水の中はミクロ生物でいっぱい!
身近な池の水を取ってきて、顕微鏡で覗いてみると、個性豊かなミクロ生物たちが見つけられます。ミジンコ、 ゾウリムシ、ワムシ、アメーバ、ミドリムシ・・・小学校や中学校の理科の授業で、水中のプランクトンとして見 た記憶のある方も多いはずです。
さて、原生動物園に登場する原生動物には、そんなミクロ生物の仲間たちが多く含まれます。ところで、水中の ミクロ生物・プランクトンには、いろいろな仲間たちがいますが、その中で有名なミジンコやワムシの仲間たち は、原生動物ではないとはご存じでしょうか?彼らは、単細胞の原生動物とちがって、多細胞生物の仲間、私たち ヒトに近縁な微小動物です。
COLUMN 原生動物 じゃない ミクロな動物たち
実は大きい?! 単細胞の生物たち
イタチムシ
(多細胞)
珪藻
(単細胞)
スピロストマム
(単細胞)
グリーンヒドラ
(多細胞)
(a)
(b)
Protozoological Garden Vol. 3 (2012)
(17)
淡水のミクロ生物たち
★海水のミクロ生物については、原生動物園Vol. 2の記事「海洋プランクトン分類表」をご覧下さい。
原生動物園 Vol. 2 P. 43-48 「海洋プランクトン分類表」https://sites.google.com/site/protozoolgarden/protozoolgarden2_43
The Micro METAZOA - They are not PROTOZOA!
ワムシの仲間 ミジンコの仲間
原生動物園 Vol. 3 (2012) 17-18. Column.
早川昌志 (神戸大学)
(原生動物じゃない)ミクロな動物の仲間
彼らはよく、アメーバやゾウリムシなどの原生動物と勘違 いされがちですが、立派な多細胞動物の仲間です。原生動物 の研究をしていると、よく「ああミジンコね!」と言われる のですが、全く違う仲間です。
ミクロな動物は、大きさこそ1 mm以下になることもあり ますが、多細胞動物の仲間なので、腸や筋肉をきちんと持っ ています。例えば、ヒドラは刺胞動物でクラゲやイソギンチ ャクに近い仲間、ミジンコは節足動物でエビや昆虫に近い仲 間です。
微小な動物プランクトンとして、よくアメーバやゾウリム シと一括りにされがちなミクロな動物ですが、系統的に見た ら、アメーバやゾウリムシよりも、ヒドラやミジンコの方 が、よっぽど私たちヒトに近縁な仲間です。
原生生物には巨大な単細胞生物が多くいる
左の写真をご覧ください。(a)は、原生生物・単細胞藻類である珪藻の1種を、ミクロ動物・イタチムシが横切ってい る様子です。いずれも、体長が0.2 mmくらいの大きさです。こうやって見てみると、ミクロ動物と原生生物の大きさっ て一緒なんだなあ、と思えてくるでしょう・・・しかし、よく考えてみてください。ミクロ動物は、数百数千の細胞が集 まってできた存在です。一方、単細胞である原生生物が、それと同じくらいの大きさということは、相対的に原生生物の 細胞は、極めて大きいということになります。
(b)は、もっと極端な例です。グリーンヒドラは、数mmくらいのミクロ動物ですが、その近くを漂っているスピロスト マムという生物、これも原生生物・繊毛虫の仲間で、れっきとした単細胞生物です。単細胞ですが、大きいもので2∼3 mmくらいになります。ここまで来ると肉眼でもはっきりと見えてきます。
一般的に多細胞動物が持つ細胞は、数10 µmと言われており、これが標準的な細胞のサイズとして教科書にも書かれ ています。しかし、原生生物の世界には、さまざまなサイズを持った規格外の細胞が多くいます。小さい小さいと言われ る単細胞の原生生物の仲間たちですが、細胞を基準に考えると、実は動物よりも大きいものが沢山いるわけです。原生生 物とは、決して小さい存在ではないのかもしれません。