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社会的意思決定の仕組みを探る

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Academic year: 2017

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社会的意思決定の仕組みを探る

大学院文学研究科 教授

亀田

達也

(文学部人文科学科)

専門分野 : 社会心理学,意思決定

研究のキーワード : 心理学,集団,適応,進化,社会的意思決定 HP アドレス : http://lynx.let.hokudai.ac.jp/~kameda/

何を目指しているのですか?

人間は、アリやハチなどの社会性昆虫と並んで、集団を作ることで大きな成功を収めて きた生物種です。もちろん、社会性昆虫と違って、人間の集団は必ずしも血縁関係にある 相手だけから成り立っているわけではありません。血縁関係にない相手との間に大規模な 協力的関係を築くことのできる社会的能力が人間の進化的な成功をもたらしたと考えら れています。こうした協力関係を支える心理的・社会的なメカニズムを明らかにすること は、現在、心理学、認知科学、社会脳科学、人類学などのいくつかの領域を通底する重要 なテーマとなっています。

私はこうしたテーマの中でも、とくに集団の意思決定に焦点を当ててきました。社会生 活では、話し合いやミーティングなどを通じて、互いの合意を作ることが頻繁に求められ ます。興味深いことに、近年の生物学の研究によれば、集団の意思決定とは、ヒトの専売 特許ではありません。例えば我々ヒトが言語という媒体を使う場面で、ハチは「8の字ダ ンス」でメンバーに情報を伝え、適応的な意思決定に成功していることがわかっています。 不確実な情報しかない中でヒト、そして他の生物はどのような方法、プロセスを経て集団 の合意を導いていくのか。他の生物種と人間が社会的意思決定で共有しているメカニズム、 ヒトにユニークなメカニズムとは何か。その仕組みの解明に取り組んでいます。

写真1 ハチの“集団意思決定”: 巣別れの時期にハチは、「8の字ダンス」に よる誘導と各自が独立評価する二段構えで 新しいコロニーを決定している

出身高校:開成高校(東京都)

最終学歴:米国イリノイ大学大学院心理学研究科

こころ

図1 人間の集団意思決定に関するコンピュータ・シミュレーション

文学

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(2)

どんな装置を使ってどんな実験をしているのですか?

心理学では、人間を対象とした実験によっ て研究を進めることがよく行われます。私た ちの研究室にも、集団実験室、ネットワーク 実験室、感覚システム実験室という3つの施 設が備わっています。集団実験室では、互い の 顔 の 見 え る 状 況 で 、 実 験 参 加 者 が コ ン ピュータを通じて相互作用をすることができ ます。上で述べた集団の意思決定の実験は、 この実験室でよく行われます。ネットワーク 実験室では、個別の部屋(ブース)に実験参 加者が配置され、直接対面をしない形で、LANを 通じて相互作用を行うことができます。感覚シス テム実験室では、実験参加者が課題を遂行してい る間の視線の動きをアイトラッカーと呼ばれる装 置を通じて計測したり、末梢における生理的な反 応や、顔筋の動きなどを調べたりします。

次に何を目指しますか?

現代の社会で、合意が必要となる大きな論点の1つに格差をめぐる問題があります。 ニューヨークで起こり世界に拡散した「格差是正デモ」に代表されるように、富の分配を めぐる議論は、人々の大きな関心を集めています。こうした関心の背景にあると思われる、 人々の「分配の正義」についての素朴な感覚や、他者に共感するメカニズムについて、脳 科学者や法哲学者と協力して研究を始めています。実証的な研究を通じて、富の分配をめ ぐる社会的意思決定の仕組みづくりに貢献できたらと願っています。

参考書

(1) 亀田達也・村田光二(共著),『複雑さに挑む社会心理学―適応エージェントしての人 間』(第2版),有斐閣(2010

写真2 集団実験室

写真3 ネットワーク実験室

写真4 表情模倣実験における顔筋の動きの計測

(感覚システム実験室)

文学

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参照

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