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ビーチロックに学ぶ地盤の固化・自己修復技術

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Academic year: 2017

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ビーチロックに学ぶ地盤の固化・自己修復技術

大学院工学研究院・大学院工学院 准教授

かわ

さ き

さとる

(工学部環境社会工学科資源循環システムコース)

専門分野 : 環境地盤工学

研究のキーワード : ビーチロック,地盤,液状化,微生物,バイオグラウト HP アドレス : http://wwwgeo-er.eng.hokudai.ac.jp/

何を目指しているのですか?

皆さんは、ビーチロックという言葉を聞いて何を思い 浮かべますか?海浜で開催される音楽のロックフェス ティバルでしょうか?実は、海浜の砂礫が石灰質の物質 で自然に固化した岩のことです(図1)。自然のメカニズ ムは非常によくできているため、ビーチロックが固化す るメカニズムを学び、それを工学に応用する研究は非常 に重要であると考えています。砂礫が堆積岩になるまで には数十万年以上の長い年月が必要ですが、ビーチロッ

クは数十年で岩になった例があり、ビーチロックを加速固化させる技術を新たに開発する ことができれば、海岸侵食の防止、海岸コンクリート構造物の劣化抑制・長寿命化、地盤・ 岩盤・コンクリート構造物などの強度向上や亀裂の自己修復などの技術への応用が期待さ れます。これら以外として、私たちは地震時における地盤の液状化を防ぐ技術への適用を 目指した研究を進めています。

ビーチロックが固化する主な要因は、海水の蒸発による析出塩と考えられていますが、 それだけでは数十年で岩になった例を説明することはできません。私たちは、海浜の砂礫 が岩になることを微生物が促進している可能性があると考えています。自然の地盤や岩盤 には非常に多くの微生物が存在し、通常土壌1gには大きさが1µm 前後の細菌や糸状菌 などが100万~10億個存在していますが、私たちはその存在を意識することなく毎日を過 ごしています。土壌微生物は鉄や銅などの金属資源と同様に、使い方次第では私たちの生 活や暮らしを豊かにする地下資源となる可能性がありますが、これまで地盤や岩盤を対象 とする工学の分野では利用されていませんでした。

以下では、海水の蒸発を利用するのではなく、土壌微 生物により地盤を固化させる新しいグラウト(固化材) であるバイオグラウトについて紹介します(図2)。微 生物に必要な栄養源などを適量加えて調製したグラウト を地盤や岩盤に注入すると、それらに存在している土壌 微生物の代謝活動によりグラウトが固化し、地盤の間隙 や岩盤の亀裂を埋めることで止水性や強度が増加します。 最終的に固化したグラウトは、その種類により中性~弱

出身高校:島根県立益田高等高校 最終学歴:鳥取大学大学院工学研究科

災害・防災/いきもの/環境系

図1 沖縄県国頭郡のビーチロック

図2 バイオグラウトの適用例(左は固化 前、右は固化後)

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アルカリ性の炭酸カルシウム、シリカ、リン酸カルシウ ムとなりますが、炭酸カルシウムとシリカは自然の堆積 岩の主なセメント物質であり、リン酸カルシウムは生物 の歯や骨の主成分ですので、これらはすべて環境に優し い固化材料です。これまでに、北海道、岡山県、沖縄県 から採取した土壌および土壌微生物(図3)に対してバ イオグラウトを適用し、その有効性について実験室で確 認しました。近い将来、現場への適用を目指しています。

どんな装置を使ってどんな実験をしているのですか?

微生物を使って地盤を固化する実験を大まかに言えば、

「生物学」→「化学」→「物理学」の順番に進めていま す。最初の「生物学」の実験では、地盤固化に適した微 生物を分離して数を調べたり、微生物を培養したり、微 生物の遺伝子を調べたりする必要がありますが、大部分 の基本的な作業は実験室内にあるクリーンベンチの中で 行います(図4)。次の「化学」の実験では、微生物を用 いて試験管あるいはモールドと呼ばれる小型容器の中で セメント物質を生成させることで地盤材料を固化させ、 供試体を作製します。最後の「物理学」の実験では、固 化した地盤材料の供試体を用いて、三軸圧縮試験装置に よる強度・変形特性、マイクロフォーカスXCT装置 による密度・間隙構造特性(図5)、走査型電子顕微鏡に よる微視的構造特性(図6)、エネルギー分散型蛍光X 線分析装置による元素分布特性、X線回折装置によるセ メント物質の鉱物特性などについて調べています。

次に何を目指しますか?

バイオグラウトは、大理石などの建築石材やコンク リートなどの表面コーティング、重金属などで汚染され た土壌の不溶化、石灰岩で造られた石造文化財の修復保 存、農業用貯水池・用水路の修復・保全、ため池底泥の 固化処理と処理後の農地利用などへの適用が期待されて います。今後は資源の有効利用の観点から、例えば土壌 微生物の栄養源として生ゴミなどの食品廃棄物を、また

カルシウム源としてホタテやカキなどの貝殻を利用したいと思っています。さらに将来的 には、微生物を使って地盤や岩盤を逆に軟らかくすることでトンネルを掘るための研究に 着手したいと思っていますので、興味がある学生さんは是非一緒に研究をやりましょう!

図3 細菌のコロニー観察像(沖縄県)

図4 クリーンベンチを使用している学生

図5 バイオグラウト固化砂の CT 画像

図6 ウィスカー状の結晶が見られるバ イオグラウト固化砂の電子顕微鏡画像

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参照

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