δ12)の 構造をカッコ内の略記を参考に上の図にならって正しく書きなさい。
ii. オレイン酸とリノレンリノール酸の二重結合が持つ,共通のある性質を説明しなさい。 iii. 「1-パルミトイル-2-パルミトイル-3-リノレオイルグリセロール」と「1-ステアロイル, 2-ステアロイル-3-リノレオイルグリセロール」はともに「 ① 」という脂質の 仲間です。空欄①に適当な言葉を答えるとともに,生物における「 ① 」の役 割を説明しなさい。また,上の2つの「 ① 」のうち,融点の低いものを,そ う判断する根拠とともに答えなさい。
iv. 「グリセロリン脂質」と空欄①の脂質の構造上の違いと生物内の役割の違いを簡単に説 明しなさい。
v. 解熱鎮痛薬の「アスピリン」が解熱,鎮痛をはじめとする様々な症状に効果を発揮する 理由を,関連する脂質の名前と,細胞内におけるその脂質の合成法に言及して説明しなさ い。
vi. 「クラスリン」というタンパク質が細胞内でどのような役割を担うか,説明しなさい。 問題2.下の文章の空欄に適当な語句を入れ,文章を完成させなさい。
筋肉に存在する酸素結合タンパク質ミオグ①ロビンは1本のポリペプチド鎖からなるモノ マータンパク質であり,酸素と結合する能力を表す「酸素結合曲線」は双曲②線 型であ る。一方,共通の祖先から進化したと思われる赤血球中のヘモグ③ロビンはポリペプチド 鎖4本が会合した ④ タンパク質である。ヘモグ③ロビンは低い酸素分圧では酸素 に結合できる力が弱く,ある酸素分圧以上になると結合の能力が急激に増加する。このよ うな性質は酸素結合曲線でシグモ⑤イド 型と呼ばれる曲線として反映される。
問題3.
タンパク質からなる酵素は,有機合成などで用いられるパラジウムや白金などの金属触媒 と同様,様々な化学反応を加速させる触媒として働くことができる。しかし,酵素は白金 やパラジウムが持たない,ユニークな特徴を数多く持っている。教科書,および講義で紹 介した酵素のユニークな特徴(長所と呼べるもの4つ,短所と呼べるもの1つ)の中から 3つ選び,答えなさい。
<裏に続く>
O
OH
14Seika2-1 問題4.
i. ある化学反応A+B→Cの反応の自由エネルギー変化ΔG は2.5 kcal/mol である。また, この反応の活性化自由エネルギーΔG‡の値は 10.3 kcal/mol であった。この情報を利用し て,解答用紙に反応A+B→Cの遷移状態図(反応座標図)を作成しなさい。なお,作成 に当たり,反応の遷移状態はX‡で表し,ΔG,ΔG‡に相当する両方向矢印も書き込むこと。 ii. i. の反応に反応を触媒する酵素を入れたとき,ΔG‡は 3.5 kcal/mol に変化した。i. で 答えたグラフの中に酵素を加えた場合の遷移状態図を点線で記入しなさい。また,このと きの反応A+B→Cの反応の自由エネルギー変化ΔG の値を数値で答えなさい。
iii. ii.の問題の酵素を入れた反応において,逆反応(C→A+B)の活性化自由エネルギー ΔG‡の値をと反応の自由エネルギー変化ΔG を計算しなさい。
2014.5.22 訂正 本テストにおいて「リノール酸」を誤って「リノレン酸」と表記してい ました。訂正します。
解答用紙 所属 学籍番号 氏名
14Seika2-1 問題1.合計 35 点
i. パルミチン酸(16:0)各 3 点
ステアリン酸(18:0)
リノレンリノール酸(18:2, Δ9, Δ12)
ii. (3 点)二重結合がほぼ「シス型」で存在する。
iii.①(2 点)
トリアシルグリセロール
役割(2 点) エネルギー貯蔵
融点の低いもの,その判断根拠(3 点)
「1-パルミトイル-2-パルミトイル-3-リノレオイルグリセロール」;パルミトイル基とステ アロイル基では前者の分子量が小さく,分子量が小さいほど脂肪酸の融点が低くなる。 iv.構造の違い分子①はグリセロールの3カ所の水酸基すべてに脂肪酸が結合した疎水性分 子であり,グリセロリン脂質はグリセロールの1,2位の水酸基には脂肪酸が,3位の水 酸基にはリン酸を介して親水性の分子が結合している「両親媒性」の分子である。(3 点) 役割の違い 分子①はエネルギーを効率的に貯蔵する分子,グリセロリン脂質は両親バイ 生を活用して細胞内で生体膜(脂質二重膜)の原料として働く。(3 点)
v. アスピリンは「エイコサノイド類」と呼ばれる炭素 20 個からなる脂質ホルモンの合成 経路において,「アラキドン酸」から前駆分子の「プロスタグランジン H2」を合成する「酵 素の阻害剤」として働く。このため,プロスタグランジン H2 から合成されるすべてのホ ルモンの生産を抑え,これらのホルモンが司る痛み,発熱,炎症の症状を抑える。(5 点)
vi. 細胞内で構造を形成した蛋白質を細胞外などに輸送する場合,細胞膜の一部を「小胞」 に変え,その小胞の中に蛋白質を「パッケージ」して移動させることがある(「(被覆) 小胞輸送」。クラスリンはこの小胞の外を覆う蛋白質である。(5 点;小問 v.と vi.は「」 内の語句が採点の基準)
<裏に続く>
O
OH
O
OH
O
OH
14Seika2-1 問題2.4点 x5=20 点
①ミオグロビン ②双曲線 ③ヘモグロビン
④オリゴマー ⑤シグモイド
問題3.4点 x3=12 点
① 酵素は「1 つの反応に付き 1 つの酵素」;きわめて特異性が高い触媒
② 酵素は反応速度を 106∼1012倍まで促進するきわめて性能の高い触媒
③ 酵素は細胞内で見かける「常温,常圧」などの非常に穏やかな条件で働く触媒
④ 酵素は溶液の条件を調整することでその能力を「オン・オフ」できる触媒
⑤ 項目③の裏返しで,過酷な条件(恒温,極端な pH,高い圧力,有機溶媒中)では酵素 はその形を失い,「失活」してしまう 以上,5項目から 3 つ答える。
問題4.合計 33 点
i., ii. <i は実線,ii は点線で>5 点 x4=20 点
ii. (5 点)
ΔG= 2.5 kcal/mol iii. (4 点 x2)
ΔG‡= 6.0 kcal/mol ΔG= 2.5 kcal/mol 反応座標
自由 エネ ルギ ー
[X]‡
A+B
C ΔG‡
ΔG 5点 5点
5点 5点