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『新しい計量経済学』 鹿野研究室 slide21

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Academic year: 2018

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(1)

計量経済学#21

標準誤差と検定の頑健化 (2)

鹿野繁樹

大阪府立大学

2017 年 11 月更新

鹿野繁樹 (大阪府立大学) 計量経済学#21 2017 年 11 月更新 1 / 30

(2)

Outline

1 比例的不均一分散

2 加重最小2 乗法(WLS)

テキスト:鹿野繁樹 [2015]、第 11.3 章・第 11.4 章。

前回の復習

1 OLS の頑健な標準誤差

2 漸近正規性に基づく仮説検定

(3)

Section 1

比例的不均一分散

鹿野繁樹 (大阪府立大学) 計量経済学#21 2017 年 11 月更新 3 / 30

(4)

不均一因子による分散の不均一性

前回から、回帰モデルYi = α + βXi+ ui について、誤差項uiの不 均一分散を許容:

Var(ui|Xi) = E(u2i|Xi) = σi2, i = 1, 2, . . . , n. (1)

... 上式は単に「観測 i によって誤差項の分散が異なってもよ い」と言っているだけ。

場合によっては、事前に分散の構造を特定化できることも。

⇒ この情報を、分析に活かすことができるか?

(5)

uiの条件付き分散が比例的不均一分散

E(u2i|Xi) = σi2 = hiσ2 (2) で与えられ、また不均一因子hihi > 0)がデータとして観測で きる状況を考える。

分散のベースラインはσ

2

で一定。⇒ hiの違いで分散の不均 一性が発生。

hiは、分散の違いを説明する「説明変数」のようなもの! 簡単化のため、hiは非確率的なn 個の定数値であると仮定。

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(6)

例:グループ平均による回帰分析

いかなる状況で比例的な不均一分散が起こる?⇒ 変数のグループ 平均による回帰分析が典型的。

政府の調査データ:刊行物(『○ ○ 年鑑』や『× × 白書』)・サ イト上で、グループ平均に集計・加工され公開。

ここでグループの数をG,グループ内の観測の数を

ng, g = 1, 2, . . . , G (3) と置く。

例:全国10 万人の消費支出を調査し、47 都道府県・年齢 7 階 級に分け、各グループの平均値を公開。⇒ 元々n =10 万あっ た観測は、G = 47 × 7 = 329 個のグループ平均に圧縮。

(7)

Example 1

表1:総務省統計局『平成 21 年全国消費実態調査』を一部抜粋・ 整理。

n = 16480 の家計を、世帯主の年齢や配偶者の就業状況で G = 32 のグループに分け。⇒ その平均がレポート。

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(8)

g ng 消費 可処分所得 子ども数 世帯主年齢 持家 共働き

1 166 26.70 39.03 0.00 26.90 19.20 1.00 2 514 28.33 41.79 0.00 34.10 36.60 1.00 3 366 32.09 47.14 0.00 44.70 70.10 1.00

.. .

32 68 45.03 42.96 3.12 52.30 82.50 0.00

1 : グループデータの例(『平成21年全国消費実態調査』より抜粋)

(9)

一方、集計・平均化される前のデータを個票データ(マイクロ データ)と呼ぶ。

政府実施の調査の個票データは、政府関係者・研究者以外ア クセス不可。

一般公開された集計(平均)値を用いて回帰分析を行うには?

鹿野繁樹 (大阪府立大学) 計量経済学#21 2017 年 11 月更新 9 / 30

(10)

集計前の個票に基づく回帰式を

個票: Yjg = α + βXjg+ ujg, j = 1, 2, . . . , ng, g = 1, 2, . . . , G (4) と置く。(観測j は必ず、g = 1, 2, . . . , G のいずれかに属す。)

各グループ毎に上式両辺の平均をとれば、 1

ng



j

Yjg = α + β 1 ng



j

Xjg+ 1 ng



j

ujg

グループ平均: Y¯g = α + β ¯Xg+ ¯ug, g = 1, 2, . . . , G. (5)

( ¯Xg, ¯Yg) を「サンプル数 G」の標本とみなし、 ¯YgX¯g

OLS 回帰すれば α、β を推定できる。

(11)

問題は、(5) 式の誤差項の分散。

簡単化のため、個票による(4) 式の分散は均一であると仮定。 E(u2jg| ¯Xg) = σ2. (6) ... しかしグループ平均による (5) 式の分散は、グループ内の 観測数ngに反比例。

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(12)

公式 1

gX¯gに回帰すると、その誤差項u¯gの分散は

E(¯u2g| ¯Xg) = 1 ng

σ2. (7)

証明:復習問題とする。

(7) 式は、グループ内サンプル数 ngの逆数を不均一因子とす る、比例的不均一分散の一種。

ngが多いグループほど分散が縮小する点に注目。... ¯Ygは平 均値なので、ngが多いほど精度が上がる(分散が下がる)こ とに由来。

(13)

Section 2

加重最小 2 乗法( WLS

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(14)

ウェイト付き回帰の WLS 推定

一般論に戻る。比例的不均一分散を持つ回帰モデル

Yi = α + βXi+ ui, E(u2i|Xi) = hiσ2 (8)

に関し、その両辺を

√hiで割った

√1 hi

Yi

= ˜Yi

= α1 hi

=Ii

1 hi

Xi

= ˜Xi

+1 hi

ui

= ˜ui

Y˜i = αIi+ β ˜Xi+ ˜ui

(9) をウェイト付き回帰と呼ぶ。

(15)

事前に変数変換でY˜iIi、 ˜Xiを作れば、(9) 式は OLS 推定可能。 注意:定数項がなくなり、α は変数 Ii

√hiの逆数)の係数と

して現れる。

iIiX˜iに回帰してα と β を OLS 推定することを、加重 最小2 乗法WLS)と呼ぶ。

(9) 式の WLS 推定は、元々の回帰モデル (8) 式の OLS 推定と 何が違う?

鹿野繁樹 (大阪府立大学) 計量経済学#21 2017 年 11 月更新 15 / 30

(16)

誤差項u˜iの条件付き期待値をとり、 E(˜ui|Xi) =

 1

√hi

ui|Xi



= 1 hi

E(ui|Xi)

=0

= 0 (10)

より、外生性条件(FA1)は満たされる。

hiは説明変数の一種として観測されるので、(Xi, hi, Yi) は異 なる観測で互いに独立(FA2)。

∴(9) 式に OLS を適用することで得られる WLS は、OLS と同 様不偏性・一致性・漸近正規性を持つ。

(17)

(9) 式の誤差項 ˜uiの条件付き分散は

Var( ˜ui|Xi) = E( ˜ui

2|Xi) = E 1h

i

ui 2|Xi



= 1 hi

E(u2i|Xi)

=hiσ2

= 1 hi

hiσ2 = σ2. (11)

コレは均一分散!

Remark 1

WLS の効能:誤差項に比例的な不均一分散があるならば、不均一 因子を利用したIi =

1

√hi

で変数XiYiをウェイト付けすること で、均一分散へ補正できる。

WLS は、gretl の加重最小 2 乗法(WLS)コマンドで実行で きる。

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(18)

OLS vs. WLS :モンテカルロ実験による検証

(比例的な)不均一分散でも、OLS は回帰係数の一致推定量。

⇒GLS のメリットは?

(9) 式は均一分散。∴WLS は均一分散を前提とした標準誤差・ t 値の計算をそのまま使える。

... ホワイトの頑健な標準誤差で対処できる問題。現在はそれ ほど積極的な理由ではない。

(19)

WLS の最大の利点は有効性(推定精度の改善)にあり!

ガウス・マルコフの定理(前期の講義ノート):誤差項分散の 均一性は、OLS が最小分散となるための条件の一つ。

∴ 誤差項が不均一分散ならば、均一分散に補正することで、 推定効率を改善させる余地がある。

OLS 推定は、モデルの構造を利用し尽くしていない状態。

Remark 2

WLS により、不均一分散を均一分散に補正する意義:有効性(推 定精度)の改善。

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(20)

注意:WSL の有効性は、小標本理論からの類推。

漸近理論(n → ∞)で議論するには、より細かい条件の精査 を要する。

∴ 代わりに、シミュレーションで、WLS の分散が OLS のそれ よりも小さくなるかどうか確認。

コンピュータ上で既知の母集団モデルからデータを発生させ、 そのデータに特定の推定法(例えばOLS と WLS)を適用する ことで性能を検証する実験を、モンテカルロ実験と呼ぶ。

(21)

Remark 3

モンテカルロ実験の手順。

1 まずモデルとパラメータの値を設定。(パラメータの真の値を あらかじめ知っている点が、この実験のポイント。)

2 次のステップをr 回繰り返し、r 個の推定値を記録。

1 コンピュータで、モデルからサンプル数nの擬似データを 発生。

2 その擬似データに特定の推定法を適用し、推定値を記録。

3 r 個の推定値を元に、その推定法の性能を検証。

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(22)

OLS vs. WLS のモンテカルロ実験:n = 50 とし、回帰係数を α = 1、β = 1 と置いた次の回帰モデルを推定。

Yi = 1 + Xi+hii

=ui

. (12)

ここでXiu˜iおよびhiは,次の分布から発生。

Xi ∼ N(0, 1), ui ∼ Uni(0, 412), hi ∼ Uni(0, 1), (13) ただしUni(a, b) は,区間 (a, b) の実数が等確率で出る一様分布。

上のデータ発生プロセスから得た擬似データにOLS と WLS をかけ、推定値を記録。

r = 10, 000 回の反復を行った。

(23)

OLS

ols

f(ols)

−1 0 1 2 3

0.00.51.01.52.0

WLS

wls

f(wls)

−1 0 1 2 3

0.00.51.01.52.0

1 : モンテカルロ実験:OLS vs. WLSn = 50

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(24)

図1のヒストグラム:モンテカルロ実験の結果。

明らかにOLS よりも OLS のほうが安定(標準偏差は OLS が 0.452、WLS が 0.312)。

OLS、WLS の平均値はそれぞれ 1.003、0.999 で、真の値 β = 1.000 とほぼ一致。⇒ 両者が回帰係数の不偏推定量・一致 推定量であることの裏付け。

正規分布でない誤差項uiでも、両者の分布は釣り鐘型。

⇒ n = 50 程度でも、中心極限定理により OLS と WLS がうま く正規近似される。

(25)

Example 2

表2:表 1のデータを用い、家計の消費を所得とその他の属性に 回帰。

推定値はOLS と WLS でさほど変わらないが、後者の t 値が大 きい。

鹿野繁樹 (大阪府立大学) 計量経済学#21 2017 年 11 月更新 25 / 30

(26)

OLS WLS 係数 t 値 係数 t 値 定数項 -9.33 -3.05 -8.39 -4.18 可処分所得(万円) 0.57 4.27 0.50 5.77 子どもの数 2.22 6.48 2.79 7.42 世帯主年齢 0.67 6.17 0.72 7.86 持家ダミー -0.19 -4.40 -0.22 -6.02 共働きダミー -1.02 -0.86 0.17 0.19 修正済み決定係数 0.92 0.95

グループ数G 32 32

2 : グループデータによる消費関数の推定

(27)

不均一分散へのアプローチ:まとめと比較

前回・今回の不均一分散の論点をまとめ。

Remark 4

不均一分散へのアプローチ。

1 ホワイトの頑健な分散推定:不均一分散の状況で、いかに正 しくOLS の標準誤差や t 値を評価するか。

2 WLS:比例的な不均一分散の構造を利用して、推定の精度を 改善。

ポイント:誤差項の分散に関する仮定は、OLS の不偏性・一 致性に何ら関与しない。

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(28)

ホワイトの研究が広まる以前は、WLS が主流。

WLS の欠点:誤差項の分散構造に強い仮定。⇒ 頑健性を欠 く。... 一般に分散の構造は分析者にとって未知。

∴ 現在の実証分析では、「OLS + ホワイトの標準誤差」。 理論上・定義上比例的な不均一分散が発生するケース(例: グループ平均による回帰分析)では、WLS を使って推定効率 を改善させるほうがよい。

WLS とホワイトの手法を、併用することも可能。⇒ テキスト p199 参照。

(29)

今回の復習問題

次の設問に答えよ。各自用意した紙に解答し、退出時に提出せよ。 講義名、日付、学籍番号、氏名を明記すること。

1 テキスト第11 章復習問 11.3。

2 本来は均一分散である回帰モデルに、ウェイト1/

√hiを使っ

てWLS を適用すると、いかなる問題が生じるか?(テキスト 第11 章復習問 11.3 の類題。)

鹿野繁樹 (大阪府立大学) 計量経済学#21 2017 年 11 月更新 29 / 30

(30)

References

鹿野繁樹. 新しい計量経済学. 日本評論社, 2015.

図 1のヒストグラム:モンテカルロ実験の結果。

参照

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