201704_201712_2 サムライ知恵袋 ― こうべ企業の窓口
民事信託を活用した事業承継
皆様は、「⺠事信託」という言葉をご存知でしょうか?
「⺠事信託」を使った信託契約をオーダーメイドで設計することにより、個人や中小企 業等でも相続や事業承継といった場⾯に大いに活⽤ができることになります。
今回は、『⺠事信託とは一体どういうものなのか?』『具体的にどのような場⾯で活⽤で きるのか?』『⺠事信託のメリット・デメリット』等の⺠事信託の基本について学びなが ら、⺠事信託のスキームを理解することで、経営⼒の向上に繋がる一つのヒントとなりま すよう、ご紹介させていただきます。
■信託とは・・・
まず一般的に信託とは、(1)特定の者(受託者)が、(2)財産を有する者(委託者)から 移転された財産(信託財産)につき、(3)信託契約、遺言または公正証書等による⾃⼰信 託により(信託⾏為)、(4)一定の目的(信託目的)に従い、(5)財産の管理または処分およ びその他の当該目的の達成のために必要な⾏為をすることです。(信託法 2 条1項)
出所:筆者作成
■「⺠事信託」と「商事信託」の違い
例えば、信託銀⾏や信託会社が信託報4を5るために業務を⾏うものが「商事信託」で す。「投資信託」は、その典型例であり、信託業法をはじめ、内閣総理大臣の免許や営業 保証⾦の供託等の規制を受けます。
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では次に実際に⺠事信託(⾃⼰信託*)を活⽤した事業承継の具体的事例と解決策、そ のメリットをご紹介します。
*⾃⼰信託・・・「信託宣言」と呼ばれる制度。委託者が受託者(委託者=受託者)と なる形態。
■⾃⼰信託で中小企業の円滑な事業承継を試みる
(
社⻑X)(⻑男A) (⼆男B) (三男C)
出所:筆者作成
【事例】
灯油を販売する甲(株)の社⻑であるXは、⾃社株 100%保有しています。⼦供は、⻑ 男A、⼆男B、三男Cの3名ですが、⻑男Aを後継者としたいと考えています。 今期は暖冬の影響を受け、会社の業績が著しく悪く、創業以来初めて純資産がマイナス となってしまいましたが、来期以降は業績の回復が見込まれます。そこで、株価評価に値 が付かないこのタイミングで株式を⻑男Aに生前贈与しておき、かつ、⻑男Aを後継者と して確定させてしまいたいと考えています。
ただし、社⻑Xはまだ完全に引退するつもりはなく、代表権や経営の決定権も当分は⾃ 分の⼿元に残しておきたいという希望があります。
【信託を使った解決策】
まず、Xは、公正証書による書⾯で甲(株)の株式すべてを信託財産とする⾃⼰信託 を設定します。その内容は、受託者をX⾃身(つまり委託者=受託者)、受益者を⻑男A とします。これにより、社⻑Xは、受託者として引き続き議決権を⾏使できるため、甲 (株)の経営権を残したまま、実質的に株式を後継者である⻑男Aに贈与したのと同様 の効果が5られます。また、社⻑Xの死亡により信託が終了するように定めておくこと により、相続開始時には、確定的に⻑男Aが株式を取5し、議決権を⾏使(経営の決定 権を取5)できるようになります。
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⾃⼰信託の設定により、甲(株)の株式は信託財産となり、その利益は受益者である⻑ 男Aのものとなりますが、依然として受託者であるXの管理下に置くことができます。 これにより税務上は、Xから受益者である⻑男Aに株式が贈与されたものとみなされ、 贈与税の課税対象となります。しかし、今期の業績不振により甲社の株価評価に値が付か なければ、贈与税を課税されることなく後継者である⻑男Aに株式の承継ができることに なります。
【遺言による事業承継スキームとの相違点】
遺言による指定により、⻑男Aを株式の承継者とすることは可能ですが、以下の点にお いて、信託を活⽤するスキームにメリットがあると考えられます。
(メリット① 相続時の株価高騰リスク回避)
遺言による指定に基づき、相続により⻑男Aが株式を承継する場合、将来Xが死亡する 時点で甲(株)の業績が良ければ、株価評価が大きなプラスとされ、多額の相続税を課せ られるリスクを負うことになります。一方、株価の低い今のタイミングで⾃⼰信託による 実質的な生前贈与を実⾏することで、相続税対策を図りつつ、円滑な事業承継をすること ができます。
(メリット② 直接的な遺留分減殺請求の対象財産から外せる)
将来、⻑男Aが株式を相続により取5した際、これが⼆男Bや三男Cの遺留分を侵害し ている場合には、遺留分減殺請求を受ける可能性があります。これにより、株式が分散す るリスクや⻑男Aが株式の返還を免れるための代償⾦の負担リスクが発生します。そこ で、「中小企業経営承継円滑化法」により、贈与株式等を遺留分算定の基礎財産から除外 することができます。ただし、この法律の適⽤の要件として、事前に関係者全員(推定相 続人全員)の合意が必要となっているため、実際上は、この要件をクリアするのは難しい のが現状です。
(メリット③ 後継者にとっての安心感)
遺言は、死亡するまで何度でも書き換えることが可能であるため、現時点で後継者だと 指定されていても、⻑男Aは最終的に社⻑Xが死亡する時点で、⾃分が確実に経営権を承 継できるのか不安定な地位に置かれることになります。そこで、⻑男Aが信託契約におけ る受益者としておくことで、⻑男Aの知らないところで勝⼿に株式の承継者が変更される というリスクは排除することができます。
■最後に・・・
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することで多くの道が開かれつつあります。まだまだ始まったばかりですが、アイデア次 第で、使い方は無限に広がります。この新たな分野に、ぜひ皆様と一緒に取り組んで⾏き たいと思っています。
(この内容は、2017 年 4 月時点の情報です)