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究極の光と物資の相互作用を目指す

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Academic year: 2017

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究極の光と物資の相互作用を目指す

電子科学研究所附属グリーンナノテクノロジー研究センター

准教授

上野

貢生

こ う せ い

専門分野 : 光化学

研究のキーワード : フォトン,ナノテクノロジー,リソグラフィ HP アドレス : http://kueno.com/

光と物質の相互作用とは?

近年、環境・エネルギー問題が顕在化しつつあり、光触媒や太陽電池などの光エネルギー 変換デバイスに関する研究が注目されています。より進化したこれらの環境光デバイスを 開発するためには、その基礎となる光を吸収した分子・物質からの化学反応を取り扱う「光 化学」研究の深化が重要です。しかし、光化学反応の課題の一つに、光子(フォトン)と 一般的な分子との相互作用が小さいことが挙げられます。これは、通常の分子の吸収断面 積が〜1×10-15 cm2程度であるのに対しまして、光には回折限界が存在するために、通常光 化学反応に利用される紫外から可視域の光の波長を考えますと、サブマイクロメートル程 度にしか光を絞り込むことが出来ないことによります。従来、光吸収した分子(励起分子) の数を増やすためには、指向性や収束性に優れているレーザーが用いられてきました。レー ザーは光子密度が高い(光強度が強い)ために光吸収した分子数を増やすことができます。 そのため、レーザーは高感度な計測や難加工性材料への加工などに応用されてきました。 しかし、レーザーを用いたとしても相互作用の確率が変化するわけではありません。

究極の光と物質の相互作用を実現するためには?

究極の光と物質の相互作用を実現するためには、1つの分子に対して必ず1つ、あるい はそれ以上の光子を同時に相互作用させることが可能な反応場を構築することが必要と なってきます。その反応場は、光子を時間的にも、また空間的にも強く閉じ込めることが できる必要があります。そのような観点から、我々は光電場を1 nmの空間まで局在化して、 閉じ込めることが可能な局在表面プラズモン共鳴を示すナノギャプ金属構造体を最先端の ナノテクノロジーを駆使して作製しています。金や銀のナノ微粒子は、光と相互作用する ことにより局在プラズモン共鳴を示し、微粒子表面近傍に光電場増強を誘起します。増強 効果は、入射光電場強度の数10倍~100倍程度ですが、ナノメートル幅のギャップ構造を 有する金属ナノ構造は、∼105倍に及ぶ電場増強をギャップ中に誘起します。

微弱な光源による非線形光化学反応を実現

太陽光や水銀灯などを用いて光化学が研究されていた時代は1つの光子で1つの分子の 光化学反応が進行する光化学第2法則が第一原理でした。一方、非線形現象である2光子 吸収は、1931年にGöppert-Mayerによって理論的予測がなされていましたが、1961年に 前年のレーザーの開発によって初めて検証されることになりました。我々は、金属ナノ構

出身高校:埼玉県立春日部高校 最終学歴:北海道大学大学院理学研究科

光と音/ミクロの世界

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図1 ナノギャップ中における光重合反応の略図 (a)、及び電子顕微鏡写真; 無偏光条 件 (b)、偏光照射条件(矢印)(c)

図2 プラズモンリソグラフィで形成したナノパターン

造が示す特異的な相互作用を利用し、レーザーを用いなくても同時2光子吸収が達成され ることを2008年に初めて明らかにしました。つまり、金属ナノ構造に~W/cm2の光を入射 しますと、光がナノギャップ中においては理論的に~MW/cm2弱の電場強度に増強される ことになり、新しい非線形光化学反応場となります。定常光源による光化学反応の実証に は、光酸発生剤を用いたカチオン性光重合反応を用いました。反応機構は、ナノギャップ において増強された近接場光が、光酸発生剤の2光子吸収を誘起して酸を発生させ、エポ キシ部位の架橋反応が進行します。実験には、1 W/cm2(波長600-900nm)のハロゲン光 を構造基板上に3時間照射しました。図1(b)は、構造に対して上方から無偏光条件、図1 (c)は図中の矢印に沿った偏光条件で光照射し、有機溶媒でモノマー分子と光酸発生剤を除 去した後に電子顕微鏡観察を行った結果です。この図から、ナノギャップ中(偏光条件で は 偏 光 に 沿 っ た ナ ノ

ギャップ中)にのみ、 光重合反応の進行が観 測されました。つまり、 このことはレーザー光 源を用いないで同時2 光子吸収を達成した初 めての例と言えます。

プラズモンリソグラフィで高分解能パターニング

金属ナノ構造が示す光を微小な空間に局在化させることが可能な特性を利用してさまざ まな応用が期待されます。光をナノメートルの空間に集めて増強させることにより、単一 分子のラマン散乱計測(表面増強ラマン散乱)も可能になりますし、次々世代のブルーレ イディスクとして高密度光記録などにも応用が期待されます。実際に、我々は数ナノメー トルのサイズの光記録も高分子表面に形成することが可能であることを明らかにしました。 これにより、1枚のCDサイズのディスクに100TBの光記録が可能になります。また、最 近では、図2に示すようなさまざまな形状

のナノパターンを光照射面積全域に数ナノ メートルの加工分解能(最先端の超高精度 電子ビーム露光装置と同等の分解能)で フォトレジスト基板に露光するプラズモン リソグラフィ技術を開発しました。

今後どのような研究に展開されるのでしょうか?

光を有効利用することが可能であることから、三澤弘明教授と一緒に光触媒反応や太陽 電池の高効率化、あるいは光をメカニカルなエネルギーに効率的に変換して赤外やテラヘ ルツ帯域の光センサーを構築したいと考えています。実際に、これらの光エネルギー変換 に関してプラズモン効果が見え始めていまして、今後の展開が楽しみです。

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