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Academic year: 2017

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市場範囲の画定

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本日の内容

•  伝統的な市場範囲の画定方法 

–  市場画定の重要性  –  SIC基準 

–  交差価格弾力性と市場画定 

•  新しい市場範囲の画定方法 

–  関連市場  –  SSNIPテスト 

–  セロファンの誤謬 

(3)

市場画定の重要性

•  前回までの議論では、すでに市場範囲がわかっ ていることを暗黙の前提としていた 

•  類似の財が多数存在する場合、どの財とどの財 が同じ市場に属し、どの財とどの財が異なる市 場に属することになるのかは必ずしも明らかで はない 

•  市場支配力に関する判断を行うときには、まず 問題となっている市場の範囲を適切に画定した うえで集中度を計算し、競争の態様や参入圧力 の有無を考察することが必要になる 

(4)

日本標準産業分類( SIC )基準

•  伝統的には、日本標準産業分類(SIC)に基づい て市場範囲を決定するという方法がしばしば用 いられてきた 

•  日本標準産業分類とは、供給される財の性質に 基づいて産業を大分類、中分類(2桁産業)、小 分類(3桁産業)、細分類(4桁産業)に分類したも のである 

•  日本標準産業分類とは、あくまで財の性質に基 づいて便宜的に産業を分類したものであり、経 済学的な市場の概念と日本標準産業分類にお ける分類基準は全く異なったものである

(5)

日本標準産業分類( SIC )による産業分類の例

分類 SICコード

大分類 E 製造業

 中分類 09  食料品製造業

  小分類 091   畜産食料品製造業    細分類 0914    乳製品製造業

    バター製造業     チーズ製造業

    アイスクリーム製造業     発酵乳製造業     カゼイン製造業   小分類 098   動植物油脂製造業    細分類 0982    食用油脂加工業     マーガリン製造業     ショートニング製造業     精製ラード製造業     精製ヘット製造業

(6)

日本標準産業分類( SIC )基準

•  経済学的には、密接な代替関係のある財は1つ の市場に属すると考えるのが標準的である 

•  ある財の価格が上昇した時に、多くの消費者が その財の消費から別の財の消費へとシフトする のであれば、その2つの財の間には密接な需要 の代替関係が存在すると考えることができる 

•  ある財の価格が上昇した時に、別の財の生産者 がその財の生産を開始するのであれば、その2 つの財の間には密接な供給の代替関係が存在 すると考えることができる

(7)

日本標準産業分類( SIC )基準

•  例えば、バター、マーガリン、ショートニングはそれぞれ別の産業と して分類されている 

•  しかし、バターとマーガリンの用途は非常に似通っており、

Scheffman and Spiller (1996) などの研究でも、密接な需要の代替 関係が存在するので、同じ市場に属すると考えるべきであると示さ れている 

•  一方、ショートニングはマーガリンから水分と添加物を除いて純度 の高い油脂にしたもので、パンや焼き菓子の製造などにバターの 代わりに利用される生産物である 

•  よって、ショートニングとバターの間に密接な需要の代替関係が存 在する 

•  マーガリンの製造企業はショートニングの製造に容易に参入でき るため、マーガリンとショートニングとの間に密接な供給の代替関 係が存在する

(8)

需要・供給の交差弾力性と市場画定

•  需要の代替関係の大きさや供給の代替関係の 大きさを表す指標が、「需要の交差弾力性」と

「供給の交差弾力性」である 

–  需要の交差弾力性とは、2つの財において、一方の 財の価格が1%上昇したときに、もう一方の財の需要 量が何%変化するのかを示した値である 

–  需要の交差弾力性が正の値であるとき、その2つの 財は代替財であるという 

–  供給の交差弾力性とは、2つの財において、一方の 財の価格が1%上昇したときに、もう一方の財の供給 量が何%変化するのかを示した値である

(9)

関連市場

•  市場の範囲を画定することは、単純に財の特

性に基づいて市場を分類することではなく、

競争的な制約を相互に与え合っている製品

の範囲や地理的な範囲を明確にすることであ

 

•  競争的な制約を相互に与え合っている財や

地域の範囲からなる市場を、通常の市場とい

う言葉と区別して、「関連市場」と呼ぶ

(10)

SSNIP テスト

•  関連市場の画定のための計量経済学的な方法として、ア メリカ連邦司法省が1984年の合併ガイドラインで提案した 方法が「SSNIPテスト」と呼ばれる方法であり、今日ではアメ リカ、EUばかりでなく世界中の競争当局で採用されている 方法である 

•  ある製品範囲・地理的範囲に独占企業が存在していると 仮定し、その独占企業を「仮想的独占企業」と呼ぶ 

•  その仮想的独占企業が現在の価格水準よりも、「小さいけ れども有意であるような、一時的ではない価格の上昇

(Small but Significant and Non‐transitory Increase in Price) (通常は5 10%程度の価格の上昇)を行ったときに、そ の仮想的独占企業が価格上昇によって利益を得られるか どうかを検証することによって、その製品範囲・地理的範 囲が関連市場を構成しているかどうかを判断する

(11)

SSNIP テスト

•  もしある製品範囲・地理的範囲のもとで、仮想的 独占企業が価格上昇によって利益を得られると 言うことであれば、この独占企業はその範囲の 外部から競争的な制約を受けていないと言うこ とであり、その製品範囲・地理的範囲は関連市 場を構成していると言うことになる 

•  SSNIPテストは、非常に狭い製品範囲・地理的範 囲から出発して、市場の境界を探していくテスト である

(12)

SSNIP テスト

•  仮想的独占企業が生産している(最小に定義

された)製品からスタートする  

•  もしも、この(最小に定義された)市場で関連

市場が全て捉えられているのであれば、価格

上昇による代替効果は市場内ですべて吸収

されるはずである  

•  従って、価格上昇によって利益が得られるは

ずである  

(13)

SSNIP テスト

•  仮に(最小に定義された)市場がすべての関連 市場を捉えていないのであれば、価格上昇に よって捉えられていない他の製品への需要の代 替が起こるため、利益を上げることが出来ない 

•  利益を上げることが出来ないという推定結果が 得られたならば、現在は市場の範囲に含めてい ないが、対象となっている製品に最も近い製品 を加えて、新しい市場の範囲とする 

•  そして、新しい市場の範囲で仮想的独占企業が 価格を上昇させた場合の利潤の変化を推定する

(14)

SSNIP テスト

•  このように最小の市場範囲からスタートし、

徐々に製品を加えていき、利潤が増加するよ

うになった市場範囲を一つの市場と画定する

のが SSNIP テストの基本的な考え方である  

•  詳細を知りたければ Epstein and Rubinfeld 

(2003)  のテクニカル・レポートや柳川・川濱

(2006)  等を参照

(15)

セロファンの誤謬

•  前期に学習したように、線形の需要曲線のもとでは、価格 水準が高くなるほど需要の価格弾力性の値は大きくなる 

•  したがって、すでに既存企業が十分に強い市場支配力を 持っており、高価格を実現している状況で需要の価格弾 力性を推定すると、需要の価格弾力性の推定値は大きな ものとなる 

•  1956年のセロファン事件において、アメリカ連邦最高裁は セロファンとその他の柔軟性包装材の需要の交差弾力性 が大きいことを理由として、セロファンとその他の柔軟性包 装材は密接な競争関係にあると認定し、セロファンを含む 全ての柔軟性包装材が関連市場であると認定した

(16)

セロファンの誤謬

•  しかし現在では、セロファン市場はデュポン社の ほぼ独占状態であり、価格が独占価格まで引き 上げられていたため、需要の交差弾力性が実際 の値よりも高く推定されていたと考えられている 

•  この誤りを「セロファンの誤謬」と呼ぶ 

•  需要の価格弾力性や需要の交差弾力性が大き いとき、それが真に財の代替性の大きさを反映 しているのか、既存企業の市場支配力の結果な のかを慎重に検討する必要がある

(17)

参考文献

•  Epstein, R.J., and D.L. Rubinfeld (2003) 

“Technical Report: Effects of Mergers Involving 

DifferenVated Products” 

•  Scheffman, D.T., and P.T. Spiller (1996) 

“Econometric Market DelineaVon”, 

Managerial and Decision Economics, 17, 

pp165‐178 

•  柳川隆・川濱昇 編 (2006) 『競争の戦略と政

策』、有斐閣

参照

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