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金融論(2013年度) Keida's Website slide fe unit04

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金融論

unit 4 金融取引と情報生産

(2)

資金貸借と情報の非対称性

前のunitまでにおいて、資金貸借にはリスクが伴うことがわ かった。

これまでの例では、貸し手と借り手が同じ情報を持ってい る、すなわち、ある状態の起こる確率が同じであると信じて いるという前提を仮定していた。

しかし、このような前提は現実的とはいえない。

すなわち、貸し手と借り手が、ある状態の起こる確率を異な る確率で評価していることは、通常あり得ることである。 さらに、貸し手と借り手の片方が、ある状態の起こる確率を、

(3)

資金貸借と情報の非対称性

そのような場合、容易に想像できる通り、より正確な情報を 持っている主体が、その情報を利用して利益を得ることがで きる可能性を潜在的に持っている。

このように、資金貸借取引において、情報が重要な役割を果 たす。

一般に、貸し手と借り手の間に、情報の格差がある場合、

「情報の非対称性」が存在すると呼ぶ。

資金貸借において情報の非対称性が、どのような役割を果た すかを学ぶことが、unit 4, 5, 6の目的である。

(4)

資金貸借と情報の非対称性

unit 4 では、情報の非対称性が存在する場合の問題点を包括

的に扱っている。

unit 5 では、情報の非対称性の結果として発生する「逆選

択」の問題を扱う。

unit 6 では、情報の非対称性の結果として発生する「モラ

ル・ハザード」の問題を扱う。

教科書の36ページと37ページの「この章の位置づけ」が、

unit 4, 5, 6 の関係について説明しているので、よく理解する

こと。

(5)

情報の生産費用

金融取引のはじまりは、よく知っている人から資金を借り、 小さな事業をはじめることであったと考えられる。

しかし、事業の規模が大きくなり、多額の資金が必要になる と、より広範囲の人々から資金を借りる必要が出てくる。 この場合に、貸し手が借り手のことを抑止らないという、借 り手と貸し手の間の情報の非対称性が、難問として立ちはだ かる。

つまり、多数の人から資金を借りるには、自分の知合い以外 からも借りる必要が出てくるのである。

(6)

情報の生産費用

このような場合に、貸し手と借り手の間の情報の非対称性を 緩和するには、2つの方法がある。

借り手の側が貸し手に向かって情報発信を行う。 貸し手が借り手の情報生産を行う。

(7)

情報の生産費用

4-1に、情報が非対称である場合を図示している。 情報の非対称性を緩和するためには、借り手の保有している 情報を貸し手の知るところとなる必要がある。

このことを、情報の移転という形で、図では太い矢印で示し てある。

その方法として、借り手が貸し手に働きかける情報発信と、 貸し手が借り手に働きかける情報生産があることが示されて いる。

(8)

情報の生産費用

(9)

借り手の情報発信

最初に、借り手が貸し手に対して情報を発信する場合につい て考える。

このケースでは、その情報の信頼性が問題になる。

借り手と貸し手の間に存在する情報の非対称性は、貸し手が 借り手についてよく知らないことから発生しているのである から、よく知らない人みずからが発信している情報をそのま ま信じることはできない。

(10)

借り手の情報発信

このような場合、一度発信した情報に信頼性がないと判明す ると、その後に発信する情報は信頼性がないと判断される。 このことが、情報発信者に嘘(誤った情報)を発信すること を防止している。

評判(レピュテーション)の問題。 町の八百屋さん

ルイ・ヴィトン

(11)

事前審査

次に、貸し手による情報生産について考える。

貸し手による情報生産とは、具体的には、借り手が貸した資 金を返却できる可能性について調べることである。

このような貸借取引を行う前の、貸し手の情報生産を、一般 に事前審査と呼んでいる。

(12)

事前審査

事前審査は、借り手が企業である場合には、財務の書類を精 査し、企業の財務状況を把握する必要がある。

借り手が個人である場合には、その個人の保有している資産 状況や他の負債の状況や、さらには、その個人の性格まで調 べる必要がある。

借り手が資金を借りて事業を行おうとしている場合には、そ の事業の将来性を細かく調べる必要がある。

(13)

事前審査

このような事前審査は、会計や財務の知識が必要になり、一 般に専門家の方が効率的に行える。

さらに、多額の資金が必要となって多数の人々から資金を集 める場合、ここの貸し手が独立に事前審査を行うことは、事 前審査の費用を考えると無駄なことをしていることになる。 つまり、事前審査を行う機関にここの貸し手が資金を預け、 専門の機関が貸し手の事前審査を一度行って、貸すか貸さな いかの判断や貸す場合の条件を決めた方が、効率的な金融取 引が可能になる。

(14)

事前審査

このような専門の機関は、借り手と貸し手の間に入って金融 を仲介する役割を果たすことから、金融仲介機関(financial intermediary)と呼ばれる。

例えば、銀行

(15)

銀行のスクリーニング

借り手が直接貸し手から資金を集める金融の方法を直接金融、 貸し手が直接借り手に貸し出すのではなく、金融仲介機関を 経由して金融が行われる方法を間接金融と呼ぶ(図4-2)。

(16)

銀行のスクリーニング

(17)

銀行のスクリーニング

間接金融の場合には、典型的な金融仲介機関は銀行 (bank) である。

銀行の機能のひとつとして、「事前の情報生産機能」がある 事前の情報生産機能とは、情報の非対称性を緩和するため に、借り手を審査して情報を生産する機能である。

これによって、リスクが大きく、本来資金を貸し付けるべき ではない借り手を排除して、資源配分を効率化することがで きる。

この機能を、スクリーニング機能と呼ぶ。

(18)

銀行のスクリーニング

また、前述したように小口の資金を集めて大口で貸すことに よって、情報生産の重複を避けることができ、情報生産費用 を節約することによって資源配分を効率化している。 また、情報生産の専門機関として、そのノウハウを蓄積する ことも可能になる。

このように、銀行を情報生産に特化した機関として考えるこ とができる。

(19)

市場取引と相対取引

金融取引には市場取引と相対取引がある。

市場取引とは、不特定多数の貸し手から資金を利用する場合 に、利用する。

相対取引とは、一対一で行う取引である。

(20)

市場とは

トラック・レコードが確立されている借り手は、不特定多数 の貸し手から資金を集めることができる。

このような潜在的な貸し手の集まりを市場 (market) と呼ぶ。 みずから発信する情報が信頼される経済主体は、市場から資 金を調達できる。

このような形の市場に対する情報の発信は、情報開示 (disclosure) と呼ばれている。

(21)

市場とは

市場からの資金調達は、実態としては不特定多数の貸し手か ら資金を集めていることになる。

このような形の金融取引を、市場取引と呼ぶ。

これに対して、一対一で行う金融取引を相対取引と呼ぶ。 図4-3にこの関係を示している。

(22)

市場とは

(23)

市場とは

情報の非対称性の観点から見ると、市場取引においては、借 り手からの情報発信に重きが置かれ、相対取引においては、 貸し手の情報生産に重きが置かれると考えられる。

しかし、実際はもう少し複雑であり、このことについて説明 する。

(24)

市場における情報生産

市場取引においては、借り手からの情報発信に重きが置かれ るとしたが、その借り手からの情報発信、つまり情報開示を 基礎としつつも、その発信された情報の解釈に専門性が必要 になる場合がある。

たとえば、大企業の信用力を調べる場合でも、多数の子会社 や関連会社があったりすると、それらの各会社の財務データ を評価するだけでも一仕事になってしまう。

つまり発信する情報に信頼性があっても、その評価が面倒な 場合がある。

このようなときには、発信された情報を解釈して、その解釈 を分かりやすく発信しなおす専門業者の必要性が増す。

(25)

市場の情報集約機能

市場においては、不特定多数の投資家が資金を提供する。 個々の投資家は、市場で成立している利子率などの契約条件 を見て、投資を行うかどうかを判断する。

つまり、市場で成立している条件が有利であれば、投資を行 うであろうし、反対にその価値がないと判断すれば、投資を 行わない。

それ以外にも、個々の投資家が独自に公開情報以外の情報を 保有している場合がある。

投資家は、公開情報と独自に保有する私的な情報を勘案し て、投資の価値があると判断すれば、投資を行う。

(26)

市場の情報集約機能

投資を行う投資家の数が多くなっていくと、現在の契約条件 のもとで資金供給が増加するので、利子率が引き下げられる。 逆に、資金供給が減少すると、利子率が引き上げられる。

unit 2 で利子率の決定の仕方として、一般均衡的な説明をし

たが、この決定方式は、こういった市場取引において、典型 的に観察されるものである。

(27)

市場の情報集約機能

市場においては、資金の需要曲線と資金の供給曲線の交点で 利子率が決まる。

資金の供給曲線は個々の投資家の供給曲線を積み上げたもの である。

個々の投資家の資金供給は、公開情報と個々の投資家の私的 情報が反映されているので、結果として、市場において決ま る利子率には、個々の投資家の私的情報も集約される。 このことを、市場の情報集約機能と呼ぶ。

(28)

相対取引と情報秘匿機能

典型的な相対取引は、銀行が企業に貸付を行う取引である。 この場合には、銀行が企業を審査して、情報を生産すること になる。

相対取引における銀行は、企業に積極的な情報開示を求 める。

市場における格付機関が、原則として企業の公開情報をもと にして、企業の格付を行っていることと、対照的である。

市場において情報を開示すると、その情報は市場全体が知る ところとなる。

このような市場全体が共有している情報を公開情報 (public information)

(29)

相対取引と情報秘匿機能

つまり、当事者間の私的情報 (private information)にとどめ ることによって、競争相手に新製品の情報など戦略的に重要 な情報を漏らすことなく、貸し手のみに、みずから情報を開 示することができる。

このような相対取引の情報秘匿機能も、相対取引の特徴で ある。

(30)

事前情報の非対称性

これまで扱ってきた情報の非対称性は、借り手の信用リスク に関するものであった。

この借り手の信用リスクは、借り手の特性に関するリスクで ある。

たとえば、借り手の行う事業の質に関する情報を、借り手の 方がよく知っていることから生じる情報の非対称性などが ある。

この種類の情報の非対称性を、事前情報の非対称性と呼ぶ。 この事前情報の非対称性がある場合は、情報発信(情報開

(31)

事後情報の非対称性

事後情報の非対称性とは、取引を締結した後で、借り手がま じめに努力するかどうかに関する情報の非対称性である。 事業がうまくいくかどうかに関しては、その事業自体の収益 性はもちろん重要であるが、その事業に従事する人がどれだ け真剣に努力するかも重要な要件である。

しかし、借り手がどれだけ努力しているかは、借り手の私的 情報で貸し手が具体的な形で知ることは困難である。 このような契約締結後の情報の非対称性を、事後情報の非対 称性と呼ぶ。

(32)

モラル・ハザード

事後情報の非対称性が発生しているときは、借り手は自分の 収益を大きくするために貸し手が不利になる行動をとること が考えられる。

このような借り手の行動をモラル・ハザード (moral hazard) と呼ぶ。

(33)

モラル・ハザード

たとえば、資金を借りて事業をはじめた企業家を考える。 借り手である企業家が努力することで、事業が成功する確率 が高くなり、その結果、事業資金の貸し手は収益を得る。 企業家が努力を怠り、さぼることで企業家の満足度が上がる ことも考えられる。

投資資金として借りたお金で、非常識なまでに高級な社長の 椅子を購入する、など。

資金の貸し手である投資家が企業家の努力度を観察できない という情報の非対称性が発生している場合には、モラル・ハ ザードを起こし、努力を怠る可能性がある。

(34)

モラル・ハザード

このことによる非効率性を防止するには、事後的に借り手を 監視する必要がある。

この監視を総称してモニタリング (monitoring)と呼んで いる。

(35)

金融システムとモニタリング

事後情報の非対称性にともなう問題を、モニタリングなどに よって緩和する仕組みが、金融システムには必要になる。 事前情報の非対称性と同様に、銀行を通じた相対取引では、 銀行が借り手をモニタリングすることが可能になる。 そのために必要なモニタリング技術も、銀行に蓄積すること になる。

(36)

金融システムとモニタリング

市場取引においては、事後的なモニタリングを特定の貸し手 が行うことは難しく、貸し手全体が市場を通じて行うことに なる。

市場が行う規律づけという意味で、市場規律 (market discipline) と呼ばれる。

企業家が投資家に不利な行動をとった場合には、企業が発行 している債券の流通価格に影響を与える。

そのことが、次回に債券を発行しようとしたときの利子率を 押し上げる結果となる。

参照

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